カテゴリー: おすすめ

『ダーシェンカ』表紙

ダーシェンカ 愛蔵版

『ダーシェンカ 愛蔵版』(NF)をおすすめします。

フォックステリアのダーシェンカが、「片手にひょいと載せられるほどの、白い小さなかたまりだった」時から、歩けるようになっても「足を一本見失ってしまい、四本であることをすわりなおして確認しなくてはならな」かったり、なんでもかんでも手当たり次第にかんでしまったり、おしっこの水たまりをあっちこっちに作ったりしながら成長していく過程を、味のある文章と、愛情あふれる写真と、ゆかいなイラストで描写した本。ヒトラーとナチスを痛烈に批判した作家の、日常生活や人となりを知るうえでもおもしろい。

原作:チェコ/13歳から/犬、ペット

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『ネコとなかよくなろうよ』表紙

ネコとなかよくなろうよ

『ネコとなかよくなろうよ』(NF絵本)をおすすめします。

ネコが飼いたいパトリックは、ネコのことならおまかせ、というキララおばさんのところへやってくる。そしてさまざまなネコの種類についての説明を聞き、古代エジプトから現代に至るまでの人びとの、ネコとのつき合い方の変遷を知り、ネコが登場する絵やお話について教えてもらい、ペットとして飼うための秘訣を話してもらう。自分もネコを飼っていた作者が、キララおばさんの姿を借りて、子どもに知っておいてほしいネコについての知識のあれこれを、楽しい絵とともにわかりやすく伝えている絵本。

原作:アメリカ/7歳から/ネコ、古代エジプト

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『父さんが帰らない町で』表紙

父さんが帰らない町で

『父さんが帰らない町で』(読み物)をおすすめします。

12歳の少年ウェイドの父親は、戦争で出征したまま5年たっても戻ってこない。母親とウェイドと兄ジョーの貧しい一家は、金持ちの息子ケイレブのからかいやいじめの対象だ。そんな時、村にやってきた移動遊園地の「恐怖の館」に陳列されている「最後の兵士」を見て、ウェイドは父親と重ね合わせる。ところが、夜中にその「最後の兵士」が現れてジョーに何かをささやいたせいか、ジョーは、移動遊園地を手伝いながら父親を探し、自分も兵士になると言いだす。スリリングな展開で読ませる成長物語。

原作:イギリス/11歳から/戦争、兄弟

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『〈死に森〉の白いオオカミ』表紙

〈死に森〉の白いオオカミ

『〈死に森〉の白いオオカミ』(読み物)をおすすめします。

村には、川向こうの森を丸裸にしてはいけない、という言い伝えがあったのに、人口が増えて農地が足りなくなると、男たちは向こう岸にわたり森を焼き払ってしまう。そこは〈死に森〉と呼ばれるようになり、村人たちを襲うオオカミが次々に現れる。リーダーの巨大な白いオオカミは森を守っていた魔物なのか? 子どものエゴルカが一部始終を見届け、村を救う。ロシアの伝承を下敷きにし、不思議な人びとも登場する、土の香りがする物語。自然と人間の関係を描いた象徴的な寓話としても読める。

原作:ロシア/11歳から/オオカミ、伝説、自然

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『オオカミの旅』表紙

オオカミの旅

『オオカミの旅』(読み物)をおすすめします。

親に守られ、兄弟と競い合いながら子ども時代を過ごしたオオカミのスウィフトは、別の群れに家族を殺されてひとりになってしまう。生存をかけてさまよう間に何度も危険な目にあうが、やがてとうとう自分の居場所を見いだして家族が持てるまでに成長する。ノンフィクションではないが、オオカミの生態をうかがい知ることができるし、巻末には物語のモデルになったオオカミの紹介や、シンリンオオカミの特徴についての説明もある。波乱に満ちたサバイバル物語としても、おもしろく読むことができる。

原作:アメリカ/11歳から/オオカミ、旅、 サバイバル

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『クリスマスの小屋』表紙

クリスマスの小屋〜アイルランドの妖精のおはなし

『クリスマスの小屋』(読み物)をおすすめします。

捨て子だったオーナは長じて働き者になったが、自分の家はなく家族はいない。飢饉に襲われたあるクリスマスイブのこと、年老いたオーナは、食べものは子どもたちに譲ろうと自分は死を覚悟し、丘に登る。すると小さな妖精たちがやってきて、小屋を建ててくれる。それからは、ホワイトクリスマスになるたび、その小屋が孤独な者、悲しみを抱えた者を受け入れてくれるようになったという。すぐれたストーリーテラーが、幼い頃に乳母から聞いた昔話を再話している。挿し絵も幻想的な雰囲気を伝えている。

原作:アメリカ/9歳から/クリスマス、妖精、昔話

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『ウサギとぼくのこまった毎日』表紙

ウサギとぼくのこまった毎日

『ウサギとぼくのこまった毎日』(読み物)をおすすめします。

先生から預かったウサギのユッキーのせいで、トミーの一家は大騒ぎ。俳優のお父さんが仕事をもらえそうだったのに、ユッキーが主役俳優のズボンにおしっこをひっかけてダメになったり、トミーがユッキーを散歩させていたら犬たちに囲まれてしまったり、庭でユッキーとお茶会をしていた妹が風邪をひいてしまったり……。でも、そのユッキーが逃げ出してトミーが必死で探し出したときから、一家にもなんだか運が向いてきた。厄介なウサギを抱えた少年と一家の日常を、ユーモアたっぷりに描く楽しい物語。

原作:イギリス/9歳から/ウサギ、ペット、 家族

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『せんそうがやってきた日』表紙

せんそうがやってきた日

『せんそうがやってきた日』(絵本)をおすすめします。

おだやかな日常の暮らしのなかに、戦争がやってきた。女の子はひとりで逃げる。そしてようやく難民キャンプにたどりつくが、そこにも戦争が追いかけてきて、女の子の心を占領してしまう。ふと窓の向こうを見るとそこは学校。女の子は入ろうとするが、いすがないと先生に拒絶されてしまう。ところが女の子が小屋で寝ていると、学校にいた子どもたちがいすを持ってきて、一緒に学校へ行こうと誘ってくれた。オリジナリティのある視点で、戦争が子どもの心身をむしばむ様子と、子どもたちが助け合う姿を伝えている。

原作:イギリス/7歳から/戦争、難民、学校、 友だち

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『ステラとカモメとプラスチック』表紙

ステラとカモメとプラスチック〜うみべのおそうじパーティー

『ステラとカモメとプラスチック』(絵本)をおすすめします。

おばあちゃんと海辺で暮らすステラは、カモメのミューと仲よしだ。ある日ミューの元気がないので獣医さんに診てもらうと、おなかにプラスチックが詰まっていることがわかった。ステラは、鳥や動物がプラスチックゴミの被害を受けないように、まわりの人に声をかけ、プラスチック包装をしているチョコレート会社に手紙を出し、みんなでおそうじパーティーをすることに。カモメを登場させることによって、小さな子どもにもプラスチックゴミの問題をわかりやすく伝えている。巻末に補足説明もある。

原作:イギリス/3歳から/海、プラスチック、カモメ、海浜清掃

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『ありがとう、アーモ!』表紙

ありがとう、アーモ!

『ありがとう、アーモ!』(絵本)をおすすめします。

アーモ(おばあちゃん)が作っている夕ごはんのシチューのにおいがあたりにただようと、トントンとドアをたたく音。やってきたのは男の子。つづいて、おまわりさん、ホットドッグ屋さんにタクシーの運転手さん、お医者さん、絵かきさん……しまいに市長さんまでやってきた。みんなにシチューをふるまったアーモのお鍋は、夕ごはんの時には空っぽに。でも、うれしいサプライズが待っていた。コラージュを用いた楽しい絵とお話が、近所同士の思いやりを伝えている。おまわりさんや市長さんが女性なのも新鮮。

原作:アメリカ/3歳から/シチュー、近所づきあい

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『戦場の秘密図書館』表紙

戦場の秘密図書館〜シリアに残された希望

『戦場の秘密図書館』(NF)をおすすめします。

内戦下のシリア南部にあるダラヤは、政府軍に完全封鎖されて激しい空爆を受け、食料や物資が不足していた。そのなかで、若者たちは破壊された家や瓦礫のなかから本を集めて地下に秘密図書館を作り、人びとの心に希望の灯を点していく。英国人ジャーナリストによるドキュメンタリーを、毎日新聞の記者が子ども向けに編集し訳している。内戦下にあるシリアの状況がリアルに伝わるだけでなく、本や図書館の本質的な役割とはなにかを考えさせてくれる。「頭や心にだって栄養が必要」という言葉がひびく。

原作:イギリス/8歳から/シリア 図書館 内戦 本

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

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『ミイラ学』表紙

ミイラ学〜エジプトのミイラ職人の秘密

『ミイラ学』(NF絵本)をおすすめします。

王室御用達のミイラ職人の一家を主人公にして、王妃の父イウヤの遺体をミイラにしていく様を、絵と文章で表現した絵本。どんな材料や器具が使われ、どのような手順でミイラに加工されていったか、葬儀はどのように行われたのか、などがとても具体的に紹介されている。後書きには、ミイラ学の歴史や、イウヤとその妻チュウヤのミイラ(写真もある)が発見されたときの様子などが記されていて、興味深い。発掘調査にかかわる技術画を専門にしていた著者の、古代エジプト風の絵も趣をそえている。

原作:アメリカ/8歳から/古代エジプト ミイラ 葬儀

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

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『プラスチック プラネット』表紙

プラスチックプラネット〜今、プラチックが地球をおおっている

『プラスチックプラネット』(NF絵本)をおすすめします。

身の回りに氾濫するプラスチック製品について考えてみようと呼びかける絵本。プラスチックとはなにか、プラスチックの利点と問題点、暮らしのなかでどう使われているか、どんなふうに普及してきたか、マイクロプラスチックやマイクロビーズについて、プラスチックゴミの野生生物や人体への影響などを、イラストや写真を交えてさまざまな観点から解説し、プラスチックごみがあふれる今、私たちになにができるかという具体的な案も提示している。見開きごとに1トピックになっていて、わかりやすい。

原作:イギリス/8歳から/プラスチック ごみ 地球

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

 

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『映画ってどうやってるくるの?』表紙

映画ってどうやってつくるの?

『映画ってどうやってつくるの?』(NF絵本)をおすすめします。

映画はどうやって制作されているのかを、子どもにもわかるように概説した絵本。まずモーション・キャプチャーという技法の紹介で読者を引きつけておいて、19世紀に写真が発明されると、今度はその写真を動かす方法が考案された歴史を伝えていく。撮影前から撮影後までの過程でどのような仕事をどのような人たちが担っているのか、アニメーション映画はどう作るのかなどについても述べられている。音作りやソーマトロープなどを体験してみるページや、考えてみることを促すページもあり、楽しみながら学べる。

原作:オランダ/8歳から/映画 撮影 アニメーション

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

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『飛ぶための百歩』表紙

飛ぶための百歩

『飛ぶための百歩』(読み物)をおすすめします。

5歳で失明したルーチョは、叔母に連れられてよく旅行やハイキングに出かけるが、コンプレックスも自尊心も人一倍強く、善意の援助を拒否して周囲とぶつかることも多い。一方、山小屋の娘のキアーラは、人づき合いが苦手だ。ある日一緒にワシの巣を見に行ったルーチョとキアーラは、密猟者からひなを守ろうとすることでぎこちなさがほぐれ、真の自分を見せ合えるようになる。居場所をうまく確保できない子どもたちの出会いと衝突、盲目の人が感じる世界、密猟者の問題など要素がいろいろあって、ぐんぐん読ませる。

原作:イタリア/12歳から/盲目 ワシ 山 密猟

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

 

 

 

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『ほんとうの願いがかなうとき』表紙

ほんとうの願いが かなうとき

『ほんとうの願いがかなうとき』(読み物)をおすすめします。

父親は拘置所、母親は育児放棄という環境で、何事にも自信が持てなくなっていた少女チャーリーは、姉とも離れ、母親の姉夫婦のところでしばらく暮らすことになる。最初はすべてが気に入らずすぐにカッとなっていたチャーリーだが、包容力のある伯母夫婦や転校先の学校で出会った忍耐強いハワードに助けられ、自分になついてくれた野良犬のウィッシュボーンの存在を支えにして変わっていく。孤独な少女がしだいに心を開き、心のありどころや居場所を見つけていくまでの様子がていねいに温かく描かれている。

原作:アメリカ/10歳から/犬 友だち 願い

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

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『この海を越えれば、わたしは』表紙

この海を越えれば、わたしは

『この海を越えれば、わたしは』(読み物)をおすすめします。

主人公のクロウは、赤ちゃんの時に流れ着いた島で、画家のオッシュに拾われ育てられている。しかし12歳になったクロウは、自分はどこから来たのか、なぜひとりで小舟に乗っていたのか、この島に住む人たちがなぜ自分を避けているのか、などを知りたいと思うようになる。身の回りの謎を解きながら自分のルーツをつきとめようとする少女の物語に、ハンセン病への偏見がからむ。世間から離れて生きようとするオッシュや、近所でひとり暮らしをするミス・マギーが、血縁の家族以上にクロウを思いやる姿が温かい。

原作:アメリカ/10歳から/ルーツ ハンセン病 非血縁の家族 海

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

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『希望の図書館』表紙

希望の図書館

『希望の図書館』(読み物)をおすすめします。

舞台は1946年のアメリカ。母親が死去した後、父親と南部のアラバマから北部のシカゴへ引っ越してきたアフリカ系の少年ラングストンは、学校では「南部のいなかもん」とバカにされ、いじめにもあう。そんなとき、誰もが自由に入れる公共図書館を見つけ、そこで自分と同名のアフリカ系の詩人ラングストン・ヒューズの作品に出会い、その生き方にも触れる。本を窓にして世界を知り、しだいに自分の居場所や心のよりどころを見つけていく少年の姿が生き生きと描かれている。随所でヒューズの詩が紹介されているのもいい。

原作:アメリカ/10歳から/図書館 名前 詩 いじめ

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

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『ヤナギ通りのおばけやしき』表紙

ヤナギ通りのおばけやしき

『ヤナギ通りのおばけやしき』(読み物)をおすすめします。

ハロウィンの夜の楽しい物語。リリーとビリーは、小鬼に変装してお菓子をもらいに、ヤナギ通りの家をまわることにする。ところが誰も住んでいないはずの「おばけやしき」に明かりがついているではないか。ふたりがチャイムを鳴らすと、中から出てきたおじいさんが、子どもたちを招き入れ、手品を見せてくれる。そのうち他の家の子どもたちもやってきて、家の中はいっぱいに。やがて、子どもを探しにやってきた親たちも加わり、パーティが始まる。ふんだんに入っている絵にも味がある。

原作:アメリカ/6歳から/ハロウィン 手品 パーティ

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

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『ねこと王さま』表紙

ねこと王さま

『ねこと王さま』(読み物)をおすすめします。

主人公の王さまは、友だちのネコと、12人の召使いと一緒に立派なお城に暮らしていた。ところがある日、火を吹くドラゴンのせいでお城が火事になり、召使いたちはやめていき、王さまも小さな家に引っ越すことに。王さまはひとりではなにもできないので、有能なネコにひとつひとつ教わって庶民の生活の知恵を身につけていく。王さまがロイヤルとかキングと名のついたものにこだわるのも、となりの人たちとの交流も、最後はコーラのボトルでドラゴンをやっつけるのもゆかい。文・絵ともにユーモアたっぷりな展開が楽しめる。

原作:イギリス/6歳から/王さま ネコ ドラゴン

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

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『ちいさなタグボートのバラード』表紙

ちいさなタグボートのバラード

『ちいさなタグボートのバラード』(絵本)をおすすめします。

ノーベル文学賞を受賞した詩人がソ連の児童向け雑誌に発表した詩を、国際アンデルセン賞を受けた画家が絵本に仕立てた作品。港で他の船の水先案内をしなければならないタグボートが主人公。外国から来る船を見て、どこか遠くへ行きたい願望はつのるものの、自分は港にとどまって役目を果たさなくてはならないという切ない思いをうたっている。絵の構図や場面ごとの変化、想像が豊かにはばたいていく展開に、画家の力量が発揮されている。中高生が読めば、もう一段深い味わい方もできるだろう。

原作:ロシア/8歳から/タグボート 海 あこがれ

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

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『アンネのこと、すべて』表紙

アンネのこと、すべて

『アンネのこと、すべて』(NF)をおすすめします。

アンネは、ドイツに生まれたが、ヒトラーの脅威にさらされてオランダに移住する。そのオランダにもナチスの影が迫ってきて、隠れ家に身を潜める。しかし、2年後に見つかって強制収容所に連行され、命を落とす。そうした生涯を、写真とイラストをふんだんに使って紹介している。随所にはさまれたカラーのハーフページには、歴史的な事実や、隠れ家の見取り図や、オランダのナチについての解説など付随する情報が載っている。アンネの生涯は、世界じゅうで迫害されている子どもの象徴として記憶にとどめておきたい。

原作:オランダ/10歳から/アンネ・フランク ホロコースト 隠れ家

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『私はどこで生きていけばいいの?』表紙

私はどこで生きていけばいいの?

『私はどこで生きていけばいいの?』(NF写真絵本)をおすすめします。

世界の難民や避難民の子どもたちの望みや不安を、写真と簡潔な文章で紹介する絵本。写真は、国連難民高等弁務官事務所が提供するもので、クロアチア、ハンガリー、ルワンダ、レバノン、イラク、南スーダン、ヨルダン、ギリシャ、ミャンマー、ニジェールなどで撮影されている。「『こんにちは。ここで安心して暮らしてね』と、笑顔でむかえてくれる人がいますように。あなたもそのひとりでありますように。」という、最後の場面に添えられた言葉に、本書の意図が集約されている。

原作:カナダ/8歳から/難民 子ども 旅

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『しぜんのかたちせかいのかたち』表紙

しぜんのかたち せかいのかたち〜建築家フランク・ロイド・ライトのお話

『しぜんのかたち せかいのかたち』(NF絵本)をおすすめします。

ライトは、幼年時代に積み木で遊ぶことによって「形」の秘密に気づき、自然の中で過ごすことによって「形」の不思議に魅せられた。そして建築家となって、自然を切り離すのではなく自然に溶け込む建物をつくりだした。後年スキャンダルにも見舞われるが、この絵本では幼年時代・少年時代を描くことによってポジティブな面に光を当て、彼がどのような建築をめざしたかを、味わいの深い絵とともに提示している。作中に描かれた建築物が何かを説明するページもある。

原作:アメリカ/8歳から/建築 自然 形 伝記

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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M.G.ヘネシー『変化球男子』

変化球男子

『変化球男子』(読み物)をおすすめします。

シェーンは、女性の体をもって生まれたが自分は男性だと思い、男子として転校してきた今の学校では野球のピッチャーとして活躍している。だがある日、転校前は女子だったことがばれそうになる。シェーンを敵視するニコや、無理解な父親がつくる壁も厚い。でも親友のジョシュがいつも隣にいるし、母親は理解しようと努力してくれるし、トランスジェンダーの先輩アレハンドラは励ましてくれる。自分の存在に違和感を持つ子どもが、試練をのりこえていく様子が生き生きと描かれている。

原作:アメリカ/10歳から/野球 トランスジェンダー 親

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『ふたりママの家で』表紙

ふたりママの家で

『ふたりママの家で』(絵本)をおすすめします。

「わたし」の家は、ふつうとはちょっと違う。医者のミーマと救急救命士のマーミーというふたりの母親に、それぞれ肌の色が違う子どもが3 人。だれも血はつながっていないけれど楽しい家族だ。近所の人に家族の悪口を言われて子どもが脅えると、母親たちは「あの人は(中略)わからないものが怖いの」と話す。養女として迎えられ愛情たっぷりに育ててもらった「わたし」が、ふたりの母親と弟、妹と過ごしたすばらしい日々を語る。多様な家族の形を知るきっかけとなる作品。

原作:アメリカ/8歳から/家族 母親 養子

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『かあちゃんのジャガイモばたけ』表紙

かあちゃんのジャガイモばたけ

『かあちゃんのジャガイモばたけ』(絵本)をおすすめします。

戦争するふたつの国の境に住む母親は、ふたりの息子とジャガイモ畑を守るために高い塀を築き、日常の暮らしを続ける。ところが大きくなった息子たちは塀の外を知りたくなって出ていき、やがて兄は東の国の将軍に、弟は西の国の司令官になってしまう。そしてついに両国の軍隊は母親の畑にも攻め入るのだが、賢い母親はジャガイモを使って戦争をやめさせる。戦争と平和について考える種をくれる作品。1982 年に出た『じゃがいもかあさん』の、版元と訳者をかえたカラー版。

原作:アメリカ/8歳から/母親 戦争 平和

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『子ネコのスワン』表紙

子ネコのスワン

『子ネコのスワン』(絵本)をおすすめします。

ママや兄弟をなくしてひとりぼっちになった子ネコが、雨に打たれたり、犬にほえられたり、自転車にひかれそうになったり……。木に登っておりられなくなった後に施設に保護され、やがてかわいがってくれる一家に迎えられ、スワンという名前もつけてもらう。スワンは落ち着いた環境のなかで、好奇心いっぱいに歩き回り、家族とのつき合い方を学んでいく。幸せな終わり方にホッとできるし、スワンのさまざまな姿を描く絵もあたたかい。人間に置き換えて読むこともできる。

原作:アメリカ/6歳から/ネコ 家族 孤児

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『きのうをみつけたい!』表紙

きのうをみつけたい!

『きのうをみつけたい!』(絵本)をおすすめします。

昨日がとても楽しかったと思う男の子が、なんとかして昨日に戻りたいと考える。光より速く動けば昨日に戻れるのかな? でも、それにはどうしたらいい? 男の子がたずねると、おじいちゃんは自分の体験を話し、これからだって楽しい日は来るよ、と教えてくれる。そしてふたりで「きょうの ぼうけん」に出発する。タイムマシンやワームホールまで登場させる科学的な思考と並んで、絵にはふしぎな想像の世界のあれこれが描かれている。じっくりながめるだけでも楽しい。

原作:イギリス/6歳から/時間 祖父 楽しい記憶

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『このねこ、うちのねこ!』表紙

このねこ、うちのねこ!

