日付 2019年1月18日
参加者 アカシア、鏡文字、カピバラ、ケロリン、西山、ネズミ、マリンゴ、ルパン、レジーナ、(エーデルワイス)
テーマ 子どもにとって、心のよりどころとは・・・

読んだ本:

佐和みずえ『拝啓、お母さん』
『拝啓、お母さん』
佐和みずえ/作 かんべあやこ/挿絵
フレーベル館
2017.07

<版元語録>お母さんにひどい言葉を投げつけたまま、ひとりやってきた九州のじいじの家。そこは、昔ながらの活版印刷所「文海堂」。数えきれないほどの活字の海のなかで、ゆなのわすれられない夏休みがはじまります。
ケイリー・ジョージ『ねずみのモナと秘密のドア』
『ねずみのモナと秘密のドア』 ハートウッドホテル 1

原題:HEARTWOOD HOTEL: A TRUE HOME by Kallie George, 2017
ケイリー・ジョージ/作 久保陽子/訳 高橋和枝/挿絵
童心社
2018.10

<版元語録>親も家もなくしたねずみのモナは、ずっとひとりでくらしてきました。ある嵐の日、森をさまよいたどりついたのは、評判のすてきなホテル。そこでメイドとして働かせてもらうことになったモナですが、メイド長のリスはなぜかモナに冷たくあたります。とまりにくるお客さんも、それぞれ事情や秘密があるようで……。ホテルの生活はトラブル続きですが、モナは信頼と友情をきずき、自分の本当のわが家をみつけます。
ベッツィ・バイアーズ『トルネード!』
『トルネード!〜たつまきとともに来た犬』
原題:TORNADO by Betsy C. Bears, 1996
ベッツィ・バイアーズ/作 もりうちすみこ/訳 降矢なな/挿絵
学研教育出版
2015.05

<版元語録>すさまじい竜巻が、村に近づいてくる。地下室に避難した子どもたち。不安な気持ちでおびえる子どもたちに、むかしむかしにあった、ふしぎな話をすることになる。それは、竜巻とともにやってきた、一匹の犬の話だった。


拝啓、お母さん

佐和みずえ『拝啓、お母さん』
『拝啓、お母さん』
佐和みずえ/作 かんべあやこ/挿絵
フレーベル館
2017.07

<版元語録>お母さんにひどい言葉を投げつけたまま、ひとりやってきた九州のじいじの家。そこは、昔ながらの活版印刷所「文海堂」。数えきれないほどの活字の海のなかで、ゆなのわすれられない夏休みがはじまります。

鏡文字:この作者の『パオズになったおひなさま』(くもん出版)には問題が多いと思っていたので、それよりはよかったかな、とは思いました。ただ、活版印刷ということを除けば、ありがちの話のようにも感じました。その活版印刷のことがどのくらいわかって書いているのかはちょっと疑問で、仕事の様子が今一つ伝わってきませんでした。活版印刷の工程を縷々説明していますが、抜けている作業があります。家内工業の印刷屋さんなのに、1日じゅう、がっちゃんがっちゃんと印刷機の音がずっとするというのも不自然。それから、活字を投げるところ、気になりました。そんなことしますか? あれは、活字を大切に扱わなくては、と告げるために無理に作ったシーンだな、と。ということで、決められた筋に則って引っ張っていくという感じがして、私はあまり楽しめませんでした。活版印刷をはさみこむなのど、本作りの工夫は感じたんですけどね。

レジーナ:活版印刷や職場体験など、テーマありきの印象をうけました。p28で「妹なんかいらない」と言ったゆなに、お父さんは、「そんなことしかいえないのか、なさけない!」と言いますが、やりとりが紋切型で、血肉のかよった登場人物には感じられませんでした。

