ハリネズミ:人形の本ってあんまり読んだことがなかったんですけど、今回のは読んでみたら3冊ともおもしろかったです。この本には2編入ってるけど、「バラやしきにようこそ」のほうが私はおもしろかったな。バーバはマトリョーシカ人形なんだけど、日本の子どもも知ってるから、楽しめると思います。夜中に盗み食いするところなんか、いつ見つかるか、いつ見つかるかと、どきどきして読み進むことができるし、つきぬけたユーモアみたいなのがあって、いいですね。2編目のほうは、1編目ほどはおもしろくなくて、続きを書かなくちゃって書いた感じがしました。この本の中のお人形は食べたり飲んだりするのに、おなかがパカッと割れて中から別の人形が出てくるわけだから、おなかの中はどうなってるのかなって不思議でした。変だな、と思う子どもの読者もいるかもしれないな。

カワセミ:食べたり飲んだりしない人形の話っていうのもありますよね。でもこれは、食べるところがおもしろいのよね。お人形っていうのは、顔かたちや着ているものが一定なので、いろいろな人形が出てきても、把握しやすいと思います。だから、中学年くらいの子でも読みやすいんじゃないかな。性格が誇張してあっても、人形だからあまり不思議じゃないし、生身の人間だったらもっと複雑な要素があるけど、性格付けがわかりやすいと思う。人形っていうのが子どもに身近な存在だし、人形が話をするのも、子どもにとっては自然に受け入れられますよね。お話は3,4年生向きだと思うけれど、3年生が読むには字が細かいですね。2編入れないで、最初の1編だけをもっと大きな字にして1冊にしたほうがよかったのかなと思いました。文章はていねいに書かれていて、挿絵もおもしろかった。

ショコラ:2つに分かれていましたが、一気に読んでしまいました。マトリョーシカの態度がおもしろくて謎めいているし、47ページのフルーツケーキの場面、67ページの山のような洗濯をほしてる場面、ロシアの魔女についての話など、どれも楽しめました。私も次から次に出てくる人形が食べ物を食べるのが不思議な感じがして、お話だけど無理っぽいなと思いました。兄弟(姉妹)の名前が変わっていて、食べ物の名前がついてるのも、おもしろいですね。ただ、子どもたちには字が小さいので読みにくいと思います。低学年向きに字を大きくしてほしいな。最初のお話だけでも十分読み応えがあるし、楽しめると思います。装丁が違うと、もっと手に取る子がふえるかなとも思いました。

セシ:私もこれはすごくおもしろかった。12ページに、この家の「だんろの日は、チカチカッとも、ポッとも、もえません。それは火が、しわくちゃの赤い紙でできていたからです。それにおふろにはいっても、じゃぐちからは、お湯もお水もでてきません」と書いてあるのに、あとでお料理してるから、ちょっとあれっと思うけれども、キャラクターがなんとも楽しいし、おもしろく読めました。一方で、バーバがやってきたところで、「わたしは、とにかくよく食べるんです。六にん分くらい、いただくかもしれませんわ」と、ちゃんと伏線があるんですね。みなさんと同じで1編目のほうがおもしろくて、2編目は、ハチミツが帰ってからあとは蛇足っぽくなっているので、どうなんでしょう。内容的には2、3年生から楽しい本だと思うので、1編目だけ大きな字で1冊にしたほうが手にとりやすいですよね。1編目は、男の子の人形のウィリーも中心になって動くので、こんなにピンクの装丁にしなければ男の子も手にとりやすいだろうに、もったいない。

ハリネズミ:2つ目の話はこれが芯だっていう要素がはっきりしないのよね。あちこちに話が広がってしまっている。

セシ:この絵もおもしろいんだけど、フレデリックって、おじいさんの人形のはずなのにあまりにも若々しいから、間違えたかと思って何度も見直してしまいました。65ページのイチゴをとっているところの絵なんか若者みたい。

ハリネズミ:最初からおじいさんの人形ってあんまりいないし、人形だから成長もしないわけでしょ。ここでおじいさんの人形って言ってるのは、古くなった人形っていう意味なんじゃない?

ショコラ:バーバという名前がかわいいですね。

ハリネズミ:ロシアの昔話のバーバヤガーからきているんでしょうね。

ショコラ:海に行ったあとに歌をうたっているけれど、終わりがちょっと中途半端かなと思いました。

ハリネズミ:海に行く途中なのよね。なんとなく楽しい雰囲気で、みんなで海に行きましょうってことなんでしょう。

(「子どもの本で言いたい放題」2009年3月の記録)