『このねこ、うちのねこ!』(絵本)をおすすめします。

旅に出た白ネコが、とある村にたどりつく。そして、村の7 軒の家を次々に回って食べ物をもらい、家ごとに別の名前をつけられる。ある日、この村に役人がやってきて、ネズミ退治のためにどの家でもネコを飼うように法律で決まったと伝える。村人たちは口々に、うちは○○という名のネコを飼っていると言うのだが、役人はネコを見せろと迫る。困った村人たちは同じネコだとばれないように一計を案じて……。原書は1979 年刊だが、お話も絵もユーモラスで楽しい。

原作:アメリカ/3歳から/ネコ 計略 ユーモア 名前

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『カタカタカタ』表紙

カタカタカタ〜おばあちゃんのたからもの

『カタカタカタ』(絵本)をおすすめします。

女の子のおばあちゃんは、昔ながらの足踏みミシンでいろいろなものを作ってくれる。でもある日、女の子の劇の衣装を縫っているときにミシンが故障して、修理屋でも直せない。それでも、おばあちゃんは夜遅くまでかかって、手縫いで衣装を間に合わせてくれた。「ほんとうに すごいのは カタカタカタじゃなくて、おばあちゃんだったのね。」という言葉がいいし、壊れたミシンが、テーブルにリフォームされる最後にも納得できる。ユニークな絵と文で、おばあちゃんと女の子のあたたかい交流を伝えている。

原作:台湾/3歳から/ミシン 祖母 リフォーム

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『マララのまほうのえんぴつ』表紙

マララのまほうのえんぴつ

『マララのまほうのえんぴつ』(NF絵本)をおすすめします。

誰かが声を上げないと、と感じたとき、パキスタンの少女マララは、「まって……、だれかじゃなくて、わたし?」と、ネットでの発信を始める。その後銃撃されて瀕死の重傷を負ったマララは、回復するとさらに歩みを進める。そして、小さいころ夢見ていた魔法の鉛筆は、自分の言葉と行動のなかにあるのだと確信する。ノーベル平和賞を受けたマララの本はたくさん出ているが、この絵本は彼女が自分の言葉で文章をつづっている。流れもスムーズでわかりやすい。

原作:アメリカ/6歳から/マララ、魔法、言葉、学ぶ権利

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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『すごいね!みんなの通学路』表紙

すごいね! みんなの通学路

『すごいね! みんなの通学路』(NF写真絵本)をおすすめします。

他の国の子どもたちは、どんな道を通って学校に行くのかな? スクールバスに乗る子もいるけど、ボートや犬ぞりや、ロバとか牛に乗って通っている子もいるよ。ちゃんとした道や、ちゃんとした橋がないところを通っていく子もいるね。水を入れたたらいや机をかついで行く子もいる。国際慈善団体で働いてきた著者が、日本、フィリピン、カンボジア、中国、ミャンマー、ガーナ、ウガンダ、ハイチ、コロンビアなど、世界各地の通学する子どもたちを写真で紹介する絵本。

原作:カナダ/6歳から/学校 通学路 子ども 写真絵本

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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『ゴードン・パークス』表紙

ゴードン・パークス

『ゴードン・パークス』(NF絵本)をおすすめします。

『ヴォーグ』や『ライフ』で活躍した黒人カメラマンを紹介する絵本。貧困や差別によって何度も希望を打ち砕かれそうになったゴードンは、逆境の中で貯めたお金で中古カメラを買い、人生を変えていく。カメラマンとしてだんだんに仕事が増えてきたある時、何を撮ってもいいと言われたゴードンは、差別を受けている側の人たちを次々に撮る。ビル清掃員のエラ・ワトソンが、アメリカの国旗とモップを背にほうきを持って立っている写真は、ゴードンの代表作のひとつだ。セピアを基調にした絵がいい。

原作:アメリカ/6歳から/カメラ、アメリカ、人種差別

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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『ぼくたち負け組クラブ』表紙

ぼくたち負け組クラブ

『ぼくたち負け組クラブ』(読み物)をおすすめします。

6年生のアレックは、大の本好き。授業も聞かずに本を読むので、しょっちゅう先生に注意されている。放課後プログラムで、ひとりで好きな本を読むために「読書クラブ」を作ることにしたアレックは、誰も来ないように、わざと「負け組クラブ」という名をつけて登録。しかし、次々にメンバーが増え、思いがけないことが起こる。アレックは、いやでもさまざまな大人や子どもとかかわりを持つことになり、世界が開けていく。いろいろな本が登場するのも楽しい。

原作:アメリカ/10歳から/本、読書、放課後

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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『テディが宝石を見つけるまで』表紙

テディが宝石を見つけるまで

『テディが宝石を見つけるまで』(読み物)をおすすめします。

吹雪の中で迷子になったふたりの子どもを見つけて助けたのは、テディという犬だった。テディは、人間の言葉が話せて、だれもいない家に住んでいる。言葉は、今はいない飼い主の、詩人のシルバンさんから習ったという。雪に閉ざされた家の中で、「きみは宝石を見つけるだろう」と言い残していなくなったシルバンさんについて、テディは語る。やがて道路が復旧し、テディは「宝石」を見つける。犬が語るという視点で描かれたユニークな物語。

原作:アメリカ/10歳から/犬 吹雪 子ども 詩

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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『この本をかくして』表紙

この本をかくして

『この本をかくして』(絵本)をおすすめします。

町が空爆されて避難する途中で、ピーターが死ぬ間際の父親から託されたのは1冊の本。それは破壊された図書館から借りていた本で「金や銀より大事な宝だ」という。鉄の箱に入った本は重たくて、抱えて高い山を登るのは無理だ。ピーターはやがてその本を大木の根元に埋めて隠し、さらに先へと進む。移住先で大人になったピーターは、戦争が終わると大木の根元から本を掘り出し、故郷の町に戻って、新しく建てられた図書館にその本を置く。本や図書館について考えさせられる作品。

原作:オーストラリア/6歳から/本 図書館 戦争

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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『ぽちっとあかいおともだち』表紙

ぽちっとあかいおともだち

『ぽちっとあかいおともだち』(絵本)をおすすめします。

シロクマの子ミキが雪原を走っていくと、むこうにぽちっと赤いものが……。近寄ってみると、それは赤いコートを着た女の子だった。ミキは、女の子と遊んだり、女の子がなくした手袋を探してあげたりして、一緒に楽しい時間を過ごす。やがて女の子はお母さんと出会い、ミキも母クマと出会うという幸せな終わり方がいい。マックロスキーの『サリーのこけももつみ』を思わせる展開だが、本書は白と赤と青を基調とした絵が印象的で、リズミカルな訳もいい。

原作:イギリス/3歳から/シロクマ 女の子 友だち

シロクマ 女の子 友だち

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『なずずこのっぺ?』表紙

なずずこのっぺ?

『なずずこのっぺ?』(絵本)をおすすめします。

春になって地面から顔を出した小さな緑の芽が、ずんずん伸びて、花を咲かせ、しおれ、枯れてなくなる、という四季の移り変わりにあわせて、さまざまな虫たちや自然のドラマが展開していく。絵を細かく見ていくと、季節の変化にしろ虫たちのやりとりにしろ、さまざまな発見があって楽しい。「昆虫語」の言葉は、声に出してみると、不思議なリズムがあってとても愉快。ひとつひとつの言葉の意味を考えてみるのもおもしろいし、絵も美しい。

原作:イギリス/3歳から/昆虫 四季 自然 ふしぎ

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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『あおのじかん』表紙

あおのじかん

『あおのじかん』(絵本)をおすすめします。

太陽が沈んでから夜がやってくるまでの「青の時間」には、青い色の生き物たちが、いっそう美しくなる。この絵本は、世界各地にいるアオカケス、アオガラ、モルフォチョウ、ヤグルマギク、ブルーモンキーといった、青い色の(あるいは青く見える)小鳥、獣、カエル、チョウチョウ、花、虫、水鳥などを、シンプルな言葉とともに次々に紹介していく。読者は、さまざまな色調の青い色を体験できる。最後は、夜の闇がすべてを包み込む場面で、生き物たちはシルエットになっている。

原作:フランス/3歳から/青 生き物 闇

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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『ダイエット幻想』表紙

ダイエット幻想~やせること、愛されること

『ダイエット幻想』(NF)をおすすめします。

やせるためのダイエット法はさまざまなものが喧伝されているが、本書は、それを非難したり批判したりするものではない。文化人類学者である著者は、女性が「やせた」とか「かわいい」とか思われたくてダイエットに励むという状況の裏側に何があるのかをさぐっていく。そこからは、女性に子どもっぽさを求める日本の社会、「選ばれる性」「愛される側」にとどまる女性、頭にためこんだ知識にとらわれて生きる力を失ってしまう現代人など、さまざまな問題点が浮き彫りになってくる。例も豊富でわかりやすい。

13歳から/ダイエット 愛 かわいさ 摂食障害

 

Diet Fantasies: Lose Weight, Be Loved

The world is full of diet methods that come and go. This book does not negate or critique them; rather, the author, a cultural anthropologist, considers why Japanese women are encouraged to diet, thinking that they want to “slim down” or “be cute.” What is behind this? Japanese society’s fixation on childlike women; the tendency to see women as passive, “chosen” (or not) or “loved” (or not); the loss of power to live when eating based on facts accumulated in one’s head. Many issues come up with plentiful examples, all presented in understandable text. (Sakuma)

  • text: Isono, Maho | illus. Harada, Arisa
  • Chikuma Shobo
  • 2019
  • 224 pages
  • 18×11
  • ISBN 9784480683618
  • Age 13 +

Diet, Love, Cuteness, Eating disorders

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『オランウータンに会いたい』表紙

オランウータンに会いたい

『オランウータンに会いたい』(NF)をおすすめします。

著者は、野生のオランウータンを調査・研究している学者。本書は、オランウータン研究者になった動機、ボルネオでの調査のやり方、オランウータンの生態、チンパンジーとは違う群れない生き方、絶滅の危機と私たちにできること、親子関係に見る人間やほかのサルとの違いといったことを、わかりやすい文章で伝えている。オランウータンについていろいろと知ることができるだけでなく、私たち日本人の暮らしとオランウータンが暮らす東南アジアの森が密接につながっていることにも目を向けさせてくれる。

11歳から/オランウータン ボルネオ ジャングル 絶滅危惧

 

I Want to Meet an Orangutan

Written by a Japanese scientist who studies wild orangutan, the text is very easy to follow. Readers learn what motivated the author to study orangutan, how she conducts fieldwork in Borneo, the ecology of orangutan, the fact that they are an endangered species, and what we can do to help them. The author also explores the differences between orangutan and chimpanzees, which live in groups, and differences in the parent-child relationships of orangutan as compared to humans and other ape species. Not only do we gain a deeper knowledge of orangutan, but we also learn how our own lifestyle is intricately connected to their habitat, the forests of southeast Asia. The author urges us to not only buy products that are good for us, but ones that are good for the environment of the whole planet. (Sakuma)

  • text: Kuze, Noko | illus. Akikusa, Ai
  • Akane Shobo
  • 2020
  • 188 pages
  • 22×16
  • ISBN 9784251073105
  • Age 11 +

Orangutan, Borneo, Jungle, Endangered species

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『わたしたちのカメムシずかん』表紙

わたしたちのカメムシずかん~やっかいものが宝ものになった話

『わたしたちのカメむしずかん』(NF絵本)をおすすめします。

カメムシは触ると臭いから嫌いという人も多い。ところが、この嫌われ者の虫に夢中になり、もっともっと知りたくなり、1年間に35種類も集めて自分たちでカメムシ図鑑まで作り、やがてカメムシは宝だと言うようになった子どもたちがいる。この絵本は、岩手県の山あいにある小さな小学校での実話に基づき、どうしてそんなことになったのかを楽しい絵とわかりやすい文章で紹介している。カメムシにはさまざまな種類があることもわかるし、カメムシはどうして臭いのか、どうして集まるのかについても、説明されている。

9歳から/カメムシ 図鑑 観察

 

Our Stink Bug Book

Stink bugs (shield bugs) are often seen as smelly pests, but in the town of Kuzumaki in northern Iwate prefecture, children got excited about them and wanted to know more. They gathered specimens of some 35 types over a year’s time, and they created an encyclopedia. Now they think the stink bugs are great! This picture book uses enjoyable illustrations and easy-to-understand text to tell us how the students’ project came about. The book also offers basic information about stink bugs, why they give off odors, and why they form groups. The backmatter offers space for readers to begin their own encyclopedias. (Sakuma)

  • text: Suzuki, Kaika | illus. Hata, Koshiro
  • Fukuinkan Shoten
  • 2020
  • 44 pages
  • 26×20
  • ISBN 9784834085525
  • Age 9 +

Stink bug, Encyclopedia, Observation

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『やとのいえ』表紙

やとのいえ

『やとのいえ』(NF絵本)をおすすめします。

石の十六羅漢さんが語るという体裁で、谷戸に建てられた一軒の農家と、それを取り巻く環境の、150年にわたる変化を伝えている絵本。水田や麦畑や林に囲まれていたかやぶき屋根の家は、今やモノレールやデパートやマンションやアパートに囲まれた瓦屋根の家に変わっている。農作業、子どもの遊び、お祭り、嫁入り、葬儀、開発の様子など人間の暮らしばかりでなく、ある時期までは野鳥や野生の動物も羅漢さんをしばしば訪れていたことも、ていねいな絵が伝えている。巻末には詳しい解説があって、モデルになった多摩丘陵の変遷もわかる。

9歳から/家 開発 都市化 十六羅漢

 

Yato Home

This picture book portrays 150 years in the life of a farmhouse in a yato area, with gently sloping hills and valleys. The book is narrated by stone statues of the sixteen arhats (disciples of the historical Buddha) that stand nearby. The farmhouse with thatched roof is first surrounded by rice paddies, fields, and forests; later, it becomes enclosed by a monorail, department store, and condominiums and apartment buildings. It is given a tiled roof. Planting and threshing processes, children’s play, festivals, weddings, funerals, and development are all depicted in detail. Until a certain period, wild birds and animals also visit the stone statues. The backmatter contains detailed explanations, including about the Tama Hills in southwest Tokyo/northeast Kanagawa, which served as the model for this book. (Sakuma)

  • text/illus. Yatsuo, Keiji | spv. Senni, Kei
  • Kaiseisha
  • 2020
  • 40 pages
  • 22×31
  • ISBN 9784034379004
  • Age 9 +

Home, Development, Urbanization, Sixteen arhats

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『虫のしわざ図鑑』表紙

虫のしわざ図鑑

『虫のしわざ図鑑』(NF)をおすすめします。

植物の葉や枝や実に、虫がかじった跡がないだろうか? 虫が生きるための活動の痕跡を本書では「虫のしわざ」と呼び、見た目から、あみあみ、かじかじ、すけすけ、てんてん、まきまきなど16種類に分類し、写真と文章で紹介している。たとえば葉に「あみあみ」模様を見つけたら、本書の写真と見くらべれば、何の虫が何をした跡かがわかる仕組み。また「しわざコレクション」として、卵や糞、脱け殻やクモの網などについてコラム風にまとめている。昆虫写真家ならではの、おもしろい切り口の図鑑。

9歳から/虫 葉 卵 糞

 

Enclopedia of Insect Signs and Works

Have insects left any chew marks on leaves, branches, or fruit near you? Have you seen eggs, nests, or galls? This book divides common signs of insect activity into sixteen fun types, such as “chew-through,” “see-through,” “wrap-wrap,” “tent,” and more, and presents the activity in photos and text. The book is made so that, for example, if children find a leaf with one of the designs shown, they can compare it to the book and find out which insect was at work. Objects such as eggs, dung, husks, spiderwebs, and cocoons are also introduced in column-like format. An encylopedia-picture book with a fresh approach, created by a specialist in insect photography. (Sakuma)

  • text/photos: Shinkai, Takashi
  • Shonen Shashin Shimbunsha
  • 2020
  • 160 pages
  • 21×19
  • ISBN 9784879816924
  • Age 9 +

Insects, Leaves, Eggs, Dung

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『タコとイカはどうちがう?』表紙

タコとイカはどうちがう?

『タコとイカはどうちがう?』(NF)をおすすめします。

食卓でもおなじみのタコとイカ。どちらも頭足類だけど、どこが似ていてどこが違うのだろう? この絵本では、両者がさまざまな角度から比較されている。足の数など見た目の違いから、獲物のとらえ方、スミの吐き方、すんでいる場所や活動の場所、敵から身を守る方法、体の色の変え方、子育ての仕方、赤ちゃんたちのサバイバル方法に至るまで、いろいろ比べて写真とイラストと文章で楽しく伝えている。長い腕をポケットにしまうイカがいるとか、タコは道をおぼえていて迷子にならないなど、びっくり知識も豊富。

9歳から/タコ イカ 海

 

What’s the Difference between Octopus and Squid?

Octopus and squid appear often on Japanese tables. Both are cephalopods (like heads on legs!) with soft bodies, but how are they different? This picture book compares them from several angles. From differences that we can see with our eyes (number of legs) to differences in how they catch prey and release ink, where they live, how they protect themselves from their enemies, how they change color, how they parent, and even how their babies survive, we get the full story in photos, illustrations, and text. Did you know that some squid can put their long arms in pockets? Or that an octopus can memorize routes and not get lost? Did you know that the squid and the octopus both have multiple hearts, big and small? Many surprising facts fill this book. (Sakuma)

  • text: Ikeda, Natsumi | photos: Minemizu, Ryo | spv. Sugimoto, Chikatoshi
  • Poplar
  • 2020
  • 32 pages
  • 22×29
  • ISBN 9784591163504
  • Age 9 +

Octopus, Squid, Ocean

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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長倉洋海『さがす』表紙

さがす

『さがす』(NF写真絵本)をおすすめします。

作者は、世界各地の子どもたちの写真を撮りながら、「人はなんのために生まれてきたのか」「自分の居場所はどこなのだろう」「生きる意味とは何なのだろう」と考え続けてきた。その答えを探して弾丸の飛び交うアフガニスタンやコソボ、極寒のグリーンランド、灼熱のアラビア半島など、さまざまな環境のなかでさまざまな生き方をしている人びとに出会ってきた。その旅路の果てに、「さがしていたものは、いま、自分の手の中にある」と語る。心にひびく写真と言葉を味わいながら、読者も一緒に考えることができる写真絵本。

9歳から/世界 幸せ 生きる意味

 

Search

Photojournalist Nagakura has taken photos of children the world over while asking, “Why were humans born?” “Where do we belong?” “What is the meaning in living?” He has asked these questions in places where bullets fly, such as Afghanistan and Kosovo; in a refugee camp in El Salvador; in Greenland with its extreme cold; and on the Arabian Peninsula with its scorching heat. He has met all kinds of people living in different ways in contrasting environments. Now, Nagakura says, what he was searching for is in his own hands. This picture book invites us to experience touching photos and text and to think together with the author. (Sakuma)

  • text/photos: Nagakura, Hiromi
  • Alice-kan
  • 2020
  • 40 pages
  • 26×20
  • ISBN 9784752009375
  • Age 9 +

World, Happiness, Meaning in life

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

 

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『恐竜学』表紙

恐竜学

『恐竜学』(NF)をおすすめします。

最新の情報に基づいて、恐竜のことを子どもたちにわかりやすく解説した本。まず地球の歴史と恐竜の関係について述べ、子どもたちに人気のティラノサウルスはどんな恐竜だったのかを描写し、化石からわかる恐竜同士の対決について語り、最新の恐竜研究でわかったことを説明し、鳥類と恐竜の関係や比較、恐竜が大量絶滅した原因などをさぐっていく。講演会の時などによく出る質問に真鍋博士が答える章も設けられている。絵や写真がふんだんにあって興味をひくし、子ども目線で本づくりされているのがいい。

9歳から/恐竜 化石 絶滅 地球

 

Science of Dinosaurs

Based on the latest information, the author, a paleontologist explains dinosaurs to children in an accessible way. The book begins with the history of the planet Earth and dinosaurs, then describes what Tyrannosaurus, a dinosaur popular with children, were like, what fossils can tell us about confrontations between Tyrannosaurus and other dinosaurs such as Triceratops, and what has been discovered through the most recent paleontological research. The author explores the relationship between birds and dinosaurs, comparing them, and also the reasons for the extinction of dinosaurs. One chapter is devoted to Dr. Manabe’s answers to questions he is frequently asked at events and lectures, such as how paleontology can be useful. The book is well-designed for children with illustrations and photos on every page to draw the eye and excite curiosity. (Sakuma)

  • text: Manabe, Makoto
  • Gakken Plus
  • 2020
  • 200 pages
  • 19×13
  • ISBN 9784052051852
  • Age 9 +

Dinosaurs, Fossils, Extinction, Earth

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『りんごだんだん』表紙

りんごだんだん

『りんごだんだん』(NF写真絵本)をおすすめします。

最初は、ぴかぴかでつやつやの赤いリンゴの写真に、「りんご つるつる」という言葉がついている。その同じリンゴが、少しずつ変わっていき、しわしわになり、ぱんぱんになり、しなしなになり、ぐんにゃりとなり、やがて哀れな姿に。作者が1年近くの間リンゴを観察して記録した写真絵本。それぞれの写真には、ごく短い言葉がついているだけだが、生きているものは時間とともに否応なく変化していくこと、そして、それを糧にしてまた次の命が育っていくことなどが、リアルな写真から伝わってくる。

3歳から/リンゴ 腐敗 変化 命

 

Apple, Bit by Bit

A photo of a bright red apple appears with the text “Smooth Apple.” The same apple changes little by little over time, becoming wrinkly, swollen, soft, limp, and then bug-eaten. But is that the end? The author observed and photographed the same apple for about a year to create this picture book. Each photo has only brief words with no explanations, but the idea that all living things change, ultimately becoming nourishment for future life, comes across in the realistic photos. (Sakuma)

  • text/photos: Ogawa, Tadahiro
  • Asunaro Shobo
  • 2020
  • 36 pages
  • 20×21
  • ISBN 9784751529614
  • Age 3 +

Apple, Decay, Change, Life

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『団地のコトリ』表紙

団地のコトリ

『団地のコトリ』(読み物)をおすすめします。

母親とふたりで団地に暮らす中学生の美月(みづき)と、同じ団地の下の階にかくまわれている11歳の陽菜(ひな)の、ふたつの流れで物語は進む。陽菜の母親は、子連れで職業を点々としながら全国を放浪し、娘を学校にも行かせていなかったのだが、その母親が倒れて救急車で運ばれてからは陽菜は施設に入って学校にも通っていた。その後また公園で倒れて柴田老人に保護された母親は、施設に無断で陽菜を連れ出し親子で柴田老人の家に居候し、息をひそめるように隠れている。

しかしある日、柴田老人がスーパーでくも膜下出血を起こして病院に収容され、家にこもったきりの陽菜たちは食料がつきてしまう。やがて美月の前に「助けて」とやせ細った陽菜があらわれる。血を吐いた陽菜の母親が死去し、陽菜は施設に戻ることになる。美月は陽菜を妹のように感じる一方で、陽菜の瞳の暗さに脅えもする。そうかんたんではない状況だが、美月の母は、夏休みなどの一時里親を、柴田老人も、陽菜の経済的支援を、申し出る。

居所不明児童や独居老人を取り上げ、リアルなエピソードを積み重ね、人が人を思いやる気持ちに目を向けたYA小説。重苦しい場面も多いが、美月が飼っているおしゃべりインコがユーモラスで、救いになっている。

13歳から/居所不明児童 独居老人 思いやり

 

Little Bird of the Apartment Block

Mitsuki is a junior high student living with her mother in a large apartment complex. Hina is an 11-year-old being hidden from authorities with her mother, by a single elderly man living one floor below. This novel brings together Mitsuki and Hina’s two stories.

