空飛ぶリスとひねくれ屋のフローラ

『空飛ぶリスとひねくれ屋のフローラ』
原題:FLORA & ULYSSES:THE ILLUMINATED ADVENTURES by Kate DiCamillo, 2014
ケイト・ディカミロ/著 斎藤倫子/訳 K.G.キャンベル /挿絵 
徳間書店
2016.09

版元語録:10歳の女の子フローラがある日、掃除機に吸い込まれかけたリスを助けると、リスは、普通とは様子がちがっていた。人間の話がわかり、タイプライターが打てるのだ。おまけに、ここぞというときには、空も飛べる! ところが、母さんがリスを殺そうと企んでいるとわかる。母さんは父さんと離婚して以来、仕事ばかり。フローラがいないほうが楽だとまで言いだし…? ユーモラスでほろりとする、人気児童文学作家2度めのニューベリー賞受賞作品。

アンヌ:献辞のところから読み始めたので、マンガも作者が書いたのかと勘違いして、驚きながら読みました。大人がみんな孤独で、子どもも孤独で、それなのに大人は子どもを傷つける。ハッピーエンドだからいいけれど、ちょっと理解できない話でした。リスだけがかわいくて自由で詩人で、理想の子どものようです。この本を読んで楽しかったのは、マンガに描かれている本の題名がしっかり読めたこと。哲学者ミーシャムさんの本棚にあるのは、『ホビットの冒険』(J・R・R・トールキン著 岩波書店)で、『指輪物語』(同著、評論社)じゃないのに納得したり、テイッカムさんの名詩選集の最初の名前が2冊とも女流詩人なのを発見したり、リスに読んであげるリルケの詩が『時祷詩集』(リルケ全集・河出書房新社)だ等と、調べて考える楽しみがありました。

コアラ:私はおもしろく読みました。内容もおもしろかったし、マンガで表現しているところと文章で表現しているところがあって、文章も明朝体で人間のフローラを主人公にした場面と、ゴシック体でリスのユリシーズを主人公にした場面がある、という形がおもしろかったです。フローラはアメリカのコミックを読んでいて、アメコミのスーパーヒーローと重ね合わせてリスを見ているので、もっと話が大きくなるのかな、と思ったら、意外とこぢんまりとしたスケールで終わってしまったので、もうちょっと盛り上げてほしかった。p227の2行目で「母さんが何よりもだれよりも愛しているのは羊飼いの電気スタンドだ」とあるから、この悲しい誤解の道具が重要な場面で使われるのだろう、と思っていたら、猫をたたいただけで終わってしまったので、もっとキャラクターも含めて設定を生かしてほしかったです。主人公のフローラは、変わっている子という設定ですが、フローラみたいな子は案外いっぱいいるんじゃないかと思いました。p153の絵で本のタイトルなど全部日本語に変えていて、本の背の見えにくい文字もそれっぽく変形させた活字にしているので、うまいなあ、おもしろいなあと思いました。とにかくリスの絵がすごくかわいかったです。

レジーナ:今回選書係として、社会や時代の制約を受けながら生きている女の子が、動物との関わりの中で周囲から受け入れられていく物語を選びました。この本は2014年にニューベリー賞をとったときに原書で読みました。主人公は個性的で、母親からも変わった子だと思われています。そこに空飛ぶリスが現れたことで、しっくりいっていなかった人間関係が少しずつ変わっていく過程が描かれています。作者が自分のためではなく、子どもに楽しんで読んでもらおうとして書いた本ですね。ところどころマンガになっているのも、おもしろいアプローチなのでは。

ネズミ:得意ではない作品だったけどおもしろかったです。マンガがところどころに入って1章1章が短い構成で、私は落ち着かなかったけど、読書が苦手な子どもにはとっつきやすいかなと思いました。たよりない親と、ちょっとませた子どもと。どんな親でも子どもは折り合いをつけて生きていくんだなというのが伝わってきます。掃除機に吸い込まれそうになって特殊能力を得たリスが出てきたり、フローラがいつも参考にする本があったり、お話としてのうまさが感じられて、子どもが読んだら楽しく読めるのでは。人物は戯画的ではあるけれど、お母さんもお父さんもとなりの人も、いろんな面が見え隠れする描き方で好感を持ちました。

