愁童:まだ3分の1しか読めてないんだけど、中国のひとりっ子政策のことがよくわかった。でも、子どもに読ませる文学作品としては、おもしろくないね。「こういう体制にすれば、こうなるんですよ」っていう基本法則を見せられているみたい。

ひるね:私も途中で挫折。社会学的に読めば、おもしろいんでしょうけど。

オカリナ:私も2日前に入手したばかりで、全部は読めなかったんだけど、ショッキングだった。社会体制が変わると、人間ってこんなに変わっちゃうものなのね。中国って、あれだけの大勢の人がいるのにね。でも、この文章、ちょっと読みにくいね。この訳者は、もっと文章うまかったと思ったけど。

N:陳丹燕はラジオのDJをやってるんだけど、この本はリスナーの子どもたちが、番組あてに送った、親にも先生にも友人にもいえない悩みを綴った手紙をもとに、取材をしてまとめたものなの。実際の手紙そのものではなくて、それに手を加えてるから、正確にはノンフィクションではなくて、フィクションなんだけど。中国は外側からの報道しかされていない国だから、内側からの声がストレートに聞こえるこの本の登場は、とてもセンセーショナルだった。ここに出てくるのは、ものわかりがよすぎて、子どもらしくない、いい子たちばかり。彼らが、親の期待におしつぶされそうになってる姿が、浮かびあがってくる。

オカリナ:もう異星人かと思っちゃった。子どもと親との間には、絶対的な境界線があるんだよね。どうしてこんなふうになっちゃうのか、謎ですね。

:でも、今まで中国ではいじめってそんなに陰湿ではなかったのに、このごろでは陰湿になってきてるんですってよ。やっぱりストレスはものすごいんじゃない?

オカリナ:日本の子どもが、こんなに管理された環境におかれたら、すぐキレちゃうよね。ひと昔前にキレなかった人は、今アダルトチルドレンになってるって話だけど。

愁童:日本は戦争に負けたところでぷつっと切れてて、そこから50年でしょ。韓国や中国は、敗戦でとぎれることなく儒教の教えがずっと続いているから、子どもたちのストレスは、日本以上なんじゃないかな。

ひるね:あえてフィクションにしたというのは、社会的思惑かしら。

N:そういうわけではないと思う。作者がもともとルポライターだからじゃない?

:私は、これを出版した彼女に感動しました。中華民族のスケールの大きさが感じられる。今の時代に、こういう仕事をしようとするのがデカい。1冊の本として、子どもにどうのというのは、最初から度外視してるし、未完成だし、荒削りだけど、今の中国の真の姿を知りたいという人にはとても価値のある作品。読んでてつらくなっちゃうんだけど。

オカリナ:いろんな人の声を集めるというのは、ほかの国でもやってることだけど、やっぱり中国では、やりにくいのかな?

:それはあると思う。字の読めない人だっていっぱいいるわけだし。全中華民族が視野に入ってるって、スゴイことだよ。

ねねこ:やっぱりこれって、手紙100編くらいあったほうがいいのかな?

流&N:多すぎるよねー!

:文体が同じだから、飽きちゃう。

ねねこ:編集上のひと工夫が必要だったかもね。

:でも、中国って、一人きりの子どもをすごく大事にしてて親は肉も食べないっていうの、よくあるのよ、ほんとに。日本でも過保護にしてる親ってたくさんいるけど、それは個人が好きでやってるわけであって、中国は国家政策としてやってるんだからねえ。そういう事実を書いたってだけでも、やっぱりすごいことよね。

N:中国では日本に遅れること20年、今年はじめて金属バット事件がおきたの。1978年にはじまった「ひとりっ子政策」も、2003年にはやめるらしいし、これからどうなっちゃうんだろうね。高学歴の人ほど子どもが少ないしね。

愁童:ひとりっ子が親になったときがコワイよ。

ねねこ:そうだよね。ひとりっ子が大人になって、どういう親になれるかっていうのが、この国にとってこれからの問題でしょうね。

(2000年06月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)