12分の1の冒険

『12分の1の冒険』
原題:THE SIXTY EIGHT ROOMS by Marianne Malone, 2010
マリアン マローン/作 橋本 恵/訳 佐竹美保/挿絵
ほるぷ出版
2010

版元語録:アメリカのシカゴ美術館には、子どもにも大人にも大人気の展示がある。実物の12分の1の大きさで作られた、68部屋のソーン・ミニチュアルームだ。細部まで完ぺきに再現された豪華なミニチュアルームにあこがれるルーシーとジャックは、その中へ入っていける魔法の鍵を手に入れ、思いがけない冒険をすることに…。

プルメリア:図書館で見つけてタイトルがおもしろかったのですぐ読みました。学級の子ども(小学校5年生)にすすめましたが、なかなか読めないようでした。ちょっと読みにくい部分があるのかなって思いました。2冊とも私が読んでから少し時間がたっているのであまりよく覚えていない部分がありますが、鍵がキーワード、体が小さくなること、その時代の社会・生活様式がわかること、トマスが発明家になることなどがおもしろかったです。また、おばあさんの設定が謎めいていました。2巻は、残念ながら1巻に比べて出来事や人物などあまり心に残っていません。

ルパン:翻訳が読みにくかったですね。読みごこちの悪さを感じながら、最後までいってしまいました。ルーマー・ゴッデンの『人形の家』が好きだったから期待したんですけど、これは全然ちがいましたね。正直、おもしろくなかったです。続編もいっしょに借りたんですけど、結局読みませんでした。

ハリネズミ:これも、ずいぶんとご都合主義的なストーリーのつくり方ですね。最初にミニチュアルームの裏に入るときには、たまたまドアがちゃんと閉まっていなかったのだし、2度目に入るときも、たまたまベビーカーの子どもが鼻血を出して警備員がその場を外してしまう。また夜になると美術館の照明は消えるのにミニチュアルームだけはついてるんですよね。p324では、警備員が錠に鍵を差し込んでロックされてるかどうか調べてるみたいですが(誤訳でなければ)、普通はそんなことしないですよね。それから、この子たちがミニチュアルームにあった鍵や本を勝手に持ってきてしまったり、ミスター・ベルの鍵をひそかに持ち出したりするんですけど、あまり気分はよくないですね、目的のためには手段を選ばず、っていうところが。それと、タイムスリップして出会う人たちの個性が立ち上がってこない。ぼんやりとした印象しか持てません。ゴキブリが声を上げるのも、どうなんでしょう。
翻訳もいくつか引っかかるところがありました。たとえばp6に「クレアは卒業を一年後にひかえた高校生で」とありますが、p8では「お姉ちゃんが大学に進学するまで、あと六百三十五日」となっています。p15には「母親のスタジオ」とありますが、画家なんだからアトリエくらいにしないと。またミスター・ベルについてですけど、p20では「美術館の警備員」だけど、p21では「この階の責任者として、ミニチュアルームのメンテナンスを担当している」となっています。警備員は普通メンテナンスを担当しないので、もっと別の訳語にしたほうがいい。p24の「しゃべりこんでいて」とか、p120の「このガラス窓は“フランス戸”も兼ねていて」も変です。p335の「なんて、願うわけにはいかない」は、どうしてそうはいかないのかが、わからない。それと、日本からのおみやげでもらったお弁当箱を日本のミニチュアルームの応接間においてぴったりだ、というところも、日本人が読むとおかしいですよね。
子どもたちがミニチュアの世界で冒険して時間を超えるという設定はとてもおもしろいのですから、子どもには本物をあたえようと思って、もっとしっかり作り、もっとしっかり訳してほしいと思いました。せっかくの素材がうまく活かされていないもどかしさがあります。

レジーナ:p158の戦闘シーンをはじめ、時代の描写が平面的です。タイムトラベルを扱った物語のおもしろさは、そこに生きていた人びとを生き生きと描くことにあると思うので……。ミニチュアルームにつながる扉がどこにあるのか、はっきりイメージできないのは、原文か翻訳に問題があるのでしょう。翻訳についてですが、p113の「その本を書いた人や、所有していた人たちと、いま、会話している……本気でそう信じるんだ」は、「本気でそう思えるんだ」ということでしょうか。p37の「興味、あるもん!」をはじめ、この年代の子どもの言葉づかいとしては、不自然な箇所がありました。