ネズミ:私はそれほど批判的には読みませんでした。小学校中学年くらいに親しみやすい本だなと。ゆなが、思っていることをうまく表現できず、行ったり来たりする感じ、はりきっているのに空回りしてしまう感じがよく伝わってきて、小学生は共感をおぼえるのではないでしょうか。実際にお手紙がはさみこんであるのもいいなあと思いました。ただ、感情を表現した部分で、しっくりこないところがありました。p65「六年生のお兄さんとお姉さんが、まぶしくてたまりませんでした」は、そのあとに説明的な文で補足してあるので、どこかとってつけたような感じがしましたし、p70の「ぱあっと顔を赤らめて」の「ぱあっと」も、わかるようでわからない。個人の語感の問題かもしれませんが、そういう、ちょっとひっかかるところが、ちらほらとはありました。でも、全体としてはいい作品だと思いました。

西山:私は冒頭からひっかかってしまったんですよねぇ。「暑い……」とあるから、空港の建物から外に出たと思っていたのに、通路のガラス窓に飛行機の翼と夕焼け空が広がっているというし、「通路は冷房がきいていますが」と続くので、今どこにいるの?! となってしまった。出だしからひっかかったせいか、九州のラーメン=とんこつなので、わざわざ看板に「とんこつラーメン」とは書かないだろうとか(大分県は違うのかもしれませんが、未調査)、小さなことまでちょこちょこひっかかってしまいました。内容的に抵抗を感じるのは、お父さんやお母さんのあり方です。子どもに相談もなく祖父母の所へ行かせるのは、この作品に限らずよく見かけます。だから常々感じているのですが、児童文学も、子どもの権利にめざめてほしい。子どもを困難に直面させるための設定として人を動かしているように見えると楽しめません。せっかく中学年向きに、ていねいな本作りをしているのに、人間の描き方がていねいじゃないと感じました。

ネズミ:祖父母の家に行くのは、別に無理やりじゃなくてもいいかもしれませんよね。

西山:孫がいるのに、何年も行き来していないなんて、よほどの確執があるのかと思いましたよ。帰省が経済的に厳しい家とは思えませんから。なにしろ、お父さんは自らゆなを大分空港に送ってとんぼ返りするのですから。子どものひとり旅サービスを使うでもなく。

ケロリン:うーん、違和感はあるものの、描ききれていないということについては、ちょっと反論。小学校中学年向きの本は書くのも選ぶのも難しいと言われます。テーマもそうですが、文章量の問題もありますね。何を書いて何を書かないか、高学年向けの本よりも気を使うところかもしれません。お父さんやお母さんの描き方は、祖父母との関係に軸足を置くために、ここまでしか書かなかったということなんでしょうね。でも、お父さんが、最初はゆなとがんばろうとするけれど、やっぱり危険だと感じていくところは、けっしてゆなを責めるのではなく、自分へのいらだちも含めて、とてもわかりやすいシーンとして描かれていると思いました。とんこつラーメンは最後のシーンの伏線ですね。活版についてもどこまで書くかですが、このあたりでちょうどいいんじゃないでしょうか。よくある祖父母のもとに行って成長する話かと思いきや、ステロタイプの流れではなく、おばあちゃんが自分の人生のなかで後悔をしていることを話したりするところや、後悔を「穴ぼこ」と表現するところなどは、おもしろいと思って読みました。

マリンゴ: 冒頭を読んだ時点では、古いタイプの物語なのかなと思いました。お母さんの出産前に、よそに預けられる。行った先には、とてもやさしげなおじいちゃん、おばあちゃん。ちょっとステレオタイプかな、と。でも、そこから活版印刷の話に集約されていくので、そっちか!と興味深く読みました。作者の、活字に対する愛情が伝わってきました。おじいちゃんの後悔、おばあちゃんの後悔に、ゆなの後悔を重ねる、という描き方がとてもいいと思います。読んでいる子どもにとって、わかりやすい。何か後悔していることがある子は、ここに自分を重ねられるのではないでしょうか。

