『ジャコのお菓子な学校』
ラッシェル・オスファテール/著 ダニエル遠藤みのり/訳 風川恭子/挿絵
文研出版
2012.12

プルメリア:3.4年生の課題図書ですが、本を読んで自分が理解していくという喜びは3・4年生にはわかりにくいのではないでしょうか。この作品を5年生に紹介したところ、図書館で本を読んで実際にお菓子を作ってみる過程の楽しさや学習を習得していくことが理解できました。発達段階の違いが出ています。おおらかなおじいさんの登場はどの場面もおもしろかったです。紹介されているお菓子の名前やクッキーのレシピはちょっとむずかしいかな。字も小さいので高学年向けの方がよかったのではないでしょうか。

レジーナ:はじめ、主人公は学習障がいなのかと思いました。

プルメリア:こういう子はいます。なんとなくぎこちない子たちは実際にいます。

メリーさん:自分の好きなことで読み書きや算数を自然に学んでいくというところはいいなと思いました。それから、ミルフィーユが千枚の紙という意味だとか、ババロワが地名だというような豆知識。訳文も一生懸命だじゃれを日本語にしているということがわかって面白かったです。ただ、こういうことは子どもが全部ひとりでできるのかなと思いました。母親が全く出てこなくて、電話でおじいちゃんのアドバイス、というのはリアリティーがないような。中学生のギャングたちをコショウで撃退するところも同じです。正反対の性格を持つ友だちのミシューとシャルロットも、どうして主人公と仲良くなったのか、書き込んでもらえるともっとよかったと思いました。

レジーナ:あまりにも簡単に、問題が解決していきます。子どもの時、通信教育の勧誘のパンフレットに、「何かのきっかけで急に勉強ができるようになる」という内容の漫画がよく載っていたのを思い出します。訳文が少しぎこちなく、「〜」を多用しているのも気になります。かわいらしいイラストは、子どもは好きなのかもしれませんが、お菓子が、もう少しおいしそうに見えればよかったです。

アカザ:チョコチップクッキーが肉団子みたい。

レジーナ:タイトルを直訳すると「お菓子の学校」ですが、なぜ、あえて「お菓子な学校」としたのでしょうか。「おかしい」「面白い」という意味をこめたかったのかもしれませんが、それも不自然ですし……。

アカザ:するすると楽しく読めて、訳者も一所懸命、原文に取りくんでいるなと思いました。数多いだじゃれの訳など、ご苦労様といいたいくらいです。ただ、ファンタジーだと翻訳物でも自分の世界とまったく違ったものとして読みますが、こういう日常生活を扱ったものは小学生には理解するのが難しいだろうなと思いました。台所の道具のひとつひとつ、お菓子の材料のあれこれも、日本とは違いますものね。対象年齢は中学年ではなく、もう少し上だと思います。これも、作者の意図が透けて見える作品で、最初にアイデアありきという感じ。読んでいるあいだじゅう、この作者は頭で書いていて、心で書いていないという感じがつきまとっていました。教訓的というか、大人の目線で書いている。子どもがどんな感想文を書くのか、読む前にわかってしまうような作品ですね。

ルパン:私は結局読めなかったんですが、今みなさんのお話を聞いていて、『ビーチャと学校友だち』を連想したんですけど……そういう話とは違うんですか?

プルメリア:「ビーチャと学校ともだち」とは、全く違うような気がします。

ハリネズミ:勉強の嫌いな子が、興味あることに夢中になるうちに、いろいろな知識を身につけていく、というストーリーは、大人には魅力的ですよね。でも、結局「勉強しなさいと言いたい」という意図が透けて見えてしまうと、どうなんでしょう? この作品は、そのぎりぎりのところでよくできているのかもしれません。5章のところで、卵の殻もくだいてクッキーに入れちゃってますが、できあがりがどうだったのか書いてないので心配です。

ajian:これも作者の意図は透けて見えるし、ひとりでオーブンまで使って危ないなとは思うけれど、読んだ子どもが、自分でもやってみたくなるんじゃないかなと思いました。子どもの頃に読んだ本で『うわさのズッコケ株式会社』(那須正幹著 ポプラ社)がとても好きだったんですが、自分で計算して利益を出してまた次の材料を買って・・・というあたりが似ているように思います。あと中学生が邪魔をしにくる場面。うまくいきかけていると邪魔が入るというのは一つのセオリーですが、上級生たちにめちゃくちゃにやられて悔しいというのは、自分にもそういうことがあったなあと。

(「子どもの本で言いたい放題」2013年10月の記録)