Hina’s mother had been drifting around the country, taking her daughter with her to various jobs and not sending her to school. After Hina’s mother collapsed at a train station and got taken away by ambulance, Hina was put in an institution and began to attend school. But after her mother collapsed again in a park and was taken in by the elderly man, Mr. Shibata, her mother nabbed Hina from the institution and brought her into hiding with her.

One day, Mr. Shibata suffers a subarachnoid hemorrhage while at the supermarket, loses consciousness, and is taken to hospital. Stuck in his apartment and unable to leave, Hina and her mother run out of food. Hina, reduced to skin and bones, appears in front of Mitsuki and says, “Help.” Hina had known about Mitsuki and had even nicknamed her Kotori-chan (Little Bird), because Mitsuki keeps a parakeet.

Hina’s mother coughs up blood and dies after being taken to hospital. Hina returns to the institution. Mitsuki now thinks of Hina as a younger sister, but at the same time, she is scared by the darkness she sees in Hina’s eyes. Knowing that helping Hina will not be simple, Mitsuki’s mother nonetheless agrees to foster her during vacations, and Mr. Shibata offers financial support.

This YA novel takes up issues lately pressing in Japan, as elsewhere: missing children and the isolated elderly. With realistic episodes, it turns our gaze toward people showing compassion to other people. It contains a number of heavy scenes, but the talking parakeet lends a saving humor. (Sakuma)

  • text: Yatsuka, Sumiko | illus. Nakamura, Yukihiro
  • Poplar
  • 2020
  • 208 pages
  • 20×13
  • ISBN 9784591167243
  • Age 13 +

Missing child, Elderly living alone, Compassion

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『イーブン』表紙

イーブン

『イーブン』(読み物)をおすすめします。

中1の美桜里(みおり)は、父親のDVが原因で両親が離婚し、スクールカウンセラーの母親と暮らしているが、友人との関係がうまくいかず不登校になっている。そんな折り、キッチンカーでカレーを売っている貴夫と、その助手をしている高校生だがやはり不登校の登夢(とむ)に出会う。

美桜里もキッチンカーを手伝ううちに、登夢の母親が、子どもをネグレクトしたあげくに犯罪の手先までやらせていたことや、今は貴夫が保護者がわりに登夢と暮らしていることなどを知る。一方両親の離婚について考え続ける美桜里は、母親とも父親とも対話を重ねるうちに、人間関係の複雑さに目を向けるようになる。いつしか恋心を抱くようになった登夢からもさまざまなことを学ぶなかで、美桜里は、親子にしろ男女にしろ夫婦にしろ、互いに尊重し合える対等(イーブン)な人間関係が重要だと気づき、それはどうすれば可能なのかをさぐっていく。やがて美桜里の父親は、自分も親から虐待されていたこと、言葉で表現するのが苦手で暴力や暴言に訴えてしまったことを初めて打ち明ける。弱点もさらけだして本音で語り合う関係があれば、そこから道がひらけていくことが示唆されている。自らも虐待体験を持つ著者が、子どもたちに寄り添って一緒に考えようとする作品。

13歳から/親の離婚 キッチンカー 虐待 DV

 

Even

Twelve-year old Miori’s parents divorced because of her father’s abuse, and Miori now lives with her mother, a school counselor. Miori has stopped going to school because of difficulties getting along with her friends. One day, she meets Takao, a man who runs a curry food truck, and his assistant, Tom, a high school student who, like Miori, is not going to school. When she begins helping Takao with his food truck, she learns that Tom’s mother not only neglected him as a child but used him to commit crimes and that he now lives with Takao, who has become his guardian. Meanwhile, Miori is constantly thinking about her parents’ divorce. Through conversations with her mother and father, she starts to see the complexity of human relationships. She also gains many insights through talking with Tom, with whom she is falling in love. During this process, she comes to realize that being on an equal or even footing is the key to good relationships, whether between parent and child, man and woman, or a couple, and begins exploring how to make such relationships possible.

One day, Miori’s father attends a meeting hosted by Miori’s mother about women’s rights. There he confides that he suffered abuse from his own parents and struck out both physically and verbally because he had trouble expressing himself in words. Gradually, Miori and Tom find the next step they can take.

Miori’s story gives us hope, demonstrating that it’s possible to find a way forward by sharing our weaknesses and speaking honestly about our shortcomings. The author, who was a victim of abuse herself, helps readers to explore this serious issue. (Sakuma)

  • text: Murakami, Shiiko | illus. Mamefuku
  • Shogakukan
  • 2020
  • 208 pages
  • 19×14
  • ISBN 9784092893016
  • Age 13 +

Divorce, Food truck, Abuse, Domestic violence

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『父さんと、母さんと、ぼく』表紙

父さんと、母さんと、ぼく〜ラビントットと空の魚 第五話

『父さんと、母さんと、ぼく〜ラビントットと空の魚』(読み物)をおすすめします。

「ラビントットと空の魚」シリーズの第5話で最終巻。舞台は異世界のトンカーナで、ここでは魚が空を飛び、鳥は地中を泳いでいる。主人公は、耳長族の少年ラビントットという漁師の息子で、自分も漁師になるつもりで修業するのだが、高いところが苦手なラビントットは親方のもとを逃げ出し、明け方だけ低空飛行するイワシをとって生計を立てることにする。

シリーズの第1話から第4話までは『鰹のたんぽぽ釣り』『そなえあればうれしいな』『くれない月のなぞ』『森ぬすっとの村』となっており、ラビントットは、さまざまな事件や、思いがけない出会いを経ながら否応なく冒険の旅を続けることになる。

この第5話では、ラビントットは故郷に帰る途中、イトマキエイに大勢が襲われたと聞き、急いで現場の月見山へ向かう。ラビントットは、騒動の原因となったイトマキエイの子どもを救い出した後、みんなの話を聞くうちに、月見山では昔、耳長族同士が戦った歴史があったことや、自分も生まれつき高所が嫌いだったわけではないこと、母さんの家族と父さんの間には深い溝があったことなど、いろいろなことを知る。自分のルーツや民族の歴史を知ったラビントットは、ちゃんとした漁師になるために自分の道を歩き始める。楽しく読めるファンタジー。

11歳から/異世界 漁師 ファンタジー

 

Dad, Mom, and Me

This is the fif th and final book in the series Rabintotto, the Fisherboy of the Sky. The setting is a parallel world called Tonkana, where fish fly through the sky, birds swim in the earth, and the inhabitants of the surface are not humans, but mysterious people. The main character is a fisherman’s son named Rabintotto, who hails from a long-eared clan and is apprenticing to become a fisherman himself one day. He is afraid of heights, however, and he runs away from his master. He decides to support himself by catching sardines, which move low in the sky only at dawn.

The first four volumes of this series are The Tuna’s Dandelion Fishing, Happy are the Prepared, Riddle of the Red Moon, and A Village of Forest Thieves. Throughout the series, Rabintotto goes through mishaps and surprise encounters on an unending, unchosen journey of adventures.

In this fifth volume, as Rabintotto is journeying toward his home, he hears that many have been threatened by spinetail devil rays, and he hurries to the scene: Tsukimi (Moon Viewing) Mountain. Rabintotto saves the spinetail devil ray child that caused the disturbance, and then he hears that long ago on this mountain, there was a history of long-eared tribes fighting. He also learns that his fear of heights was not innate, and that there has been a great gulf between his mother’s family and his father. Upon visiting his parents’ relatives, he is told that he can stay, but having learned his roots and history, Rabintotto vows to become a proper fisherman after all and sets out on a new journey.

This fantasy is fun to read, with illustrations that aptly convey Rabintotto’s world. (Sakuma)

  • text: Ochi, Noriko | illus. Nishizaka, Hiromi
  • Fukuinkan Shoten
  • 2020
  • 252 pages
  • 20×14
  • ISBN 9784834085600
  • Age 11 +

Parallel world, Fisherman, Fantasy

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『ギフト、ぼくの場合』表紙

ギフト、ぼくの場合

『ギフト、ぼくの場合』(読み物)をおすすめします。

けなげな子どもが頑張って道を切りひらくという点では古典的だが、精一杯のことをしていても貧困から抜け出せず、公的なセーフティネットからも抜け落ちしてしまう家庭や子どもを描いているという点では、とても現代的な物語。

主人公の優太(ゆうた)は、小学校6年生。父親の不倫が原因で離婚した母親と、小2の妹と暮らしている。専業主婦だった母親はなかなか暮らしの手立てをつかめず、アルバイトをふたつ掛け持ちして働いている。

家族を大事にする優太だが、妹が盲腸炎にかかり手遅れで死去してしまい、貧困に輪をかけて辛い気持ちが増幅する。父親に対しては、自分たちを捨てたことを恨み、もらったギターをたたき壊し、絶縁したつもりになっているが、文化祭でギターを弾くはずの生徒が骨折したため、優太が代役を務めることになる。長いことギターには触っていなかったし、弾くと父親を思い出すので葛藤もあるが、弾くのが楽しいという経験を味わったことで、優太の前に新たな世界が開けていく。

優太の場合のギフトとは、絶対音感を持っていてメロディをすぐに再現できる才能でもあるが、母親が働くねじ工場の小西さん、文化祭のコンサートを指導するジョー先生、スクールカウンセラーの湯河原さんなどとの、あたたかい関係を引き寄せることのできる、真っすぐな人間性でもあるのだろう。

11歳から/ギター 貧困 母子家庭 職人

 

Gifted, In My Case

This story of a brave, honest child who forges his own path in the face of adversity is reminiscent of such classics as Burnett’s A Little Princess. But in its portrayal of children and families who cannot escape poverty and fall through the cracks in the public safety net, it is a very contemporary tale.

The main character, Yuta, is in sixth grade. He lives with his mother and his sister, who is in second grade. His mother, who divorced because of her husband’s infidelity, has never worked before and has a hard time making ends meet as she juggles her work at a screw factory with a part-time job at a convenience store.

Yuta cares deeply about his family, but the death of his younger sister due to delayed treatment for appendicitis and the family’s deepening poverty take an emotional toll. In his rage at his father for deserting them, Yuta destroys the guitar his father gave him in a symbolic act that severs their relationship. A student who is supposed to play the guitar at the school festival, however, breaks an arm, and Yuta is asked to fill in. Although he hasn’t touched a guitar for some time and doing so brings back painful memories of his father, he begins to see the world differently once he tastes again the joy of playing music.

Yuta’s gift is his musical ability. His perfect pitch allows him to reproduce a melody when he has only heard it once. But he is also gifted in his upright character and humanity, which attract the support and friendship of Mr. and Mrs. Konishi, who own the screw factory, Mr. Sawaguchi (commonly known as Joe), who directs music for the school festival concert, and Mrs. Yugawara, the school counselor. (Sakuma)

  • text: Imai, Kyoko
  • Shogakukan
  • 2020
  • 232 pages
  • 20×14
  • ISBN 9784092893030
  • Age 11 +

Guitar, Poverty, Single-mother family, Craftsman

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

 

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『科学でナゾとき!わらう人体模型事件』表紙

科学でナゾとき!〜 わらう人体模型事件

『科学でナゾとき!〜 わらう人体模型事件』(読み物)をおすすめします。

科学の知識を盛り込んだ、学校が舞台の物語。6年生の彰吾は、自信過剰な児童会長。中学教師の父親が、小学校でも科学実験の指導をするために彰吾の学校にもやってくることに。父親を評価していない彰吾は、学校では家族関係を隠すようにと父親に釘を刺す。

ところが彰吾の学校では、次々に不思議な事件が起こる。最初は、理科実験室で人体模型がギャハハと笑ったという事件。生徒たちが脅えているのを知ると、彰吾の父親のキリン先生(背が高くポケットにキリンのぬいぐるみを入れている)は、みんなを公園に連れて行き、準備しておいたホースを使って、実験室の水道管が音を伝えたことを実証してみせる。

2つ目は、離島から来た転校生が海の夕陽を緑色に描いて、ヘンだと言われた事件。3つ目は、なくなったリップクリームが花壇に泥だらけで落ちていた事件。最後は、図書館においた人魚姫の人形が赤い涙を流す事件。どれもキリン先生が謎を解き明かし、光の波長や、液状化現象や、化学薬品のアルカリ性・酸性の問題など、事件の裏にある科学的事実を説明してくれる。彰吾も父親を見直す。科学知識が物語のなかに溶け込んでいて、おもしろく読める。

11歳から/学校 謎 科学 父と息子

 

Solving Riddles Through Science!

Set in a school, the story relates four episodes rich in scientific knowledge. Shogo, a cocky sixth-grader, is head of the children’s association. His father is a science teacher who teaches at many different schools, one of which is Shogo’s. But Shogo is embarrassed by his father’s clumsiness and begs him not to let anyone know they are related.

However, mysterious things are happening at Shogo’s school. First, the anatomical model in the science room bursts out laughing. When Shogo’s tall, lanky father, who carries a giraffe toy in his pocket and has been dubbed Professor Giraffe, hears that the children are frightened, he takes them to a park and uses a hose to show them that sound travel can long distances. It becomes clear that the sound of laughter must have traveled along an unused water pipe from another location.

The second mystery surrounds a transfer student from a distant island who is upset that his classmates laughed because he painted the sunset green. The third mystery involves a tube of lip gloss that disappears from the classroom and shows up in a flower bed. In the final episode, a mermaid doll in the school library weeps red tears. Professor Giraffe conducts experiments to solve each case, explaining the scientific facts behind them, such as light wavelength, liquefaction, and the alkalinity and acidity of chemicals. During this process, Shogo’s opinion of his father changes. The author expertly weaves scientific information into the story to make this a fascinating and informative read. (Sakuma)

  • text: Asada, Rin | illus. Sato, Odori | spv. Takayanagi, Yuichi
  • Kaiseisha
  • 2020
  • 208 pages
  • 19×13
  • ISBN 9784036491407
  • Age 11 +

School, Mystery, Science, Father and son

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『あるひあるとき』表紙

あるひあるとき

『あるひあるとき』(絵本)をおすすめします。

旧満州(中国東北部)に暮らしていたひとりの女の子(わたし)が主人公。女の子は、父親が日本から買って帰ったお土産のこけしに、ハッコちゃんという名前をつけてかわいがっていた。女の子は友だちの家にも防空壕にも、どこにでもハッコちゃんを連れていった。しかし敗戦で日本への引き揚げが決まり、一家は家財道具や持ちものを処分しなくてはならなくなる。ハッコちゃんも燃やされる。子ども時代を大連で過ごした作者が平和への願いを込め、おとなたちの戦争の陰で幼い子が体験した深い悲しみを伝えている。

9歳から/こけし 戦争 引き揚げ

 

One Day, One Time

During the Second World War, Japan occupied northeastern China, which it named Manchuria. Many Japanese moved there as settlers. The main character in this story is a little girl who lives in Manchuria. Her favorite toy is a wooden kokeshi doll that her father brought back from Japan as a gift. She names the doll Haruko and takes it with her everywhere, even to her friend’s house and the air raid shelter. When Japan loses the war, however, the girl and her family have to sell or burn everything they own, and Haruko is thrown on the fire. The author, who lived as a child in Dalian in northeastern China during the war, imbues this book with her yearning for peace and reveals the deep sorrow that children experience
in the shadow of wars waged by grownups. (Sakuma)

  • text: Aman, Kimiko | illus. Sasameya, Yuki
  • Nora Shoten
  • 2020
  • 36 pages
  • 27×22
  • ISBN 9784905015543
  • Age 9 +

Kokeshi doll, War, Evacuation

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『ひょうたんとかえる』表紙

ひょうたんとかえる

『ひょうたんとかえる』(絵本)をおすすめします。

ひょうたんが、つるから「ぼっくりこ」と池に落ちると、蓮の葉の上に寝そべってのんびりしていたカエルが見つけて、「げっこりこ」ととびつく。重いのでひょうたんが沈むと、今度はカエルが背中にのせて運ぶ。単純なストーリーだが、「ぼっくりこ」と「げっこりこ」の繰り返しがおもしろく、最後は「それゆけ げっこりこげっこり ぼっくり ぼっくりこ」で終わる。もともとは作者が1932年に発表し、音楽つきでレコードまで出ていた詩だが、画家がゆかいな絵をつけたことによって、ユーモラスな絵本ができあがった。

3歳から/ひょうたん 池 カエル リズム

 

The Gourd and the Frog

When a gourd on a vine extending over a pond drops into the water—bokkuriko!—a frog that had been relaxing, stretched out on a lotus leaf, jumps onto it—gekkoriko! When the gourd sinks due to the frog’s weight, the frog carries the gourd on its back instead. It’s a simple story, but the onomatopoeia repeats, adding delight until the finale: “Go, go, gekkoriko, gekkori! Bokkuri, bokkuriko!” The basis is a 1932 poem by Saijo Yaso, a poet representative of the Taisho and Showa eras (1926-89), who released the poem with music on a record. The illustrator brings it
back to life as a humorous picture book with fun, enjoyable illustrations. (Sakuma)

  • text: Saijo, Yaso | illus. Tonouchi, Maho
  • Suzuki Shuppan
  • 2020
  • 24 pages
  • 22×21
  • ISBN 9784790254102
  • Age 3 +

Gourd, Pond, Frog, Rhythm

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『チンチラカと大男』表紙

チンチラカと大男〜ジョージアのむかしばなし

『チンチラカと大男』(絵本)をおすすめします。

知恵が回るので有名なチンチラカは、気まぐれな王様に、魔の山にすむ大男から黄金のつぼや、人間の言葉を話す黄金のパンドゥリ(楽器)を取ってくるように次々命じられる。チンチラカがそれに成功すると、今度は大男をつかまえてこいとの命令が。チンチラカは大男をなんとかだまして箱に入れて連れてくるのだが、王様が箱を開けてしまい、大男は王様や家来を飲み込んでしまう。怖いところもあるがハッピーエンドなのでご安心を。コーカサス地方にある国ジョージアの昔話に、ダイナミックで魅力的な絵がついている。

3歳から/知恵 大男 王様 ジョージア

 

Chinchiraka and the Giant

A folktale from Georgia in the Caucasus unfolds
in this dynamically illustrated picture book.
Chinchiraka, the youngest of three brothers known for his wisdom, is commanded by a moody king to snatch a golden vase from a giant who lives inside a magic mountain. When Chinchiraka succeeds, he is told to go take a golden panduri instrument that speaks human language. After that, he must go and catch the giant himself. Chinchiraka somehow tricks the giant into a box and catches him, but when the giant comes out of the box, he gobbles up the king and his servants! Scary parts are balanced by a happy ending, in which Chinchiraka becomes the king. (Sakuma)

  • text: Katayama, Fue | illus. Suzuki Koji
  • BL Shuppan
  • 2019
  • 32 pages
  • 29×22
  • ISBN 9784776409274
  • Age 3 +

Wisdom, Giant, King, Georgia

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『たいこ』表紙

たいこ

『たいこ』(絵本)をおすすめします。

太鼓がひとつ。「トン トン トトトン」とひとりがたたいていると、「なかまに いれて」と誰かがやってくる。ふたりで「トントン ポコポコ」とたたいていると、また誰かがやってくる。仲間が4人にふえて盛り上がっていると、「うるさいぞー ガオー」とワニがやってきて、みんな逃げてしまう。でも、ワニもちょっとたたいてみたところ、あらおもしろい。音を聞いて、さっきの仲間が徐々に戻ってくる。ひとりひとりの音が重なって、最後はみんなで「トン ポコ ペタ ボン ガオー ゴン」。太鼓を打つ楽しさが伝わってくる。

3歳から/たいこ リズム 仲間 楽しさ

 

Drum

When someone finds a drum and plays ton, ton, to-to-ton, someone else asks, “May I join you?” As the two play ton ton, poko poko together, a third and fourth ask to join. As they play with delight, an alligator grouches, “You’re too loud! Gaah!” and they all flee. But then the alligator sidles up to the drum, taps it, and finds out playing is fun! When the four hear the alligator playing, they gradually come back. Everyone’s rhythms join together: ton poko peta bon gaah gon! The rhythms and fun of taiko drumming spill forth. (Sakuma)

  • text/illus. Hikatsu, Tomomi
  • Fukuinkan Shoten
  • 2019
  • 24 pages
  • 22×21
  • ISBN 9784834085051
  • Age 3 +

Drum, Rhythm, Companionship, Fun

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『虫ぎらいはなおるかな?』表紙

虫ぎらいは なおるかな?〜昆虫の達人に教えを乞う

『虫ぎらいは なおるかな?』(NF)をおすすめします。

チョウやセミにさえさわれないほど虫嫌いの著者が、それをなんとか克服しようと7 人の専門家に会いに行った記録。会ったのは、虫と子どもの関係を調査している教育学者、昆虫館の館長、生きもの観察や野遊びの達人、虫オブジェを制作しているアーティスト、害虫研究家、「こわい」の心理を研究する認知科学者、多摩動物公園の昆虫飼育員。著者の奮闘ぶりはほほえましいが、虫好きの人が熱く語れば語るほど引いてしまう場面などがユーモラスで、おもしろく読める。イラストも楽しい。

13歳から/昆虫 好き嫌い インタビュー

 

Learning to Love Bugs from the Experts

The author hates bugs, even butterflies and cicadas. In this book, she records her encounters with seven bug experts she visits in an attempt to overcome her aversion. She meets an expert in the field of education who is studying the relationship between children and bugs, the director of a bug museum, an expert on wildlife observation and outdoor play, an artist who makes clay bug objects, a scientist researching harmful insects, a cognitive scientist studying the psychology of fear, and a bug keeper at the Tama Zoo. With a humorous touch, the author describes how the experts’ enthusiasm sometimes has the opposite effect, turning her off bugs even further. Her persistent efforts to like bugs are endearing, and the illustrations make this a fun read. (Sakuma)

  • Text/Illus. Kanai, Maki
  • Rironsha
  • 2019
  • 160 pages
  • 19×13
  • ISBN 9784652203095
  • Age 13 +