カピバラ:活版印刷のよさを伝えたい、という熱い思いからつくった本ですね。職人さんの心意気や手仕事のすばらしさはよく伝わってくるんですが、物語の設定はそれを説明するために作ったという感じがします。中学年向きだからとはいえ、描写が説明的なのが気になりました。さっきも出てきたp65の「……ゆなには、六年生のお兄さんとお姉さんが、まぶしくてたまりませんでした」ですが、お兄さん、お姉さんらしさをもっと仕草や素振りで伝えていれば、「まぶしい」と言わなくても、ゆなが「まぶしい」と思う気持ちが読者にも感じられる。そういう残念なところがすごく多いと思いました。また私も冒頭は読みにくかったです。読者は最初からゆなの目線で読みはじめるのに、p4に、「遠い九州までつれてこられたという緊張もあってか、ゆなのせなかは、汗でじっとりとしめっています」というナレーター目線の描写が出てくるのは違和感がありました。ノンフィクションではないので活版印刷のしくみはそんなにくわしく書かなくてもいいと思いますが、p72、p73の図解はわかりにくいです。印刷機がどうなっているのか、よくわかりませんでした。実際に活版印刷をした紙をはさんでいるのは、よかったと思います。最後に親子3人で赤ちゃんの名前の活字を拾う部分、ゆなが「あった!」と声をあげるのですが、一体どの活字だったのか、どんな名前なのか書いてほしかった。なんとなく美しげに終わらせているけど、不満が残る終わり方でした。それと、表紙の絵はどう見ても幼稚園児にしか見えず、心理描写も4年生にしては幼すぎるように思いました。

アカシア:今カピバラさんがおっしゃった夢の部分ですが、私もひっかかりました。「三人は目をこらして、文字の海を見つめています。/『あった!』/ゆなが声をあげました。/そして、うまれたばかりの赤ちゃんの名前の活字を、そっと拾いあげたのです」ってあるんですね。ここまで具体的な行為を書くのなら、やっぱりなんの字を拾いあげたのかを読者は知りたくなります。まだ赤ちゃんは生まれていませんが、それならゆなは、こういう名前がいいと思ったくらいのことは書いておかないと、この文章が宙に浮いてしまうように感じました。それから西山さんと同じように、冒頭の「暑い」と繰り返されるところですが、機体の中や空港は時として寒いと感じるくらい空調がきいてますよね。普通は空港から外へ出たときに暑さをはじめて感じるので、私も違和感がありました。私がいちばん気になったのは、あとがきの「言葉は、ときに人の心につきささるトゲとなることもあります。どうしてでしょうか。それは、真剣に言葉を選んでいないからかもしれません」という文章でした。ゆながお母さんに、「妹なんていらない」と言ってしまったことに対してこの文章が向けられているとしたら、とても残酷だなあと思ったんです。子どもは、自分より力がある存在に対して、トゲのような言葉をぶつけるしかないこともあるじゃないですか。それを「真剣に言葉を選んでいない」なんてお説教されても、子どもの心はすくいとることができないんじゃないでしょうか。活版印刷については、その魅力が伝わってくると思いました。私は、活版印刷はもうなくなったと聞いていたので、この本をきっかけに調べてみて、まだあちこちに残っているのがわかったのは収穫でした。活版で印刷したハガキがはさみこまれているのもいいなあ、と思いました。でも、これって、実際のハガキサイズの紙じゃ小さすぎてだめだったんでしょうか? 技術的に難しいのかな? あと「拝啓」ってずいぶん固い言葉ですが、手紙はこの言葉で始めるって学校で習うのかしら?

鏡文字:この作者は一卵性双生児だそうですが、二人で書いているので、決められた設定ありきになってしまうんでしょうか。

アカシア:物語が自然に生まれてきて、登場人物が動き出すというより、最初からきっちり流れを決めておいたうえで、分担して書いていくんですね?

