ササフラス・スプリングスの七不思議

『ササフラス・スプリングスの七不思議』
原題:THE SEVEN WONDERS OF SASSAFRAS SPRINGS by Betty G. Birey, 2005
ベティ・G・バーニィ/著 清水奈緒子/訳
評論社
2009

版元語録:世界の七不思議に憧れ、海外探検を夢みる少年エベンは、父親の発案で、自分が住むちっぽけな町ササフラス・スプリングスの七不思議を探すことになった。「ばかばかしい」と思いつつも、いざ、捜索を開始してみると…。 *産経児童出版文化賞翻訳作品賞受賞

げた:表紙はわりとシンプルで、強くひきつけられるという感じはなかったんですけど、中身は読み進むにつれておもしろくなってくる。アメリカの田舎の何もないところで暮らしている男の子が、世界の七不思議を求めて旅立とうと決心して、お父さんにそのことを打ち明ける。でも、お父さんに、もっと足元を見なさいと言われ、ササフラス・スプリングスで七不思議を探し始めるんです。男の子が聞き集めた、ササフラス・スプリングスの七不思議のお話集ってわけですが、一つ一つが結構おもしろくって、楽しめましたね。特に町長さんのお話かな、オチもあって織機が犯人の名前をあてるなんてドキドキする話。お父さんの妹プリティおばさんが最後アルフおじさんと結婚することになるっていうのも、あったかい感じがしてよかったな。すごい冒険でもないんだけれど、地元の七不思議を一つ一つ探しもとめて歩いていく男の子に共感できるお話でしたね。挿絵はかわいらしくてシンプルだけど、お話を想像する手助けになっていいかな。

メリーさん:おもしろく読みました。最近、自分の友人がまた別の知人の知り合いということが続いたので、世界は意外と狭くて皆どこかでつながっているのだなと感じたことを思い出しました。主人公は身のまわりの七不思議を探しますが、きっとどこかで世界につながっているのだろうなと。日本で「七不思議」というと、学校の怪談が真っ先に思い出されるだろうけれど、ここではいわゆる世界の大事件というのがおもしろいと思いました。七つの中ではアルフおじさんのくだりが好きです。彫像は、過去を表すとともに、現在や未来も表している。結局人間はずっと同じことを繰り返しているのかなと感じさせて。「ササフラス」がルートビアの原料ということがちょっと出てきましたが、アメリカらしくていいなと思いました。

レン:私もおもしろく読みました。冒険というとどこか遠く危険なところにのりだしていかなきゃいけないみたいだけど、何でもない日常に七つも不思議があるところがよかったです。そして不思議の発見が、さまざまな人の隠れた一面、隠れた人生を見せてくれる。自分のまわりの人たちにも、いろんな人生があることを示唆してくれるのでは? また書き方にユーモアがあるところもよかった。ユーモアの感覚がいろんなところで救いになりクッションになっていますね。ただ、装丁はちょっと残念。年齢層を考えると背の文字もおとなしすぎるし、色も地味な気がします。

たんぽぽ:私も、表紙が地味かなって思いました。もう少し違う感じだと、もっと子どもが手に取るかな。七不思議の一つ一つが、あとから振り返ってみても、おもしろかったです。トイレが飛んでいくおまけ話?も、よかった。読んだおとなも子どもも、身近なところにある七不思議を探してみたい、振り返ってみたいと思うのではないでしょうか。

ハマグリ:主人公が七不思議を探していく、という枠の中にいろいろな話が出てくるというつくりの本で、一つ一つの話がおもしろいから、それぞれ話の中にすっと入っていって楽しめました。一見ごく普通のおばさんやおじさんにも、いろんな人生、ドラマがあるんだということが、だんだん見えてくるっていうのもおもしろかったです。ただ、どんな子にも読みやすい、というのではなく、それぞれの会話の中からいろいろ読みとっていける、ある程度読書力のある子に薦めたいですね。

ひいらぎ:私も、派手ではないけれど、味わいがあっておもしろいなって思いました。ほんとになんにもない、一見つまらなそうに見える地域なんだけど、そんな場所でもよくみるといろいろなお話が存在している。そこがいいですね。ただ最初忙しいときに読んだら、人の名前がごっちゃになって混乱してしまいました。挿絵は、以前とりあげた『ラッキー・トリンブルのサバイバルな毎日』(スーザン・パトロン/著 片岡しのぶ/訳 あすなろ書房)と同じ人ですよね。もっと小さい子でも手にとりやすい雰囲気が表紙にあるといいのにね。