Bugs, Likes and dislikes

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『ギヴ・ミー・ア・チャンス』表紙

ギヴ・ミー・ア・チャンス〜犬と少年の 再出発

『ギヴ・ミー・ア・チャンス』(NF)をおすすめします。

2014 年、千葉県の八街少年院で、少年たちに保護犬を訓練してもらうプログラムが始まった。第1 期に参加する少年は3 名。捨てられたり手放されたりして保護された犬が3 匹。犬と少年は1 対1のペアになって3 か月の間授業を受け、一般家庭に犬を引き渡すための訓練を行う。本書は、その訓練の日々に密着し、犬と少年の間に信頼感が芽生え、心が通い合い、両者ともに変わっていく様子をいきいきと伝えている。犬の表情をうまくとらえた写真と、抑制のきいた文章が心にひびく。

13歳から/少年院 犬 訓練

 

Give Me a Chance

ーA Fresh Start for Dogs and Boys

In 2014, a program was started at Yachimata Reformatory in Chiba prefecture to have young inmates train rescued dogs. Three boys joined the program in the first phase, and were paired up with three abandoned dogs from a shelter. The program lasted for three months during which time the dogs were trained in order to be rehomed with ordinary families. This book closely documents the day to day process, vividly demonstrating how a sense of trust developed between the neglected or abused dogs and the delinquent juveniles as they began to understand each other, and together they began to change. Readers will be deeply moved by the photos capturing the dogs’ facial expressions and the neutral written account. (Sakuma)

  • Otsuka, Atsuko
  • Kodansha
  • 2018
  • 208 pages
  • 20×14
  • ISBN 9784065130001
  • Age 13 +

Juvenile reformatory, Dogs, Training

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『ヒロシマ消えた家族』表紙

ヒロシマ 消えたかぞく

『ヒロシマ 消えたかぞく』(NF写真絵本)をおすすめします。

広島に暮らしていたある一家の記録を、一家の父親が撮りためていた写真をもとに構成し、日本語と英語の文章をつけている。理髪師の鈴木六郎は、妻の笑顔、子どもたちが元気で遊ぶようす、飼っていたネコや犬の何気ないしぐさなど、日常生活のひとこまひとこまを愛情たっぷりに撮影していた。しかし1945 年8月6日、原爆が広島を襲うと、一家全員の命がぷつっと絶たれる。作者は広島平和記念資料館でこれらの写真に出会って、一家をよみがえらせる一冊の作品にしあげた。いのちや平和について考えるきっかけになる写真絵本。

9歳から/広島 原爆 写真 家族

 

A Family in Hiroshima

ーTheir Vanished Dreams

Rokuro Suzuki, a barber who lived in Hiroshima, recorded the life of his family in photos near the end of World War II. Each photo captured their daily life with a loving touch: the smiling face of Suzuki’s wife, the laughter on his children’s faces as they played, and the innocent antics of their pet cats and dogs. On August 6, 1945, the entire family was wiped out by the atom bomb that fell on Hiroshima. When author Kazu Sashida first saw their photos in the Hiroshima Peace Museum, she was intrigued. Based on the photos and interviews with Suzuki’s relatives who saved the photos, Sashida brings the Suzuki family back to life. Suzuki’s photos and Sashida’s text, which is written in both Japanese and English, inspires readers to ponder such themes as life and peace. (Sakuma)

  • Text: Sashida, Kazu | Photos: Suzuki, Rokuro
  • Poplar
  • 2019
  • 40 pages
  • 23×23
  • ISBN 9784591163139
  • Age 9 +

Hiroshima, Atomic bomb

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『車いすの図鑑』表紙

車いすの図鑑

『車いすの図鑑』(NF)をおすすめします。

第1章「車いすを知ろう」では、車いすの構造や乗り方、どんな人たちが使うのかや、介助の仕方などを説明し、第2章「車いすとバリアフリー」では、町の中にあるさまざまなバリア、道路やトイレや乗りもののバリアフリーのくふう、福祉車両やUD タクシー、ユニバーサルデザイン、車いすスポーツ、補助犬などを紹介し、第3章「車いす図鑑」では、日常使われる車いすから、パラスポーツ用車いすまでさまざまな車いすを紹介している。バリアフリー社会を考えるきっかけになる。索引あり。

10歳から/車いす バリアフリー パラスポーツ

 

An Illustrated Reference of Wheelchairs

ーUnderstanding Accessibility

This book aims to make us think about universal accessibility through wheelchairs. Chapter 1, Guide to Wheelchairs, tells us about what they are, what kind of people use them, their structure and how to use them, and how to assist those using them. Chapter 2, Wheelchairs and Accessibility, is about the types of barriers that exist in cities, ways to make roads, toilets, and public transport accessible, assistive vehicles and UD (universal design) taxis, universal design, wheelchair sports, assistance dogs, and so forth. Chapter 3, Illustrated Wheelchair Reference, introduces various types of wheelchairs from those for daily use to those used for disabled sports. This book is an extremely useful way to introduce issues of accessibility. Index included. (Sakuma)

  • Ed. Takahashi, Gihei
  • Kinnohoshisha
  • 2018
  • 80 pages
  • 29×22
  • ISBN 9784323056586
  • Age 10 +

Wheelchairs, Accessibility

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『つらら』表紙

つらら〜みずと さむさと ちきゅうの ちから

『つらら』(NF写真絵本)をおすすめします。

つららの不思議に迫る写真絵本。寒い冬に見られるつららは、どんな場所にどうやってできるのか、どうして長くなるのか、どんなふうに姿を変えていくのかを、美しい写真を使ってわかりやすく説明している。春になっても探せばつららが見られることや、一年じゅうつららが見られる洞窟の存在や、地面から生えたタケノコのような氷があることも伝えている。巻末には、冷蔵庫でつららを作る実験を紹介し、タルヒ、スガなど日本各地からつららを指す言葉を集めて地図とともに掲載している。

6歳から/つらら 冬 方言

 

Icicles

ーWater, Cold, and the Power of the Earth

This picture book introduces the icicles we often see in a cold winter through stunning photographs. How are they formed? Why do they grow so long? Their changes in appearance are explained in simple terms using beautiful photographs. Readers are informed that there are places where we can still see icicles in spring, caves where they can be seen all year round, and sometimes ice sprouts up from the ground like bamboo shoots. There are several appendices, including instructions on how to conduct an experiment to grow icicles in the refrigerator using familiar items such as cup noodle containers, and a map showing the various names for icicles in different dialects around Japan. (Sakuma)

  • Text: Ijichi, Eishin | Photos: Hosojima, Masayo
  • Poplar
  • 2019
  • 36 pages
  • 21×26
  • ISBN 9784591161074
  • Age 6 +

Icicles, Winter

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

 

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吉野万理子『部長会議はじまります』

部長会議はじまります

『部長会議はじまります』(読み物)をおすすめします。

中高一貫教育の私立学校の中等部を舞台にした学園物語。第1 部は文化部の部長会議、第2 部は運動部の部長会議で、それぞれ各部の部長が一人称で語っていく設定になっている。

第1 部は、美術部が文化祭のために作ったジオラマがいたずらされた事件をめぐって展開する。登場するのは怒っている美術部の部長、怪しげな部活だと思われて悩んでいるオカルト研究部部長、いろいろなことに自信のない園芸部部長、ミス・パーフェクトといわれる華道部部長、恋をしている理科部部長。犯人はだれなのか? いじめがからんでいるのか? それとも恨みか? 会議は紛糾する。

第2 部は、解体されることになった第2 体育室を使っていた卓球部と和太鼓部にも、運動場やグラウンドの使用を認めるための会議。初めのうちはほとんどの部長が、自分の部が損にならないように立ち回ろうとするが、だんだんに解決策を見いだしていく。卓球部、バスケ部、バレー部、和太鼓部、サッカー部、野球部の各部長に、パラスポーツをやりたいという人工関節の生徒もからんで、意外な展開になっていく。

それぞれ個性的な各部長の語りが複合的に絡み合って、読者には出来事が立体的に見えてくる。また各人が、他者にはうかがい知れない悩みを抱えていることもわかってくる。楽しく読めて、読んだ後は、まわりの人にちょっぴりやさしくなれそうだ。

13歳から/部活動 学校生活 友情

 

The Captains’ Meeting Will Come to Order

This novel unfolds in a private middle school in Japan. Part 1 is a meeting of the student captains of culturerelated clubs, and Part 2 is a meeting of the student captains of sports clubs. The novel unfolds with each captain speaking in the first person. (School club activities in Japan happen after school, each led by a captain. If a problem occurs, club captains meet to discuss it.)

In Part 1, the art club’s diorama for a school festival has been vandalized. Participating in the culture club meeting are an angry art club captain, a discouraged occult research club captain, a less-than-confident gardening club captain, a Miss Perfect-like flower-arrangement club captain, and a deep-inlove cooking club captain. Who committed the crime? Did the vandalism stem from bullying? From a grudge? The captains’ opinions clash at first, but they eventually find an answer.

In Part 2, one of the gyms is being razed, so the table tennis and Japanese drumming clubs that used it need new spaces to practice. At first, the various sports captains try to defend their own clubs’ practice spots, but then they work toward a fix. The captains of table tennis, basketball, ballet, drumming, soccer, baseball and even ParaSports—a student with a prosthesis—find themselves in unexpected territory.

In this book, as various captains’ distinctive voices weave together, the reader starts to see the full picture. The reader also gathers that each captain faces struggles the others could never know. While entertaining to read, this book promises to make readers a bit kinder to others, too. (Sakuma)

  • Yoshino, Mariko
  • Asahi Gakusei Shimbun
  • 2019
  • 264 pages
  • 19×13
  • ISBN 9784909064738
  • Age 13 +

School clubs, School life, Friendship

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『キャプテンマークと銭湯と』表紙

キャプテンマークと銭湯と

『キャプテンマークと銭湯と』(読み物)をおすすめします。

今の子どもたちが夢中になるサッカーと、今は消えつつある銭湯をつなぐ物語。

サッカーのクラブチームに所属している中学生の周斗(しゅうと)は、ある日、キャプテンを新入りと交替させられ、友だちに心ない言葉を投げつけてチームメートから批判され、いら立ちがつのる。そんなとき、幼い頃祖父と通った銭湯の楽々湯を見つけ、入ってみた周斗は、かちかちになっていた心も体もほどけていくのを感じる。それからは何度も楽々湯に通って、そこが癒やしの場所になっていくと同時に、そこで出会う人びととの交流によって、周斗は新たな視野でものを見ることができるようにもなっていく。

楽々湯の常連には、地元のお年寄りも多いが、若いファンもいる。児童養護施設で育った左官屋の比呂(ひろ)は、いい親方に恵まれ、自分なりのベストを尽くそうと仕事をがんばっている。女子高校生で銭湯オタクのコナは、インスタグラムで銭湯の良さをアピールしている。

しかし、2 代にわたって77 年続いてきた楽々湯も、とうとう閉店することになった。店主の老夫婦には、薪での風呂たきが無理になったのだ。閉店の日、試合に勝利してわだかまりも解けたチームのメンバーは、常連たちと一緒に楽々湯につめかけるのだが、途中で停電に…。最後まで営業を支えようと奮闘する周斗たちに共感して読める。

13歳から/サッカー 銭湯 キャプテン 友情

 

Captain Mark and the Bathhouse

This interesting story links soccer, which is all the rage among children these days, and the public bathhouses that are now slowly disappearing.

Shuto, a junior high school student who belongs to the soccer club team, is shocked when he is replaced as captain by newcomer Daichi, and gets irritated when he is criticized by his team mates for saying cruel things to him. When he comes across the public bathhouse where he used to go with his late grandfather as a little boy, he decides to go in and feels his irritation melt away as he soaks in the hot water. After this he goes to the bathhouse regularly, and it not only becomes a place of healing for him, but he also begins to see things from a new perspective as he chats with the people he meets there. He comes to understand that even Daichi, who he used to resent for being able to do everything well, has a big problem of his own.

Most of the regular customers at the bathhouse are local elderly people, but there are also young people too. A plasterer called Hiro, who grew up in a children’s home, has been blessed with a good boss and does his best at work. Kona is a high school student obsessed with bathhouses, and she posts on Instagram about their attractions.

However, after 77 continuous years of business through two generations of ownership, the bathhouse is finally to close down. The old couple who run the place can no longer cope with burning the wood to heat the water. On closing day the entire soccer team, having won a game and with all the ill-feeling between them dispelled, all crowd into the bathhouse along with the regulars. But then there is a power cut . . . Readers are sure to sympathize with the efforts of Shuto and the others to support the business right until the end. (Sakuma)

  • Sato, Itsuko | Illus. Sato, Makiko
  • Kadokawa
  • 2019
  • 248 pages
  • 20×14
  • ISBN 9784041077054
  • Age 13 +

Soccer, Public Baths, Captain, Friendship

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『ゆかいな床井くん』表紙

ゆかいな床井くん

『ゆかいな床井くん』(読み物)をおすすめします。

6 年生になった暦(こよみ)の隣には、人気者の床井(とこい)君が座っている。クラスでいちばん背が低い床井君はウンコの話もするし下品だけど、クラスでいちばん背が高い暦のことを「いいなあ」と純粋にうらやましがる。そのおかげで、「巨人族」とか「デカ女」という悪口も影をひそめている。暦は、クラスの同調圧力に一応気を使って思ったことをはっきり言わないこともあるが、床井君は、自分の意見をはっきり言うし、どの人にもいいところがあることをよく見ている。そんな床井君に暦はしだいに好意を持つようになる。

全部で14 章あるが、1章ごとにひとつのエピソードが紹介されていく。性への関心が強まり教育実習生に「巨乳じゃん」と言ってしまうトーヤ、学校のトイレで生理になり困ってしまう小森さん、塾では普通に話すのに学校では言葉を発することができない鈴木さん、父親が失業し友だちに八つ当たりしてしまう勝田さんなど、クラスにはさまざまな生徒がいる。なにかが起こるたびに暦は考え、床井君の反応に感心し、違う見方ができるようになって次のステップを踏み出していく。

11歳から/学校 視点 ユーモア

 

Happy Tokoi

This novel vividly portrays a year in the class of two Japanese sixth-grade students: Koyomi, a girl, and Tokoi, a boy.

One episode unfolds per chapter. In one episode, a boy named Toya blurts out that a student teacher has large breasts. In another, a girl named Omori realizes in the school bathroom that she’s gotten her period and doesn’t know what to do. Another girl, Suzuki, can speak freely at cram school but struggles to speak at school. Katsuta’s father has lost his job and unfortunately takes his stress out on her, so she takes her stress out on her classmates. Many different stories fill the class.

For her part, Koyomi is the tallest student and has been called “Giant” and “Amazon Woman,” but the shortest student in the class, Tokoi, once expressed jealousy of her, saying, “I wish I could be tall.” Now, nobody makes fun of height. Koyomi often feels pressured by classmates but dislikes playing along with them; in contrast, Tokoi voices his thoughts freely and finds the good in everyone. Koyomi gradually comes to admire Tokoi; when something happens, she considers it, observes Tokoi’s reaction, and takes a step toward trying someone else’s point of view.

Humorously narrated and filled with the appeal of Tokoi, this book keeps readers turning pages and offers them the appeal of new viewpoints. Winner of the Noma Children’s Literature Prize. (Sakuma)

  • Tomori, Shiruko
  • Kodansha
  • 2018
  • 192 pages
  • 20×14
  • ISBN 9784065139059
  • Age 11 +

School, Point of view, Humor

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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佐藤まどか『つくられた心』表紙

つくられた心

『つくられた心』(読み物)をおすすめします。

舞台は近未来。新設された「理想教育モデル校」では、スーパーセキュリティシステムが完備され、各クラスには監視役のガードロイドをまぎれこませて、カンニングやいじめや校内暴力を防止するという。これはカメラやマイクを内蔵した最新型のアンドロイドで、人間そっくりに作られ、人間と同レベルの知性を持ち、外見だけでなく性格の個性も備えてあるとのこと。

期待をもって転校してきた6 年生のミカは、席の近い鈴奈、お調子者の仁、フィリピン人の母親をもつジェイソンと仲よくなる。やがてクラスで、本来は禁止されている「ガードロイド探し」が始まると、ミカも疑心暗鬼になる。4人は、怪しいと思われる生徒の家に行ってみたり、マラソンをしても呼吸の乱れない生徒に探りを入れたりする。しかしそれより、もしかしてこの4人の中にガードロイドがいるのではないか? 友だちの笑顔はウソなのか? だれかにリモートコントロールされているのか? 本当は心なんてないのに、感情があるふりをしているのか? すべてが演技なのか? 疑念はふくらむ。

最後にガードロイド自身も自分の正体を知らされていないことが判明し、ガードロイドがだれかはわからないまま物語は終わる。だからこそよけいに、全員を監視する超管理体制ができあがった社会の不気味さが、読者にひしひしと伝わってくる。

11歳から/近未来 アンドロイド 疑念 友だち

 

Artificial Soul

The story is set in the near future. A newly established model school not only offers small classes and hightech facilities but also has a super security system to prevent cheating, bullying and violence. Each class has a guard-droid that looks and behaves just like one of the students, but is actually an android programmed with the same intelligence as a human and equipped with a built-in mike and camera through which the school can watch over the students. The androids each have their own personality and are indistinguishable from humans.

Mika comes to this new school with great expectations and makes friends with three students sitting near her. The students are forbidden to look for the guard-droid, but Mika’s class secretly tries to find out. Mika starts suspecting everyone. She and her group of friends visit the home of a girl who appears suspicious and closely observe a boy who never gets out of breath even when he runs a marathon.

But perhaps the guard-droid is really one of Mika’s friends. Are their smiles fake? Is one of them being operated by remote control and just pretending to have feelings? Is it all an act?

In the end, the students find out that even the guard-droid doesn’t know who the droid is, and its identity is never revealed. The author vividly conveys the frightening nature of a society in which everyone is watched and where it is impossible to tell the real from the fake. Artificial Soul warns us that the human mind could one day be subdued and controlled. (Sakuma)

  • Sato, Madoka | Illus. Urata, Kenji
  • Poplar
  • 2019
  • 176 pages
  • 20×13
  • ISBN 9784591162057
  • Age 11 +

Near Future, Android, Doubt

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)


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『ねこのこふじさん』表紙

ねこのこふじさん〜とねりこ通り三丁目

『ねこのこふじさん』(読み物)をおすすめします。

ネコのこふじは、働いていた広告会社で同僚から仲間はずれにされるようになり、退職して引きこもりになっていた。そんなこふじが、世界旅行に出かける祖母から、とねりこ通りの家の留守番をたのまれる。そして家賃がわりに「月に一度、その月らしい行事をする」という約束をさせられる。

仕方なく4月はお花見、5月は衣替え、6月は梅仕事、7月は七夕、8月は花火見物、9月はお月見、10 月は栗拾い、11 月は七五三、12 月はリース作り、1月はお正月料理、2月は豆まき、3月はひな祭り、と行事を行っていくうちに、こふじは、この町のさまざまな動物と出会い、交流するようになる。とねりこ通りに暮らす多様な動物たちの中には、帰国子女、独居老人、さびしさから暴力をふるう子などもいるが、お互いの欠点を補い合いながら暮らしている様子に、こふじも元気をもらう。そして1年たった頃には、いつしかこふじも、伝統的な織物を継承したいと意欲まんまんになっていた。

それぞれの月の行事については、ご近所に住むネズミのネズモリによる解説がつき、ネズモリ自身の物語も展開している。最後は、世界旅行から帰ってきた祖母を含め、物語の登場キャラクターが全員出てくるネズモリの結婚式の場面だ。絵もたくさんついた1章1話の楽しい物語。

11歳から/ネコ 行事 引きこもり 多様性

 

Kofuji the Cat

ーNumber 3 Ash Street

Kofuji the cat once worked very hard at an advertising company. When her coworkers began to treat her coldly, however, she quit her job. Now she stays at home, never leaving the house. One day, however, her grandmother asks her to take care of her house on Ash Street while she travels around the world. Instead of rent, she asks Kofuji to plan a monthly event, each one befitting the month in which it is held.

Although reluctant at first, Kofuji plans a picnic under the cherry blossoms in April, a seasonal change of clothing in May, plum juice-making in June, a star festival in July, fireworks in August, moon viewing in September, chestnut gathering in October, a festival for children aged three, five and seven in November, wreath making in December, making traditional New Year’s dishes in January, bean throwing in February, and a dolls’ festival in March. The neighbors on Toneriko Street are a diverse group of characters. There is a tapir who moved back from overseas and thinks she has to conform to fit in, a young fox who throws tantrums because she’s upset that her mother has a new fox cub, and an elderly monkey living on his own. Through her interactions with these different neighbors, Kofuji gradually perks up and by the end of the year, she has decided to start weaving traditional textiles.

Each monthly event is described by Nezumori, the postmouse who lives in the cupboard of her house. His own story also unfolds within this book, and the last scene is his wedding, which is attended by all the characters who have appeared, including Kofuji’s grandmother who has returned from her travels. With one story per chapter and plenty of illustrations, the book is easy and entertaining even for children unused to reading. (Sakuma)

  • Yamamoto, Kazuko | Illus. Ishikawa, Eriko
  • Alice-kan
  • 2019
  • 168 pages
  • 21×16
  • ISBN 9784752008934
  • Age 11 +

Cat, Event, Stay-at-home, Diversity

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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村中李衣『あららのはたけ』

あららのはたけ

『あららのはたけ』をおすすめします。

山口に引っ越した10 歳のえりと、横浜にとどまっている親友のエミが交換する手紙を通して物語が進行する。

えりは祖父に小さな畑をもらい、イチゴやハーブを育てることにする。そして、踏まれてもたくましく生きる雑草のことや、台風の前だといい加減にしか巣作りをしないクモのことや、桃の木についた毛虫が飛ばした毛に刺されて顔が腫れてしまったことなど、自然との触れ合いで感じたこと、考えたことをエミに書き送る。都会で育った子どもが田舎に行って新鮮な驚きをおぼえたり、感嘆したりしている様子が伝わってくる。

エミは、えりの手紙に触発されて調べたことや、今は自分の部屋に引きこもっている同級生のけんちゃんの消息を、えりに伝える。えりもエミも、幼なじみのけんちゃんのことを気にかけているからだ。

失敗の体験から学ぶことを大事にしているえりの祖父、まわりの空気を読まないで堂々としている転校生のまるも、けんちゃんをいじめたけれど内心は謝りたいと思っているカズキなど、脇役もしっかり描写されている。今の時代に、電話や電子メールではなく、手紙のやりとりによってふたりがつながりを深めていく様子は興味深いし、えりから届いた野菜の箱の中からカエルがぴょんと飛び出したことがきっかけで、けんちゃんに変化が訪れるという終わり方はすがすがしい。坪田譲治文学賞受賞作。

9歳から/畑 手紙 いじめ 自然

 

Garden of Wonder

This story unfolds through the letters exchanged between ten-year-old Eri, who has moved to Yamaguchi, and her friend Emi left behind in Yokohama. Through these letters we learn how Eri’s grandfather has given her a small patch of land where she grows strawberries and herbs. She writes all her thoughts to Emi, like how vigorously all the weeds grow even if you step on them; about a spider that only spins a temporary web when it senses a typhoon is about to hit; how her face swelled up when stung by hairs from caterpillars on the peach tree; and the feeling of being in contact with nature. The reader can appreciate the fresh amazement and wonder that a city-raised child feels upon moving to the countryside.