マリンゴ:コンビで1つの作品を書かれるといえば、たとえば岡嶋二人さんもそうでしたね。

ルパン(みんなが言い終わってから参加):なにかの職業について調べて書く話としては、よくできていると思いました。が、主人公の葛藤や後悔が活版印刷とどう結びついているのか,私にはよくわかりませんでした。おじいちゃんが昔ながらのやり方にこだわっている理由もはっきりわからなかったし。ゆなが職人の手作業を見ることによって成長をとげる物語であるのなら、おじいちゃんの技術もほかの人にはできない特別なものでなくてはならないと思うし、ゆなの気持ちを変えるきっかけも活版印刷でなければ成り立たないものでないと、読者の共感が得られないと思いました。文字が反転することとか、紙に凹凸ができることとか、手で文字を組むこととか、活版印刷ならではのものがストーリーのカギになって何かが起こることを期待して読んでいたので、最後は拍子抜けでした。これならべつに活版印刷でなくてもいい話ではないかと思ってしまいました。ただ、ゆなが作った活版印刷の紙がはさまれているのはいいと思いました。これを読んだ子はきっとさわってみるでしょうし、図書館で古い本に出会ったときに活版の手ざわりを確かめるようになるかもしれません。

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エーデルワイス(メール参加):素直に読めました。挿絵がかわいすぎて、文章と合ってないような気がします。印象が深刻にならないように敢えてそうしたのでしょうか? 活版印刷にスポットを充てたのが新鮮でした。結菜の葉書が、活版印刷とはっきりわかるとよかったのに。私には違いがよく分かりませんでした。

(2019年1月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)

 


ねずみのモナと秘密のドア

ケイリー・ジョージ『ねずみのモナと秘密のドア』
『ねずみのモナと秘密のドア』 ハートウッドホテル 1

原題:HEARTWOOD HOTEL: A TRUE HOME by Kallie George, 2017
ケイリー・ジョージ/作 久保陽子/訳 高橋和枝/挿絵
童心社
2018.10

<版元語録>親も家もなくしたねずみのモナは、ずっとひとりでくらしてきました。ある嵐の日、森をさまよいたどりついたのは、評判のすてきなホテル。そこでメイドとして働かせてもらうことになったモナですが、メイド長のリスはなぜかモナに冷たくあたります。とまりにくるお客さんも、それぞれ事情や秘密があるようで……。ホテルの生活はトラブル続きですが、モナは信頼と友情をきずき、自分の本当のわが家をみつけます。

カピバラ:ホテルの従業員やお客さんが、ひとりずつ順に登場して、どんな人物か紹介されていくのですが、それぞれの動物の特徴を生かした性格付けがされていて、おもしろかったです。挿絵は単純な線だけれどユーモラスに動物たちを描いています。こわいと思ったクマさんと友だちになり、そのことがオオカミを撃退する場面の伏線になっているなど、小さなエピソードや、ちょっとした事件がそれぞれ関連をもちながら語られていくので、どんどん読んでいけると思います。泊まるのを遠慮してほしいコガネムシが実はホテル評論家だったというのも愉快。ここに昔泊まったねずみ夫婦が、モナの両親かもしれないのですが、モナが再会できるかどうかは1巻目には書いてありません。続きを読みたくなりますね。中学年の子どもたちにすすめたいと思いました。

マリンゴ: とてもかわいらしい本で、おもしろかったです。イラストがすばらしいですね。特にモナとトカゲ。著者本人が描いたのかと思うほど雰囲気に合っています。物語では、オオカミが悪役でクマがいい役なのですが、オオカミは肉食で、クマは7割くらい植物を食べる雑食で、小動物に少し近いからかな、などと構造の設定を想像しました。もっとも、ホテルの従業員とお客が草食ばかりというわけではなく、たとえばアナグマは雑食、ツバメは肉食だそうなのですが。なお、表紙ですが、左下に著者、翻訳者、画家の名前があって、帯がかかると完全に隠れてしまっているのはよくないと思いました。『トルネード!』(ベッツィ・バイアーズ作 もりうちすみこ訳 学研)も同じ位置にありますが、こちらは帯に名前が表示されているので、問題ないですね。

