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『クラバート』表紙

クラバート

『クラバート』をおすすめします。

<生きること、死ぬこと、愛すること>

「ハリー・ポッター」シリーズや「ゲド戦記」シリーズには、魔法を学べる学校が出てきましたね。そんな学校に通ってみたいと思っている子どもは多いかもしれません。この本にも魔法を学ぶ学校が出てきます。でも、読んだあとでこの魔法学校に行きたいという子どもは、ほとんどいないでしょう。それくらい、この魔法学校は怖いのです。

主人公は、ヴェンド人の孤児クラバートで、物乞いをしながら暮らしています。ヴェンド人というのは、ドイツの少数民族です。ある晩、夢の中にカラスが現れ、クラバートを水車小屋へと誘います。西洋では、水車は時の象徴や、運命や永遠のシンボルだそうですし、カラスは生と死に関するシンボルです。伝説を下敷きにしているこの作品は、そんないろいろなシンボルに満ちています。

クラバートは、この水車小屋で働くことになるのですが、そこは不思議な場所で、徒弟たちはどんなにがんばっても脱出することはできないし、自殺することさえできないうえ、毎年一人ずつ命を落としていくのです。それに、そこは魔法学校でもあって、親方しか読めない魔法の本に書いてあることを、カラスの姿になった徒弟たちは口伝えに学んでいきます。

食べるものは十分に与えられ、魔法を使えば仕事もそうきつくはありません。そのせいか、他の徒弟たちはずっとこの水車小屋で酷使され、遠からず悲惨な死を迎える運命に甘んじているようです。権力者の親方をやっつければ失うとされる魔法の力にも、しがみついていたいのでしょう。

でも、魔法よりもっと大切なものがあるのではないでしょうか? クラバートはなんとか親方をやっつけて、この運命からも、この水車小屋からも抜け出したいと思うようになります。そんなクラバートを助けるのが、村の、声の美しい娘。二人は、命の危険を顧みず勇敢に親方と対決するのです。

コワーイ本だけど、ハラハラ、ドキドキしながら、生きること、死ぬこと、愛することについて思いをめぐらせることができる作品です。

(「子とともにゆう&ゆう」2012年12月号掲載)

キーワード:魔法、孤児、カラス、夢、生と死

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『月の光を飲んだ少女』表紙

月の光を飲んだ少女

『月の光を飲んだ少女』をおすすめします。

魔法を扱いながら、現代にコミットする物語。舞台は中世的な異世界で、そこではシスター長イグナチアが恐怖と悲しみをもって、従順で信じやすい民を支配している。イグナチア配下の長老会は、魔女への生贄として毎年赤ん坊を1人ずつ森の中に捨てさせるのだが、ある年捨てられたルナは、善き魔女ザンに拾われて育ち、やがて恐怖の世界をひっくり返して新たな世界を作り出そうとする。協力するのは、自然の象徴とも思える沼坊主グラーク、竜のフィリアン、ついに出会えた生母、正直でやさしい若者アンテイン、自分の頭で考える勇敢なエサイン。おもしろく読めて、生と死、支配と被支配、魔法と自然の力などについて思いをめぐらせることができる。(中学生から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年8月31日掲載)

キーワード:魔法、竜、家族、生と死、自然

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