Emi tells Eri how she has studied about spiders and caterpillars thanks to her letters, and also about their classmate Kenji, who now won’t leave his bedroom. Kenji has been their friend since they were little, and they are both worried about him.

Other people in their lives include Eri’s grandfather, who emphasizes learning from experience and only tells her what to do after she has made a mistake; a new transfer pupil Marumo, who sticks to her own ways without realizing the pressures on her to change; and Kazuki, who bullied Kenji but deep down wants to apologize.

It is interesting to see how in this day and age Eri and Emi deepen their connection not by telephone or email, but by letters, and the story ends on a refreshing note when a frog jumps out of a box of vegetables that Eri sends Kenji, prompting him to step outside and begin to change. This book won the Joji Tsubota Prize. (Sakuma)

  • Muranaka, Rie | Illus. Ishikawa, Eriko
  • Kaiseisha
  • 2019
  • 216 pages
  • 21×16
  • ISBN 9784035309505
  • Age 9 +

Fields, Letters, Bullying, Nature

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『お正月がやってくる』表紙

お正月がやってくる

『お正月がやってくる』(NF絵本)をおすすめします。

都会に住むなおこさん一家三世代の、歳末から新年までのさまざまな習慣をわかりやすく描いている。年の瀬になると、なおこさんたちは酉の市に出かけて熊手を買う。浅草のガサ市で買った材料を使って玉飾りや招福飾りを作り、門松やしめ縄と一緒に近所の人に売る。それが終わると大掃除をして、おせち料理を作り、大晦日には年越しそばを食べて新年を迎える。家族の仕事は工務店だが、お正月には獅子舞もしながら近所を回る。都会での年越しや正月の伝統が楽しくわかる作品。

6歳から/正月 年越し 獅子舞

 

It’s New Year!

This picture book portrays traditional Japanese New Year customs. The protagonist is Naoko, who lives in a modern city where her husband manages a construction firm. As the year draws to a close, they buy a special lucky rake from a shrine fair, and then some materials for New Year decorations at Asakusa’s Gasa-ichi fair. They use these materials to make traditional decorations, which they sell to local people. When they’ve finished that, their family thoroughly cleans their house from top to bottom, she prepares the special New Year’s food, and on New Year’s Eve they eat buckwheat noodles as they see in the New Year. And once the New Year has started, in order to chase out bad luck, Naoko’s husband and others put on the Lion Mask and dance to the accompaniment of drums and flutes as they go around the neighbourhood wishing everyone a Happy New Year. (Sakuma)

  • Text/Illus. Akiyama, Tomoko
  • Poplar
  • 2018
  • 32 pages
  • 24×27
  • ISBN 9784591160657
  • Age 6 +

New Year, New Year’s Eve, Lion dance

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『まめつぶこぞうパトゥフェ』表紙

まめつぶこぞうパトゥフェ〜スペイン・カタルーニャの むかしばなし

『まめつぶこぞうパトゥフェ』(絵本)をおすすめします。

パトゥフェは、体は豆粒ぐらい小さいのに、なんでもやろうとする元気な男の子。お母さんにたのまれたおつかいも、踏みつぶされないように「パタン パティン パトン」と歌いながら歩いていき、ちゃんとなしとげる。ところが、お父さんにお弁当を届けに行こうとしてキャベツの葉の下で雨宿りしているとき、牛に飲み込まれてしまう。さあ、どうしよう。パトゥフェは牛のお腹の中でも歌って、お父さんとお母さんに居場所を知らせ、牛のおならとともに外に飛び出す。絵も文もゆかいで楽しい。

3歳から/昔話 牛 おなら おつかい

 

The Pea-sized Boy Patufet

ーA Folktale from Catalonia, Spain

Patufet is an active little boy who tries to do everything even though he is pea-sized. When his mother asks him to go and buy some saffron, he successfully fulfills his mission. To make sure no one steps on him, he sings “Patan, patine, paton” the whole way there. When he goes to take lunch to his father, however, it begins to rain. Patufet shelters under a cabbage leaf, but is swallowed by a cow that eats the cabbage. What does he do? The resourceful boy sings loudly inside the cow’s stomach so that his parents can find him and leaps out when the cow farts. The illustrations and text are fun and entertaining. (Sakuma)

  • Text: Uno, Kazumi | Illus. Sasameya, Yuki
  • BL Shuppan
  • 2018
  • 32 pages
  • 29×22
  • ISBN 9784776408628
  • Age 3 +

Folktale, Cow, Fart, Errand

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『へいわとせんそう』表紙

へいわとせんそう

『へいわとせんそう』(絵本)をおすすめします。

谷川は、戦時中に空襲に遭い焼死体をたくさん見た実体験を持つが、この絵本では残酷な体験を語ったり抽象的に平和を説いたりはしない。最初の見開きは「へいわのボク」「せんそうのボク」、次は「へいわのワタシ」「せんそうのワタシ」というふうに、短い言葉で平和時と戦争時の状況を対比させていく。絵はモノクロの線画で、どの場面もシンプルでわかりやすく幼児にも伝わるものがある。最後の見開きの「みかたのあかちゃん」「てきのあかちゃん」ではどちらもまったく同じ絵になっている。

3歳から/平和 戦争

 

Peace and War

As a teenager, the author was forced to flee from fire bombs during World War II, at which time he saw countless corpses. In this book, however, he neither shares those painful experiences nor talks about peace in abstract terms. Instead, he takes familiar things and actions that we take for granted and juxtaposes what they look like during a time of peace and a time of war. The book begins with a child (me at peace, me at war) and progresses through a father, a mother, a family, a tool of peace (a pencil) and a tool of war (a gun), as well as such things as a queue, a tree, the sea, a town, night, and a cloud. Except for the mushroom cloud rising from the atomic bomb, which is a photo, the pages are illustrated with simple black-and-white drawings. In the last spread, “a baby on our side” and “an enemy baby,” the pictures are identical. (Sakuma)

  • Text: Tanikawa, Shuntaro | Illus. Noritake
  • Bronze Publishing
  • 2019
  • 32 pages
  • 19×19
  • ISBN 9784893096579
  • Age 3 +

Peace, War

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『あまがえるのかくれんぼ』表紙

あまがえるのかくれんぼ

『あまがえるのかくれんぼ』(絵本)をおすすめします。

アマガエルの子ども3 匹がかくれんぼをして遊んでいると、1匹の体がいつのまにか茶色っぽくなってしまう。洗ったりこすったりしても体の色はもどらない。どうしてだろう? そのとき突然空からサギが舞い降りてくる。こわい!でも、サギは気づかずに去っていく。アマガエルは、成長すると、体色が周囲の色に合わせて変化するようになるのだが、この絵本はそのことを、物語として伝えている。何年もアマガエルを飼育し観察してきた画家の絵はリアルで、あちこちに小動物を発見する楽しみもある。

4歳から/アマガエル 保護色 かくれんぽ

 

Little Frogs Play Hide-and-Seek

Three frog children are playing hide-and-seek in the grass, when all of a sudden one of them turns brown. The other two wash and scrub him, but his color remains stubbornly brown. They are wondering why when suddenly a heron swoops down from the sky. The shocked frogs freeze, and the heron moves away without noticing them. Through a fun story, this picture book informs the readers how as frogs grow, their bodies change color to blend in with their surroundings. The illustrator spent a number of years watching tree frogs breed, and her illustrations accurately capture the actions of the frogs. It is also fun discovering the other small creatures. (Sakuma)

  • Text: Tateno, Hiroshi | Illus. Kawashima, Haruko
  • Sekai Bunkasha
  • 2019
  • 24 pages
  • 27×24
  • ISBN 978441819- 8085
  • Age 4 +

Tree frogs, Camouflage, Hide-and-seek

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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『ようこそ、難民』表紙

ようこそ、難民!〜100万人の難民がやってきたドイツで起こったこと

『ようこそ、難民!』(NF)をおすすめします。

本書は厳密には事実に基づく創作だが、事実の部分が多いのでここ(NF)に入れた。ドイツに永住した著者が、難民とはどのような人たちで、なぜ自分の国を逃げ出さなくてはならなくなったのか、ドイツはなぜ難民を多く受け入れたのか、感情や理想だけでは進まないという事実、文化の違いから来る誤解、イスラム教徒もそれぞれに違うこと、難民がドイツになじむために行われている教育などについてもわかってくる。多様な視点が登場するのがいい。

11歳から/難民 ドイツ 多文化共生

 

Refugees, Welcome!

―When a Million Refugees Arrived in Germany

This book is not non-fiction in the strictest sense, but much of it is real, which is why it is included here. The author, a Japanese woman in Freiburg, discusses refugees. What sort of people are refugees and why did they have to flee their countries? Why did Germany recently accept so many refugees? What actions were taken by German people against them? Why can’t reality be sustained by emotions and ideals alone? What misunderstandings arose from cultural differences? What are the differences between the various adherents of Islam, and what was done to help the refugees learn German? She tackles the issue from various perspectives, giving readers the opportunity to think for themselves. (Sakuma)

  • Imaizumi, Mineko
  • Godo Shuppan
  • 2018
  • 176 pages
  • 22×16
  • ISBN 978-4-7726-1339-2
  • Age 11 +

Refugees, Germany, Multicultural society

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『世界を救うパンの缶詰』表紙

世界を救うパンの缶詰

『世界を救うパンの缶詰』(NF)をおすすめします。

パン職人の秋元義彦さんは、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、固い乾パンではなく、幼い子どもや老人でも食べられるパンの缶詰を作ろうと考え、さまざまな工夫や改良を重ね、試行錯誤をくり返したのちにとうとう完成させる。次に秋元さんは、賞味期限が近づいたパン缶を回収して、海外の被災地や飢餓地帯に送ることを思いつく。アイデアをひとつひとつ具体的に実現させてきたひとりの職人の考え方や、やり方を伝える感動的な読み物。

11歳から/パン 缶詰 職人 夢の実現

 

Saving the World With Canned Bread

This book is about a baker called Yoshihiko Akimoto. When the Kobe earthquake happened in 1995 and there was a need for nonperishable food, Mr. Akimoto hit upon the idea of canning bread that so that it would be soft enough for children and the elderly to eat. After trying many techniques and improvements, and much trial and error, he finally succeeded. Next Mr. Akimoto decided to recall unused canned bread that was approaching its expiry date, and send it to disaster and famine areas around the world through NGOs. This is a moving book about how one artisan dreamed of building a business that would benefit not just his local area but the world at large, and took the necessary steps to make his dream come true. (Sakuma)

  • Text: Suga, Seiko | Illus. Yamashita, Kohei
  • Holp Shuppan
  • 2017
  • 156 pages
  • 20×15
  • ISBN 978-4-593-53523-1
  • Age 11 +

Bread, Canned food, Artisans, Dreams

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『しあわせの牛乳』表紙

しあわせの牛乳〜牛もしあわせ!おれもしあわせ!

『しあわせの牛乳』(NF)をおすすめします。

岩手県の「なかほら牧場」では、115-19年中放牧されている牛が無農薬の野シバを食べ、自然に子どもを産み、山林と共生している。人間は子牛の飲み残した牛乳をもらう。牛の健康を犠牲にして効率を重視する「近代酪農」がほとんどのなか、経営者の中洞さんは、「しあわせに暮らす牛から、すこやかでおいしい牛乳を分けてもらうほうが、みんなうれしい」と信じ、困難を乗り越えて山地酪農の道を切りひらいた。信念を貫くすがすがしい生き方が感動的。

11歳から/牧場 牛乳 アニマル・ウェルフェア

 

Milk of Happiness

Japan’s first dairy farm to be animal welfare-certified is Nakahora Farm in Iwate Prefecture. This book tells of Mr. Nakahora’s struggles to reach this point. In his dairy operation, cows are let out to pasture year-round. They eat pesticide-free wild grasses, birth their calves naturally, and live in harmony with the mountains and the woods. People receive the milk left over from nursing their calves. In an age when “modern” methods call for sacrificing cows’ health to raise efficiency, Mr. Nakahora believes that “even if we cannot drink milk every day, it is better to receive rich, tasty milk from cows living happy lives. That makes everyone happy!” The way he lives out his ideals is very moving. (Sakuma)

  • Text: Sato,Kei | Photos: Yasuda, Natsuki
  • Poplar
  • 2018
  • 175 pages
  • 20×14
  • ISBN 978-4-591-15813-5
  • Age 11 +

Ranching, Milk, Animal welfare

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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谷山彩子『文様えほん』

文様えほん

『文様えほん』(NF絵本)をおすすめします。

文様とは、「着るものや日用品、建物などを飾りつけるために描かれた模様」とのこと。文様は、縄文時代から土器や人形に描かれていたし、現代でもラーメン鉢や衣服に描かれている。文様のモチーフは、植物、動物、天体や自然などさまざまだし、線や図形を組みあわせた幾何学文様もある。本書は、こうした多種多様な文様を紹介するだけでなく、地図で世界各地の文様の違いや伝播を見せてくれる。文様について楽しく学べる絵本。巻末に文様用語集や豆知識もついている。

10歳から/模様 パターン 日本の伝統

 

The Pattern Picture Book

Patterns are the designs created to decorate clothes, articles in daily use, buildings, and so forth. In Japan, spatulas, bamboo sticks, shells, and nails have all been used to pattern pots and figurines since the Jomon period, and these days ramen bowls and clothes too. This book not only introduces Japanese patterns using various motifs of plants, animals, celestial bodies and nature, and geometrical patterns combining lines and figures, but it also includes a map to show differences with other patterns around the world and how some patterns of one region have spread to others. Along with illustrations, the book also includes a glossary of terms and useful information for readers to enjoy learning about the patterns. (Sakuma)

  • Text/Illus. Taniyama, Ayako
  • Asunaro Shobo
  • 2017
  • 48 pages
  • 21×22
  • ISBN 978-4-7515-2828-0
  • Age 10 +

Patterns, Motifs, Japanese tradition

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『デニムさん』表紙

デニムさん〜気仙沼・オイカワデニムが作る 復興のジーンズ

『デニムさん』(NF)をおすすめします。

東日本大震災からの復興を、縫製会社の社長・及川秀子さんの姿を通して描いた読み物。今は、高い技術で世界的に知られる「オイカワデニム」だが、夫の死や経済不況を乗り越えてようやく軌道に乗せたと思ったら、倉庫や自宅が大津波にさらわれてしまう。及川さんは高台にあった工場を臨時の避難所にし、その後も新たなアイデアを生かして復興の先頭に立ってきた。どんな時にも明るさを失わない及川さんに心を寄せながら震災を振り返ることができる。

10歳から/震災からの復興 女性 衣服

 

Ms. Denim

ーThe Jeans Produced by Oikawa Denim as a Symbol of Recovery

The city of Kesennuma, Miyagi Prefecture, sus- tained devastating loss in the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami, as well as the terrible fire that followed. This book depicts the disaster and recovery through the eyes of a woman, Hideko Oikawa. Just when she had managed to get her jeans manufacturing business on course after losing her husband and going through a recession, the quake struck. She lost her warehouse and her house in the subsequent tsunami. Oikawa turned her factory into an evacuation site and became a leader in the recovery effort. Her new ideas and the resilience of Tohoku people have made Oikawa Denim an internationally respected brand. (Sakuma)

  • Text: Imazeki, Nobuko
  • Kosei Shuppansha
  • 2018
  • 128 pages
  • 22×16
  • ISBN 978-4-333-02780-4
  • Age 10 +

Earthquake recovery, Women, Apparel

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『まなぶ』表紙

まなぶ

『まなぶ』(NF 写真絵本)をおすすめします。

キューバ、アフガニスタン、ミクロネシア、アンゴラ、ウズベキスタン、スリランカ、そして日本など、世界各地の子どもや若者たちが、学校や家や高原や旅先で学んでいる姿をすばらしい写真で紹介し、「学ぶ」ことにはどんな意味があり、「学ぶ」ことでどんなふうに世界が開け、「学ぶ」ことで何が受け継がれ、「学ぶ」ことがいかに平和につながっていくかを伝えている。子どもたちの真剣な表情と、未来を見つめている笑顔が印象的。同じシリーズに『はたらく』と『いのる』がある。

6歳から/学習 学校 文化

 

Learning

This photo picture book includes striking photos of children and young adults from Japan, Cuba, Afghanistan, Micronesia, Angora, Uzbekistan, Sri Lanka, Cambodia and other places around the world as they learn, both at school and at home, on the high plains and while travelling. Through them we can see what it means to learn, how the world opens up when we learn, what we inherit when we learn, and how learning is linked to peace. It is hard to forget the serious faces of the children, and their smiling faces as they look to the future. The same photo book series includes the titles Working and Praying (published 2017). (Sakuma)

  • Text/Photos: Nagakura, Hiromi
  • Alice-kan
  • 2018
  • 40 pages
  • 26×20
  • ISBN 978-4-7520-0843-9
  • Age 6 +

Study, School, Culture

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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戸森しるこ『理科準備室のヴィーナス』

理科準備室のヴィーナス

『理科準備室のヴィーナス』(読み物)をおすすめします。

中学1年生の瞳は、母親とふたり暮らしで、学校では疎外感を感じている。そんな瞳は、保健室に居合わせた理科の教師・人見先生に手当をしてもらったことから、アウトロー的なこの先生に魅了されていく。人見先生は第二理科準備室で授業のない時間を過ごすことが多く、顔がヴィーナスに似ていて、シングルマザーで幼い子どももいるらしい。そのうち瞳は、一風変わった男子の正木君も人見先生に惹かれているのに気づく。正木君と瞳は、美人でやさしく、しかも危険な匂いのするこの先生を「たったひとりの、特別な、かわりのきかない存在」だと考えて、第二理科準備室に入り浸る。性別の違うふたりの生徒と先生の、微妙なバランスの上で揺れる三角関係だ。大きな事件が起こるわけではないが、憧れに胸を焦がし、細かく揺れ動く思春期前期の子どもの心の情景を見事に描いた作品。

12歳から/憧憬 教師 学校

 

The Venus of the Science Lab

Hitomi Yuuki is in the first year at junior high. She lives with her mother, and she hardly ever sees her father since her parents divorced. She feels alienated at school. After she is tripped up in the classroom and falls, she goes to the sickroom for first aid treatment and has a conversation with the science teacher Ms. Hitomi, who happens to be there at the time. She develops a crush on the young teacher, whose surname Hitomi sounds like her own first name. Ms. Hitomi often spends time when she doesn’t have classes in the #2 Science Lab, and her face resembles Botticelli’s Venus. She is thirty-one, considerably older than student Hitomi, and is a single mother with a young child. She openly flouts school rules, eating sweets in front of her pupils, and to Hitomi she is the most beautiful, kindest, and also the most dangerous person she has ever known.
One day, Hitomi notices another boy, Masaki, staring at Ms. Hitomi. Masaki and Hitomi start spending all their time in #2 Science Lab, and both desire the teacher in slightly different ways. Nevertheless, both of them feel that she is a special, unique, and irreplaceable person in their lives. The three-way relationship between the two pupils, boy and girl, and their teacher maintains a delicate and complex balance. In the end it breaks down, but by then Hitomi has begun to think of Masaki, who is eccentric and tends to take chances, as a kindred spirit. “He was necessary in order to get close to something out of reach,” she thought.
Nothing dramatic happens in this book, but it wonderfully portrays the fluctuating emotions of children in early adolescence being consumed by longing. (Sakuma)

  • Text: Tomori, Shiruko
  • Kodansha
  • 2017
  • 206 pages
  • 20×14
  • ISBN 978-4-06-220634-1
  • Age 12 +

Aspirations, Teachers, School

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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濱野京子著『ドリーム・プロジェクト』PHP研究所

ドリーム・プロジェクト

『ドリーム・プロジェクト』(読み物)をおすすめします。

中学2年生の拓真の家には、祖父の勇が同居している。80歳になる勇は、ある日黙って家をでて、家族を心配させる。勇は、自分がもと住んでいた山あいの奥沢集落に向かおうとしていたのだ。勇がこの集落や、自宅だった古民家をなつかしんでいることに気づいた拓真は、古民家を修繕して、地域の人たちの憩いの場にしようと思い立つ。そこで友だちの協力もあおいで知恵をだしあい、必要な資金をクラウドファンディングで集めるプロジェクトを立ちあげる。拓真たちはフライヤーを作って配ったり、SNSで情報を拡散したり、地元の有力者に会いにいったりして努力を重ねる。160万円という目標の達成には多くの人の支援が必要になるが、果たして資金は集まるのだろうか? 楽しい読み物としてどきどきしながら読み進むうちに、クラウドファンディングの仕組みについても知識が深まる。

12歳から/クラウドファンディング インターネット 仲間

 

Dream Project

Takuma is in the second year at junior high. His grandfather Isamu has been living with him since losing his wife. Isamu is now 80, and when he leaves the house one day without saying anything, the family are worried about him. When they investigate, they discover that he has gone to the village in the mountains where he used to live. Realizing that Isamu is missing the village and his old house, which now lies empty, Takuma hits upon the idea of renovating the old wooden thatched house and making it into a center where local people can gather. He gains the support of some of his friends at school, and pooling their knowledge, they work together to set up a project to raise the necessary money through a crowdfunding campaign. They go to a crowdfunding company to explain their project, learn about the procedures, and receive advice, and then decide to go ahead with the project.
Takuma and his friends don’t just make the crowdfunding page, they work hard on the project doing things like making flyers to hand out at bus stops in the morning, spreading information via Twitter and Facebook, showing supporters from the city around, going to meet the former mayor who is a local figure of authority, and so forth. They need to get a lot of people to support them in order to meet their target of 1.6 million yen. Will they manage to raise the funds in the end? This entertaining and exciting read also deepens knowledge of the procedures of crowdfunding and how to participate in society. (Sakuma)

  • Text: Hamano, Kyoko
  • PHP Institute
  • 2017
  • 205 pages
  • 20×14
  • ISBN 978-4-569-78777-0
  • Age 12 +

Crowdfunding, Internet, Friendship

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『こんぴら狗』表紙

こんぴら狗

『こんぴら狗』(読み物)をおすすめします。

江戸時代、商店の娘・弥生に拾われて大きくなった犬のムツキは、ある日、江戸から讃岐(今の香川県)にある金比羅神社までお参りに出される。弥生の病気の治癒を祈願する家族の代理で参拝することになったのだ。ムツキは途中で、托鉢僧、にせ薬の行商人、芸者見習い、大工、盲目の少年など、さまざまな職業や年齢の人々に出会い、ひとときの間道連れになって旅をする。そして、川に落ちたり、雷鳴に驚いてやみくもに逃げ出して迷子になったり、姿のいい雌犬と出会って仲良くなったり、追いはぎに襲われた道連れを助けたり、といろいろな体験をしながら、金比羅神社までの往復をなしとげる。ムツキをかわいがっていた盲目の少年が、やがてムツキの子どもをもらうという終わり方にもホッとできる。たくさんの資料や文献にあたったうえで紡がれた、愛らしいリアルな物語。多くの賞を受賞している。

12歳から/犬 参拝 旅

 

Konpira Dog

This is an entertaining adventure novel with a dog as the protagonist, and is also historical fiction introducing the customs and lifestyle of Japanese people in the Edo period (1603-1868). The dog, Mutsuki, had been abandoned, but was rescued by Yayoi, the daughter of a wealthy merchant, and is now grown up. In this story he is sent on a pilgrimage from Edo (Tokyo) to a shrine in Sanuki (today’s Kagawa Prefecture in western Japan) dedicated to Konpira, the guardian deity of seafarers. He is being sent as the family’s representative to pray that Yayoi will recover from illness. He sets out carrying a bag around his neck containing a wooden slab engraved with his owner’s name and address, a monetary offering for the shrine, and enough money for buying food to last him the journey. He comes to be known as “Konpira Dog” and is looked after by travelers and other people he crosses paths with, so eventually he completes his mission and returns home safely.
On his travels, Mutsuki keeps the company of many people of different trades and ages, including a mendicant, a snake oil peddler, an apprentice geisha, and a carpenter. He also has many experiences on his pilgrimage, such as falling into the river, making friends with an attractive female dog, and saving a traveling companion from bandits. His last companion on the road is a woman who runs a kerosene wholesale business and whose young son Muneo is blind. The boy is later given Mutsuki’s puppy, providing a satisfying conclusion to the story. The author researched the subject thoroughly to make it into a creative yet realistic story. The book won the Sankei Children’s Publishing Award, the Association of Japanese Children’s Authors Award, and the Shogakukan Children’s Book Award. (Sakuma)

  • Text: Imai, Kyoko | Illus. Inunko
  • Kumon Shuppan
  • 2017
  • 344 pages
  • 20×14
  • ISBN 978-4-7743-2707-5
  • Age 12 +

Dogs, Pilgrimage, Travel

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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魚住直子『いいたいことがあります!』表紙

いいたいことがあります!