西山:目次を見たときは苦手だと思ったのだけど(散文的なこまかい目次、あまり好きでなく・・・・・・単に好みの問題です)、読み始めたらおもしろかった。子どもを楽しませると思いました。難を言えば、マンガと本文の関係がわからないので、本文出だしを読んでいるマンガの内容だと思ってしまうのではと思いました。読み進めて、仕組みがわかってくればそれでいいのですが、本を読み慣れていない子にとって、ある種の難しさになってしまうかもしれないと、ちらっと思いました。恋愛小説家の母親が、いかにも現実的なのは皮肉?ちょっとおもしろい。信じることによって失うものはないという「パスカルの賭け」がでてくるところ(p158)や、ユリシーズが心にもないことを打ち込んで石のようになってしまうところ(p218)など、考えさせるところもあってそれも好感を持ちました。p15のリスが食べ物のことばかり考えているというところ、もっとリスっぽい?口調、リスの動きを思い起こさせるような、いかにもリスっぽいと思えるような口調にして、もっと楽しませてほしいと思いました。フローラに人生の教えをくれるマンガ、私もほしいと読んだ子どもが思うんじゃないかな。子どもをもてなす作品だと思いました。

マリンゴ: おもしろく読みました。軽快なタッチなので、少女を取り巻く環境が実は苛酷だということを、終盤まであまり感じず、重くなりすぎずに読むことができました。哲学的な内容が随所に入りますが、主人公のお気に入りのマンガからの引用なので、子どもに難しく感じさせないのではないかと思います。リスのスペックが、「空を飛ぶこと」「タイプライターを打つこと」と、明確なのがユニーク。最後、ファンタジーの世界を閉じて、日常に戻るのかと思いきや、ファンタジー全開のままで終了したのが少し意外でした。子どもたちにとっては、想像がふくらむ楽しい終わり方なのかもしれません。

:マンガの部分は、マンガというよりも挿絵のバリエーションのように感じました。なくてもストーリーを理解できるので。p15で、おなかがすいたことをリスの気持ちでいろいろに表現しているところは、マンガ形式だからいっそうおもしろく見えますね。『はみだしインディアンのホントにホントのはなし』(シャーマン・アレクシー著 エレン・フォーニー画 さくまゆみこ訳 小学館)も思い出しました。私は、子どもが子どものロジックのまま不満を言うタイプの本があまり好きではないのですが、そういうところを差し引いても、案外楽しく読めました。フローラを受け入れられない母親がありのままの娘を受け入れるようになるという話ですね。いろいろな人が出てきますが、p217の「家に帰りたい」というスパイヴァーのセリフに主題が凝縮していて、ここで、この本がきわめて正統な児童文学であることがわかります。あと、メアリー・アンという電気スタンドも、猫をたたいておしまい、なのではなく、それで壊れることにより、母親が初めてフローラの方を向くという結果につながっているので、重要なアイテムだと思います。

ハリネズミ:ドタバタの割りには理屈っぽいところがあるな、というのが私の第一印象です。こういうのを訳すのは難しいですね。私の好みとしては、もう少しドタバタ寄りで訳してもらったほうがおもしろくなったと思います。このお母さんはタイプライターで原稿を書いてますから、舞台は現代じゃないんですね。。そういう時代に設定したのはなぜなんでしょう? このマンガのテイストは、日本の子どもとそんなに相性はよくないと思います。2回読んだんですが、私はみなさんがおっしゃっているほどおもしろいとは思いませんでした。

カピバラ:マンガを挿絵としてではなく文章のかわりに入れているのがおもしろかった。この絵のせいで現実離れした人々のように思えるけれど、実はそれぞれが深い悩みをかかえていることがわかってきます。p234の最後に、「フローラは変わってる? そうかもしれない。でも、それのどこが悪いのかな?」と書いてあり、これが作者の言いたいことなのでしょう。各章が短くて読みやすく、視点もどんどん変わって子どもを飽きさせないようにという工夫が感じられるところに好感をもちました。個性的な人物が出てきて、特にドクター・ミーシャムと巨大イカの話はおもしろかったです。リスの視点で書かれているところは楽しいから興味をもって読むのですが、リスの存在がひとりひとりにどんな影響を及ぼしているかというところまではよくわかりませんでした。私はアメリカの出版社のパーティーでこの作者に会ったことがありますが、明るくてとにかくよくしゃべる人で、小柄なのに存在感があり、いつも人に囲まれていました。人を楽しませたいというサービス精神にあふれている人だと思います。それが作品にも表れているんですね。