ケロリン:中学年向けの、エンタメではなくきちんとしたストーリーのある物語が始まったといううれしい気持ちで読みました。動物が登場人物ですが、人間関係ならぬ動物関係がとてもよく描かれています。注意するとしたら、動物の実際からあまり違うことが起きたりすると、違和感が増してしまって物語に入りこめなくなるということですね。高橋さんの挿し絵もとても合っていますね。今後のシリーズ展開が楽しみです。

西山:かわいらしい本ですね。中学年くらいに読まれるシリーズになるのでしょう。小さいものの世界がこまかく描かれていて、シルバニアファミリーのようなミニチュアの世界が提供する楽しさがあるように思います。小さきものはみなうつくし、です。ネズミとリスの大きさの違いが意外とこだわられていたり、はまる要素はたくさんあるのでしょう。だけど、私自身は、この世界の人間観や構図がすごくクラシックで、なんだかなぁと入りきれません。親がいなくて、かわいそうな女の子、いじわるな同僚、理解のある上役、お客さんには徹底した敬語で、人間関係が古くさい。それはそれで安定感のある古典みたいなよさがあるのかもしれないけれど、このシリーズが大好きになる子はいるのでしょうけれど、退屈せずに読みましたけれど、特に推したいと思う作品ではありませんでした。

カピバラ:「ダウントンアビー」のメイドの世界みたいですよね。

ネズミ:女の子っぽい本だなと思いました。悪くはなかったけれど、健気な女の子ががんばるというのは、どこか古臭い感じもして、これをぜひどうぞ、とまでは私も思いませんでした。森のいろんなアイテムを想像する楽しみはあるけれど、どこまでがリアルで、どこからがファンタジーか、よくわからないところも。たとえば、ペパーミントでにおいを消すというのがありますが、動物のにおいは、ほんとうにペパーミントで消えるんでしょうか? ハリネズミがハリでメモをとめるなど、おもしろいですが、p84の最後から2行目「ずっとひとりきりで生きてきたモナは、相手に思いを言葉で伝えることに、まだなれていませんでした」と言われると、動物だか人間だか、わからなくなってしまいます。また、登場人物同士のせりふがあけすけで、人間だったらぎょっとしてしまうような直接的な表現があるなあと思いました。たとえば、p154の冒頭の「このままだと、わたしよりモナのほうが評価されるようになるんじゃないかと不安だったんです」とか。悪くはないけど、私はもっとほかの本を子どもに読ませたいかな。

レジーナ:飽きさせない展開で、一気に読みました。ティリーがモナをかばう場面は唐突で、なぜ急に態度を変えたのか、わかりませんでした。読みやすい訳ですが、ひっかかったのはp91「止まり木のかわりにみじかい小枝が打ちつけてありますが、ねむるにはおぼつかないのか、すみに小さなベッドが置いてあります」。「おぼつかない」は、物には使わないかと。あと、p70「あなたがのろのろしてるのは、わたしのせいじゃないし」で、これは、仕事に手間取って食べるのが遅くなっても、自己責任だという意味でしょうか。ちょっと意味がとりづらいので、中学年向きの本ならば、ここはもう少していねいに訳したほうがいいと思いました。

鏡文字:私は、基本的に人間至上主義なので、動物ものはちょっと苦手です。でも、いろんな意味で、安心して読めました。表紙の絵はすごくかわいいんだけど、字体もいろいろで、字面がおちつかない気がしました。このグレードだと、本のサイズももう少し大きいほうが一般的なのかな。もっと上の子向けの話かと思いました。私も、これが人間だったら、きつかったかも。ご指摘があったように、古典っぽい感じもしました。意図して、なのかもしれませんが。言葉づかいもクラシック。ストーリーとしては、結局はモナ一人(一匹)が活躍しているのが気になりました。

ネズミ:文字量からすると、高学年じゃないと難しいですか?