『いいたいことがあります!』をおすすめします。

小学校6年生の陽菜子は、家事も勉強もちゃんとやれと口うるさくいう母親がうっとうしくて仕方がない。単身赴任中の父親はともかく、兄が家事を免除されているのも不公平だと思っている。ある日、陽菜子は不思議な女の子に出会い、その子が落としたらしい手帳を拾う。手帳には、「わたしは、親に支配されたくない。わたしは、わたしの道をいきたい」と書き付けてあった。何度か現れてアドバイスもしてくれる、あの不思議な女の子はいったい誰なのか? その謎を追いかけていくうちに陽菜子はしだいに強くなり、母親にも言い返せるようになる。最後に、不思議な女の子の謎がすべて解けたときには、陽菜子と母親の遠かった距離は近くなり、ふたりとも本来の自分の道を探す一歩を踏みだせるようになっていた。ファンタジー的要素も取り込んで現代の少女が置かれた状況を生き生きと伝える。

11歳から/母と娘 手帳 自分の道 家事の分担

 

I’ve Got Something to Say!

A story that with elements of fantasy portrays what life is like for girls in Japan. It is an entertaining read that has you wondering about a mysterious girl that the protagonist meets. Hinako is in her last year at elementary school and irritated at being constantly nagged by her mother to study and do housework. She feels it’s unfair that her brother is exempted from housework, as is her father on account of being posted to a job far away. Her mother believes it’s for the best to be strict with her, and Hinako cannot openly defy her. Thus their relationship quickly deteriorates as Hinako harbours counterveiling feelings of rebellion and guilt. And then Hinako meets a mysterious girl, who leaves behind a notebook in which it is written, “I don’t want to be controlled by my parents. I want to follow my own path.” Subsequently the girl turns up numerous times, and following her advice Hinako gradually becomes able to say the things she wants to say to her mother.
When her mother tells her off for playing hooky from the cram school, on the spur of the moment Hinako skips a mock exam and instead goes to her deceased grandmother’s old abandoned house. On the way there she again meets the mysterious girl, and they go into the house together. They are there talking together when Hinako’s Aunt Megumi (her mother’s sister) turns up and the mysterious girl vanishes. Her mother follows her aunt in, and as they talk things over they solve the mystery of the mysterious girl, clarifying her true identity. Hinako and her mother become closer as a result, and they are both able to take the first steps to seeking their own paths in life. The story depicts the difficulties between a girl in early adolescence and her mother. (Sakuma)

  • Text: Uozumi, Naoko | Illus. Nishimura, Tsuchika
  • Kaiseisha
  • 2018
  • 186 pages
  • 20×14
  • ISBN 978-4-03-727290-6
  • Age 11 +

Mothers and daughters, Notebooks, Housework

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『青がやってきた』表紙

青(はる)がやってきた

『青がやってきた』(読み物)をおすすめします。

青(ハル)は小学校5年生の男の子だが、父親が「ドリーム・サーカス」のマジシャン(ハルにいわせれば本物の魔法使い)で、サーカスが鹿児島、福岡、山口、大阪、千葉と興業先を転々とするたびに自分も転校し、行く先々でさまざまな子どもたちに出会う。勉強や容姿にコンプレックスをもつ子もいるし、給食の野菜が嫌いで食べられない子もいるし、かと思うと、自分のだといい張るおじいさんからサーカスの犬を取り返してくれる子もいる。宮城にいたときに津波で父親を失った子は、マジシャンの修業をしているなら、亡くなった父親をマジックでだしてくれとハルに迫る。多様な状況にいる5年生を描く短編集だが、ハルと出会ったのがきっかけで、どの子も最後には精神的な成長を見せる。一編ずつが短いなりにまとまっているので、読書慣れしていない子どもにも薦められる。

10歳から/転校 サーカス 不思議

 

Here Comes Haru!

This collection of short stories realistically portrays the daily lives, environments, and problems of elementary school fifth grade children in five regions of Japan. Haru, a circus boy who never spends much time in one school as his family is constantly on the move, plays a supporting role throughout the book. His father is a magician in the world-famous Dream Circus, and Haru makes new friends at every new school he attends. Mio, who lives in Kagoshima, is worried about being bad at studying, while Mai, who lives in Fukuoka, has a complex about her appearance and an awkward relationship with her best friend. In Yamaguchi, Haru catches straight A student Shu sneaking the vegetables from school lunch into a plastic bag to hide them, and in Osaka he asks Kazuki to help him get a circus dog back from the mean old man next door, while in Chiba Koki presses Haru to use magic to bring back his father who was swept away when the tsunami hit in Miyagi. The book ends with a conversation between Haru and his father in the car as the circus heads to its next location. The children Haru meets all grow psychologically, but is that because the eccentric new boy Haru placed a spell on them, or was it a natural result from having met him? The author leaves this point open to the reader’s imagination. Each of the stories ends on an upbeat note, making the reader feel positive, so it is recommended for children not generally fond of reading. (Sakuma)

  • Text: Mahara, Mito | Illus. Tanaka, Hirotaka
  • Kaiseisha
  • 2017
  • 214 pages
  • 19×13
  • ISBN 978-4-03-649050-9
  • Age 10 +

School transfers, Circuses, Magic

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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富安陽子文 山村浩二絵 『絵物語 古事記』偕成社

絵物語 古事記

『絵物語 古事記』(読み物)をおすすめします。

712年に成立した日本最古の歴史書といわれる「古事記」(3巻本)の中から、神話をとりあげた上巻を、人気作家が物語として再話し、国際的なアニメーション作家でもある画家が、楽しい絵をつけた作品。監修者は、「古事記」の研究者。イザナキとイザナミによる国生み、イザナキの黄泉の国訪問、天の岩屋、やまたのおろち、稲羽の白うさぎ、海幸彦と山幸彦など、日本でもおなじみの神話が紹介されている。富安は、現代作家ならではの視点で、それぞれの話に流れをつけ、わかりやすくてダイナミックな物語に仕上げている。各ページにイラストを入れている山村は、さまざまな神々をユーモラスかつ人間くさく描くことによって、読者の興味をひくことに成功している。後書きには、「古事記」が作られた経緯や、成立にかかわった人々についての解説が載っている。

8歳から/神話 不思議

 

Illustrated KOJIKI

The Stories of Japanese Gods and Goddesses

Dating back to AD 712, the Kojiki is said to be Japan’s oldest historical record. It describes Japan’s history from the foundation of the nation to the era of Empress Suiko in the 7th century. The first volume tells richly imaginative tales of the gods, while Volumes 2 and 3 record the imperial lineage and major events during each reign. In this book, a children’s author who has been nominated for the Andersen Award from Japan retells the stories of Volume 1, accompanied by entertaining illustrations by an internationally renowned animator. The supervisor is a scholar of the Kojiki.
Myths known by Japanese children are retold here, such as the story of how the god Izanaki and goddess Izanami used a magical spear to form the country out of chaos; the story of how after her death, Izanaki chased Izanami through the underworld; and stories of how the sun goddess Amaterasu was so disgusted by the bad behavior of her younger brother Susanoo that she hid herself in a cave, and how Susanoo slayed the eight-headed monster Yamata no Orochi after being banished from heaven, and how the god Oonamuji saved the white hare that had its fur ripped out after tricking the sharks, and about the quarrel between the god Hoderi, who lived off the bounty of the sea, and the god Hoori, who lived off the bounty of the mountain.
Tomiyasu retells these many myths from the perspective of a contemporary author, making them into highly readable, entertaining, and exciting tales. Yamamura’s illustrations appear on every page, with amusing and humanlike portrayals of the deities that successfully draw children in. An afterword introduces how the Kojiki came to be written and the people who were involved in producing it. (Sakuma)

  • Text: Tomiyasu, Yoko | Illus. Yamamura, Koji | Spv. Miura, Sukeyuki
  • Kaiseisha
  • 2017
  • 255 pages
  • 22×15
  • ISBN 978-4-03-744870-7
  • Age 8 +

Myths, Gods

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

 

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『手ぶくろを買いに』表紙

手ぶくろを買いに

『手ぶくろを買いに』(絵本)をおすすめします。

母狐は、雪で遊んで手が冷たくなった子狐に手袋を買ってやりたいと思うが、人間が怖い。そこで子狐の片方の前足を人間の手に変え、白銅貨をもたせて店に行かせる。子狐は違う前足を出してしまうが手袋を売ってもらえたので、人間はちっとも怖くなかったというのだが、母狐は「ほんとうに人間はいいものかしら」とくり返す。おなじみの童話に新たにつけた絵からは、寒々とした雪景色と対比するような狐母子の温かい愛情が伝わってくる。

7歳から/手袋 キツネ 冬 人間

 

Shopping for Mittens

Children’s author Niimi Nankichi (1913-1943) has been long loved by Japanese children, and his most popular work of all has been newly illustrated by a contemporary artist. When a fox cub’s front paws get cold as it plays in the snow, the mother fox turns one of the cub’s front paws into a child’s hand, gives it couple of coins, and sends it to the store. The fox cub holds out the wrong paw, but since the human sells it the glove anyway, it isn’t at all afraid. When it gets home, its mother also says, “I suppose it’s possible that humans really are good.” The illustrations capture the love between the mother fox and her cub amidst the snowy landscape. (Sakuma)

  • Text: Niimi, Nankichi | Illus. Doi, Kaya
  • Asunaro Shobo
  • 2018
  • 32 pages
  • 31×22
  • ISBN 978-4-7515-2837-2
  • Age 7 +

Mittens, Foxes, Winter, Humans

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『ぼんやきゅう』表紙

ぼんやきゅう

『ぼんやきゅう』(絵本)をおすすめします。

岩手県釜石市の鵜住居地区は海に面しているので、2011年の津波に襲われて大きな被害を受けた。そのせいで、人々は生活を立て直すだけで精一杯となり、戦後ずっとお盆の時期に開かれていた野球大会も中断されていた。2017年、野球大会を再開して地域を復興させようと父親たちが立ち上がる。現地でさまざまな人を取材した絵からも臨場感が伝わってくる。巻末には、この地区の盆野球の歴史と、復活への経緯が、写真とともに掲載されていて、応援したくなる。

6歳から/津波 お盆 野球 震災からの復興

 

The Obon Baseball Tournament

Being next to the sea, the district of Unosumai in Kamaishi, Iwate prefecture, was severely damaged by the tsunami in 2011. Because of that, the baseball tournament held during the summer Obon festival ever since the end of the war was also cancelled. Everybody was too busy getting back on their feet. In 2017, local fathers decided to revive the tournament in order to help the area recover. This picture book portrays the occasion from the children’s perspective. The artist went to the location to talk to various people, so the pictures make you feel as though you are actually there. At the end of the book, a history of the district’s Obon Baseball Tournament and how it was revived is included along with photos. (Sakuma)

  • Text: Sashida, Kazu | Illus. Hasegawa, Yoshifumi
  • Poplar
  • 2018
  • 40 pages
  • 28×23
  • ISBN 978-4-591-15904-0
  • Age 6 +

Tsunami, Obon, Baseball, Earthquake recovery

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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寮美千子文 小林敏也画『イオマンテ:めぐるいのちの贈り物』ロクリン社

イオマンテ〜めぐるいのちの贈り物

『イオマンテ』(絵本)をおすすめします。

アイヌに伝わる〈クマ送り〉の儀式をめぐる絵物語。主人公の少年は、父親が仕留めた母グマの子どもをかわいがり一緒に成長するが、やがて別れの日がやってくる。成長した子グマを神の国へ送る儀式が行われることになったからだ。詩的な文章とスクラッチ技法による美しい絵が、さまざまな感情の交錯する世界をうまく表現している。生命が軽視されることの多い今の時代に、「いのちのめぐみ」を受け取るとはどういうことかを伝えている。

6歳から/アイヌ(先住民) 生命 クマ

 

Iomante

ーThe Gift of the Cycle of Life

A picture book about the ritual held by the Ainu, indigenous people of Hokkaido, when bears were killed. The protagonist is a young boy who dotes on a bear cub after its mother was killed by his father. They grow up together, and the villagers, too, rear the bear carefully as a god. However, the day they must part finally arrives. It is time to hold the ritual to send the grown bear cub to the land of the gods. A range of emotions in the unique world of the Ainu is beautifully portrayed through poetical phrasing and powerful scratch art illustrations. In these times, when life is often treated lightly, this work shows what it means to accept its blessings. (Sakuma)

  • Text: Ryo, Michiko | Illus. Kobayashi, Toshiya
  • Rokurinsha
  • 2018
  • 68 pages
  • 26×19
  • ISBN 978-4-907542-566
  • Age 6 +

Ainu (Indigenous people), Life, Bears

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『巨人の花よめ』表紙

巨人の花よめ〜スウェーデン・サーメのむかしばなし

『巨人の花よめ』をおすすめします。

スウェーデンの少数民族に伝わる昔話の絵本。サーメ人の美しい娘チャルミが、山の恐ろしい巨人に結婚を迫られる。チャルミは知恵を働かせて巨人の手から逃れようとするが、なかなかうまくいかない。とうとう婚礼の宴が開かれ、巨人もお客も浮かれているすきに、テントの中に身代わりの丸太を置いて、チャルミは逃げ出す。そして川の氷に大きな穴を掘り、村人を困らせていた巨人を退治する。現地に取材した画家の絵がダイナミック。

5歳から/サーメ 巨人退治 知恵

 

The Bride of the Giant

A Swedish to Japanese translator retells the legends of the Saami people of Lapland in Sweden, and an artist provides wonderful illustrations researched on location. When a giant who lives in the mountains falls in love at first sight with a beautiful Saami girl, Charmie, she wracks her brains to find a way to escape from him but things don’t go well. Finally their wedding banquet is held, and she takes advantage of the giant and his guests making merry to dress a log in her bridal clothes and make her getaway. She digs a large hole in the ice on the river to exterminate the giant that had caused so many problems for the villagers. (Sakuma)

  • Text: Hishiki, Akirako | Illus. Hirasawa, Tomoko
  • BL Shuppan
  • 2018
  • 32 pages
  • 30×22
  • ISBN 978-4-7764-0836-9
  • Age 5 +

Saami, Giants, Wisdom

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『夏がきた』表紙

夏がきた

『夏がきた』(絵本)をおすすめします。

海辺の村の夏を描く作品。IBBYバリアフリー児童書にも選ばれている。夏休みになり、子どもが近所の子どもたちに「あーそーぼー!」と声をかけ、連れだって海辺へとやってくる。浜では、海の家の準備の真っ最中。子どもたちも手伝って、スイカやおにぎりをごちそうになる。すだれ、風鈴、麦茶、扇風機、麦わら帽子、うちわ、入道雲、夕立、アサガオの鉢、蚊取り線香、花火など、夏ならではの風物が描かれていて、ふんだんに夏を感じることができる。

5歳から/夏 海 遊び

 

Summer Is Here

This work unfolds in a Japanese seaside village. As
summer vacation begins, a child calls to neighbor children, “Hey, let’s play!” and they go to the beach together. Here, preparations are underway at a rest house (for changing clothes, taking breaks, and buying snacks). The children help with the chores and get watermelon slices and rice balls in return. Bamboo mats, wind chimes, barley tea, straw hats, fans…puffy clouds, a sudden shower, potted morning glories, mosquito coils, fireworks. This book exudes summer, which you can feel even without reading the text. Chosen as an IBBY Outstanding Book for Young People with Disabilities. (Sakuma)

  • Text/Illus. Hajiri, Toshikado
  • Asunaro Shobo
  • 2017
  • 32 pages
  • 24×26
  • ISBN 978-4-7515-2830-3
  • Age 5 +

Summer, Summer sounds, Beach rest houses

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『犬が来る病院』表紙

犬が来る病院〜命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと

『犬が来る病院』(NF)をおすすめします。

聖路加国際病院の小児病棟の子どもたちを3年半にわたって取材したドキュメンタリー。日本で初めて小児病棟にセラピー犬を受け入れたこの病院で、犬の訪問活動はどうやって始まったのか、子どもたちの反応はどうだったのか、子どもたちが豊かな時間を過ごすための配慮がどう行われていたか、多くのスタッフがどう連携してトータルケアをめざしたのかなどについて述べられている。4人の子どもたちとその家族が、それぞれ病に直面して歩んだ軌跡も感動的。

12歳から/犬 セラピー 病院

 

The Hospital Where Dogs Visit

ーWhat the Children in Touch with Life Taught Us

A documentary book following children in the pediatric unit at Saint Luke’s International Hospital in Tokyo. Saint Luke’s is the first hospital in Japan to admit therapy dogs into the pediatric unit. The book looks at topics like how the visits by dogs started, how the children reacted, how care was taken to make the children’s time in hospital rich, and how many staff cooperated in the aim for total care. The book gives a moving account of four children (two passed away; two left hospital to find their own paths in life) and their families, whose progress they tracked as they dealt with their illnesses. (Sakuma)

  • Text: Otsuka, Atsuko
  • KADOKAWA
  • 2016
  • 224 pages
  • 19×13
  • ISBN 9784041035085
  • Age 12 +

Therapy dogs, Hospital, Children

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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『金さえあればいい?』表紙

お金さえあればいい?〜大人は知らない子どもは知りたい! 子どもと考える経済のはなし

『お金さえあればいい?』(NF)をおすすめします。

とてもわかりやすい文章とユーモアたっぷりのイラストで、お金や経済について学ぶ本。お金はなんのためにあるの? 経済とは本来どんなものなの? 今の日本経済に警鐘を鳴らす著者は、本当の経済は人と人が出会う場をつくるもので、そこからは幸せが生まれてこなくてはいけないという。利益ばかりを追い求めるような偽の経済活動を賢く見ぬいて、お金にふりまわされないで幸せになるためにはどうしたらいいか。それを本書は伝えている。

11歳から/経済 社会 お金 幸せ

 

All We Need Is Money?

ーA Tale of Economics to Think about with Young People

In easily understood language supported by humorous illustrations, this book teaches us about money and economics. What is the purpose of money? What is economics? The author, Noriko Hama, is a famous economist. She explains that true economics should be about creating spaces in which people can come together and that generate happiness. Unfortunately, economic activity today is increasingly focused on the pursuit of profit. She teaches how to discern such “false” economics and live a life that is not controlled by money and that will bring us happiness. (Sakuma)

  • Text: Hama, Noriko | Illus. Takabatake, Jun
  • Crayon House
  • 2017
  • 64 pages
  • 21×15
  • ISBN 9784861013195
  • Age 11 +

Money, Happiness, Economics

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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『円周率の謎を追う』表紙

円周率の謎を追う〜江戸の天才数学者・関孝和の挑戦

『円周率の謎を追う〜江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』(NF)をおすすめします。

関孝和の一生を、円周率を探る研究を核にして描いている。私たちが約3.14と学校で習う円周率も、関が学び始めた頃は3.16とされていた。それに疑問を感じて追求しようとする過程や、漢文から思いついて数式を表す方法を編み出すところなどがスリルに富んだ推理小説のように描かれている。同時に、この数学者が何かを一途に追求し消えない炎を持ち続けていたひとりの人間として浮かび上がってくるので、読み物としてもおもしろい。さまざまな文献を研究して書いた労作。

11歳から/数学 歴史 江戸時代 円周率 関孝和

 

Solving the Mystery of Pi

ーThe Genius Mathematician of Edo, Seki Takakazu

Portrays the life of Seki Takakazu, the master of Japanese mathematics known as wasan, with particular focus on his research on pi. We learn at school that pi is about 3.14, but when Seki started his studies it was thought to be 3.16. The process of working through the doubts he felt about this until he was convinced, and the way he devised a method to express numerical formulae based on Chinese kanbun writing is as thrilling as a mystery novel. This mathematician emerges as one human being who single-mindedly pursued something with unextinguished passion. Based on thorough research. (Sakuma)

  • Text: Narumi, Fu | Illus. Ino, Takayuki
  • Kumon Shuppan
  • 2016
  • 208 pages
  • 19×14
  • ISBN 9784774325521
  • Age 11 +

Mathematics, Edo period (1603-1868), Pi

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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『世界中からいただきます!』表紙

世界中からいただきます!

