きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは…

市川宣子『きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは…』
『きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは…』
市川宣子/著 はたこうしろう/挿絵 
ひさかたチャイルド
2010.04

版元語録:あっくんのお父さんは夜遅くなってもなかなか帰ってこない日があります。そんな日はお父さん、何しているの? 大なまずに子守歌を歌ってあげようとしてたんだ 迷子の雷の子を空まで送り届けてたんだ お父さんの語るお話4篇からなるオムニバスのおはなし集。 *野間児童文芸賞受賞

ハマグリ:お父さんが苦し紛れにいろいろ言うところがおもしろくて、ユーモアを感じました。はたさんのイラストは、この絵があるから楽しく読めるといってもいいくらい。自分で読めるようになった子にとっては、書名もおもしろそうだし、手に取りやすい装丁だし、とても読みやすくて楽しい本だと思います。野間児童文芸賞を取るほどの作品ではないのでは、という意見も聞きましたが、このくらいの年齢の対象のものが受賞するのはいいことだと思います。

ひいらぎ:市川さんは、『ケイゾウさんは四月がきらいです』(福音館書店)もおもしろかったですよね。この年齢の子を対象に書けるすぐれた作家だと思います。同じような物語に瀬田貞二さんの『お父さんのラッパばなし』(福音館書店)がありますが、あっちはちょっと古い。これは、現代の子どもが読んでもすっと入り込めますね。まず、お父さんが言い訳のためにほら話をするという設定がいい。四季折々の話になっているところもいい。このお父さんはふだんは夜子どもにお話を聞かせてやったりしているわけですよね。最後に「あっくん、おやすみ」と言っていることから、子ども思いのお父さん像が伝わってきます。お父さんのキャラも、「こんなことができるか」と言われるとムキになるという設定で、そこもおもしろい。春夏秋冬の4話になっていますね。お話をしている夜はおとうさんは家にいる。たまたまこういうことができない日があって、その日に言い訳をしている。最後の作品は安房直子みたいですね。(そうそうとみんな)

プルメリア:子どもたちは、男の子も女の子もおもしろいと言って読んでいました。発想がユニークだし、挿絵がとてもいいです。特に1話が終わったあとの挿絵がとってもいい。作品を読んだ子どもたちの感想は、「雷の子をのせたボートが空に上がっていくシーンがいい」、「お父さんが星をバットで打つ場面や「メタボ」といわれて頑張るところがおもしろい」、「モップで星を落とす場面の絵を見たかった」、などでした。私が残念だと思ったところは、目次がないこと。目次があるともっとわかりやすかったと思います。この本を読むと自然にお父さんに関心が湧いてくるのではないでしょうか。子どもには受ける話です。

キノコ:読んでいて幸せになるような話でした。お父さんが読み聞かせするにもぴったり。すごくよくできていて、お父さんがちょっと子どもっぽく、はりきっていろいろするところも、いまどきのパパらしくておもしろい。子どもも楽しく読めると思います。それぞれのお話の最後に対応して、お父さんと出かけている見開きの絵があるのもすてき。表紙の絵にある、お父さんが飛ぶシーンが出てくるのかな、と思いました。(お父さんが飛ぶのを引きとめているのかも、という表紙についてのみんなの意見)

うさこ:帰りの遅いお父さんから息子への「深夜帰宅」のわけを綴った物語のプレゼント、といった作りで、その構成のアイデアがおもしろいと思ったな。どれも動物と体を動かすことと、何かの目的のために手伝うお父さん、というシチュエーション。短い1話の中にそれぞれ小さな夢と想像力豊かな展開があって、作者の力量を感じる1冊でした。気になったのは、空想の質が、ちょっと女の子っぽいかな?と思った点。野球やボートなどが男の子の遊びっぽいから、男の子にも受けるのかも。1話の長さもいい。1話が終わって、その続きを連想させる絵があるところもいい。こういうところは文章にしたらおもしろくないけど、絵で余韻を広げるという意味で、とても楽しい構成。

レン:楽しく読みました。もうみなさんから出尽くしていますが、うまいなと思った点は、今の子に身近なものをうまくとりいれているところ。2つめの雷の話で、ケータイで5656に電話をかけるとか、3つめの話でアライグマが、お父さんが打ちそこなうと「うわ、だっせー」「だめじゃん〜」と言ったり、メタボとからかったり。その頃合いが、とてもいいと思いました。すぐそこに、本当にこういう世界がありそうな感じがしてきます。会話もうまいですね。こういうリズムや口調、ぜひ勉強したいです。

クモッチ:最初の話の「穴を掘ってたんだよ」でつかみがグッとくるって感じだったですね。そういう手があったか、というような。発想の勝利。『ケイゾウさんは四月がきらいです』も、おもしろいと思って読みましたが、今回『ケイゾウさん〜』を読み返してみると、低学年向けの本だと思うのに、字が小さくてルビも少ないんですね。笑いのツボも大人向けのような。もしかして大人向けだったか、という印象です。そういう意味でいうと、この本は、読み手のことも考えていて、親子でおもしろく読める本じゃないかと思いました。

ひいらぎ:最初は、お父さんが酔っぱらったかなんかで、服をどろだらけにして帰ってくるんですよね。文章にはないけど、挿絵がそう語っています。あっくんも、怒った顔をしています。

クモッチ:絵に、お母さんが出てこないんですね。最後のほうに、やれやれ、って感じでお母さんがいそうですが、夢を壊さないんですね。はたこうしろうさんだからですかね。

アカザ:それぞれのお話の終わりに見開きの絵を載せているところといい、編集者がとても力を入れて、丁寧に作っている本だと思いました。みなさんがおっしゃるように、幼年童話が賞を受けるというのはいいですね。でも、でも……『園芸少年』(魚住直子著 講談社)が受賞するとよかったのに!

