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ロンドン・アイの謎

『ロンドン・アイの謎』表紙
『ロンドン・アイの謎』
シヴォーン・ダウド/著 越前敏弥/訳
東京創元社
2022.07

エーデルワイス:作者がこの作品を発表してから2か月後に47歳で亡くなっていることにショックを受けました。ミステリーの犯人捜しが苦手な私は、読んでいて謎を解き明かすことができません。作者の独特な言い回しのせいか、なかなか読み進めませんでしたが、中盤から一気に読めました。読み終えてから、あそこにここにとヒントがあったのですね、と。主人公テッドの口癖「んんん」は原文でも「nnn」なのでしょうか?出番は少ないのですが私服の女性警部、ピアース警部が素敵です。グローおばさんとサリムのニューヨーク行き飛行機のチケットを待ってもらうなんて、良心的な飛行機会社ですね。サリムのパパがインド系、サリムの親友のマーカスの母がバングラデッシュ、父がアイルランド……というように他民族そして差別も描いています。サリムの行方不明事件の顛末は、日本でしたら親が世間から非難されそうですね。

西山:おもしろく読みました。いきなりの「序文」で「真相にたどり着くための手がかりは、ひとつ残らずこの本のなかに書かれています」しかし、謎を解くのは「一度読んだだけでは至難の業でしょう」って、なんだ、いきなり読者への挑戦状か?! と思いまして、受けて立とうじゃないのと身構えて読み始めたのですが、そのうちそれも忘れて、ただおもしろく読んでいました。あ、でも、ロンドン・アイでサリムが乗り込んだはずのカプセルから降りてきた人の数は数えて、乗り込んだのと同じ21人であることは確認しましたけれど。“症候群”のテッドの感性と考え方から生まれるユーモアや、例えば人がかっこいいかどうかとか分からないテッドは「ぼくには、どの人もその人にしか見えない」(p25)というところなど、すてきな人間観として読めて、謎解きだけで引っ張られるわけではない、細部を楽しめる読書となりました。

雪割草:おもしろくて、先が気になってどんどん読み進めることができました。序文で、「テッドが真相にたどり着くための手がかりは、ひとつ残らず本のなかに書かれています」とあったので、細部に注意したつもりでしたが、いろいろ気が付けず、仕掛けが見事だと思いました。また、ミステリーでありながらそれだけに終始せず、サリムが母とふたり暮らしだったり、父はインド系だったり、学校でいじめにあったり、社会的な背景などいろいろ描きこんでいるのもわかりました。それから、テッドは「症候群」と自分で言っていて、あとがきにはアスペルガー症候群と書かれていますが、その率直な観察視点で描かれるのも、ミステリーやこの作品に合っていると思いました。p33でテッドとサリムが会話しているのが描かれていますが、サリムはおとなっぽいというか、ミステリアスなところがあり、それも魅力的に思いました。

サークルK:ミステリーとしても子どもの成長物語としても、本当におもしろい内容でぐいぐいと引き込まれてしまいました。これぞ本を読む喜び!という感覚で、あまりのおもしろさに続編(ダウドが亡くなってしまったので原案のみで、本書の序文を書いたロビン・スティーブンスが本編を執筆した『グッゲンハイムの謎』)も一気に読んでしまいました。テッドが自閉症スペクトラム「症候群」であるために、家族の心配りがどうしても必要でそのしわ寄せを引き受ける「きょうだい児」の姉カット、母親の姉であるグロリアの家族の問題も盛り込まれて、現代のロウワーミドルクラスにあたるような一家の状況は一筋縄ではいかないのですが、お互いに文句を言いながらも温かい家庭であることが伝わってきました。そこにいとこの行方不明事件が勃発!これはおもしろくならないわけがありません。お互いに面倒くさいなと思いながらも姉弟が協力して、ひとつひとつ可能性をつぶしながら真実に近づいていく様子がていねいに描かれていました。ダウドご本人の作品がもう読めないのが残念でたまりません、もっともっと読みたかったです!

花散里:『ボグ・チャイルド』(ゴブリン書房)など、40代で逝去してしまったシヴォーン・ダウドの作品はとても心に残っていたので、本作も注目して読みました。2022年に読んだ本の中で、特に印象深い作品でしたが、続編の『グッゲンハイムの謎』(シヴォーン・ダウド原案 ロビン・スティーヴンス著 東京創元社)もとてもおもしろく読みました。自閉スペクトラム症のテッドが鮮やかな推理で解決していくというミステリーで読み応えがありました。

