In the Heart of the Moon(月の真ん中で)

ミュージシャン:Ali Farka Touré & Toumani Diabat(アリ・ファルカ・トゥーレ & トゥマニ・ジャバテ)
レーベル:World Circuit
(日本版はライス・レコード)

 

 

アリ・ファルカ・トゥーレ(1939-2006)はマリ北部の生まれの、ブルーズを演奏するギタリスト。トゥマニ・ジャバテ(1965-)は、コラ奏者で、マリ南部生まれの伝統的な家系のグリオ。この二人が、マリの首都バマコにあってニジェール川を見下ろすマンデ・ホテルの最上階で録音したアルバムです。北部の民族ソンガイ/プールの曲と、南部の民族バンバラの伝統曲などが入っています。リハーサルなし、編集もなしだそうで、流れるように演奏したままが録音されています。4曲目の「ニャフンケの市長さん」は、ちょうどニャフンケの市長に就任したアリを、グリオのトゥマニが賞賛している曲になっています(グリオはほめ歌を歌ったり演奏したりするのも仕事の一つ)。ちなみに市長になったアリは私財をつぎこんで、地域のインフラ整備に努めたそうです。

アリ・ファルカ・トゥーレはアメリカのブルーズに魅せられて欧米で活躍したミュージシャンですが、音楽で身を立てる前はタクシーの運転手や自動車の整備工もしていたとのこと。トゥマニ・ジャバテは5歳の時からコラ(ヒョウタンに動物の皮を張った21弦の楽器)を弾いていたそうですが、子どもの頃ラジオから流れてくるアリの曲を変わった音楽だなあと思いながら聞いていたと言っています。

このアルバムは2006年にグラミー賞を受賞しますが、アリはすでに亡くなっていて、授賞式に出席できたのはトゥマニだけでした。このアルバムの日本版はライス・レコードから出ています。

以下の動画には、当時の録音風景や2005年にブリュッセルで行ったコンサート風景などが入っています。

トゥマニ・ジャバテは、今年5月に息子のシディキ(トゥマニのお父さんと同じ名前なんですね)と新しいアルバムを出すのですが、そのプロモーションビデオがこちら。トゥマニは700年続くグリオの71代目だそうです。私と同じようにコラの音色が好きな方には、こちらもお薦め。