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ギゾギゾ!〜ゾンゴぬまのものがたり

『ギゾギゾ!』表紙
『ギゾギゾ!〜ゾンゴぬまのものがたり』
エミリー・ウィリアムソンとガーナのハッサニヤ・イスラム学校の子どもたち/作 さくまゆみこ/訳
犀の工房
2023.04

ガーナで出版された絵本です。

もともとはIBBYのオナーリスト(世界の優良図書リスト)でこの絵本を知って、「世界の子どもの本展」の出版クラブでのオープニングのときにお披露目し、その後も動画で紹介したりしたら、目をとめてくださった犀の工房の方から、翻訳を頼まれました。

カメとカニとクモが主人公の、環境汚染をなんとかしようとする物語です。ウィリアムソンさんが開いたワークショップの中で出てきた子どもたちのアイデアを活かしてお話ができ、子どもたちが作ったキャラクターをもとに絵が描かれています。近くに実際にあるゾンゴ沼をなんとかきれいにしたいという子どもたちの気持ちがよくあらわれています。巻末にはワークショップの写真も載っています。

犀の工房さんは、小さい会社のようですが、一所懸命に本づくりをなさっています。

(編集:賀来治さん)

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私はどこで生きていけばいいの?

『私はどこで生きていけばいいの?』表紙
『私はどこで生きていけばいいの?』
ローズマリー・マカーニー/文 西田佳子/訳
西村書店
2018

『私はどこで生きていけばいいの?』(NF写真絵本)をおすすめします。

世界の難民や避難民の子どもたちの望みや不安を、写真と簡潔な文章で紹介する絵本。写真は、国連難民高等弁務官事務所が提供するもので、クロアチア、ハンガリー、ルワンダ、レバノン、イラク、南スーダン、ヨルダン、ギリシャ、ミャンマー、ニジェールなどで撮影されている。「『こんにちは。ここで安心して暮らしてね』と、笑顔でむかえてくれる人がいますように。あなたもそのひとりでありますように。」という、最後の場面に添えられた言葉に、本書の意図が集約されている。

原作:カナダ/8歳から/難民 子ども 旅

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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小さなかがやき

長倉洋海写真 谷川俊太郎文『小さなかがやき』
『小さなかがやき』
長倉洋海/写真 谷川俊太郎/詩
偕成社
2013.12

『小さなかがやき』をおすすめします。

長倉さんが、エルサルバドル、アフガニスタン、ブラジル、ウィグル、南アフリカ、コソボ、ベネズエラ、レバノンなど世界各地で撮った子どもの写真に、谷川さんの詩がついています。写真も詩も、他の本で見たことがあるのと、初めて見るのとがあります。どこかで見たものでも、古い感じはしません。また心に届きます。写真と詩の組み合わせがいいからでしょう。

たとえば、エルサルバドルの戦争避難民の子どもたちが新生児を囲んで笑っている写真には、「生まれたよ ぼく」という詩がついています。

「生まれたよ ぼく
やっとここにやってきた
まだ眼は開いてないけど
まだ耳も聞こえないけど
ぼくは知っている
ここがどんなにすばらしいところか
だから邪魔しないでください
ぼくが笑うのを ぼくが泣くのを
ぼくが誰かを好きになるのを

いつかぼくが
ここから出ていくときのために
いまからぼくは遺言する
山はいつまでも高くそびえていてほしい
海はいつまでも深くたたえていてほしい
空はいつまでも青く澄んでいてほしい
そして人はここにやってきた日のことを
忘れずにいてほしい」

私は長倉さんが子どもを撮った写真がとても好きなのですが、この本は写真をより深く味わうために詩があり、詩をより深く味わうために写真がある、という有機的な構成になっているのがいいなあ、と思いました。
自分に最初の子どもが生まれたとき、私はその子はもちろんですが、それだけでなく世界中の子どもがいとおしくなりました。その時のことを思い出しました。

オビには「写真家と詩人がとらえた無垢なまなざしの光」とあります。このオビを書いた人は子ども=無垢と思ったのでしょうか? 谷川さんは、「赤んぼのまっさらなタマシイは おとなの薄汚れたタマシイよりも上等だ」と書いています。上等=無垢? 生まれたての赤ちゃんはともかく、子ども=無垢ととらえると、子どもの本質を見誤るかもしれないと、私自身は思っています。でも、子どもたちは大きな可能性と大きな力を秘めています。それをつぶしているのが、私たちおとなです。