マリオカート:ロンドンにはずいぶん長いこと行っていないので、このロンドン・アイのある風景を知らず、見てみたいなーと思いました。物語の途中まで、ミステリー的にそんなに絶賛されるほどの作品かな、と思っていたのですが、終盤で一気にたたみかけてくる展開に圧倒されました。主人公のキャラクターが秀逸ですよね。“症候群”の様子が、気象をモチーフにした本人のモノローグでよく伝わってきます。彼が何か言おうとしても、大人たちは聞いてくれない場面が多々あります。前回の読書会で読んだ本には、物理的に会話できない主人公が登場していました。今回の主人公も、言葉を発することはできるけれど実質大人に届いていないわけで、少し近いものを感じました。それでもあきらめない主人公が、最後はとてもカッコよくて、読み応えがありました。著者が早く亡くなられたのがとても残念です。

コアラ:おもしろかったです。自分で推理するつもりで読んでいきました。私も、サリムがそもそもロンドン・アイのカプセルに乗らなかったんじゃないかと最初のうちは思っていました。でも途中でその説が却下されたので、あとはいろいろな可能性を考えながら読みました。サリムがどこにいるか、ということでは、父親の家に行っているんじゃないかと思っていました。最後の解き明かしは、読者が本文中に明かされた手がかりだけでは推理できないことだったので、ミステリーとして素晴らしいというほどには感じなかったのですが、やっぱり子どもが活躍するというところで、おもしろかったです。気になったところと言えば、訳文がちょっと気持ち悪いところがありました。たとえばp27の後ろから8行目などですが、ストーリーに引き込まれてからは気にならなくなりました。印象に残ったのはp33からの「夜のおしゃべり」の場面。テッドは、グロリアおばさんや姉のカットからも、変てこな存在だとみなされていますが、サリムはテッドと同じティーンエイジャーの男の子同士として話をしていて、とてもいいなと思いました。あと、テッドがよく「んんん」と言いますが、その、唸っているという、言葉になっていないけれど、ちゃんと反応しているというのが、テッドらしさを表している表現に思えて、しかも字面が「んんん」ってなんだかかわいらしくて、やさしい気持ちで読むことができました。すごくプラスになっている翻訳というか表現だと思います。

ハリネズミ:ミステリー仕立てというだけでなく、人間模様がていねいに描かれているのがすばらしいですね。ダウドがすごい作家だということがそこからもよくわかります。アスペルガー症候群(とあとがきに書いてあります)をかかえ、ひとりで電車に乗ってこともなかったテッドが、その推理力で、いとこの命を助ける活躍をします。アスペルガー的な数へのこだわりや、決まった手順へのこだわり、ウソがつけないなどの特性を活かしながら、事件を解決していくところがいいなあと思いました。テッドの意見に家族が聞く耳を持たないときに、女性刑事がちゃんと話を聞いて解決に役立てるという設定もいいですね。人種のからむいじめの問題、アスペルガーの人が抱える問題、労働者階級の子どもの教育の問題なども描かれています。教育の部分は、バングラデッシュ人の母とアイルランド人の父を持つマーカスは、スクールカーストの最底辺にいるし、兄のクリスティは警備員の仕事もまじめにはやらず、いつもお金に困っていることなどから感じました。グローおばさん(グロリア)は、最初はとんでもない人かと思ったのですが、p224からの描写にはこうあります。「マーカスがドアへ向かおうとしたとき、グロリアおばさんが立ちあがった。/『マーカス』部屋は静まり返った。マーカスは立ち止まったけれど、振り返りはしなかった。/『聞いてちょうだい、マーカス。サリムの母親として言います。あなたは何も悪くないから』この一言でイメージを逆転させているんですね。見事だと思いました。

アンヌ:私は推理小説が好きで『名探偵カッレ君』(アストリッド・リンドグレーン著 岩波少年文庫)や江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズで育ってきたので、おもしろいと評判だったこの本を選んでみました。読んでみたらおもしろくて2冊目の『グッケンハイムの謎』(ロビン・スティーヴンス著 シヴォーン・ダウド原案 越前敏弥訳 東京創元社)も読んでしまったのですが、やはりこちらの方が、主人公のテッドのASDについて、特性や苦悩がていねいに書いてあると思いました。インド系のサリムやその友達が受けている差別など、今のイギリス社会の状況もしっかり描かれていると思います。推理小説としては謎が二つもあり、特に後の方は時間との戦いというスリリングな要素もあって実に見事だと思いました。また、大人たちが誰も話を聞いてくれないのに、女性の警部に電話して問題が解決されるという展開は、警察への信頼感があって、古き良きミステリーのようなほっとする感じがありました。