ケロリン:中学年向けソフトカバーだと、この判型と厚さはよくあります。

カピバラ:タイトルの「秘密」が漢字なので高学年向けでしょうか? 本文にはルビがありますけどね。

アカシア:楽しく読みました。全体にかわいらしいお話だし、オオカミ以外は本質的にいいキャラだし、ハッピーエンドなので安心して読めます。ただ、ものすごくおすすめとは思いませんでした。物語世界のつくり方が不安定だからかもしれません。擬人化の度合いはこれでいいのかな、と疑問に思うところがありました。たとえばモナですけど、お話の中ではネズミではなく擬人化の度合いが高く、まるで人間のように描かれています。でも、両親の記憶もないくらい小さいときに孤児になって、どうやって生きのびたのか、そこは不明です。このホテルに到着するまではネズミ的で、ホテルに到着してからは人間と同じような存在ってこと? うーん、どうなんでしょう。私は、小さい子どもが読む本でも、作品世界はきちんと作ってほしいと思うほうなので、そのあたりが中途半端で残念でした。ストーリーが都合よすぎるところもありますね。ハートウッドさんはホテル評論家に来てもらって新聞にいい記事を書いてもらいたいと思っていますが、そうすると、知られたくないオオカミにもホテルの場所は知れてしまいますよね。オオカミがホテルのありかを探しているところで、においが漏れるからホテルでは料理しないとか、火を使わないと言ってますが、それでばれるくらいなら、夜に灯りをつけなくてもとっくにばれているようにも思います。ティリーの改心もとってつけたようで。あと、モナはいつも前向きで、応援したくなるキャラなのですが、ひたすらいい子なんですね。中学年くらいまではこれでいいのかもしれないけど、年齢が高い読者だと,嘘くさいと思うかもしれません。

ルパン:私はおもしろく読みました。リアリティのなさにはあまりひっかかりませんでした。ひとつだけ・・・モナやティリーはお金をもたずに迷い込んできたらメイドになるのに、ツバメのシベルさんだけお客さん扱いなのはなぜだろう、と思いました。けがをしているからかな。 モナの両親は生きているみたいですね。2巻も読んでみたいと思います。

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エーデルワイス(メール参加):とてもかわいいお話で、挿絵と文章がよく合っています。女の子が喜びそうですが、だからといって甘ったるい感じはなくおもしろく読みました。続編も読みたいです。

(2019年1月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)


トルネード!〜たつまきとともに来た犬

ベッツィ・バイアーズ『トルネード!』
『トルネード!〜たつまきとともに来た犬』
原題:TORNADO by Betsy C. Bears, 1996
ベッツィ・バイアーズ/作 もりうちすみこ/訳 降矢なな/挿絵
学研教育出版
2015.05

<版元語録>すさまじい竜巻が、村に近づいてくる。地下室に避難した子どもたち。不安な気持ちでおびえる子どもたちに、むかしむかしにあった、ふしぎな話をすることになる。それは、竜巻とともにやってきた、一匹の犬の話だった。

西山:今回の3冊の中で一番おもしろかったです。気に入った話を何度も聞く、家庭内のおなじみのエピソードがある、その場面がとてもよかったです。好感をもって読みました。ほかの本だと、入れ子構造が余計な仕掛けに見えたり、効果が上がっていないと思ったりすることがありますが、これは違和感なくおもしろく読みました。(当日言いそびれ。竜巻は本当に恐ろしいことで、津波や地震、あるいは空襲まで含め、おびえる子どもを安心させたいという思いがこの構造そのもので、そのことが最後の一行「また、トルネードが来たときにな」で強く感じられて、子どもへの愛にあふれた本だと思いました。)ただ、『レイン』(アン・M・マーティン著 西本かおる訳 評論社)を思いだして、「バディ」として「トルネード」を飼っていた女の子の気持ちを思うと……。そこだけは複雑です。

