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りんごだんだん

『りんごだんだん』表紙
『りんごだんだん』
小川忠博/写真・文
あすなろ書房
2020

『りんごだんだん』(NF写真絵本)をおすすめします。

最初は、ぴかぴかでつやつやの赤いリンゴの写真に、「りんご つるつる」という言葉がついている。その同じリンゴが、少しずつ変わっていき、しわしわになり、ぱんぱんになり、しなしなになり、ぐんにゃりとなり、やがて哀れな姿に。作者が1年近くの間リンゴを観察して記録した写真絵本。それぞれの写真には、ごく短い言葉がついているだけだが、生きているものは時間とともに否応なく変化していくこと、そして、それを糧にしてまた次の命が育っていくことなどが、リアルな写真から伝わってくる。

3歳から/リンゴ 腐敗 変化 命

 

Apple, Bit by Bit

A photo of a bright red apple appears with the text “Smooth Apple.” The same apple changes little by little over time, becoming wrinkly, swollen, soft, limp, and then bug-eaten. But is that the end? The author observed and photographed the same apple for about a year to create this picture book. Each photo has only brief words with no explanations, but the idea that all living things change, ultimately becoming nourishment for future life, comes across in the realistic photos. (Sakuma)

  • text/photos: Ogawa, Tadahiro
  • Asunaro Shobo
  • 2020
  • 36 pages
  • 20×21
  • ISBN 9784751529614
  • Age 3 +

Apple, Decay, Change, Life

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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いちねんのりんご

『いちねんのりんご』
菊地清 作・絵
冨山房
1995.09

丘の上のリンゴの木には,12色の実がなります。新しい月が来るたびに一つ実が落ちて割れ,雪だるま,お姫様へと変身します。 (日本児童図書出版協会)

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キツネとねがいごと

カトリーン・シェーラー作『キツネとねがいごと』
『キツネとねがいごと』
カトリーン・シェーラー/作 松永美穂/訳
西村書店
2017.05.24

『キツネとねがいごと』をおすすめします。

今回は哲学的な絵本を。作者は、言語障碍の子どもたちに美術を教えながら、イラストレーターとしても活躍しているスイス人のカトリーン・シェーラー。年老いたキツネ(この作者の絵本には、キツネやネズミを主人公にした作品が多い)が、朝目をさますと、鼻先にはリンゴのにおいがただよい、耳にはツグミの鳴き声が聞こえてくる。はっとして外に飛び出てみると、木に実った大事なリンゴをツグミがつついている。ウサギやネズミもやってきて、だれも年寄りキツネなど怖がらず、どんどんリンゴの実を食べてしまう。

キツネには体力も敏捷性もないものの知恵があった。罠をしかけると、イタチがかかる。なんとこのイタチは魔法が使えるというので、逃がすかわりに、リンゴの木に触れた者はみんな木にくっつくという魔法をかけてもらう。やがてリンゴの木にはだれも近づかなくなり、キツネはリンゴをひとりじめ。と、ここまでは普通の絵本なのだが、ここから先がちょっと違う。

ある日、死神がキツネを迎えにきた。ところでこの死神、キツネの顔をしている。ふーん、そりゃそうだよね。人間やウサギの顔じゃおかしいものね。で、まだ死にたくないキツネが、最後に食べたいからリンゴをとってくれと死神を木に登らせると、案の定、死神は木にくっついて降りてこられなくなる。

さあ、これでキツネは永遠に生きることができるようになった。でも、それって、ほんとに幸せなの? 死神が困った顔をするどころか、ほほえんでいるのはなぜ?

原書名には「死」という言葉が入っているから「死」がテーマではあるのだが、この絵本から受け取るものは読者の年齢によって違うかもしれない。別紙に描いたものを切り抜いてコラージュした絵は、時とともにキツネの表情が変わっていくのをうまく表現している。

(「トーハン週報」Monthly YA 2017年8月14/21日号掲載)