まめじか:よくできているミステリーだと思いました。家族の目は発達障碍のあるテッドに向きがちで、そんな中、姉のカットが感じている思い、サリムを見つけようと奮闘する中で二人の心が近づいていく過程もていねいに描かれていますね。若干気になったのは、p67「ナースは女の人の仕事だけど、ぼくは男だ。ナースにはなれない」とか、p68「よくあるのとは逆で、女の人のほうが責任者だっていうことだ」など、ジェンダーバイアスを感じさせる部分です。この本では、女性の警部がとても好意的に描かれていますし、きっと作者にそういう意図はないのでしょうが、読んでいて引っかかってしまいました。この本が書かれたのは2007年なんですよね。今の児童書だったら、こういう書き方はしないと思います。そういうところは、日本語版を出すときに訳で工夫してもよかったかもしれません。

すあま:この著者の作品は以前『ボグ・チャイルド』(ゴブリン書房)を読んだことがあります。生前発表された作品が少ないので、翻訳されたのがうれしいです。『ボグ・チャイルド』とは違う雰囲気ですが、ミステリーとしても楽しく読みました。登場人物がそれぞれ個性的で、どんな人なのかくっきりと描かれていました。主人公のテッドは発達障碍なんですが、読んでいてそれが才能や個性だと感じられるような描き方をされていたと思います。特に、お姉さんのカットは、テッドのような弟がいる姉の気持ちがよく伝わってきて、ていねいに描かれているな、と思いました。それから、テッドが仮説を立てて一つ一つ検証していくところは、調べ学習の進め方のようでもあり、おもしろかったです。

ルパン:おもしろかったです! ただ、謎解きの点でいうと、この主人公、いつもいろんなものの数を数えていて、サリムが観覧車に乗るときもちゃんと人数を数えてるんですよ。なのに、降りたときはわざとのように数えてない。それで、降りた人の数を足してみたら21人だったから、絶対変装だ、ってわかっちゃったんですよね。だから、推理小説としては私の勝ちだな、って思っちゃいました。

(2023年03月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)

Comment

博物館の少女〜怪異研究事始め

『博物館の少女』表紙
『博物館の少女〜怪異研究事始め』
富安陽子/作
偕成社
2021.12

すあま:とてもおもしろく読みました。古道具屋の娘のままでもよさそうだけど、博物館で働く、というところがユニークでした。実在の人と建物が出てくるところもよいと思います。シリーズ前提の1作目ということなのか、まだ明らかになっていないことがいろいろあります。タイトルはちょっと古くて、魅力のない感じがしましたが、あえて少女小説のタイトルに寄せたのでしょうか。サブタイトルと合わせれば興味をひかれるということなのかもしれません。主人公は13歳ですが、すでにかなりの知識をもっていて、ちゃんと目利きができる。古道具屋で仕事をおぼえるところも読みたかったです。付録があって、地図が載っているので、読む時の助けになると思いましたが、とじ込みではないので図書館の本だとなくなってしまうかもしれません。

しじみ71個分:最初にこの本を知ったのは新聞広告で、富安さんの10年越しの作品ということでとても興味を持ち、出てすぐに買いました。最初から最後まで、流れるようななめらかな文章で、ワクワクしたまま最後まで読み切りました。これは子ども向けの本なのかしら、と思うほどに枠を感じさせないおもしろさでした。個人的には、上野界隈で数年過ごした経験があるので、東京国立博物館の裏手の木々の鬱蒼とした感じなど、とてもリアルに感じることができ、怪異研究所はあの広い敷地のあの辺りなのかな?など想像も膨らみ、本当に、とてもおもしろく読みました。明治の上野界隈のノスタルジックで、少し怪しげな雰囲気は、『夢見る帝国図書館』(中島京子著、文藝春秋)にも共通するところがありますね。明治になって世の中が変わって、大阪から東京に出てきて、すべてにわくわくする感じがすごくよく伝わってきました。主人公の少女イカルがまた大変に魅力的で、大人を負かすほどの文物に関する知識や、鑑定のできる感性を持っていて、とてもお茶目な女の子で、主人公と一緒になって物語の中で冒険できました。どういう怪異がこのあとのシリーズで起こってくるのかがとても楽しみです。今回の物語も、黒手匣の紛失から隠れキリシタンと不老不死の島にまでぶっ飛んでしまうというのも、展開やスケールがとても大きくて、驚くやら楽しいやらで、物語のおもしろさを存分に堪能しました。この先は、まだ登場してきていない町田さんがどう物語の軸に関わって動いていくのかが楽しみでなりません。怪異研究でも、文物の鑑定でも、イカルちゃんがこれからどんな出来事に出会って、苦難を乗り越えて、どう成長していくのかが楽しみです!