ネズミ:物語の中に物語がある構造が、効果的に使われていると思いました。カメのことも、手品のことも、五時半のことも、毎日の何気ない話だけれど、どれも楽しいし、何度も聞きたがるぼくたちのおかげで、楽しさがさらに増すようです。挿絵がとてもよくて、最初と最後だけカラーだけど、全部色がついているような錯覚に陥りました。p72の「あの男はれいぎ知らずで、自分の名前も、いわなかったしな」というのだけ、ちょっとひっかかりました。p62-63の場面で「あの男」を、それほど「礼儀知らず」と感じなかったので。ともかく、物語の楽しさを味わえる作品だと思いました。

レジーナ:絵がお話にぴったり! トルネードが愛らしく、生き生きと描かれています。カメが口に入って困った顔とか、大事な穴を猫にとられて呆然としている表情とか。最後のカラーの挿絵は、ほかとは少しタッチが違いますが、これもまたすてきですね。トランプの手品の場面はよくわからなかったです。トルネードがいつも同じカードをとるのは、においがするとか、なんか理由があるのだと思いますけど。「ハートの3だったら、カードを捨てない」というのが、手品なんですか?

西山:ちっちゃい子が、わけもわからない手品をやってみせることがありますよね。ボクとトルネードが自分たちでも「それがどんな手品なのか、さっぱりわからないんだ」(p30) と、一人と一匹が困った様子で顔を見合わせているp31の絵と相まって、本当におもしろいと思いましたが。

アカシア:そこはおもしろいんだけど、p78では弟が「トルネードは、ほんとのほんとに、トランプの手品ができたの?」ときくと,ピートが「ああ、できたとも」と答えるので、だったら、もう少しわかるように書くか、訳すかしてもらえると,スッとおもしろさが伝わるのではないかと思いました。つまり、本当は手品じゃないんだけど、やりとりがおもしろいんだということが伝わるように、ってことですけど。

レジーナ:手品っぽいというのはわかりますけどね。

鏡文字:また犬か、とちょっと思ってしまいました(前々回も犬の話があったので)。トルネードにいちいち「たつまき」のルビがふってあるのが気になりました。自然現象は、「たつまき」だけではだめなのでしょうか。物語は、ちょっと中途半端な感じ。竜巻が来ているという緊張感があまり感じられなかったんです。話をするのがピートで、この人との関係がつかめなくて。まあ、読んでいけば子どもたちと信頼関係があることは伝わるんですが、これまで子どもたちとどんな風に関係を築いてきたのか。親だったら、安心させようとして、こういう話をする、というのもありかもしれませんが、雇われている人、なわけですよね。ピートのことがよくわからない(人となりだけでなく、どういう雇用関係なのかな、とか)ので、なんでここまで子どもがなついているのかな、と・・・。私は子どもたちが話を聞いている間中、お父さんはどうなったかが気がかりでした。大事なくてよかったですが。あと、p48「じゅうたんをほりまくってあなをあけた」というのがちょっとひっかかりました。

アカシア:家の中でも前足で地面を掘るようなしぐさをする犬がいて、じゅうたんには実際に穴があきますよ。そういう犬を飼ってないとわからないかもしれませんが。

鏡文字:女の子のことは、私もかわいそうだと感じました。挿絵は、猫の絵が好きでした。

ルパン:おもしろかったです。トルネードは犬小屋ごと飛んできたんですよね。竜巻はたいへんなことだと思いますが、場面を想像するとなんだか笑えてきました。絵もすばらしいです。トルネードはピートと7年過ごしたとあり、最後(p79)の絵はピートがずいぶん大きくなっているんですよね。そういうところがいいなあ、と思いました。ひとつだけ気になったのは、トルネードの前の飼い主のこと。おじいさんから孫への贈り物だったんですよね。とてもかわいがっていた女の子と、プレゼントしたおじいさんが気の毒で・・・そこのくだりはないほうがいいと思いました。

