原題:A PUPPY IS FOR LOVING by Mary Labatt, 2007
メアリー・ラバット/作 若林千鶴/訳 むかいながまさ/絵
文研出版
2008-11
版元語録:エリザベスは、おばあちゃんの農場でコリー犬のエルシーの出産に立ち会う。ふたりは、6匹の子犬たちを愛してくれる人を探して、慎重にもらわれ先を選ぶことにした…。
たんぽぽ:子どもは犬の話が大好きなので、随分読まれています。『こいぬがうまれるよ』(ジョアンナ・コール文 ウェクスラー写真 つぼいいくみ訳 福音館書店)みたいで、生まれてくるところは、いいなぁと思ったのですが、もらわれていく先が、もう少し変化に富んでいたほうがおもしろかったかな。
セシ:私もちょっと物足りない感じ。とっつきはいいし、犬が生まれるところは興味深くて、出産を通して命のことを考えさせられますし、それと並行して、おばあちゃんが町に住みたがらないという二つめのストーリーがあるのはおもしろいんだけど、最後の終わり方がいまひとつ納得できませんでした。「おばあちゃんに必要なものは、愛するものなんだってことが。(中略)子犬は、なにより愛しいものだもの」で終わってしまうのはどうなのかなって。このおばあちゃんは、愛するものがいれば元気に暮らしていけるのかしら? 安心して読めることは読めますが、あまりにもありきたりというか、意外性のない終わり方だと思いました。もうひとひねりあったらいいのにな。
ハリネズミ:中学年向けの物語だから、あとひとひねりはなくても、ワンテーマでもいいんじゃないかな? 表紙がかわいらしくて、犬ブームに便乗して出したのかと懐疑的に読んでいったんですが、意外におもしろかったんです。作者がブリーダーをしているせいか、犬をもらってもらう苦労も描かれ、実際の体験に裏打ちされた作品なんだな、と好感が持てました。おばあちゃんとエルシーとの関係もうまく伝わってきます。最後は、6匹みんながもらわれてしまうと、読者も寂しさを感じると思うので、1匹残る設定にしたのはよかったな、と思いました。おばあちゃんもこの家に住みたいわけですから、この終わり方でいいんじゃないの?
メリーさん:個人的には、プリンセスが最後までもらわれずに残るのかな…と思って読んでいました。犬の引き取り手をさがす本は、フィクション、ノンフィクションを問わずたくさん出ています。命の大切さを伝えるという点では、子どもにこういう本は受け入れられやすいのかなと思いました。それから、ノンフィクションは残酷なところも含めて、現実を見つめるのに最適だと思いますが、安心して読めるという点では、フィクションを手渡すのもひとつの手かなと思いました。
ショコラ:学級の子ども(6年生)に紹介しました。「どこがいちばん心に残ったの?」と聞いたところ「犬の生まれるところがわかった。」と言っていました。子どもたちは知っているようで案外知らないんだなと思います。国語科「本は友だち 読書発表会」では「出産の場面が心に残りました。人を結ぶのに動物が必要なんだとわかりました。」と話していました。犬は家庭のペットとしてだけではなく、社会で活躍する・仕事をする犬がたくさんいます。また「コンパニオン・ア二マル」(伴侶動物)として生活している犬もいます。子どもたちはこの作品を通して「コンパニオン・ア二マル」を知り、人と人とのつながり・人と動物とのつながりを考えるのかなと思いました。6匹の犬の性格や特徴がていねいに書かれており、かわいい犬の表紙のおかげで、子どもたちは手に取りやすいと思います。
(「子どもの本で言いたい放題」2009年7月の記録)