コアラ:おもしろかったです。明治時代がよく作り込まれていて、今では使われなくなったものや事柄や言い回しも使われていて、その時代の物語として堪能できました。1回読んだだけですが、細かいところまで読み込んでいくと、もっとおもしろいかなと思いました。子どもには馴染みのない言葉も出てくるので、本をたくさん読んできた子どもで、子ども向けの本に飽き足らなくなったくらいの子にちょうどいいかなと感じました。

西山:すっごくおもしろかったです。この作品には大きな謎があるけれど、その興味にただひっぱられてページを繰るのではなくて、読んでいる間ずっと楽しかった。途中の景色、風物、主人公の発言や感性、ぜんぶおもしろかった。たとえばキリンの場面。初めて見るイカルの目を通したキリンの姿、それへの驚き、それだけでもおもしろいのですが、「イカルの知らない、どこか遠い国の草原で、この麒麟という動物たちが走ったり、歩いたり、草を食べたりしているのかと思うと、それだけで愉快になった」(p.34)と続くところで、なんてひろびろとした愉快な感性だろうとイカルのことがすっかり好きになりました。あと、女の子が働くことへのエールになっているところもうれしかったです。アキラが「男だからとか、女のくせにとか、つまらないことにこだわらず、どうすれば仕事がはかどるか考える頭」を持っている(p.96)というのもうれしかったし、「生まれて初めて、自分自身でかせいだ一円二十三銭だ。自分自身で働いて給金をもらったのだ。そう思うだけで胸がわくわくした」(p.340)というところから、これから広がる人生へのときめきで閉じるラストもよかったです。

ルパン:ごめんなさい、前評判もすごかったし、富安陽子さんだし、ということで期待しすぎたせいか、私は正直そこまでおもしろいという感じではなかったです。好みの問題だと思いますが。歴史的な背景と怪異現象とが中途半端にまざっている感じで、うまく波に乗れないまま終わっちゃいました。

マリナーズ: 非常にさわやかで、魅力的な本でした。大変な境遇にある女の子が、いきいきと前に向かって進んでいく、元気の出る作品です。特に前半3分の1は、新しい場所で冒険が始まり、いろいろな人たちとの出会いが続きます。楽しく読ませよう、という読者サービスが徹底していることに感嘆しました。もっとも、黒手匣が登場してからは、長く感じるところもありました。話の展開上、同じ場所に2度忍び込まなくてはいけないのはわかるのですが、何かを見つけるとすぐ足音が聞こえてくる、など、似たパターンの描写が多くて、若干ダレました。あと、文章で間取りを説明するのは難しいのだな、と感じます。どこかへ必死に逃げているのですが、建物全体の作りが把握できていないので、緊迫感を感じられないところもありました。読み終わってから別添の資料に気がつき、意外とシンプルな間取りだったのだなと思いました。最後まで来るとカタルシスがあるので、そのあたりの冗長な部分も必要なものだったのだ、と納得できます。おみつの存在が非常に印象深かったです。あと、細かいところですが、p.171の上野動物園の「ケンゴロウ」ってなんだろうと一瞬考えて、カンガルーか! と気づいたときは笑いました。

サークルK:とても楽しく読み進みました。登場人物がいきいきしているし、私も上野の博物館界隈はとっても好きなので。黒手匣の謎解きが、最後に凝縮されているので読む速度のピッチが上がりました。表紙の雰囲気も裏表紙とつながっていて、実は重要な登場人物もさりげなく書き込まれているところが、読後に「そうだったのか」と思わせてくれる粋な図らいに感じました。朝ドラのヒロインのように、主人公が周りの人の温かさに応援されて自分の境遇に負けずに成長していくというところが爽快でした。続編が待ち遠しいです!

花散里:私も『夢見る帝国図書館』を思い出させるようなおもしろさを感じました。上野の国立博物館から寛永寺辺りは好きな場所ですが、図書館で借りた本には付録の地図はなかったので、子どもたちには歴史的な設定など物語の雰囲気が想像しにくいのではないかと思いました。13歳で目利きの才があるというのも無理があるように感じました。アキラの存在などはもっと伏線があってもおもしろかったのではないかと思いました。物語の結末が分かってからの最後の章はなくても良いように思いましたが、富安さんの作品の中では個人的にはいちばん好きな作品だと感じました。

さららん:生まれ育った場所と作品舞台が近いせいで、タイトルを聞いたときから、この本を身近に感じていました。両親を失ったものの、よき人たちに囲まれ、父親から叩き込まれた審美眼で自分の力で人生を切り拓いていく主人公のイカル。トノサマ、アキラなど脇役の描写も巧みで、怪異研究所という設定や、事実を積み重ねながら黒手匣の謎を解明していく展開にもそそられます。親友となる川鍋暁斎の娘トヨも頼もしい存在で、続編では暁斎も活躍するのかなと、期待がふくらみます。実在の人物名(例えば博物館の初代館長の町田さんや、二代目館長田中さん)を物語に取り込んだうえで、架空の人物を存分に活躍させる構成はよくありますが、その人間関係やセリフに厚みがあり、引きこまれました。見事な日本語で紡がれた物語で、優れた書き手から十分なおもてなしを受けたという感じがします。

