カテゴリー: 子どもの本について

IBBY会長の張明舟さんにインタビュー

1月21日、初来日されたIBBY会長の張明舟(ジャン・ミンジョウ)さんとJBBY事務局でお目にかかった。

IBBY会長・張明舟氏
IBBY会長・張明舟氏

張さんは、1968年に旧満州の小さな村で生まれ、上海国際大学で学び、1991年には外務省に入ったのだが、その時のお給料では故郷の貧しい親に仕送りができないため、さんざん悩んだあげく、国営の旅行会社に転職した。そして2002年にはCBBYのアテンド兼通訳としてスイスのバーゼルで開かれたIBBY創立50周年記念の大会に出かけ、そこで日本の皇后様のスピーチを聞き、真摯に子どもや子どもの本のことを考える世界の人々と出会い、自分もそういう仕事をしたいと思うようになってCBBYに加入したという。

張さんの祖先は日本兵に殺されているのだが、皇后様のスピーチを聞いて「日本軍は憎んでも、日本の人たちとは友だちになろう」と考えるようになったと話してくださった。今は自分で設立した会社を経営しながら、ほとんどの時間をIBBYのために使っているが、自分の任期中に、国際的な支部同士の交流や協力をもっと進めたいし、IBBY事務局がもっと活動できるように資金を調達し、スタッフも増員したいと思っていると、抱負も語ってくださった。

今回のインタビューで特に印象に残ったのは、子ども時代に出会った一冊の本のお話だった。お人柄がわかるエピソードなので、お伝えしたい。

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私は旧満州の、ソ連との国境近くの小さな村で生まれました。生まれた翌年には中ソ国境紛争があり、その後も村のおとなたちは、ソ連兵の侵入に備えて民兵としての訓練を受けていました。子どもは訓練の現場には近づいてはいけないと言われていたのですが、私はこっそり見に行ったものです。

私の父は学校の教師で、母も元は教師だったのですが、子どもが5人もいたので主婦をしていました。住んでいたのは藁屋根に土の床という家で、壁には古い新聞紙が貼ってありました。私はその古新聞を見ながら字を覚えたのです。わからない文字があると、父が教えてくれました。とても貧して、私が小さいころは家に本もなかったのですが、子どもたちが卑屈になることはありませんでした。両親がいつも私たちに、「勉強したかったらどんどんしなさい。鍋釜を売ってでも、その費用は工面するから」と言っていたし、楽しく学ぶことができていたからです。

村の子どもたちは、民兵の訓練場に落ちている薬莢とか、道に落ちていたひもや馬の蹄鉄を拾ってよくゴミ集積場へ持っていきました。そうすると、小銭がもらえるからです。私は小銭をもらうと店に飛んでいってお菓子を買うのを楽しみにしていました。山の中の村では、春節の時以外、家にお菓子はありませんでした。それに、そこはいつもおいしそうな匂いがしたし、カラフルな商品が並んでいて、いつでも行きたくなるようなお店だったのです。

ある日、また集積場で小銭をもらった私は、意気揚々と店に出かけていきました。でもその日はガラスケースの中に入っている何冊かの本に目がいったのです。そのうちの一冊は絵本で、表紙には男の子が白い傘のようなものを背負って飛んでいる絵がついていました。私はその絵にひきつけられ、絵本を見せてほしいとたのんだのですが、お店の人は「見るなら買わないとだめだ」と言うのです。私は長いことためらったあげく、お菓子をあきらめ、その本を買って帰りました。それは柳の種を主人公にした『小さな種の旅』という絵本で、ストーリーは、小さな種がいろいろな体験をしながらあちこち旅をし、世界の果てまで飛んでいく、というものでした。(後で詳しく伺うと、これは、宗海清作 胡立浜絵『小種子旅行記』という本で、画家の胡さんは1980年代に北京で、絵本の絵について日本の専門家から学んだこともあったそうです。張さんは、その日本の専門家というのは松居直さんではないかとおっしゃっていました。)

『小種子旅行記』

その絵本をくり返し読むうちに、私の心の中にも、いつか故郷の小さな村を出て広い世界を見たいという夢が生まれたのでした。のちに私が外務省で働いたりIBBYの仕事をしたりするようになったのは、その絵本の影響が大きいと思っていますし、今でもその絵本のことは、折に触れてよく思い出しています。

(JBBY機関誌「Book & Bread」2019年3月号より)

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児童書は読書の土台です!

「読書推進運動」(読書推進運動協議会刊)2018年4月15日号に「児童書は読書の土台です!」という記事を書きました。JBBYの活動について、みなさんにも知っていただきたいと思いました。

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子どもの読書週間によせて
JBBY会長 さくまゆみこ

 

私は、昨年からJBBY会長という役目をおおせつかっている。子どもが本を読まなくなったという声は、ずいぶん昔から耳にタコができるほど聞いていたし、最近は、まったく本を読まない大学生さえ多いという。そんななかで何ができるのか、報酬なしのボランティアではありながら、大変チャレンジングな役目である。

出版不況に関しては、大人の本と比べると子どもの本はまだいい、という声も聞かれるが、多くの新聞では大人の本の紹介・書評欄は毎週あるが、児童書の場合はだいたいが月に1回だったりする。なので、多くの人が子どもにどんな本を買ったらいいのかわからず、書店で山積みになっている本に手を出してしまう。

売れる本イコール子どもの心に種をまける本ではないので、そうした本を与えられた子どもは、本や読書の本当のおもしろさに気づくことなく、大人になってしまう場合も多いのではないだろうか。読書離れを嘆くなら、読書の土台をつくる児童書にももっと焦点を当てて、子どもの視野を広げ心に響く本を紹介したほうがいいのではないだろうか?

ところでJBBYでは3年前から毎年、日本で創作された児童書を海外向けに英文で紹介するブックレットJapanese Children’s Booksを発行してきた。選考委員たちは、かなり突っこんだ論議を交わしながら選書をし、選ばれた本について原稿を書き、ネイティブのすばらしい翻訳者たちに英文にしてもらって、絵本、読み物、ノンフィクションに分けて合計約一〇〇点を紹介している。

これを日本語でも読みたいと言う声が多く寄せられたので、昨年度からは、その日本語版「おすすめ! 日本の子どもの本」も出版することになった。また今年度からは、翻訳の児童書のなかからおもしろい作品を選んで紹介するブックレット「おすすめ! 世界の子どもの本」も出版する予定で、現在選書を進めている。翻訳作品についてもブックレットを出そうと思ったのは、翻訳書でしか得られない多様な価値観や多様な文化を知ることも、今の日本の子どもにとっては重要だと思うからである。

また、昨年度からは「国際アンデルセン賞講座」として、日本から候補として推薦していた角野栄子さんと田島征三さんについて、学んだり話しあったりする連続講座も開き、最終回にはおふたりの講演会も開いた。こうした活動やブックレットが、角野さんのアンデルセン賞受賞にささやかなりともつながったのであれば、うれしいことである。

毎年好評の「JBBY新編集者講座」では新たな趣向を考えているし、さらに昨年度からは、日本にいる困難を抱えた子どもたちについて考え、本で支援する「希望プロジェクト」も発足させた。学びの会を開いたり、子ども食堂や南相馬の子どもたちに本を届けたりの地道な活動を今年度も続けていくつもりだ。

出版・教育関係者のみなさまにも、子どもの読書に関して様々な試みをしているJBBYの活動をさらに知っていただけるよう努力していきたいと思っている。

 

 

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