うさこ:おもしろく読みました。小さい頃って、根拠もなしに知らない土地や時間に憧れて、そこにワクワクやドキドキがあると思いがち。このお話は、お父さんとおばさんの上手な導きによって主人公エベンが自分の住んでいる身近なところで七不思議を探すっていう設定がとてもいいですね。案外、知ったつもりでも、自分の住んでいるところって知らないことが多い。そのくせ、よくないところばっかり目についたり。でも、エベンは遠くへは行かずに、地元で小さな目覚めの旅をする。エベンは近視眼的なものの見方や自分の狭い考えを少しだけ乗り越えたのかもしれない。乗り越えるっていうと大きなショッキングな出来事があってというのが多いけど、そうじゃないところで構成しているのがこの物語のすばらしいところ。七不思議もありきたりな話じゃなくて、一つ一つ語ってくれる人の人生が垣間見えて、しかもそれぞれにロマンがあっていいな。日本だと何か解決しようというときタテ社会、とりわけ家族間や家庭の中が多いですけど、このお話はヨコ社会のつながりのなかで解決に向かっていく展開もいい。装丁がちょっともったいないですよね。わりと地味目。読者がスムーズに手にとってくれるでしょうか? タイトルもササフラス・スプリングスというのが場所の名前だと気づきにくいし、しかも長くて覚えにくくて、ドキドキもなくて残念。

ダンテス:この本は、まあまあおもしろく読んだって感じです。描写がていねいですね。そういう意味では、ひと時代前の作品という印象です。少年の目を通して七不思議を探すというのをきっかけに、自分の町をよく知っていく。七つのそれぞれが短編というか、短いけどストーリーもあります。七つに出会うまでの困難も書いてあって、作品としてはよく書けているかなと思います。

すあま:『シカゴよりこわい町』(リチャード・ペック/著 斎藤倫子/訳 東京創元社)のような、ちょっと昔のアメリカの話が好きなので、おもしろかった。短編集のようで、最後にちゃんとオチがついていて。でも装丁が地味なので、大丈夫なのかと心配になります。題名もおぼえにくいので、本屋で店員に聞こうにもぱっと言えないですよね。

ダンテス:アメリカだと、ここの土地、我がコミュニティっていうのがあるんでしょうね。だから具体的な地名を作品の題に入れる。

ハマグリ:そういう地方色を売りにしているようなものってありますよね。『ラッキー・トリンブルのサバイバルな毎日』にも、アメリカの、その土地独特の感じがありましたよね。

(「子どもの本で言いたい放題」2010年5月の記録)

ササフラス・スプリングスの七不思議

『ササフラス・スプリングスの七不思議』
原題:THE SEVEN WONDERS OF SASSAFRAS SPRINGS by Betty G. Birey, 2005
ベティ・G・バーニィ/著 清水奈緒子/訳
評論社
2009

げた:表紙はわりとシンプルで、強くひきつけられるという感じはなかったんですけど、中身は読み進むにつれておもしろくなってくる。アメリカの田舎の何もないところで暮らしている男の子が、世界の七不思議を求めて旅立とうと決心して、お父さんにそのことを打ち明ける。でも、お父さんに、もっと足元を見なさいと言われ、ササフラス・スプリングスで七不思議を探し始めるんです。男の子が聞き集めた、ササフラス・スプリングスの七不思議のお話集ってわけですが、一つ一つが結構おもしろくって、楽しめましたね。特に町長さんのお話かな、オチもあって織機が犯人の名前をあてるなんてドキドキする話。お父さんの妹プリティおばさんが最後アルフおじさんと結婚することになるっていうのも、あったかい感じがしてよかったな。すごい冒険でもないんだけれど、地元の七不思議を一つ一つ探しもとめて歩いていく男の子に共感できるお話でしたね。挿絵はかわいらしくてシンプルだけど、お話を想像する手助けになっていいかな。

メリーさん:おもしろく読みました。最近、自分の友人がまた別の知人の知り合いということが続いたので、世界は意外と狭くて皆どこかでつながっているのだなと感じたことを思い出しました。主人公は身のまわりの七不思議を探しますが、きっとどこかで世界につながっているのだろうなと。日本で「七不思議」というと、学校の怪談が真っ先に思い出されるだろうけれど、ここではいわゆる世界の大事件というのがおもしろいと思いました。七つの中ではアルフおじさんのくだりが好きです。彫像は、過去を表すとともに、現在や未来も表している。結局人間はずっと同じことを繰り返しているのかなと感じさせて。「ササフラス」がルートビアの原料ということがちょっと出てきましたが、アメリカらしくていいなと思いました。