アカシア:黒手匣、明の正体、ロッシュやおみつの存在など、謎がたくさん用意してあって、それで引っ張るし、時代考証もちゃんとしてあるので、フィクションは苦手という子でもどんどん読めるんじゃないかと思いました。イカルは、西山さんもおっしゃっていたように、この時代にあっても積極的で勇気ある存在に描かれているのがいいですね。舞台が明治期の博物館というのも、「怪異」を研究する場所だというのも、おもしろい! ただp.247-248で、アキラが床の下で会話を聞いているだけなのに、「黒手匣があるとしたら、聖堂以外は考えられない」というのは、ちょっと無理があるかもしれません。1つ1一つの文章を味わいながら、極上の読書体験ができました。

アンヌ:とてもおもしろくて、続きが待ちきれないほどです。始まりの座敷の怪異現象のところなどは、よくある話なので少しがっかりしたのですが、そこに超能力者らしい前館長が絡んできて、おまじないをし、手を開かない工夫を母がしてくれたという記憶をたどるところが、新鮮でとても素敵でした。わたしも、しじみ71個分さんがおっしゃったように、前館長に早く会いたいです。黒手匣の怪異話もあまり意外性がなく、この事件に絡む神父は、1人にしておいた方がすっきり読める気もしました。でも、それよりなにより、この主人公が魅力的でした。道具屋の女も認めるほどの目利きで、独りで知らない江戸も歩く勇気がある。私の持論に「孤児はお屋敷の扉をたたく」というものがありまして、たった1人で知らない場所に行くから物語は始まると思うんです。そのお屋敷が博物館!これは最高の物語になるぞと思いました。イカルは沈黙を強いられる養家から古蔵に行き、様々なものの知識をペラペラしゃべりだします。このお喋りな女の子には見覚えがあるぞと思い出したのがモンゴメリの『赤毛のアン』でした。先ほど、すあまさんが「少女小説」のような題名と言われたのにも納得がいきます。そして、p.333で唐突に義姉妹の約束を交わすトヨはダイアナではないでしょうか?ダイアナのようにトヨもちょっと体の大きいふっくらした女の子でした。実は私はのちに河鍋暁翠になるこのトヨに興味があります。『がいなもん 松浦武四郎一代』(河治和香著、小学館)では松浦から話を聞かされる狂言回し役として登場しますし、去年の直木賞の『星落ちて、なお』(澤田瞳子著、文芸春秋)の主人公でもあります。この時代の女の子にしては父親の弟子として様々なところに出入りをし、自分1人でも仕事に出かけるトヨは、明治の東京をイカルに案内するのに最適な役なのだろうと思います。続編には、暁斎も出てくるのだろうかとか、稀代の収集家である松浦はどうだろうかとか、ワクワクしながらこの2人の活躍を楽しみにしています。

ネズミ:刊行されたすぐに手にとったのですが、まず登場人物が魅力的でした。たとえばイカルの人物像が、博物館に初めて入ったときの驚き、古道具屋に入ったシーンなどで、説明的な言葉を使わないでくっきり浮かびあがるといったふうに、随所の描き方がすばらしい。大人の存在感が希薄なことの多い日本の児童文学作品の中にあって、まわりを固めている大人の人物が立体的に描かれているのもすごいなあと思いました。フェミニズムとは書いていないけれど、物語全体が女の子を応援するものであり、男女や年齢、職業その他で人を差別しない意識が感じられます。富安さんは現代のお話も書いていますけれど、この物語は少し昔の時代に舞台を置くことで、登場人物を自由に遊ばせられたのかなと思います。もちろん時代考証のためにたくさんの資料にあたられたとは思いますが。イカルとアキラとトヨとトノサマなど、一部の名前にカタカナが使ってあるのは、ひらがなでも埋もれてしまうからでしょうか。音だけで響いてくる感じがよかったです。

雪割草:冒頭から物語の世界観に引き込まれました。道具屋だった父親の商いの様子を、主人公がよく見て自分なりの感性で受けとめていることがわかり、道具屋を知らない読者にも、空気感含めその場がよく伝わってくる描写でした。物語の時代への興味がかきたてられましたし、時代は違っても、不安やわくわくする気持ちなど主人公の心の動きに読者もよりそいながら味わうことができました。この年齢にしては能力がありすぎにも思いましたが、マニアックなところはよく、そういう好きなものがある子への応援のメッセージにもなると思いました。付録がついていたのを今の今まで気がつきませんでしたが、地図はいいものの、登場人物まで視覚化しなくてもいいかなと思いました。