(「子どもの本で言いたい放題」2010年12月の記録)

きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは…

市川宣子『きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは…』
『きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは…』
市川宣子/著 はたこうしろう/挿絵 
ひさかたチャイルド
2010.04

ハマグリ:お父さんが苦し紛れにいろいろ言うところがおもしろくて、ユーモアを感じました。はたさんのイラストは、この絵があるから楽しく読めるといってもいいくらい。自分で読めるようになった子にとっては、書名もおもしろそうだし、手に取りやすい装丁だし、とても読みやすくて楽しい本だと思います。野間児童文芸賞を取るほどの作品ではないのでは、という意見も聞きましたが、このくらいの年齢の対象のものが受賞するのはいいことだと思います。

ひいらぎ:市川さんは、『ケイゾウさんは四月がきらいです』(福音館書店)もおもしろかったですよね。この年齢の子を対象に書けるすぐれた作家だと思います。同じような物語に瀬田貞二さんの『お父さんのラッパばなし』(福音館書店)がありますが、あっちはちょっと古い。これは、現代の子どもが読んでもすっと入り込めますね。まず、お父さんが言い訳のためにほら話をするという設定がいい。四季折々の話になっているところもいい。このお父さんはふだんは夜子どもにお話を聞かせてやったりしているわけですよね。最後に「あっくん、おやすみ」と言っていることから、子ども思いのお父さん像が伝わってきます。お父さんのキャラも、「こんなことができるか」と言われるとムキになるという設定で、そこもおもしろい。春夏秋冬の4話になっていますね。お話をしている夜はおとうさんは家にいる。たまたまこういうことができない日があって、その日に言い訳をしている。最後の作品は安房直子みたいですね。(そうそうとみんな)

プルメリア:子どもたちは、男の子も女の子もおもしろいと言って読んでいました。発想がユニークだし、挿絵がとてもいいです。特に1話が終わったあとの挿絵がとってもいい。作品を読んだ子どもたちの感想は、「雷の子をのせたボートが空に上がっていくシーンがいい」、「お父さんが星をバットで打つ場面や「メタボ」といわれて頑張るところがおもしろい」、「モップで星を落とす場面の絵を見たかった」、などでした。私が残念だと思ったところは、目次がないこと。目次があるともっとわかりやすかったと思います。この本を読むと自然にお父さんに関心が湧いてくるのではないでしょうか。子どもには受ける話です。

キノコ:読んでいて幸せになるような話でした。お父さんが読み聞かせするにもぴったり。すごくよくできていて、お父さんがちょっと子どもっぽく、はりきっていろいろするところも、いまどきのパパらしくておもしろい。子どもも楽しく読めると思います。それぞれのお話の最後に対応して、お父さんと出かけている見開きの絵があるのもすてき。表紙の絵にある、お父さんが飛ぶシーンが出てくるのかな、と思いました。(お父さんが飛ぶのを引きとめているのかも、という表紙についてのみんなの意見)

うさこ:帰りの遅いお父さんから息子への「深夜帰宅」のわけを綴った物語のプレゼント、といった作りで、その構成のアイデアがおもしろいと思ったな。どれも動物と体を動かすことと、何かの目的のために手伝うお父さん、というシチュエーション。短い1話の中にそれぞれ小さな夢と想像力豊かな展開があって、作者の力量を感じる1冊でした。気になったのは、空想の質が、ちょっと女の子っぽいかな?と思った点。野球やボートなどが男の子の遊びっぽいから、男の子にも受けるのかも。1話の長さもいい。1話が終わって、その続きを連想させる絵があるところもいい。こういうところは文章にしたらおもしろくないけど、絵で余韻を広げるという意味で、とても楽しい構成。

レン:楽しく読みました。もうみなさんから出尽くしていますが、うまいなと思った点は、今の子に身近なものをうまくとりいれているところ。2つめの雷の話で、ケータイで5656に電話をかけるとか、3つめの話でアライグマが、お父さんが打ちそこなうと「うわ、だっせー」「だめじゃん〜」と言ったり、メタボとからかったり。その頃合いが、とてもいいと思いました。すぐそこに、本当にこういう世界がありそうな感じがしてきます。会話もうまいですね。こういうリズムや口調、ぜひ勉強したいです。

クモッチ:最初の話の「穴を掘ってたんだよ」でつかみがグッとくるって感じだったですね。そういう手があったか、というような。発想の勝利。『ケイゾウさんは四月がきらいです』も、おもしろいと思って読みましたが、今回『ケイゾウさん〜』を読み返してみると、低学年向けの本だと思うのに、字が小さくてルビも少ないんですね。笑いのツボも大人向けのような。もしかして大人向けだったか、という印象です。そういう意味でいうと、この本は、読み手のことも考えていて、親子でおもしろく読める本じゃないかと思いました。

ひいらぎ:最初は、お父さんが酔っぱらったかなんかで、服をどろだらけにして帰ってくるんですよね。文章にはないけど、挿絵がそう語っています。あっくんも、怒った顔をしています。

クモッチ:絵に、お母さんが出てこないんですね。最後のほうに、やれやれ、って感じでお母さんがいそうですが、夢を壊さないんですね。はたこうしろうさんだからですかね。

アカザ:それぞれのお話の終わりに見開きの絵を載せているところといい、編集者がとても力を入れて、丁寧に作っている本だと思いました。みなさんがおっしゃるように、幼年童話が賞を受けるというのはいいですね。でも、でも……『園芸少年』(魚住直子著 講談社)が受賞するとよかったのに!

(「子どもの本で言いたい放題」2010年12月の記録)