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くまさんのおたすけえんぴつ

アンソニー・ブラウン『くまさんのおたすけえんぴつ』さくまゆみこ訳
『くまさんのおたすけえんぴつ』
アンソニー・ブラウン作 さくまゆみこ訳
BL出版
2012.07

先に出た『くまさんのまほうのえんぴつ』は、これを下敷きにして作られました。以前は田村隆一さん訳で評論社から『クマくんのふしぎなエンピツ』として出ていた絵本です。ハンターに追いかけられたくまさんが、魔法の鉛筆でつぎつぎに絵を書いて危機を脱出していきます。8月の「子どもの本の世界大会」で、私もアンソニー・ブラウンに会って話をしてきました。(編集:渡邉侑子さん)


くまさんのまほうのえんぴつ

アンソニー・ブラウンとこどもたち『くまさんのまほうのえんぴつ』さくまゆみこ訳
『くまさんのまほうのえんぴつ』
アンソニー・ブラウンと子どもたち作 さくまゆみこ訳
BL出版
2011.10

イギリスの絵本。栄えあるチルドレンズ・ローリエトのアンソニー・ブラウンが、子どもたちと一緒に作り上げた絵本です。子どもらしい発想に満ちています。絶滅しそうな動物たちも、魔法の鉛筆でなんとか助けられるといいな。そういえばアンソニー・ブラウンが大好きなゴリラも絶滅危惧種ですね。この絵本にも登場していますよ。
(編集:渡邉侑子さん)

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<子どもと一緒に作った絵本>

子どもとのやりとりの中から生まれた本はたくさんあります。ルイス・キャロルは、勤めていた大学の学寮長の娘アリスをボートに乗せてピクニックに行く途中、即興で語ったお話を基にして、『不思議の国のアリス』を書きました。ケネス・グレアムは、自分の息子に夜寝る前にしてやったお話を後に整理して『たのしい川べ』を書きました。ビアトリクス・ポターは、かつての家庭教師の息子が病気だと聞いて、励ますために書いた絵手紙をほとんどそのまま使って、『ピーターラビットのおはなし』を作りました。どうもイギリスにはそのような伝統があるようですね。

さて、今回のこの絵本は、子どもたちとのやりとりを基にしただけでなく、子どもが描いた絵が使われています。「サン」という新聞が主催したコンテストに応募した子どもたちと、イギリスの絵本作家アンソニー・ブラウンが一緒に作った絵本なのです。ブラウンにはその前に『くまさんのおたすけえんぴつ』という絵本があって、何でも描くと本物になってしまう鉛筆が登場していました。同じ不思議な鉛筆が登場するという意味では、その続編です。

ちょっととぼけたくまさんが、悪い人間に捕まりそうになるたび、この不思議な鉛筆を使って、危機を脱出していきます。そのうち、くまさんは、自分だけでなく他の動物たちも助けようとがんばるようになるのです。この絵本がおもしろいのは、子どもたちが描いた絵と、大人の絵本作家が描いた絵が同じ画面に登場すること。子どもたちの想像力の豊かさは、プロの絵本作家をしのぐほどです。

イギリスには「チルドレンズ・ローリエト」という名誉な称号があります。ローリエトというのは本来、国を代表する「桂冠詩人」の称号ですが、こちらは国を代表する子どもの本の作家や画家で、2年ごとに選ばれます。アンソニー・ブラウンは、6代目の現在のチルドレンズ・ローリエト。8月末にロンドンで開かれた「子どもの本の世界大会」でも大活躍でした。わたしもこの大会に参加したので、お話を伺うと、「子どもたちとの本作りは、とっても楽しかったよ」と笑顔でおっしゃっていました。

(「子とともにゆう&ゆう」2012年10月号 通巻684号 愛知県教育振興会発行)