オカピ:仕事ものであり、成長譚であり、ミステリーや怪奇小説の要素もあり、ほんとうにおもしろく読みました。作者がこの時代のことを詳細に調べて、自分のものにして書いているのもすごいのですが、なにより文体の美しさに魅了されました。所作をあらわす言葉ひとつとっても、香るような言葉が物語にぴったり。これはYAなので、難しめの言葉を使えたというのもあるかと思いますが。富安さんの渾身の作だと思いました。大阪弁がぽんぽんはいってくるのも、作品の勢いにつながっています。人の生と死について考えさせるラストもよかった。人知を超えた不思議もこの世にあるという、希望のある結末で、これは書き手の力だなあと。ちょっとわからなかったのは表紙の英語タイトル。”A Girl at the Museum” となっているのですが、これはイカルのことなのだから、”The Girl at the Museum ” のほうがしっくりくるように感じました。

アカシア:この時代のどこにでもいる少女、というニュアンスを出したかったのかもしれませんよ。

エーデルワイス:最初の構想では少年「アキラ」が主人公だったと聞いてびっくりしました。主人公が少女「イカル」でよかったと思います。表紙を見たとき一瞬、富安陽子さんは時代劇小説に移ったか?!と思いましたが、明治を舞台に実在の人物も盛り込み、本当におもしろく読みました。附属のリーフレットを見た時はわくわくしました。登場人物のイラストと紹介や上野界隈の地図など、この本を読む子どもたちにもよい導入と思います。続編が楽しみです。

シア:とってもおもしろかったです。人気が高いのもうなずけます。絵や装丁も凝っていて、偕成社さん力を入れているなと感じました。付録のおかげで裏表紙におみつがいることに気づきました。明治時代のレトロな感じがしゃれていて、関西とは違う異国情緒真っ盛りの上野の輝きをイカルの驚きで表現してくれています。イカルの目利き能力や好奇心旺盛な性格も楽しめました。目利き能力については、こういう環境で育っていたらそうなるんじゃないかなと思います。似たような時代物の『はなの街オペラ』(森川成美著、くもん出版)よりも想定年齢は高いので、幅広い年齢層が読めそうです。ただ、読書家にとって満足度の高い本なので、本にあまりなじみのない子で、とくに女の子だと、もしかしたら『紙の心』の方がおもしろいかもしれません。イカルの幼少期の体験などから見知った怪異が出てくるのかと思っていましたが、珍しい方面からの話だったので意外性が高かったですね。そのおかげで大人っぽい余韻の残る良い話になりました。日本書紀は知らなくとも、有名な玉手箱の話で子どもも納得できる展開になっていると思いました。中高生に人気のある漫画にも非時香果が出てくるので、知っている子はより親近感がわくのではないでしょうか。そして、実在している人物や場所が登場するので、そのことについて調べたり、その場所に行ってみたくなると思います。教養を得るきっかけになりますね。とくに上野博物館は社会科見学や地方だと修学旅行などで行くことが多いと思うので、児童文学として出してもらえてとても嬉しく思います。神田天主堂はカトリック教会だからレノーも神父と表記しているところも細かいですね。また、付録がよくできています。図書館側からするとこういう本から離れてしまう付録は面倒ですが、補足や博物館の敷地や地図などわかりやすく書いてあります。視覚的な図は文章だけでは追いつかない子どもの理解の助けになります。地方や上野を知らない子の支えにもなったと思います。カラーなのも良かったですね。話の内容だけではなく、文体がとにかく綺麗で、言葉遣いもそうですが立ち居振る舞いが古風で美しく、目をみはりました。奥ゆかしさを始めそういう表現が随所にあり、イカルの育ちの良さを思わせます。関西弁も滑らかでした。後半のアキラとの関係も慎ましくて、明治の女の子らしさが垣間見えて良かったです。そしてそういう表現ができる作家さんは貴重なので、ぜひ続編をと、期待しています。ただ、この時代考証がしっかりしているため、「新しくお仕えする者は、だれより早く仕事場におもむき、上役のお出ましをお待ちするのが筋ですからね。」(p.122)という部分に、日本の仕事に対する姿勢の歴史の古さを感じて、少し頭が痛くなりました。とはいえ、女性のイカルは低く見られているのでボランティアなのだろうかと思っていたので、お給料がもらえてほっとしました。ところで、ケンゴロウというのは、カンガルーの過去の和名かと思ったのですが、カンガルーの聞き間違いなのですね。

ハル:みなさんのご意見がうかがえてよかったなぁと、いつも以上に、今日はしみじみ思います。読みやすく、時代設定も好きで、わくわくしながら読みましたが、「おもしろかった」以上の感想を持てずにいましたし、一方では「児童書なのかな?」とも思っていましたが……『赤毛のアン』! そう言われてみると確かに、枠というのか、ある種の様式美的なものも感じますね。わぁ、すごく腑に落ちました。著者も意識していたのでしょうか。そんな観点で、もう1回読みたくなりました。ありがとうございました。