アカシア:うちにも犬がいるんですけど、トルネードは、せっかく掘ったお気に入りの穴をネコにとられる。その時の顔(p51)、たまりませんね。犬の表情を挿絵はとてもうまく捕らえて描いていますね。暗くて狭いところにみんなで避難しているときにお話を聞けて、いつもそれを楽しみにしているという設定も、とてもいいなあと思いました。ほかの方と同じで、ひっかかったのはトランプの手品のところです。客観的に手品っていわれると、よくわからない。『レイン』では、発達障がいの子が、飼い主を自分からさがそうと懸命になります。この本では、もとの飼い主の女の子がトルネードを抱きしめている場面があるのに、ピートは、トルネードが戻って来たのを知らせないどころか、隠している。前の飼い主は意地悪だから返さなくていい、という理屈ですが、そうなら、前の飼い主をもっとひどい人に描いておかないと、読者もちょっと納得できないんじゃないかな。『レイン』を読んでなければ、そこまで思わなかったかもしれませんけど。

西山:『レイン』の主人公は、発達障がいがあって、嘘がつけない、融通が効かないという子だから、黙って自分のものにしてしまうというようないい加減なことができなくて、それが哀しい。そこを、あの作品の切なさとして読んでいたのですが。

アカシア:でも『レイン』のローズは、クラスの他の子の事は考えられなかったのに、あんなふうにほかの人のことを考えられるようになるのは、やっぱり成長が描かれているんじゃないかな。

ネズミ:この本では、ピートたちが犬を奪ったわけじゃなくて、トルネードが自分で戻って来たんですよね。

アカシア:本の前のほうに、犬が行ったり来たりするのもありだ、みたいなことも書いてあるので、そうすればいいのに、と私は思ってしまいました。

カピバラ:飼い主のわからない犬に出会い、かわいがるうちに元の飼い主が現れるという話はほかにもあるけれど、トルネードという自然災害とからませ、避難中にピートから昔の思い出話を聞くという枠物語に仕立てて、読者をひきこむ工夫をしていますね。読者もピートの話を聞きたいという気持ちで読んでいきます。ストーリーの組み立て方がうまいですね。元の飼い主の女の子がかわいそうだという意見がありましたが、読者はこっちに残ってほしいと思いながら読むから、この結末には満足すると思います。元の飼い主のことはほんの少ししか書いてないので、子どもの読者は女の子のほうにはあまり感情移入しないでしょう。大人の読者はそちらの状況もいろいろ想像できてしまうけれどね。とてもおもしろい作品でした。

マリンゴ:とてもおもしろかったです。短い文章なのに、いろいろなことが伝わってきます。私は、語弊があるかもしれませんが自然現象のトルネードが好きで(笑)トルネードのドキュメンタリーとか映画とか、必ず見てしまいます。が、日本の子どもたちはそこまで知識がないかもしれません。「台風」「地震」などは共通の認識がありますが、「トルネード」はそこまでぴんと来ないと思うので、訳者あとがきなどで知識を補足してあげたら、なおよかったのではないかと思います。物語については、エピソードの小さいところがいいですね。カメのこととか、五時半の猫とか・・・。一つだけ気になるのは、p76-77の見開きのイラスト。廃墟感が強くて、一瞬、すべて吹き飛ばされてしまったのかと思いました。そこまでの被害は受けてないので、もう少し、それがわかる絵だと、なおよかったのかなぁ、と。

西山:活字を変えているのもわかりやすいですが、実はそれに気付かないぐらい自然に読んでいました。これからお話が始まるというのがはっきりしているから、混乱はしないと思います。

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エーデルワイス(メール参加):表紙と挿絵が降矢ななさんだ!と、期待して読んだのがいけなかったのか、読後感が今一つ。アメリカの竜巻の発生する地名が書いてないのですが、日常に竜巻が襲ってくることや、避難の備えをしていることをもう少し書いてほしかったです。この本の薄さは低学年向きかと思いきや、語り部による過去と現在のお話が交互に進み、高学年向きなのか・・・。なんだか中途半端に感じました。犬のトルネードの物語の骨組みだけ残して、降矢ななさんの『絵本』にしたらどうかしら・・・なんて思いました。

(2019年1月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)