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ライオンと歩いた少年

『ライオンと歩いた少年』
エリック・キャンベル/作 さくまゆみこ/訳 中村和彦/絵
徳間書店
1996.02

イギリスで暮らす少年クリスは、父親の仕事の都合で突然アフリカのタンザニアへ行くことになります。ところが目的地に向かう途中、軽飛行機が墜落して、パイロットと父親は重傷を負ってしまいます。軽傷ですんだ少年はひとりで助けを呼びに行こうとするのですが、そこは様々な野生動物が暮らすサバンナ。飛行機という現代文明を象徴するものが失われたことで大自然の中に放り出された少年は、年老いたライオンと出会います。死期を迎えて群れを去った老ライオンと、生きようとするクリスが、ふしぎなことに魂を通わせるようすが描かれています。

著者のキャンベルは、野生の動物と人間のかかわりをテーマに書いている作家です。翻訳は、原文では名詞につく形容詞がたくさんあるので、それをどう訳すかという点で苦労しました。

(編集:米田佳代子さん 装丁:鈴木裕美さん)


バオバブの木と星の歌〜アフリカの少女の物語

『バオバブの木と星の歌〜アフリカの少女の物語』
レスリー・ビーク/作 さくまゆみこ/訳 近藤理恵/絵
小峰書店
1994.12

アフリカ南部のナミビアに暮らす先住民サン人(昔はブッシュマンと呼ばれていた)の少女ビーが主人公です。サンの人たちはいつも自然と調和して暮らし、空の星の歌も、木のささやきも、小鳥の歌も聴き取ってきました。
著者のレスリー・ビークは、私も南アフリカのケープタウンでお目にかかり、親しくお話をさせていただきましたが、サンの人たちの文化を伝えるためのサポートをしていて、そのような物語もたくさん書いています。この作品は、カラハリ砂漠を舞台にした、死と愛と再生の物語です。主人公のビーは、一度は苦しい体験にうちのめされて自殺しようとしますが、やがてそれを乗り越えて生きていきます。ほかにも故郷を失った祖父、深い悲しみを抱える母、新しい未来を夢見るクー、貧しい白人の農場主や精神を病むその妻など、さまざまな人間模様を浮かび上がらせています。
サンの人たちの言葉の発音については、京都大学アフリカ地域研究センターの当時の所長田中二郎先生にご教示いただきました。
(編集:松木近司さん)

*産経児童出版文化賞推薦


わたしは歌う〜ミリアム・マケバ自伝

ミリアム・マケバ&ジェームズ・ホール『わたしは歌う:ミリアム・マケバ自伝』さくまゆみこ訳
『わたしは歌う〜ミリアム・マケバ自伝』 福音館日曜日文庫

ミリアム・マケバ+ジェームズ・ホール/著 さくまゆみこ/訳
福音館書店
1994.07

「ママ・アフリカ」と呼ばれたミリアム・マケバは、「パタ・パタ」などの歌で有名ですが、とても数奇な運命をたどった女性です。南アフリカで生まれましたが、アパルトヘイト政権のもとで31年間も国外追放になり、イギリス、アメリカ、ギニアと拠点を移しながら、歌手として活躍しました。マンデラが大統領になるとようやく南アフリカに戻って、その後も世界を回って歌声を聞かせてきました。
しかし彼女は歌手だっただけではなく、人権活動家としても国連でスピーチをしたし、何より波瀾万丈の人生を送った人でした。
私はマケバの来日コンサートにも行きましたし、CDはすべて持っていて、それを順番に聞きながらこの本を訳しました。
(編集:松本徹さん 装丁:桂川潤さん 写真・編集協力:吉田ルイ子さん)


モロッコのむかし話〜愛のカフタン

『モロッコのむかし話〜愛のカフタン』 (大人と子どものための世界のむかし話)