西山ところで、ちょっと気になったのは、p.262の「あったりまえのコンコンチキや!」というところ。「あったりまえのコンコンチキ」って、ちゃきちゃきの江戸っ子の口調のイメージがあるのですが……。

シア:確かに「こんこんちき」は関西では聞きませんね。そもそも、今の時代使っている人がいないのでなんとも言えませんが。

(2022年6月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)

 

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科学でナゾとき!〜 わらう人体模型事件

『科学でナゾとき!わらう人体模型事件』表紙
『科学でナゾとき!〜 わらう人体模型事件』
あさだりん/作 佐藤おどり/絵 高柳雄一/監修
偕成社
2020

『科学でナゾとき!〜 わらう人体模型事件』(読み物)をおすすめします。

科学の知識を盛り込んだ、学校が舞台の物語。6年生の彰吾は、自信過剰な児童会長。中学教師の父親が、小学校でも科学実験の指導をするために彰吾の学校にもやってくることに。父親を評価していない彰吾は、学校では家族関係を隠すようにと父親に釘を刺す。

ところが彰吾の学校では、次々に不思議な事件が起こる。最初は、理科実験室で人体模型がギャハハと笑ったという事件。生徒たちが脅えているのを知ると、彰吾の父親のキリン先生(背が高くポケットにキリンのぬいぐるみを入れている)は、みんなを公園に連れて行き、準備しておいたホースを使って、実験室の水道管が音を伝えたことを実証してみせる。

2つ目は、離島から来た転校生が海の夕陽を緑色に描いて、ヘンだと言われた事件。3つ目は、なくなったリップクリームが花壇に泥だらけで落ちていた事件。最後は、図書館においた人魚姫の人形が赤い涙を流す事件。どれもキリン先生が謎を解き明かし、光の波長や、液状化現象や、化学薬品のアルカリ性・酸性の問題など、事件の裏にある科学的事実を説明してくれる。彰吾も父親を見直す。科学知識が物語のなかに溶け込んでいて、おもしろく読める。

11歳から/学校 謎 科学 父と息子

 

Solving Riddles Through Science!

Set in a school, the story relates four episodes rich in scientific knowledge. Shogo, a cocky sixth-grader, is head of the children’s association. His father is a science teacher who teaches at many different schools, one of which is Shogo’s. But Shogo is embarrassed by his father’s clumsiness and begs him not to let anyone know they are related.

However, mysterious things are happening at Shogo’s school. First, the anatomical model in the science room bursts out laughing. When Shogo’s tall, lanky father, who carries a giraffe toy in his pocket and has been dubbed Professor Giraffe, hears that the children are frightened, he takes them to a park and uses a hose to show them that sound travel can long distances. It becomes clear that the sound of laughter must have traveled along an unused water pipe from another location.

The second mystery surrounds a transfer student from a distant island who is upset that his classmates laughed because he painted the sunset green. The third mystery involves a tube of lip gloss that disappears from the classroom and shows up in a flower bed. In the final episode, a mermaid doll in the school library weeps red tears. Professor Giraffe conducts experiments to solve each case, explaining the scientific facts behind them, such as light wavelength, liquefaction, and the alkalinity and acidity of chemicals. During this process, Shogo’s opinion of his father changes. The author expertly weaves scientific information into the story to make this a fascinating and informative read. (Sakuma)

  • text: Asada, Rin | illus. Sato, Odori | spv. Takayanagi, Yuichi
  • Kaiseisha
  • 2020
  • 208 pages
  • 19×13
  • ISBN 9784036491407
  • Age 11 +

School, Mystery, Science, Father and son

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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いいたいことがあります!

魚住直子『いいたいことがあります!』表紙
『いいたいことがあります!』
魚住直子/作 西村ツチカ/絵
偕成社
2018.09

『いいたいことがあります!』をおすすめします。

6年生の陽菜子は、母親がうっとうしい。家事も勉強もちゃんとやれと言い、できないと叱るからだ。

ある日、陽菜子は不思議な女の子に出会う。その子が忘れた手帳には、「親に支配されたくない」という言葉も。この子はだれなのか? 謎を追っていくうち、いろいろなことが少しずつわかってくる。(小学校高学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年10月27日掲載)

キーワード:家族(母親)、謎

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ルイス・サッカー『泥』表紙
『泥』
ルイス・サッカー/作 千葉茂樹/訳
小学館
2018.07

