ポール・モーシャー『あたしが乗った列車は進む』
『あたしが乗った列車は進む』
ポール・モーシャー/作 代田亜香子/訳
鈴木出版
2018.06

『あたしが乗った列車は進む』をおすすめします。

少女が一人、長距離列車に乗っている。壊れた腕時計をはめ、「ライダー(乗客)」というカードを首からぶら下げて。隣にすわっているのはドロシア。親戚でも友だちでもない。少女がちゃんと目的地につけるように見張っているのだ。少女は、『太陽はかがやいている』という題の小さな本をお守りのように持っているけれど、自分は太陽とは縁遠い存在だと思っている。少女は、助けはいらないし自力でなんとかしようと気を張っているが、自分が人から傷つけられるような弱い人間だということにむかついてもいる。

物語は、少女がこれまでのことを回想する過去の流れと、列車の中で出会った人々との交流を描く現在の流れの、両方で進んで行く。回想場面には、ドラッグ中毒の母親、ニコチン中毒の祖母などが登場し、ネグレクトされた少女が、愛をほとんど感じられない暮らしをしてきたことがわかってくる。そのせいで少女は自己肯定感を持てず、ウソもつくし万引きもする。少女は、知っている身内をすべて失って、会ったこともない大おじさんの住むシカゴに向かう途中なのだ。

でも現在の流れの中では、旅の間に少女は少しずつ変わっていく。軽食カウンターで働くニール、ドーナツをくれたり一緒にクロスワードパズルを楽しんだりするカルロス、ギンズバーグの詩集『吠える』を貸してくれる少年テンダーチャンクス、そしてじつは思慮のあるドロシアたちとの出会いが、少女に本来のかがやきを取り戻させてくれるのだ。少女は、「あたしは、自分で選んだふうにしかならない」と思えるようになり、これからの自分に希望をもちはじめる。最後のほうで、自分の存在を否定しようとする自分を映している鏡を壊す場面は、象徴的だ。

自分をなかなか好きになれない年頃の子どもたちにすすめたい。

(「トーハン週報」Monthly YA  2018年10月8日号掲載)