『部長会議始まります』をおすすめします。

物語は、こんな校内アナウンスで始まる。「四時から、臨時の部長会議を始めます。文化部の部長のみなさんは、大講堂に集まってください」。ここは、私立の詠章学園の中等部。

第一部(部長会機はじまります)は、文化部の部長会議で、美術部が文化祭のために作ったジオラマにだれかがいたずらした事件をめぐって展開する。怒っている美術部の部長、怪しげな部活だと思われて悩んでいるオカルト研究部部長、いろいろなことに自信のない園芸部部長、ミス・パーフェクトと言われる華道部部長、恋をしている理科部部長。会議は紛糾する。犯人はだれなのか? いじめがからんでいるのか? それとも恨みか?

第二部(部長会議は終わらない)は、運動部の部長会議。第二体育室が取り壊されることになり、そこを使っていた部の活動を保証するため、運動場やグラウンドの使用を譲り合わなくてはいけなくなる。はじめのうちはほとんどの部長が、自分の部が損にならないように立ち回ろうとするが、だんだんに解決策を見出していく。卓球部、バスケ部、バレー部、和太鼓部、サッカー部、野球部の各部長に、パラスポーツをやりたいと言う人工関節の生徒もからんで、意外な展開に。

章ごとに語り手が変わるので、それぞれの登場人物についても、「他人はこう見ている」のと「自分はこう思っている」との落差がわかり、立体的に見えて来る。また他人にはうかがい知れない悩みを各人が抱えていることもわかってくる。人は見かけとは違うのだ。

楽しく読めて、読んだ後、まわりの人たちにちょっぴりやさしくなれる学園物語。

(トーハン週報「Monthly YA」2019年4月8日号掲載)