ルパン:物語の方向性がよくわかりませんでした。読書会で取り上げなかったら読み切れなかったかも。ニューベリー賞とあったので期待して読みはじめましたが、すぐに「どうしてニューベリー賞?」と思い始めてしまいました。最大の疑問は、やはりリスの役割です。リスを特別にしてしまう掃除機も、最初に出てきただけで、何だったんだろう、という感じだし。マンガまじりの構成も、私はあんまりなじめませんでした。挿絵だと思っていたのに、マンガのなかに重要なストーリー展開があったんですね。しばらく気づかずにマンガを飛ばして読んでいたので、途中であわてて最初に戻りました。好きな登場人物はフローラのお父さんで、印象に残ったのは電気スタンドの女の子かな。ラストは、フローラはお母さんと心が通じ合ったのに、ウィリアムは家族に見捨てられたままだったのが気になりました。目が見えないふりをするほど悲しんでいたので、もう少し救いがあってもよかったと思います。大好きなフローラと仲よくなれたのはよかったですが。ティッカムさんの家で幸せになってもらいたいと思います。

しじみ71個分:おもしろく読み、最後のリスのフローラを思う詩には涙ぐんでしまいました。傷ついたり、うまくいっていない人たちが、スーパーリスの存在でかき回され、冒険があり、事態が変わっていくという展開になっています。本文中、絶対にありえないと言い切れることはないんだよ、という趣旨のセリフがありますが、それはスーパーヒーローの空飛ぶリスでもあり、無理なように見える壊れた家族の和解をも象徴していると思いました。リスの存在が未来への希望を表わしているようで、気持ちよく読めました。ストーリーを挿絵で表しているのもとてもおもしろいですね。

さららん:表紙とタイトルでは一瞬腰が引けましたが、読み出したらおもしろかった! 不安、満足、喜び、そういった様々な感情が、「物」で具体的に象徴されていて、つじつまがあうように作られている。子どもには納得がいくお話だと思います。例えば・・・孤独の象徴としての絵の中の巨大イカ、夜中に訪れたフローラを大歓迎するおばあさんが用意するオイルサーディンのクラッカー、父さんと食べに行くドーナツなどなど。それから、リスがなぜ詩が好きなのか、最後まで疑問に思っていたのですが、最初の漫画を見たら、なんと詩集といっしょに吸い込まれていた! 絶対にありえないお話だけれど、テーマは正統派で、ところどころに詩情を感じます。リスの書く詩が、単純なドタバタコメディに奥行きを作っていて、胸がきゅんとなるところもあり、楽しめました。

マリンゴ:余談ですが、うちの実家の庭に、ここのところタイワンリスがたくさん現れます。タイワンリスは外来種で、謎のウイルスがいるかもしれないから絶対素手で触れてはいけないそうです。自治体のホームページなどでも注意喚起しています。なので、主人公のお母さんの言っていることは理にかなっている、と思いながら読みました。

エーデルワイス(メール参加):表紙や裏表紙の色やカットも素敵です。中身にもマンガを入れたり、フローラの章とリスの章とで書体を分けたりと、読みやすく工夫されていると思います。なかなか斬新だと思いました。寂しさを抱えた少女を主人公にし、ドタバタやユーモアを交えて描かれた、いかにもアメリカらしい作品ですね。日本にはちょっとなじまないように思いました。いっそ全部マンガになっていた方がすっきりしたかも。マンガは、日本のほうがずっと進んでいますね。p153の挿絵はおもしろかったです。『ホビットの冒険』『シェークスピア』『ホーキング宇宙を語る』『オルフェウスへのソネット』にまじり、『盆栽の世界』なんていうのもあり、本当に盆栽が置いてあります。世界中で盆栽はブームなのかと笑ってしまいました。この書斎は、著者ご自身の書斎がモデルになっているのでしょうか?