『世界中からいただきます!』(NF)をおすすめします。

世界各地の普通の家に居候して、家族の素顔や、いつもの暮らしを見せてもらい、普通の食事を食べさせてもらう。そういうふうにして集めたモンゴル、カンボジア、タイ、ハンガリー、イエメン、モロッコなど14カ国の17家族の生き方が、食を中心に写真とともに紹介されている。楽しいレイアウトのおかげで、日本の読者にも親しみやすく読みやすくなっている。コラムでは、世界の主食や屋台やトイレ、日本から持っていって喜ばれたお土産なども紹介されている。

9歳から/ごはん 台所 料理 異文化理解

 

Eating the Globe!

A writer and photographer travel all over the world, staying in ordinary homes and observing families going about their daily lives, and eating the same food as their hosts. They introduce us to the food and lifestyles of seventeen families in fourteen countries, from Mongolia, Cambodia, and Thailand, to Hungary, Yemen, and Morocco. The fun layout features many photos of children preparing and eating food, making it approachable for young readers everywhere. We also learn about staple foods around the world, street stalls, and toilets, as well as what kind of Japanese souvenirs are most appreciated by the host families. (Sakuma)

  • Text: Nakayama, Shigeo | Photos: Sakaguchi, Katsumi
  • Kaiseisha
  • 2016
  • 128 pages
  • 21×18
  • ISBN 9784036450602
  • Age 9 +

Food, Kitchens, Cooking

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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『干したから・・・』表紙

干したから・・・

『干したから・・・』(NF絵本)をおすすめします。

食を追求してきたカメラマンがつくった写真絵本。世界各地で見つけた乾燥食品を写真で示しながら、干すことによる食品の変化や、干すことの意味や目的を、わかりやすく説いている。野菜や果物や魚や肉や乳製品は、干すと水分がぬけて腐りにくくなり保存がきくようになるのだが、そこに子どもが興味をもてるよう構成や表現が工夫されている。めざし、梅干しなど乾燥食品を使った日本の典型的な食事や、野菜の簡単な干し方も紹介されている。

7歳から/食べ物 干物 自然 知恵

 

See What Happens When You Dry It Up

This is a picture book by a photographer on the theme of food. The author uses photos of dried foods found in many parts of the world to explain the changes that occur when foods are dried and the meaning and purpose of drying food. Drying removes the liquid from vegetables, fruits, fish, meat and milk products, preserving them so that they don’t go rotten, and the author use photos and text in ingenious ways to excite the reader’s curiosity and make this process easier to understand. The short appendix introduces examples of dried foods used in traditional Japanese cuisine and methods for drying vegetables and other foods that can be done at home. (Sakuma)

  • Text/Photos: Morieda, Takashi
  • Froebel-kan
  • 2016
  • 34 pages
  • 22×27
  • ISBN 9784577043714
  • Age 7 +

Food, Dried fish, Practical wisdom

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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『わたり鳥』表紙

わたり鳥

『わたり鳥』(NF絵本)をおすすめします。

世界のわたり鳥113種の旅を描いたノンフィクション絵本。なぜ長距離を移動するのか、どんなルートがあるのか、どんなところにどんな巣をつくるのか、渡りの途中でどんな危険に遭遇するのか、何をたよりに移動するのかなどを、子どもにもわかる文章と興味深い絵で説明している。巻末には、本書に登場するわたり鳥44種それぞれの大きさや姿、巣の大きさ、卵の色や形、渡りのルート、繁殖地と冬期滞在地などを紹介する一覧と、「世界のわたり鳥地図」も掲載している。

5歳から/渡り鳥、環境

 

Migratory Birds

This non-fiction picture book describes the journey of migratory birds from around the world. An astounding number of birds travel long distances every year in search of food and a safe place to lay their eggs and raise their young. What routes do they travel? What kind of nests do they build and where? What dangers do they face on their journey? How do they find their way? The author, who is an expert on birds answers such questions as these in words and illustrations that children can easily grasp. (Sakuma)

  • Text/Illus. Suzuki, Mamoru
  • Doshinsha
  • 2017
  • 40 pages
  • 26×26
  • ISBN 9784494010004
  • Age 5 +

Migratory birds, Environment

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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『フラダン』表紙

フラダン

『フラダン』(読み物)をおすすめします。

笑いながら読める青春小説だが、福島の原発事故をめぐる状況や、多様な人々とのぶつかりあいや交流なども書かれていて味わいが深い。工業高校に通う辻本穣は、水泳部をやめたとたん「フラダンス愛好会」に強引に勧誘される。しぶしぶいってみると、女子ばかり。ところが、シンガポールからのイケメン転校生、オッサンタイプの柔道部員、父親が東電に勤める軟弱男子も加入してくる。穣は男子チームを率いることになり、最初は嫌々だが、だんだんおもしろさもわかってきて、真剣になっていく。

15歳から/フラダンス 青春 震災 福島

 

Hula Boys

This is a laugh-out-loud youth novel, but its description of the circumstances surrounding the Fukushima nuclear disaster is thought-provoking. Yutaka, who attends a technical high school, leaves the swimming club only to be dragged into Hula Dance Club. When he grudgingly goes to take a look, he finds it full of girls. However, some other boys also join; Okihiko, a heart-throb type who has just moved from Singapore, Taiga, a geezer-type who also belongs to the judo club, and Kenichi, a weedy type whose dad works for TEPCO which is extremely unpopular in the wake of the nuclear disaster. Yutaka is put in charge of the boys team. (Sakuma)

  • Text: Furuuchi, Kazue
  • Komine Shoten
  • 2016
  • 290 pages
  • 20×14
  • ISBN 9784338287104
  • Age 15 +

Hula dance, Fukushima, Friendship

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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『こんとんじいちゃんの裏庭』表紙

こんとんじいちゃんの裏庭

『こんとんじいちゃんの裏庭』(読み物)をおすすめします。

リアルな状況を踏まえた男の子の成長物語だが、同時に現代ならではの冒険物語にもなっている。中学3年生の悠斗の祖父は、交通事故にあって入院し、意識が混濁したままになる。しかも悠斗の家族は、加害者から損害賠償を請求される。納得できない悠斗は、警察、保険会社、日弁連の法律センターなどを回って真相究明にのりだす。一方で、祖父のかわりに「裏庭」の果樹の世話も続ける。こうした過程を通して周囲の人々を一面的にしか見ていなかったことに気づいた悠斗は、多面的な視点を獲得して成長していく。

14歳から/認知症 家族 訴訟

 

Grandpa’s Back Garden

A realistic coming-of-age story about a 15-year-old boy, Yuto. One day, his grandfather, who showing signs of dementia, is run over as he cycles over a pedestrian crossing, and is taken to hospital where he remains in a state of semi-consciousness. On top of that, Yuto’s family receives a demand for compensation from the person who ran him over. Yuto is outraged and decides to try to clarify the truth. He goes to see the police, the insurance firm, and the law center. At the same time, he continues to care for his grandfather’s garden the way his grandfather taught him. In the process, he learns to see things from various points of view. (Sakuma)

  • Text: Murakami, Shiiko
  • Shogakukan
  • 2017
  • 256 pages
  • 19×13
  • ISBN 9784092897571
  • Age 14 +

Traffic accidents, Elderly people, Gardening

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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山本悦子『神隠しの教室』

神隠しの教室

『神隠しの教室』(読み物)をおすすめします。

ある日、5人の子どもたちが学校で行方不明になる。5人とは、いじめを受けていた加奈、ガイジンといわれているブラジル人のバネッサ、虐待されているみはる、情緒不安定の母親にネグレクトされている聖哉、そして単身赴任の父親と2年も会っていない亮太。みんな「どこかへ行ってしまいたい」と思っていた子どもたちだ。この子たちは、戻ってこられるのか? 戻るには何が必要なのか? 読者は謎にひかれて読み進むうちに、現代日本の子どもをとりまく社会にも目を向けることになる。野間児童文芸賞受賞作。

10歳から/いじめ ネグレクト ミステリー

 

The Hidden Classroom

A novel dealing with the problems that Japanese children these days have to deal with. One day, five children disappear from school: Kana, a girl who was being bullied; Vanessa, a Brazilian singled out for being a foreigner; Miharu, a girl who is abused by her mother’s lover; Seiya, a boy who is neglected by his emotionally unstable mother; and Ryota, a boy whose father has been away for work for two years. Will they be able to find their way back from their “parallel school”? What do they need to do in order to return? Noma Prize for Juvenile Literature.

  • Text: Yamamoto, Etsuko | Illus. Maruyama, Yuki
  • Doshinsha
  • 2016
  • 383 pages
  • 20×14
  • ISBN 9784494020492
  • Age 10 +

Bullying, Neglect, Mystery

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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藤重ヒカル著 飯野和好絵『日小見不思議草紙』

日小見不思議草紙

『日小見不思議草紙』(読み物)をおすすめします。

江戸時代を舞台にした5篇のファンタジー短編集。不思議な刀のおかげで鼻にタンポポが咲き、相手が笑ってしまうので戦わずして勝てる侍の話、野原で出会った不思議な女の子にすばらしい絵の具をもらって出世する絵描きの話、クマの助けを借りて一夜にして堰堤を築く話など、どれも短いなりにまとまりがよく、おもしろく読める。それぞれの短編の前後に江戸時代と現代を結びつける仕掛けもあり、虚実の境がわざとあいまいになっている。ユーモラスな味わいを支えている挿絵もいい。日本児童文学者協会新人賞受賞作。

10歳から/ファンタジー 江戸時代 変身

 

Hiomi’s Tales of Mysteries

A collection of five fantasy stories set in the Edo period. A samurai wins without fighting thanks to his magical sword, which makes dandelions bloom from his own nose resulting in laughter; an artist becomes successful after being given some amazing paints by a mysterious girl he met in a meadow; a dam is built to prevent the river from flooding, with help from some bears…all the stories are short, but well-constructed and fun to read. Each also has something that connects the Edo period with the present, and the border between fact and fiction is deliberately blurred. The illustrations add a humorous touch. Newcomer Prize of Japanese Association of Writers for Children. (Sakuma)

  • Text: Fujishige, Hikaru | Illus. Iino, Kazuyoshi
  • Kaiseisha
  • 2016
  • 231 pages
  • 22×16
  • ISBN 9784035404002
  • Age 10 +

Edo period (1603-1868), Humor, Fantasy

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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岩瀬成子『春くんのいる家』

春くんのいる家

『春くんのいる家』(読み物)をおすすめします。

新しい家族の形をテーマにしたフィクション。日向は、両親が離婚した後、母と一緒に祖父母の家で暮らしているが、そこに従兄の春も加わって一緒に暮らすことになった。春は、父親が病死し母親が再婚した結果、跡取りとして祖父母の養子になったのだ。新たな5人家族は、最初はぎくしゃくしていて、感情も行き違う。しかし、春が子ネコを拾ってきたことなどをきっかけに、徐々にみんなが寄り添いあい、新たなまとまりを作り出していく。その様子を感受性豊かな日向の一人称で描いている。

9歳から/家族 友だち ネコ

 

The House Where Haru Lives

A story about a new type of family. After Hinata’s parents divorce, she goes with her mother to live with her grandparents, but then her cousin Haru also comes to live with them. Haru’s father had died of an illness, and when his mother remarried, his grandparents adopted him as an heir. To begin with, relations in this new family of five are strained, as conflicting feelings and misunderstandings arise between them. However, after Haru picks up an abandoned kitten one day, they gradually draw closer together and create a new family unit. This process is sensitively portrayed from Hinata’s perspective.

  • Text: Iwase, Joko | Illus. Tsuboya, Reiko
  • Bunkeido
  • 2017
  • 104 pages
  • 22×16
  • ISBN 9784799901625

Adoption, Family, Divorce, Remarriage

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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角野栄子作 森環絵『靴屋のタスケさん』

靴屋のタスケさん

『靴屋のタスケさん』(読み物)をおすすめします。

職人の手仕事に興味をひかれる戦時下の幼い少女の気持ちをみずみずしく描いたフィクション。舞台は1942年の東京。小学校1年生の「わたし」が住む地域に、若い靴職人のタスケさんが店をだす。少女は放課後になると靴屋にいき、タスケさんのプロの仕事ぶりに見とれる。極度の近眼のため徴兵を免れていたタスケさんだったが、やがて戦況が悪化すると少女の前から姿を消す。兵隊にとられたのだ。おだやかな日常と、暴力的な戦争の対比がうかびあがる。

9歳から/戦争 友情 切なさ

 

Tasuke the Cobbler

This story is about a little girl who is drawn to an artisan’s handiwork during the war. The setting is Tokyo in 1942, and the author bases the story on her own wartime experiences. The first-person protagonist has just started school when a young cobbler called Tasuke opens a shop in her neighborhood. She is fascinated by his craft, and after school drops by his shop to watch him at work. Tasuke had escaped the draft on account of being nearsighted, but as the war progresses even he is called up to fight. Abruptly the girl is made aware of the contrast between her peaceful days and the violence of war. Her feelings are vividly portrayed throughout the story.

  • Text: Kadono, Eiko | Illus. Mori, Tamaki
  • Kaiseisha
  • 2017
  • 72 pages
  • 22×16
  • ISBN 9784035285205
  • Age 9 +

Shoes, Artisans, War

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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八百板洋子文 斎藤隆夫絵『猫魔ヶ岳の妖怪』

猫魔ヶ岳の妖怪〜福島の伝説

『猫魔ヶ岳の妖怪〜福島の伝説』(絵本)をおすすめします。

この絵本には、福島県各地に伝わる伝説「猫魔ケ岳の妖怪」「天にのぼった若者」「大杉とむすめ」「おいなりさまの田んぼ」の4話が入っている。原発事故前の福島は、自然豊かなとても美しい土地だった。この絵本に収められた伝説からもそうした地域の背景がうかがわれ、人間と動物や自然との結びつき、人間には計り知れない自然の力などが感じられる。再話は、ブルガリアと日本の民話の研究者・翻訳者。絵も、伝説の雰囲気をよく伝えている。

6歳から/伝説 福島

 

The Monster of Nekomagadake

ーLegends from Fukushima

This book contains four legends from Fukushima that have been passed down for generations: The Monster of Nekomagadake, The Youth Who Rose to the Heavens, The Great Cedar and the Young Maiden, and The Foxes’ Rice Paddy. Before the nuclear accident that occurred during the 2011 tsunami, Fukushima was a beautiful land, rich in nature and home to many organic farmers. From these legends, we can imagine that land, feel humankind’s relationship with living creatures and nature, and sense nature’s immeasurable power.

  • Retold: Yaoita, Yoko | Illus. Saito, Takao
  • Fukuinkan Shoten
  • 2017
  • 56 pages
  • ISBN 9784834083279
  • Age 6 +

Legends, Fukushima, Nature’s power

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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『こうさぎとほしのどうくつ』表紙

こうさぎとほしのどうくつ

『こうさぎとほしのどうくつ』(絵本)をおすすめします。

4匹の子ウサギのきょうだいが、嵐を逃れるために洞窟に入りこみ、となりの子ウサギたちとも出会って、洞窟の中を探検する。そのうち、ランタンを落とし、真っ暗な中を子ウサギたちは洞窟の中の大広間にすべり落ちてしまう。ところがその大広間の天井には、星のような光がまたたいていて、子ウサギたちを洞窟の出口へと案内してくれた。最後は家にもどって一安心。子ウサギたちの驚き、不安、安堵、幸福感など心のうちを、顔の表情や変化に富む背景の色でうまく表現している。

5歳から/ウサギ 友だち 冒険

 

The Little Bunnies and the Star Cave

Four little bunnies run into a cave to escape a storm. There they meet their bunny neighbors and begin exploring the cave together. But one of them drops the lantern and in the darkness, they slide into a big cavern within the cave. The ceiling twinkles as though with stars. By this light, the bunnies find their way out of the cave and return home safely. The emotions they experience, such as surprise, anxiety, relief and happiness, are beautifully conveyed through their facial expressions as well as the richly varied background colors. (Sakuma)

  • Text: Watari, Mutsuko | Illus. Dekune, Iku
  • Nora Shoten
  • 2016
  • 40 pages
  • 26×21
  • ISBN 9784905015277
  • Age 5 +

Rabbits, Caves, Exploring, Friends

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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『あめがふるふる』表紙

あめがふるふる

『あめがふるふる』をおすすめします。

雨の日に、ふたりだけで留守番をしている兄のネノと妹のキフが、窓の外をながめていると、フキの葉の傘をさしたカエル、たくさんのオタマジャクシ、くるくる回るカタツムリ、踊っている木や草や野菜などが次々にあらわれる。そして魚に誘われて向こうの世界にとびこんだ兄妹は、困っている小さな動物たちを笹舟をたくさん作ってのせていく。やがてお母さんが帰ってきて、子どもたちは現実に戻る。「あめがふるふるふるふる・・・」という言葉が効果的に使われ、力強い絵がファンタジー世界を楽しむ子どもをうまく表現した絵本。

5歳から/雨の日 冒険 思いやり

 

It Rains and It Pours

Neno and his younger sister Kifu are home alone on a rainy day. As they gaze out the window, they slip into a fantasy world. One by one strange things come into view: a frog with a butterbur leaf umbrella, a horde of tadpoles, snails spinning round and round, huge trees and vegetables. Dancing joyfully, Neno and Kifu weave boats from blades of bamboo grass to help little animals get through the rain. When their mother comes home, they return to reality. The playful wording and strong illustrations capture the children’s delight in the strange world they encounter. (Sakuma)

Text/Illus. Tashima, Seizo Froebell-kan 2017 32 pages 25×23 ISBN 9784577045190 Age 5 +
Rain; Staying home alone; Reality and fantasy

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本 2018」より)

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『真夜中のちいさなようせい』表紙

真夜中のちいさなようせい

『真夜中のちいさなようせい』をおすすめします。

韓国の画家による初めての絵本。作者は、病弱で寝ていることが多かった幼少時代に、ゆめうつつに妖精を見たことがあるという。そんな体験を基に 2 年という年月をかけて生まれた作品。
熱を出して寝ている男の子は、お母さんが看病に疲れてうたた寝をしている間に妖精に会う。目をさまして、その妖精がくれた指輪を見たお母さんも、忘れていた記憶を思い出し、少女に戻って息子や妖精たちと遊ぶ。勢いの良さで勝負するような絵本やマンガ風の絵本がもてはやされる時代にあって、伝統的な手法でていねいに細かく描かれたこのような絵本は貴重だし、ぬくもりも伝わって想像力がひろがる。文章には登場しない猫があちこちに顔を出しているのも楽しい。

(産経児童出版文化賞/翻訳作品賞選評 産経新聞2022年05月05日掲載)

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『なかよしの犬はどこ?』表紙

なかよしの犬はどこ?

『なかよしの犬はどこ?』をおすすめします。

知らない町に父親と引っ越してきたペニーは、庭にやってきた犬といっぱい遊んで寂しさを忘れる。どこの犬だろう? ペニーと父親は、買い物をしながら犬のことをたずねてまわる。こうして町の人たちと知り合いになったものの犬は結局見つからない。しょんぼり帰ってくると、お隣からあの犬と男の子がひょっこり顔を出した。寂しさを抱える子どもが友だちを得るという展開に共感できる絵本。町の人々の肌の色、ペニーのおもちゃ、父子家庭の有りようなどいろいろな意味でステレオタイプを打ち破っている絵も楽しい。
3歳から

(朝日新聞「子どもの本棚」2022年04月30日掲載)

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『ニッキーとヴィエラ』表紙

ニッキーとヴィエラ〜ホロコーストの静かな英雄と救われた少女

『ニッキーとヴィエラ』をおすすめします。

第2次世界大戦直前、迫り来るナチスの魔手から子どもを救おうとした人たちがいた。イギリス人のニッキーもそのひとり。旧チェコスロバキアにいたユダヤ人の子どもを列車でイギリスへ逃がすために奔走した。10歳の少女ヴィエラは、家族と別れて列車に乗った669人のひとり。終戦後ニッキーは、自らの功績を語ることなく静かに暮らしていたが、2人は後に再会する。チェコで生まれ、自由を求めてアメリカに移住した作者は、これまでダーウィン、ガリレオなど勇気ある偉人について描いてきたが、今回は、良心に従って行動したほぼ無名の人物を取り上げてノンフィクション絵本に仕上げた。絵が語るものをじっくり見ていく楽しさもあるし、今の時代にも重なる。
小学校中学年から

(朝日新聞「子どもの本棚」2022年03月26日掲載)

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『シリアからきたバレリーナ』表紙

シリアからきたバレリーナ

『シリアからきたバレリーナ』をおすすめします。

11歳の少女アーヤは、内戦で故郷のシリアを離れ命からがら避難する途中、父親が行方不明になり母親は心身が衰弱してしまう。たどりついたイギリスでは、幼い弟の世話をしながら難民申請のために支援センターに通う日々。ある日音楽を耳にして吸い寄せられるように歩いていくと、そこはバレエ教室だった。アーヤは故郷でも夢中になっていたバレエをよりどころに、かつて難民だった先生にも支えられ、自分の居場所を見いだしていく。難民の少女の視点で紡がれた物語。
小学校高学年から

(朝日新聞「子どもの本棚」2022年02年26日掲載)

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『マイロのスケッチブック』表紙

マイロのスケッチブック

『マイロのスケッチブック』をおすすめします。

マイロは小さな男の子。お姉ちゃんと地下鉄に乗ると、ほかの乗客たちの暮らしを想像して絵に描いていく。でも、大金持ちのぼんぼんかと思った子が自分と同じ目的地に向かうのを見て、見かけと実際の現実は違うかもしれないと思い始める。さっき寂しい独り暮らしだと思ったおじさんには仲良し家族がいるのかも。ウェディングドレスのお姉さんの結婚相手は女の人かも。マイロたちが到着したのは刑務所。面会したお母さんにマイロが見せた絵は? 想像力が現実を変えることだってきっとあるよね。
小学校低学年から

(朝日新聞「子どもの本棚」2022年01年29日掲載)

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『火曜日のごちそうはヒキガエル』表紙

火曜日のごちそうはヒキガエル

『火曜日のごちそうはヒキガエル』をおすすめします。

冬は地面の下で過ごしているはずのヒキガエルのウォートンは、どうしてもおばさんにお菓子を届けようと外へ出てしまう。するとミミズクにつかまり、火曜日に誕生日を迎えるミミズクのごちそうにされることに。逃げ出せずにとうとうその日が来て万事休すとなったとき、不思議なことが次々に起こる。
小学校中学年から

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年11月27日掲載)

