『鳥よめ』をおすすめします。

今回は絵本をとりあげます。

日本の灯台は、今やすべて無人化されていますが、かつては灯台守と言われる職員が常駐して、灯をともしたり消したり、レンズをみがいたり、故障の修理をしたりして航路の安全を守っていました。この絵本はその灯台守の仕事をしている周平さんが主人公で、民話風に語られています。

「灯台のあかりを消すと、周平さんは、らせん階段をゆっくりおりていきました。右の足を、少しひきずっています」

日本が戦争をしていた時代、周平さんは、子どもの時のけがが原因で右ひざが曲がらず兵隊になれなかったので、苦労の多い灯台の仕事を自ら選んで引き受けています。

ある朝、周平さんの前にほっそりした娘があらわれます。この娘は、以前助けたカモメなのですが、海の神のところにいって人間に姿を変えてもらったのです(ここはちょっとアンデルセンの人魚姫みたいですね)。周平さんと娘は夫婦になりますが、娘は背中にたたんだ翼を一日一回広げて鳥に戻り、空を飛ばないと死んでしまいます。しかも、その時に人に見られてはならないというのです。

娘を大事に思っていた周平さんは、鳥よめに空を飛ぶ時間を保証してやり、その姿を見ることは決してせずに、二人で仲良く暮らしていました。

ところがある日、灯台の守備を任された兵隊が六人もやってきたことから悲劇が始まります。周平さんたちの貧しいながらも幸せな暮らしや、細やかな愛する心の通い合いは、「戦争」という大義名分に踏みつけにされてしまうのです。二人の深い悲しみが、切々と伝わってきます。

子ども時代に太平洋戦争を体験したあまんさんの文章に、山内さんの味わい深い絵がついています。漢字にルビが振ってありますが、小学生より、中学生、高校生に読んでもらいたい絵本です。

(「トーハン週報」Monthly YA 2014年2月掲載)