(2017年2月の言いたい放題)

空飛ぶリスとひねくれ屋のフローラ

『空飛ぶリスとひねくれ屋のフローラ』
原題:FLORA & ULYSSES:THE ILLUMINATED ADVENTURES by Kate DiCamillo, 2014
ケイト・ディカミロ/著 斎藤倫子/訳 K.G.キャンベル /挿絵 
徳間書店
2016.09

アンヌ:献辞のところから読み始めたので、マンガも作者が書いたのかと勘違いして、驚きながら読みました。大人がみんな孤独で、子どもも孤独で、それなのに大人は子どもを傷つける。ハッピーエンドだからいいけれど、ちょっと理解できない話でした。リスだけがかわいくて自由で詩人で、理想の子どものようです。この本を読んで楽しかったのは、マンガに描かれている本の題名がしっかり読めたこと。哲学者ミーシャムさんの本棚にあるのは、『ホビットの冒険』(J・R・R・トールキン著 岩波書店)で、『指輪物語』(同著、評論社)じゃないのに納得したり、テイッカムさんの名詩選集の最初の名前が2冊とも女流詩人なのを発見したり、リスに読んであげるリルケの詩が『時祷詩集』(リルケ全集・河出書房新社)だ等と、調べて考える楽しみがありました。

コアラ:私はおもしろく読みました。内容もおもしろかったし、マンガで表現しているところと文章で表現しているところがあって、文章も明朝体で人間のフローラを主人公にした場面と、ゴシック体でリスのユリシーズを主人公にした場面がある、という形がおもしろかったです。フローラはアメリカのコミックを読んでいて、アメコミのスーパーヒーローと重ね合わせてリスを見ているので、もっと話が大きくなるのかな、と思ったら、意外とこぢんまりとしたスケールで終わってしまったので、もうちょっと盛り上げてほしかった。p227の2行目で「母さんが何よりもだれよりも愛しているのは羊飼いの電気スタンドだ」とあるから、この悲しい誤解の道具が重要な場面で使われるのだろう、と思っていたら、猫をたたいただけで終わってしまったので、もっとキャラクターも含めて設定を生かしてほしかったです。主人公のフローラは、変わっている子という設定ですが、フローラみたいな子は案外いっぱいいるんじゃないかと思いました。p153の絵で本のタイトルなど全部日本語に変えていて、本の背の見えにくい文字もそれっぽく変形させた活字にしているので、うまいなあ、おもしろいなあと思いました。とにかくリスの絵がすごくかわいかったです。

レジーナ:今回選書係として、社会や時代の制約を受けながら生きている女の子が、動物との関わりの中で周囲から受け入れられていく物語を選びました。この本は2014年にニューベリー賞をとったときに原書で読みました。主人公は個性的で、母親からも変わった子だと思われています。そこに空飛ぶリスが現れたことで、しっくりいっていなかった人間関係が少しずつ変わっていく過程が描かれています。作者が自分のためではなく、子どもに楽しんで読んでもらおうとして書いた本ですね。ところどころマンガになっているのも、おもしろいアプローチなのでは。

ネズミ:得意ではない作品だったけどおもしろかったです。マンガがところどころに入って1章1章が短い構成で、私は落ち着かなかったけど、読書が苦手な子どもにはとっつきやすいかなと思いました。たよりない親と、ちょっとませた子どもと。どんな親でも子どもは折り合いをつけて生きていくんだなというのが伝わってきます。掃除機に吸い込まれそうになって特殊能力を得たリスが出てきたり、フローラがいつも参考にする本があったり、お話としてのうまさが感じられて、子どもが読んだら楽しく読めるのでは。人物は戯画的ではあるけれど、お母さんもお父さんもとなりの人も、いろんな面が見え隠れする描き方で好感を持ちました。