レン:私もおもしろく読みました。冒険というとどこか遠く危険なところにのりだしていかなきゃいけないみたいだけど、何でもない日常に七つも不思議があるところがよかったです。そして不思議の発見が、さまざまな人の隠れた一面、隠れた人生を見せてくれる。自分のまわりの人たちにも、いろんな人生があることを示唆してくれるのでは? また書き方にユーモアがあるところもよかった。ユーモアの感覚がいろんなところで救いになりクッションになっていますね。ただ、装丁はちょっと残念。年齢層を考えると背の文字もおとなしすぎるし、色も地味な気がします。

たんぽぽ:私も、表紙が地味かなって思いました。もう少し違う感じだと、もっと子どもが手に取るかな。七不思議の一つ一つが、あとから振り返ってみても、おもしろかったです。トイレが飛んでいくおまけ話?も、よかった。読んだおとなも子どもも、身近なところにある七不思議を探してみたい、振り返ってみたいと思うのではないでしょうか。

ハマグリ:主人公が七不思議を探していく、という枠の中にいろいろな話が出てくるというつくりの本で、一つ一つの話がおもしろいから、それぞれ話の中にすっと入っていって楽しめました。一見ごく普通のおばさんやおじさんにも、いろんな人生、ドラマがあるんだということが、だんだん見えてくるっていうのもおもしろかったです。ただ、どんな子にも読みやすい、というのではなく、それぞれの会話の中からいろいろ読みとっていける、ある程度読書力のある子に薦めたいですね。

ひいらぎ:私も、派手ではないけれど、味わいがあっておもしろいなって思いました。ほんとになんにもない、一見つまらなそうに見える地域なんだけど、そんな場所でもよくみるといろいろなお話が存在している。そこがいいですね。ただ最初忙しいときに読んだら、人の名前がごっちゃになって混乱してしまいました。挿絵は、以前とりあげた『ラッキー・トリンブルのサバイバルな毎日』(スーザン・パトロン/著 片岡しのぶ/訳 あすなろ書房)と同じ人ですよね。もっと小さい子でも手にとりやすい雰囲気が表紙にあるといいのにね。

うさこ:おもしろく読みました。小さい頃って、根拠もなしに知らない土地や時間に憧れて、そこにワクワクやドキドキがあると思いがち。このお話は、お父さんとおばさんの上手な導きによって主人公エベンが自分の住んでいる身近なところで七不思議を探すっていう設定がとてもいいですね。案外、知ったつもりでも、自分の住んでいるところって知らないことが多い。そのくせ、よくないところばっかり目についたり。でも、エベンは遠くへは行かずに、地元で小さな目覚めの旅をする。エベンは近視眼的なものの見方や自分の狭い考えを少しだけ乗り越えたのかもしれない。乗り越えるっていうと大きなショッキングな出来事があってというのが多いけど、そうじゃないところで構成しているのがこの物語のすばらしいところ。七不思議もありきたりな話じゃなくて、一つ一つ語ってくれる人の人生が垣間見えて、しかもそれぞれにロマンがあっていいな。日本だと何か解決しようというときタテ社会、とりわけ家族間や家庭の中が多いですけど、このお話はヨコ社会のつながりのなかで解決に向かっていく展開もいい。装丁がちょっともったいないですよね。わりと地味目。読者がスムーズに手にとってくれるでしょうか? タイトルもササフラス・スプリングスというのが場所の名前だと気づきにくいし、しかも長くて覚えにくくて、ドキドキもなくて残念。

ダンテス:この本は、まあまあおもしろく読んだって感じです。描写がていねいですね。そういう意味では、ひと時代前の作品という印象です。少年の目を通して七不思議を探すというのをきっかけに、自分の町をよく知っていく。七つのそれぞれが短編というか、短いけどストーリーもあります。七つに出会うまでの困難も書いてあって、作品としてはよく書けているかなと思います。

すあま:『シカゴよりこわい町』(リチャード・ペック/著 斎藤倫子/訳 東京創元社)のような、ちょっと昔のアメリカの話が好きなので、おもしろかった。短編集のようで、最後にちゃんとオチがついていて。でも装丁が地味なので、大丈夫なのかと心配になります。題名もおぼえにくいので、本屋で店員に聞こうにもぱっと言えないですよね。

ダンテス:アメリカだと、ここの土地、我がコミュニティっていうのがあるんでしょうね。だから具体的な地名を作品の題に入れる。

ハマグリ:そういう地方色を売りにしているようなものってありますよね。『ラッキー・トリンブルのサバイバルな毎日』にも、アメリカの、その土地独特の感じがありましたよね。

(「子どもの本で言いたい放題」2010年5月の記録)