ヤン・クナッパート/編 さくまゆみこ/訳
偕成社
1990.04

ロンドン大学で教えていたヤン・クナッパートさんをお訪ねしたとき、まだ本になっていないブックレット状態のこの本を見せていただき、翻訳させてもらうことにしました。クナッパートさんは、アフリカ各地の神話・伝説をご自分で収集して、本や事典を出しておられる学者です。

モロッコはイスラム教の国なので、イスラム文化にも触れたおもしろいお話が集めてあります。「丘の上のおばけやしき」「ふしぎなさかな」「愛のカフタン」「ひみつのとびら」「妖精にそだてられたむすめ」「ファディルとハットゥーシャ」「かしこいむすめと砂漠の王さま」「すなおなおよめさん」「アッラーのなさること」が入っています。

(編集:家井雪子さん)

 


カマキリと月〜南アフリカの八つのお話(単行本)

『カマキリと月〜南アフリカの八つのお話(単行本)』
マーグリート・ポーランド作 リー・ヴォイト絵 さくまゆみこ訳
福音館書店
1988.10

南部アフリカの先住民のサンやコーサの人たちの昔話や神話をもとにした動物物語。「小さなカワウソの冒険」「ブアブンの花が散る」「絵かきになったノウサギ」「ジャッカルの春」「ずんぐりイモムシの夢」「サボテンどろぼうはだれだ?」「雨の牡牛」が入っています。訳すとき難しかったのは、動物や植物の和名です。南部アフリカ固有の英語から割り出すのに、文章を翻訳してから丸一年くらいかかりました。最後は著者に特徴やわかるものはラテン名も教えていただきました。当時は電子メールがなかったので、お手紙でやりとりしていました。画像検索も当時はできなかったので、著者に写真を送っていただきました。後書きでポーランドさんは、こう述べています。「この本にのっているお話は、楽しんでもらうことを第一の目的として書きました。けれどもこの本は、サンやコーサなど〈古い人たち〉への賛辞でもあります。かれらの知恵や世界観は、はかりしれないほどわたしをゆたかにしてくれました。かれらのつたえてきたものの中にある、よろこびや魔法のいくつかを、読んでくださるかたたちと分かちあうことができれば幸いです」。2004年には福音館文庫の1冊としてよみがえりました。
(編集:松本徹さん 装丁:加藤光太郎さん 巻末の動物の絵:木村しゅうじさん)

*産経児童出版文化賞


アフリカの子〜少年時代の自伝的回想

『アフリカの子〜少年時代の自伝的回想』
カマラ・ライェ作 さくまゆみこ訳
偕成社
1980.02

西アフリカのギニアでマリンケ人として生まれ育った作家が、少年時代を誇りをこめてふりかえった自伝的小説。鍛冶屋のお父さんの仕事、ワニのトーテムに守られたお母さんの不思議な力、太鼓のひびき、成人になるための儀式、村の日常生活、グリオのパフォーマンスについてなど、おもしろくて興味深い記述にあふれています。(カット:エム・ナマエさん 編集:家井雪子さん)


キバラカと魔法の馬〜アフリカのふしぎばなし

さくま編訳『キバラカと魔法の馬』表紙
『キバラカと魔法の馬〜アフリカのふしぎばなし』
さくまゆみこ編/訳 太田大八/画
冨山房
1979.09

アフリカ各地に伝わる昔話から、不思議なおはなしを自分で選んで訳しました。「恩を忘れたおばあさん」「魔法のぼうしとさいふと杖」「山と川はどうしてできたか」「ヘビのお嫁さん」「力もちイコロ」「動物をこわがらせた赤ん坊」「カワムチと小さなしゃれこうべ」「ワニおばさんの約束」「あかつきの王女の物語」「村をそっくりのみこんだディキシ」「ニシキヘビと猟師」「悪魔をだましたふたご」が入っています。

この本がきっかけで、私は冨山房に入社し編集部で働くようになりました。つまり入って最初に編集したのがこの本だったのです。