ジェーン・サトクリフ/文 ジョン・シェリー/絵 なかがわちひろ/訳
小峰書店
2013.09
『石の巨人〜ミケランジェロのダビデ像』をおすすめします。
今回取り上げるのは、ミケランジェロを主人公にした絵本です。
ミケランジェロのダビデ像は、あちこちにレプリカがあるので、見たことがある方も多いでしょう。2012年には島根県奥出雲町にもレプリカが設置され、「裸はけしからん。パンツをはかせろ」と言い出す人も出て話題になりましたね。
この絵本は、フィレンツェの街にはクリーム色の大きな大理石が40年も置きっぱなりにされていたこと、この石を使ってダビデ像をつくることを依頼された何人かの彫刻家が、断ったり途中で彫るのを辞めてしまったことなど、前史をまず語っています。
やがて(実際は1501年)とうとうこの仕事を引き受けたミケランジェロは、周りに木の囲いを張りめぐらせて秘密裏に仕事を進めるのですが、彼には石の中に埋もれている形が早くから見えていたようです。それから実際に彫像ができて広場前に設置されるまでの苦労が絵と文章であらわされています。
ルビがふってあるので、小学生から読めますが、若い人が読んでもなかなかおもしろい。天才ミケランジェロの人となりや、この石像が生まれたいきさつがわかります。
文章を書いたサトクリフはアメリカ人で、この絵本で初めて日本の読者にお目見えしました。イギリス人であるシェリーの絵は、『ジャックと豆の木』(福音館書店)や、「チャーリー・ボーンの冒険」シリーズの挿絵でもおなじみの、あたたかくて楽しい雰囲気をもっているのですが、ダビデ像だけは大変リアルに描いてあります。ミケランジェロへのオマージュとい意味もこめられているのでしょうか。
(「トーハン週報」Monthly YA 2013年12月9・16日合併号掲載)