西山:目次を見たときは苦手だと思ったのだけど(散文的なこまかい目次、あまり好きでなく・・・・・・単に好みの問題です)、読み始めたらおもしろかった。子どもを楽しませると思いました。難を言えば、マンガと本文の関係がわからないので、本文出だしを読んでいるマンガの内容だと思ってしまうのではと思いました。読み進めて、仕組みがわかってくればそれでいいのですが、本を読み慣れていない子にとって、ある種の難しさになってしまうかもしれないと、ちらっと思いました。恋愛小説家の母親が、いかにも現実的なのは皮肉?ちょっとおもしろい。信じることによって失うものはないという「パスカルの賭け」がでてくるところ(p158)や、ユリシーズが心にもないことを打ち込んで石のようになってしまうところ(p218)など、考えさせるところもあってそれも好感を持ちました。p15のリスが食べ物のことばかり考えているというところ、もっとリスっぽい?口調、リスの動きを思い起こさせるような、いかにもリスっぽいと思えるような口調にして、もっと楽しませてほしいと思いました。フローラに人生の教えをくれるマンガ、私もほしいと読んだ子どもが思うんじゃないかな。子どもをもてなす作品だと思いました。

マリンゴ: おもしろく読みました。軽快なタッチなので、少女を取り巻く環境が実は苛酷だということを、終盤まであまり感じず、重くなりすぎずに読むことができました。哲学的な内容が随所に入りますが、主人公のお気に入りのマンガからの引用なので、子どもに難しく感じさせないのではないかと思います。リスのスペックが、「空を飛ぶこと」「タイプライターを打つこと」と、明確なのがユニーク。最後、ファンタジーの世界を閉じて、日常に戻るのかと思いきや、ファンタジー全開のままで終了したのが少し意外でした。子どもたちにとっては、想像がふくらむ楽しい終わり方なのかもしれません。

:マンガの部分は、マンガというよりも挿絵のバリエーションのように感じました。なくてもストーリーを理解できるので。p15で、おなかがすいたことをリスの気持ちでいろいろに表現しているところは、マンガ形式だからいっそうおもしろく見えますね。『はみだしインディアンのホントにホントのはなし』(シャーマン・アレクシー著 エレン・フォーニー画 さくまゆみこ訳 小学館)も思い出しました。私は、子どもが子どものロジックのまま不満を言うタイプの本があまり好きではないのですが、そういうところを差し引いても、案外楽しく読めました。フローラを受け入れられない母親がありのままの娘を受け入れるようになるという話ですね。いろいろな人が出てきますが、p217の「家に帰りたい」というスパイヴァーのセリフに主題が凝縮していて、ここで、この本がきわめて正統な児童文学であることがわかります。あと、メアリー・アンという電気スタンドも、猫をたたいておしまい、なのではなく、それで壊れることにより、母親が初めてフローラの方を向くという結果につながっているので、重要なアイテムだと思います。

ハリネズミ:ドタバタの割りには理屈っぽいところがあるな、というのが私の第一印象です。こういうのを訳すのは難しいですね。私の好みとしては、もう少しドタバタ寄りで訳してもらったほうがおもしろくなったと思います。このお母さんはタイプライターで原稿を書いてますから、舞台は現代じゃないんですね。。そういう時代に設定したのはなぜなんでしょう? このマンガのテイストは、日本の子どもとそんなに相性はよくないと思います。2回読んだんですが、私はみなさんがおっしゃっているほどおもしろいとは思いませんでした。

カピバラ:マンガを挿絵としてではなく文章のかわりに入れているのがおもしろかった。この絵のせいで現実離れした人々のように思えるけれど、実はそれぞれが深い悩みをかかえていることがわかってきます。p234の最後に、「フローラは変わってる? そうかもしれない。でも、それのどこが悪いのかな?」と書いてあり、これが作者の言いたいことなのでしょう。各章が短くて読みやすく、視点もどんどん変わって子どもを飽きさせないようにという工夫が感じられるところに好感をもちました。個性的な人物が出てきて、特にドクター・ミーシャムと巨大イカの話はおもしろかったです。リスの視点で書かれているところは楽しいから興味をもって読むのですが、リスの存在がひとりひとりにどんな影響を及ぼしているかというところまではよくわかりませんでした。私はアメリカの出版社のパーティーでこの作者に会ったことがありますが、明るくてとにかくよくしゃべる人で、小柄なのに存在感があり、いつも人に囲まれていました。人を楽しませたいというサービス精神にあふれている人だと思います。それが作品にも表れているんですね。