『泥』をおすすめします。

森の中にある私立学校から、3人の生徒が行方不明になる。1人は皆勤賞の優等生タマヤ、もう1人はタマヤと通学している2歳年上のマーシャル、残る1人はマーシャルをいじめていた転校生チャド。そして、森で奇妙なねばねばの泥に触れたこの3人から、不思議な病が広がっていく。この病とは何なのか? 何が原因なのか? 治療方法はあるのか? 3人それぞれの物語にからむのは、粘菌を利用したクリーンエネルギーのついての聴聞会の証言と、不思議な数式。謎めいた起伏のある展開で読者をひきつけ、しかもバイオテクノロジーについて考えさせる見事な作品。怖いけれどおもしろいこの物語からは、作者が子どもに寄せる信頼感も感じ取れる。(小学校高学年以上)

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年9月29日掲載)

 


森の中にある私立学校から、5 年生の優等生タマヤ、7 年生のマーシャル、7 年のクラスに転校してきたいじめっ子のチャドが行方不明になる。やがて、この3人が森で奇妙な泥に触れたことから、不思議な病が広がっていることがわかる。この病は何なのか? 治療法はあるのか? 異質な3 人は、恐怖と孤独の中でたがいの間の距離を縮めていく。子どもたちをめぐる現在に、クリーンエネルギーについての公聴会の証言と、謎めいた数式がからむ。起伏のある展開で読者をひきつけ、バイオテクノロジーや現代文明の落とし穴についても考えさせる物語。

原作:アメリカ/13歳から/バイオテクノロジー エネルギー 粘菌 いじめ

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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マンマルさん

『マンマルさん』表紙
『マンマルさん』
マック・バーネット/文 ジョン・クラッセン/絵 長谷川義史/訳
クレヨンハウス
2019.05

『マンマルさん』をおすすめします。

抽象的な図形マンマルさんが、シカクさん、サンカクさんとかくれんぼをする絵本。黒いキャラクターが暗い洞穴に入ると、そこには正体不明のものがいるという設定なので、いささか怖いのだが、訳者のユーモラスでリズミカルな関西弁がその不気味さを中和している。真っ暗闇の中での黒いキャラクターの気持ちを、目の動きだけで表現している絵もいい。

マンマルさんは、ぞっとして洞穴からあわてて逃げ出したけれど、あれはいい者だったかもしれないと思い直す。そして、「さあ いっしょに め つぶってみ。どんなん みえる?」と、読者にも想像を促す。哲学的な絵本とも言えるが、子どもは子どもなりにおもしろさを味わえる。

(産経新聞「産経児童出版文化賞・翻訳絵本賞選評」2020年5月5日掲載)

キーワード:洞穴、形、謎、哲学、絵本

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セブン・レター・ワード〜7つの文字の謎

キム・スレイター『セブン・レター・ワード』
『セブン・レター・ワード〜7つの文字の謎』
キム・スレイター/作 武富博子/訳
評論社
2017.10

『セブン・レター・ワード〜7つの文字の謎』をおすすめします。

スクラブルって知ってる? アルファベットの文字が書かれたコマをボードのマスに並べて単語をつくっていくゲームなんだけど、この作品ではそのスクラブルがモチーフとして使われている。まるで、『不思議の国のアリス』がトランプを『鏡の国のアリス』がチェスをモチーフにしてたみたいにね。

主人公のフィンレイはイギリスで暮らす14歳の男の子。母親が何もいわずに家を出ていって以来、吃音がひどくなっている。今は家の設備工事をする父親と二人で暮らしているのだが、学校でも家でも、言葉がなかなか出てこないので、だれかが先を越して言ってしまったり、からかわれたり、いじめられたりする。でも、フィンレイの頭の中には言葉がたくさんつまっていて、さらに新しい言葉をコレクションしているから、スクラブルはお手のものなのだ。たいていはオンラインで、会ったことのない相手と対戦している。実際に会話する必要がないので、気が楽だからね。

物語は、いくつかの謎をめぐって展開する。フィンレイの母親はどうして消えたのか? フィンレイがネット上で知り合ったアレックスとは何者なのか? 父親は何を隠しているのか?

その一方で、今のイギリスのティーンエージャーたちが直面しそうな日常的な出来事(異質な者へのいじめ、外国人へのヘイト、全国学校スクラブル選手権大会、勇気、信念)などについても、ていねいに描いていく。スクラブルというゲームのおもしろさや、技をみがく方法についても書いてある。

個人的にちょっとだけ物足りなかったのは、母親の描き方。著者の前作『スマート』もそうだったけど、主人公の母親は犯罪者を告発しようとはせず、妥協したり身を引いたり我慢したりしてしまう。まあ、だからこそ、脅しもハンデも乗り越えようとする主人公がより強い印象を残すのかもしれないけどね。

(「トーハン週報」Monthly YA 2018年2月12日号掲載)

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