(「子どもの本で言いたい放題」2013年6月の記録)

12分の1の冒険

『12分の1の冒険』
原題:THE SIXTY EIGHT ROOMS by Marianne Malone, 2010
マリアン マローン/作 橋本 恵/訳 佐竹美保/挿絵
ほるぷ出版
2010

プルメリア:図書館で見つけてタイトルがおもしろかったのですぐ読みました。学級の子ども(小学校5年生)にすすめましたが、なかなか読めないようでした。ちょっと読みにくい部分があるのかなって思いました。2冊とも私が読んでから少し時間がたっているのであまりよく覚えていない部分がありますが、鍵がキーワード、体が小さくなること、その時代の社会・生活様式がわかること、トマスが発明家になることなどがおもしろかったです。また、おばあさんの設定が謎めいていました。2巻は、残念ながら1巻に比べて出来事や人物などあまり心に残っていません。

ルパン:翻訳が読みにくかったですね。読みごこちの悪さを感じながら、最後までいってしまいました。ルーマー・ゴッデンの『人形の家』が好きだったから期待したんですけど、これは全然ちがいましたね。正直、おもしろくなかったです。続編もいっしょに借りたんですけど、結局読みませんでした。

ハリネズミ:これも、ずいぶんとご都合主義的なストーリーのつくり方ですね。最初にミニチュアルームの裏に入るときには、たまたまドアがちゃんと閉まっていなかったのだし、2度目に入るときも、たまたまベビーカーの子どもが鼻血を出して警備員がその場を外してしまう。また夜になると美術館の照明は消えるのにミニチュアルームだけはついてるんですよね。p324では、警備員が錠に鍵を差し込んでロックされてるかどうか調べてるみたいですが(誤訳でなければ)、普通はそんなことしないですよね。それから、この子たちがミニチュアルームにあった鍵や本を勝手に持ってきてしまったり、ミスター・ベルの鍵をひそかに持ち出したりするんですけど、あまり気分はよくないですね、目的のためには手段を選ばず、っていうところが。それと、タイムスリップして出会う人たちの個性が立ち上がってこない。ぼんやりとした印象しか持てません。ゴキブリが声を上げるのも、どうなんでしょう。
翻訳もいくつか引っかかるところがありました。たとえばp6に「クレアは卒業を一年後にひかえた高校生で」とありますが、p8では「お姉ちゃんが大学に進学するまで、あと六百三十五日」となっています。p15には「母親のスタジオ」とありますが、画家なんだからアトリエくらいにしないと。またミスター・ベルについてですけど、p20では「美術館の警備員」だけど、p21では「この階の責任者として、ミニチュアルームのメンテナンスを担当している」となっています。警備員は普通メンテナンスを担当しないので、もっと別の訳語にしたほうがいい。p24の「しゃべりこんでいて」とか、p120の「このガラス窓は“フランス戸”も兼ねていて」も変です。p335の「なんて、願うわけにはいかない」は、どうしてそうはいかないのかが、わからない。それと、日本からのおみやげでもらったお弁当箱を日本のミニチュアルームの応接間においてぴったりだ、というところも、日本人が読むとおかしいですよね。
子どもたちがミニチュアの世界で冒険して時間を超えるという設定はとてもおもしろいのですから、子どもには本物をあたえようと思って、もっとしっかり作り、もっとしっかり訳してほしいと思いました。せっかくの素材がうまく活かされていないもどかしさがあります。

レジーナ:p158の戦闘シーンをはじめ、時代の描写が平面的です。タイムトラベルを扱った物語のおもしろさは、そこに生きていた人びとを生き生きと描くことにあると思うので……。ミニチュアルームにつながる扉がどこにあるのか、はっきりイメージできないのは、原文か翻訳に問題があるのでしょう。翻訳についてですが、p113の「その本を書いた人や、所有していた人たちと、いま、会話している……本気でそう信じるんだ」は、「本気でそう思えるんだ」ということでしょうか。p37の「興味、あるもん!」をはじめ、この年代の子どもの言葉づかいとしては、不自然な箇所がありました。

(「子どもの本で言いたい放題」2013年6月の記録)