ルパン:物語の方向性がよくわかりませんでした。読書会で取り上げなかったら読み切れなかったかも。ニューベリー賞とあったので期待して読みはじめましたが、すぐに「どうしてニューベリー賞?」と思い始めてしまいました。最大の疑問は、やはりリスの役割です。リスを特別にしてしまう掃除機も、最初に出てきただけで、何だったんだろう、という感じだし。マンガまじりの構成も、私はあんまりなじめませんでした。挿絵だと思っていたのに、マンガのなかに重要なストーリー展開があったんですね。しばらく気づかずにマンガを飛ばして読んでいたので、途中であわてて最初に戻りました。好きな登場人物はフローラのお父さんで、印象に残ったのは電気スタンドの女の子かな。ラストは、フローラはお母さんと心が通じ合ったのに、ウィリアムは家族に見捨てられたままだったのが気になりました。目が見えないふりをするほど悲しんでいたので、もう少し救いがあってもよかったと思います。大好きなフローラと仲よくなれたのはよかったですが。ティッカムさんの家で幸せになってもらいたいと思います。

しじみ71個分:おもしろく読み、最後のリスのフローラを思う詩には涙ぐんでしまいました。傷ついたり、うまくいっていない人たちが、スーパーリスの存在でかき回され、冒険があり、事態が変わっていくという展開になっています。本文中、絶対にありえないと言い切れることはないんだよ、という趣旨のセリフがありますが、それはスーパーヒーローの空飛ぶリスでもあり、無理なように見える壊れた家族の和解をも象徴していると思いました。リスの存在が未来への希望を表わしているようで、気持ちよく読めました。ストーリーを挿絵で表しているのもとてもおもしろいですね。

さららん:表紙とタイトルでは一瞬腰が引けましたが、読み出したらおもしろかった! 不安、満足、喜び、そういった様々な感情が、「物」で具体的に象徴されていて、つじつまがあうように作られている。子どもには納得がいくお話だと思います。例えば・・・孤独の象徴としての絵の中の巨大イカ、夜中に訪れたフローラを大歓迎するおばあさんが用意するオイルサーディンのクラッカー、父さんと食べに行くドーナツなどなど。それから、リスがなぜ詩が好きなのか、最後まで疑問に思っていたのですが、最初の漫画を見たら、なんと詩集といっしょに吸い込まれていた! 絶対にありえないお話だけれど、テーマは正統派で、ところどころに詩情を感じます。リスの書く詩が、単純なドタバタコメディに奥行きを作っていて、胸がきゅんとなるところもあり、楽しめました。

マリンゴ:余談ですが、うちの実家の庭に、ここのところタイワンリスがたくさん現れます。タイワンリスは外来種で、謎のウイルスがいるかもしれないから絶対素手で触れてはいけないそうです。自治体のホームページなどでも注意喚起しています。なので、主人公のお母さんの言っていることは理にかなっている、と思いながら読みました。

エーデルワイス(メール参加):表紙や裏表紙の色やカットも素敵です。中身にもマンガを入れたり、フローラの章とリスの章とで書体を分けたりと、読みやすく工夫されていると思います。なかなか斬新だと思いました。寂しさを抱えた少女を主人公にし、ドタバタやユーモアを交えて描かれた、いかにもアメリカらしい作品ですね。日本にはちょっとなじまないように思いました。いっそ全部マンガになっていた方がすっきりしたかも。マンガは、日本のほうがずっと進んでいますね。p153の挿絵はおもしろかったです。『ホビットの冒険』『シェークスピア』『ホーキング宇宙を語る』『オルフェウスへのソネット』にまじり、『盆栽の世界』なんていうのもあり、本当に盆栽が置いてあります。世界中で盆栽はブームなのかと笑ってしまいました。この書斎は、著者ご自身の書斎がモデルになっているのでしょうか?

(2017年2月の言いたい放題)