アカザ:とってもおもしろく、すらすら読めました。健太とツトムの気持ちも良く書けていると思いました。子どもたちも、楽しめることと思います。でも、なんだか悲しいお話ですね。ロボットって、結局人間のために作られたものだし、『鉄腕アトム』にも「人間のために犠牲になってもいい」というようなところがありますね。けれども、読者は(子どもだけでなく、わたしも)健太だけでなくツトムにも感情移入して読んでしまうから、なんだかツトムはかわいそう、これでいいのかな?という感じが残ります。それから、お母さんが赤ちゃんの写真を隠したところが、ちょっと分かりにくいですね。たまたま弟が見てしまったので仕方なく、ということらしいのですが、弟のほうには丁寧に説明して、お兄ちゃんには内緒にしておくというところが、なんだか納得いきません。

アカシア:私はp67からのその写真のくだりで、ずいぶんとご都合主義的な話だなと思って、それ行以降楽しく読めませんでした。

アカザ:p69で弟が「ぼく、たまたま見つけちゃっただけなんだ……」って、言ってます。

アカシア:たまたま見つけちゃったにしても、ですよ。最初は設定がおもしろいな、と思ってたんですけどね。それに、ツトムのことをだんだん本当の弟のように思っているのに、しょっちゅう「お店に返すぞ」って脅すのもなんだかいやでした。最後に、お店に返しちゃったツトムのかわりに本物の赤ちゃんが生まれるっていう持って行き方も後味が悪い。しかも最後の最後にツトムに「おにいちゃん、だいすき!」なんて言わせているのも、気分が悪かったです。ペットを手に入れても都合が悪いと返しちゃう人と同じみたいで。

レン:おもしろそうなタイトルだし、ところどころに入っている絵もかわいらしくて、子どもが手にとりたくなりそうな本だと思いましたが、最後のところは物語世界の論理が破綻してるかなと思いました。ツトムを返したあと、みんなの記憶は消されてしまうのに、健太だけは覚えているというのは変じゃないかと。だから、手紙をうけとって涙を流すというのは、いいのかなあと思いました。もうだれのことかわからなくて、だけどどこか懐かしい気もする、というようなことならわかるんですけど。

プルメリア:(遅れて登場)弟ロボットを買うことから始まるストリーで、私はおもしろかったです。クラスの子どもたち(小学5年生)に「弟がほしい人いますか?」と問いかけこの作品の紹介をしたところ、読んでみたいという子どもがたくさんいました。作品を読んだ後の感想が楽しみです。

ルパン:この本は、いただいたときに一気読みした時は「よくできたお話でいいなあ」と思ったんです。こういう話って、最後はぜんぶ夢だったなんて夢落ちにしてしまう傾向があるのに対して、これは一貫してロボットを借りたことは事実だったことになっていますよね。そこが気に入ってました。弟がほしくてレンタルロボットを借りてくるけれど、ほんとうに弟ができたらやきもちをやいたりする、っていう小学生の男の子の心の動きはよく書けていると思いました。

アカシア:レンさんが言われて私も気づいたんですが、たしかにお話の世界に破綻がありますよね。だれも、その点に気づかなかったのかな? 挿絵はとてもいいけどね。

アカザ:SFが好きな子どもたちは、こういう矛盾したところをすぐ見つけますよね。賞の審査員も気づかなかったんですかね?

(「子どもの本で言いたい放題」2013年12月の記録)