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『こうさぎとおちばおくりのうた』表紙

こうさぎとおちばおくりのうた

『こうさぎとおちばおくりのうた』をおすすめします。

4ひきの子うさぎきょうだいが、祭りの花火の音に誘われて、落ち葉行列に参加したり、森に入って歌ったりはねたりするうちに、道に迷ってしまう。一面落ち葉に覆われた森は、様子が変わっていたからだ。助けてくれたのは、ブナの大木「ぶなじい」。冬になる前の美しくかがやく自然の中に入り込んで、子うさぎたちと一緒にささやかな冒険を楽しめる絵本。
5歳から

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年11月27日掲載)

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『ちいさなおじさんと大きな犬』表紙

ちいさなおじさんとおおきな犬

『ちいさなおじさんとおおきな犬』をおすすめします。

小さなおじさんは、みんなからいじめられてひとりぼっち。おじさんが友だち募集の貼り紙を出すと、大きな犬がやってきた。毎日ポケットにクッキーを入れて犬がくるのを待つうち、おじさんは犬と友だちになる。楽しく日々を過ごしているところへ、かわいい女の子が登場し、大きな犬と大の仲良しに。おじさんは、自分が仲間はずれになったと思いこみ、ひとり森をさまよう。スウェーデンの地味な色彩の絵本だが、ユーモラスな絵には味があり、幸せな結末に心がなごむ。
小学校中学年から

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年10月30日掲載)

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「2023年IBBYバリアフリー児童書」に日本から推薦した本

2月13日に「2023年IBBYバリアフリー図書」に日本から推薦する本を選ぶ選考会がありました。選考委員は、梨屋アリエさん(児童文学作家)、林左和子さん(静岡文化芸術大学教授)、村中李衣さん(児童文学者/ノートルダム清心女子大学教授)、山田真さん(小児科医)、そして私です。進行はいつも撹上久子さんがやってくださいます。
前は候補の本を並べて、一つずつ見ながら話し合っていたのですが、コロナでそれができなくなり、事前にそれぞれ見ておいてからオンラインで話し合うというかたちになりました。
この選考会は、いつもほかの委員の方々の意見をうかがって、なるほどと思うことが多々あるのですが、今回も「軽度障碍者を派遣で雇うことがいいことであるかのような書き方でいいのか」「パラリンピックの選手をこういうふうに描くと、障碍者にもっと努力しろというようなものではないか」「こういうふうに間の動きを描いてもらうと発達障碍の人たちにもわかりやすい」「これだと命を粗末にしているようにとられる」などなど、いろいろな意見が出てきました。
3時間の話し合いの結果、日本から推薦することにしたのは、次の作品です。
◆カテゴリー1:誰もがアクセスできる本
・『音にさわる-はるなつあきふゆをたのしむ「手」』広瀬浩二郎作  日比野尚子絵 偕成社
・『かける』はらぺこめがね作 佼成出版社
・『仕事に行ってきます① クッキーづくりの仕事 洋美さんの1日』(LLブック)季刊『コトノネ』編集部作 加藤友美子写真他 埼玉福祉会
・『どちらがおおい? かぞえるえほん』村山純子作 小学館
・『ふーってして』松田奈那子作 KADOKAWA
・『まどのむこうの くだもの なあに?』荒井真紀作 福音館書店
・『りんごだんだん』小川忠博作 あすなろ書房
◆カテゴリー2:障害がある子どもや人物を描いた本
・『全身マヒのALS議員 車いすで国会へ』舩後靖彦、加藤悦子、堀切リエ著 子どもの未来社
・『めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン』多屋光孫作 合同出版
・『わたしが障害者じゃなくなる日』海老原宏美著 旬報社
2023バリアフリー児童書へJBBYが推薦した図書
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田島征三『つかまえた』表紙

つかまえた

『つかまえた』をおすすめします。

川でやっと大きな魚をつかまえた少年が、しばらくしてその魚が死にかけているのに気づき、今度はその魚を生かそうと奮闘する姿を描いた絵本。少年の心の動きや、少年と魚の命が呼応する様が生き生きと表現されている。

「手の中で ぬるぬる/にぎると ぐりぐり/いのちが あばれる」といった実感を伴う言葉と、ぐいぐい勢いよく描かれた絵とがあいまって、この少年と魚の命の輝きが伝わってくる。昔の子どもが日常の暮らしの中で体験したことを、今の子どもはすぐれた絵本でまず体験してみることも必要なのかもしれない。

生と死や命といったテーマを、抽象的な概念ではなく、子どもにも共感できる具体的なものとして提示しているのがすばらしい。

(産経新聞「産経児童出版文化賞:美術賞講評」2021年5月5日掲載)

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『やとのいえ』表紙

やとのいえ

『やとのいえ』をおすすめします。

多摩丘陵の谷戸に建てられた一軒のかやぶき屋根の農家と、その周辺の環境の変化を見つめた絵本。1868年から約150年間の変遷を、ていねいな絵とわかりやすい文章で表現している。最初は、この農家の周辺は雑木林や畑や田んぼで、人々は農業や炭焼き、養蚕やカゴ作りなどをして暮らしている。子どもたちは空き地や川で遊び、家畜ばかりでなく野生の生き物とも触れあっている。ところが、1970年代に入ると開発の波が押し寄せ、あっという間に森林が伐採され、舗装道路や団地や分譲住宅ができ、鉄道やモノレールが通る。やがて古くなったこの農家も壊されて、瓦屋根の住宅に建て替えられる。

環境の変化の歴史と同時に、季節ごとの農作業、婚礼や葬儀、お祭りなども描かれ、その時々の人々の暮らしぶりもわかる。変化していくものとは対照的に、この家の庭の隅にはずっと変わらず石造りの十六羅漢さんが置かれているのもおもしろい。

巻末にはそれぞれの場面に描かれているものについての詳細な説明があり、絵と対比しながら読むとまた新たな発見がある。

(産経新聞「産経児童出版文化賞:大賞講評」2021年5月5日掲載)

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『この世界からサイがいなくなってしまう』表紙

この世界からサイがいなくなってしまう〜アフリカでサイを守る人たち

『この世界からサイがいなくなってしまう〜アフリカでサイを守る人たち』をおすすめします。

私はケニアの自然公園で、銃を持ったレンジャーがサイのグループから少し距離を保ってついて回っているのを見たことがある。密猟で角がねらわれるサイは、あと20年で絶滅してしまうかもしれないという。だから守る方も必死なのだ。本書は、南アフリカの人々がどんなふうにサイを保護しようとしているか、孤児になったサイの子どもたちをどう育てているか、なぜ密猟者がはびこるのか、女性だけのレンジャー隊の活躍ぶりなどを、生き生きとした文章でわかりやすく伝え、地球は人間だけのものではないこと、さまざまな種が支え合って生きていることに目を向けさせてくれる。アフリカを知るうえでも、おもしろく読めるノンフィクション。
小学4年生から。

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年8月28日掲載)

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スズキコージ『?あつさのせい?』表紙

?あつさのせい?

『?あつさのせい?』をおすすめします。

ここは、暑い盛りの動物の町。暑いと頭がきちんと働かないので、うっかりもぼんやりもしょっちゅう起こる。馬は駅のベンチに帽子を忘れ、その帽子を拾ったキツネは駅のトイレにかごを忘れ、そのかごを拾ったブタは銭湯でシャンプーを忘れ・・・と連鎖はずっと続いていく。暑さに負けていない力強い絵が、動物たちそれぞれのクスッと笑えるユーモラスな姿を伝えている。
5歳から。

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年7月31日掲載)

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『月にトンジル』表紙

月にトンジル

『月にトンジル』をおすすめします。

小6の徹は幼稚園から仲良しの4人グループ「テツヨン」は永遠だと信じていた。ところが、いつも明るい大樹の引っ越しを機に関係がぎくしゃくし始める。テツヨンは解散か? 徹は悩む。けれどもやがて、成長には苦さもついて回ること、人には表に見せない面もあることに気づき、徹も自分の一歩を踏み出す。徹の祖父の言葉から取った書名の意味は、本を読むとわかるよ。
小学校高学年から。

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年7月31日掲載)

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『帰れ野生のロボット』表紙

帰れ 野生のロボット

『帰れ 野生のロボット』をおすすめします。

ロボットのロズは、無人島までやってきた追っ手に破壊されて人間社会に連行され、工場で修理される。その後ロズは普通のロボットを装って農場で働きながら、仲間の野生動物たちのもとへ帰るチャンスをうかがう。人間の子どもたちや養子のガンにも助けられてなんとか農場を脱出してからも、次々と困難に襲われる。ロズは無人島に帰れるのか? 擬人化されたロボットの冒険譚としておもしろく、近未来の人間についても考えさせられる。『野生のロボット』の続篇だが、これ1冊でもじゅうぶん楽しめる。
小学校中学年から。

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年6月26日掲載)

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『ヴォドニークの水の館』表紙

ヴォドニークの水の館 〜チェコのむかしばなし

『ヴォドニークの水の館』をおすすめします。

チェコ語の翻訳者が再話し、スロバキア在住の画家が絵をつけた昔話絵本。貧しさに希望を失って川に身を投げようとした娘が水の魔物ヴォドニークにさらわれ、水中の館を掃除することになる。娘はやがて、館にたくさんあるつぼの中に溺れた人たちの魂がとらわれていることに気づき、その魂をすべて解放し、自分も逃げて地上にもどる。女の子の冒険物語としても楽しめるし、緑色でカッパにも似たヴォドニークが不思議で、いろいろ工夫のある幻想的な絵もすばらしい。
小学校低学年から

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年4月24日掲載)

チェコ語の翻訳者が再話し、スロバキア在住の画家が絵をつけた昔話絵本。貧しさのあまり身投げしようとした娘が、ヴォドニークという水の魔物にさらわれて水中の館で働かされる。娘はやがて館を脱出し、囚われていた他の魂も解放して生の世界に帰っていく。生と死と再生の物語ともとれるこの絵本では、窓からのぞく娘の目の前を魚が泳いでいる表紙がまず読者の目を引くが、絵は場面展開の仕方も周到に考えられ、娘の姿も、水中の館にいるときは静、行動を起こして陸に上がるときは動と、描き分けられている。
視点や色彩の変化の付け方、チェコらしい刺繍の服やつぼの模様といった細部にも十分に目配りがされ、昔話の世界を見事に伝えている。

(産経児童出版文化賞/美術賞選評 産経新聞2022年05月05日掲載)

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『きみのいた森で』表紙

きみのいた森で

『きみのいた森で』をおすすめします。

親しかった祖父を亡くした孤独な少年スチューイは、最近引っ越して来た同い年の少女エリーと仲良くなり、よく森の中の秘密の場所で話をするようになる。2人ともお気に入りのその場所では、時々不思議な現象が起こるのだが、ある日スチューイの目の前でエリーの姿が薄れ、ふっと消えてしまう。一方エリーの世界からはスチューイが消えていた。なぜそんなことになったのか? 分離した世界を元に戻すにはどうしたらいいのか? 謎にひかれてどんどん読めるミステリー。
小学校高学年から。

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年3月27日掲載)

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長倉洋海『さがす』表紙

さがす

『さがす』をおすすめします。

著者がこれまで撮りためてきた世界各地の子どもたちの写真に、自分自身の来し方を重ねた写真絵本。「自分の場所」はどこなのか? 「生きる意味」は何なのか? 今年68歳になる著者は、それをさがして、弾丸のとびかうアフガニスタンやコソボ、極寒のグリーンランド、灼熱(しゃくねつ)のアラビア半島など、さまざまな環境の中でさまざまな生き方をしている人々に出会ってきた。そして今、ようやくその答えを見つけ、「さがしていたものは、いま、自分の手の中にある」と語る。世界を駆けめぐってきた写真家ならではの、その答えとはどういうものなのか? 心にひびく写真の一枚一枚、言葉の一つ一つを味わいながら、読者も一緒に考えてみてほしい。(小学校中学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年8月29日掲載)

キーワード:写真、世界、さがしもの

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『彼方の光』表紙

彼方の光

『彼方の光』をおすすめします。

時は今から160年前。その頃のアメリカ南部にはまだ黒人奴隷がたくさんいて、報酬ももらえず白人農場主にこきつかわれていた。ある晩、老奴隷のハリソンは少年奴隷のサミュエルを起こし、闇に乗じて2人でカナダへの逃亡を始める。そして、何度も危ない目にあいながらも、「地下鉄道」にも助けられて、旅を続けていく。「地下鉄道」とは、当時実在した、逃亡奴隷を北へ北へと逃がすための人間の秘密ネットワークで、黒人だけではなく、白人も先住民も、宗教上の理由から助けようとする人たちもかかわっていた。この作品にも多様な立場から逃亡を支える人々が登場する。いくつもの実話から紡ぎ上げた物語で、サミュエルの気持ちになって読み進めることができる。

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年1月30日掲載)


時は今から160年前。アメリカ南部にはまだ黒人奴隷がたくさんいて、報酬ももらえず白人農場主にこき使われていた。ある晩、老奴隷のハリソンは少年奴隷のサミュエルを起こし、闇に乗じてふたりでカナダへの逃亡を始める。そして、何度も危険な目にあいながらも、逃亡奴隷のための人間のネットワーク「地下鉄道」にも助けられて、旅を続けていく。著者は、「地下鉄道」にかかわったさまざまな人種や立場の人を登場させて、当時のアメリカの様子を伝えている。波瀾万丈のドキドキする冒険物語としても読める。

原作:アメリカ/11歳から/奴隷、自由、旅

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

 

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『わたしのあのこ あのこのわたし』表紙

わたしのあのこ あのこのわたし

『わたしのあのこ あのこのわたし』をおすすめします。

主人公は、環境も性格も違う小学5年生の2人の少女、秋とモッチ。未婚の母親と暮らす秋が父親からもらった大事なレコードに、ある日モッチの弟がうっかり傷をつけてしまう。2人の少女は仲たがいするが、モッチの弟の発熱を契機にまた仲直りをする。豊かな感受性をもつ子どもたちの、何かをふっと不思議に思う気持ち、意地悪をどうしてもやめられないときの気持ち、仲直りのきっかけがつかめなくてもどかしく思う気持ち、とまどいや迷いなどが、この著者ならではの巧みな描写で表現されている。(小学校高学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年2月27日掲載)

キーワード:友情、仲直り、家族

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『コピーボーイ』表紙

コピーボーイ

『コピーボーイ』をおすすめします。

前作『ペーパーボーイ』から6年経ち17歳になったヴィクターは、地元の新聞社で雑用係(コピーボーイ)として働いている。人生の大先輩として慕っていたスピロさんが亡くなり、ヴィクターは生前からの約束を果たそうと決意する。それは、「ミシシッピ川の河口に遺灰をまくこと」。約束を実現するための独り旅の中で、ヴィクターは様々な人と出会い、恋もし、吃音とも折り合いをつけて、新たな道を切り開いていく。若い読者にも、困難を乗り越えて未来を信じる力を与えてくれそうだ。(中学生から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年4月25日掲載)

キーワード:旅、恋、吃音、未来

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『おじいちゃんとの最後の旅』表紙

おじいちゃんとの最後の旅

『おじいちゃんとの最後の旅』をおすすめします。

ウルフの入院中のおじいちゃんは、わがままだし汚い言葉を連発するので周囲をうんざりさせている。でもウルフは、「やりたいことがある」という大好きなおじいちゃんのために、ひそかに病院脱出計画を立て、うそもつき、危険も冒して実行する。ユーモラスな会話を通して、愛に不器用だった祖父の姿、祖父と父、父とウルフのぎくしゃくする関係などが浮かび上がる。自分の祖父の思い出をたっぷり盛り込んだ、スウェーデンの作家スタルクの最後の作品。挿絵も味がある。(小学校中学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年10月31日掲載)


入院中の祖父は、わがままで頑固で汚い言葉を連発するので、看護師さんたちをうんざりさせている。でも孫息子のウルフは、ひそかに計画を練り、嘘もつき、危険も冒して、「やりたいことがある」と言う祖父を病院から脱出させる。そしてふたりは祖父が祖母と住んでいた島の「岩山の家」まで旅をする。ユーモラスな会話を通して、愛に不器用だった祖父の姿や、祖父と父、父とウルフのぎくしゃくする関係などが浮かび上がる。自分の祖父の思い出をたっぷりと盛り込んだ、この作家の最後の作品。味のある挿し絵も秀逸。

原作・スウェーデン/11歳/祖父、病院、旅

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『スーパー・ノヴァ』表紙

スーパー・ノヴァ

『スーパー・ノヴァ』をおすすめします。

「読めず、話せず、重い知恵おくれ」とみなされている12歳のノヴァは、自分を肯定的に受け入れ擁護してくれる姉に頼って暮らしてきた。ところがその姉が消えてしまい、ノヴァは里親に引き取られる。1986年の宇宙船チャレンジャー打ち上げまでには姉が帰ると信じているノヴァは、カウントダウンしながら出せない手紙を姉にあてて書き、里親の家庭や学校でのさまざまな体験をし、理解者を得て次第に自分の居場所を見つけていく。自身も障がいを抱えていた著者が生き生きと描くノヴァに寄り添って読める。(小学校高学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年12月26日掲載)


「読めず、話せず、重い知恵おくれ」とみなされるノヴァは、姉に頼って生きてきた。でも、とつぜん姉はいなくなり、ノヴァは里親に引き取られる。1986年のチャレンジャー打ち上げまでには姉が帰ると信じているノヴァは、カウントダウンしながら、出せない手紙を姉宛てに書き、里親家庭や学校でさまざまな体験をし、次第に自分の居場所を見つけていく。自身も自閉症だった著者が描くノヴァに寄り添って読めるし、里親という理解者を得てノヴァが開花していく様子が生き生きと伝わってくる。

原作:アメリカ/11歳から/宇宙、姉妹、家族

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

 

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『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』表紙

ぼくはアフリカにすむキリンといいます

『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』をおすすめします。

コロナのせいで友だちと会えない人は、手紙を描くのもいいね。この本では、アフリカの草原にすむキリンと、遠くの岬にすむペンギンが、ペリカンとアザラシに配達してもらって、ゆかいな手紙をやりとりする。手紙だからこそ、返事を待つ間にどんどん想像がふくらんでいく。キリンがペンギンの姿をまねする場面は、おかしくて笑っちゃうよ。(小学校中学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年7月25日掲載)

キーワード:アフリカ、手紙、動物

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『わたしたちのカメムシずかん』表紙

わたしたちのカメムシずかん

『わたしたちのカメムシずかん』をおすすめします。

カメムシは触ると臭い、だから嫌いという人も多い。この嫌われ者の虫に夢中になり、もっと知りたくなり、自分たちでカメムシ図鑑まで作り、やがてカメムシは宝だと言うようになった子どもたちがいる。どうしてそんなことになったのかを楽しく描いたのが、このノンフィクション絵本。カメムシはどうして臭いのか、どうして集まるのかについても、わかるよ。(小学校中学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年7月25日掲載)

キーワード:ノンフィクション、虫、学校

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『パディントンのクリスマス』表紙

パディントンのクリスマス

『パディントンのクリスマス』をおすすめします。

主人公は、人間のブラウン一家と暮らすクマのパディントン。好奇心旺盛で、いろいろ思いつくあまり、悪気はないのに行く先々で周りを困らせたり、心配させたり、大騒動を引き起こしたりする。そんな小さなクマがついついいとおしくなる、ゆかいな物語集。7編のうち2編がクリスマスにまつわるエピソード。(小学校中学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年11月28日掲載)

キーワード:動物(クマ)、クリスマス

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『しあわせなときの地図』表紙

しあわせなときの地図

『しあわせなときの地図』をおすすめします。

戦争のせいで生まれ育った町を離れ、知らない国に逃げて行かなくてはならなくなった少女ソエは、地図を開き、楽しい時をくれた場所を一つ一つ思い起こしては、そこにしるしをつけていく。幸せな思い出が、生きていく力をあたえてくれることを伝えるスペインの絵本。コロナ禍にある今だからこそ、さまざまな状況の子どもたちに思いを馳せてみたい。(小学校低学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年11月28日掲載)


暮らしていた町を戦争で破壊され、外国に逃げなくてはいけなくなった少女ソエは、机に町の地図を広げて、楽しい思い出がある場所に印をつけていく。自分の家、祖父母の家、楽しかった学校、わくわくしながら想像力をふくらませていた図書館や本屋、いっぱい遊んだ公園、魔法のスクリーンがある映画館、川や橋……。楽しかった体験を、これから避難していく場所での力にしようとする少女の心の内を、やさしいタッチの絵で表現している。最初の見開きと最後の見開きの対比が多くを伝えている。

原作:スペイン/9歳から/戦争、難民、思い出

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

 

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魚住直子『いいたいことがあります!』表紙

いいたいことがあります!

『いいたいことがあります!』をおすすめします。

6年生の陽菜子は、母親がうっとうしい。家事も勉強もちゃんとやれと言い、できないと叱るからだ。

ある日、陽菜子は不思議な女の子に出会う。その子が忘れた手帳には、「親に支配されたくない」という言葉も。この子はだれなのか? 謎を追っていくうち、いろいろなことが少しずつわかってくる。(小学校高学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年10月27日掲載)

キーワード:家族(母親)、謎

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ルイス・サッカー『泥』表紙

『泥』をおすすめします。

森の中にある私立学校から、3人の生徒が行方不明になる。1人は皆勤賞の優等生タマヤ、もう1人はタマヤと通学している2歳年上のマーシャル、残る1人はマーシャルをいじめていた転校生チャド。そして、森で奇妙なねばねばの泥に触れたこの3人から、不思議な病が広がっていく。この病とは何なのか? 何が原因なのか? 治療方法はあるのか? 3人それぞれの物語にからむのは、粘菌を利用したクリーンエネルギーのついての聴聞会の証言と、不思議な数式。謎めいた起伏のある展開で読者をひきつけ、しかもバイオテクノロジーについて考えさせる見事な作品。怖いけれどおもしろいこの物語からは、作者が子どもに寄せる信頼感も感じ取れる。(小学校高学年以上)

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年9月29日掲載)

 


森の中にある私立学校から、5 年生の優等生タマヤ、7 年生のマーシャル、7 年のクラスに転校してきたいじめっ子のチャドが行方不明になる。やがて、この3人が森で奇妙な泥に触れたことから、不思議な病が広がっていることがわかる。この病は何なのか? 治療法はあるのか? 異質な3 人は、恐怖と孤独の中でたがいの間の距離を縮めていく。子どもたちをめぐる現在に、クリーンエネルギーについての公聴会の証言と、謎めいた数式がからむ。起伏のある展開で読者をひきつけ、バイオテクノロジーや現代文明の落とし穴についても考えさせる物語。

原作:アメリカ/13歳から/バイオテクノロジー エネルギー 粘菌 いじめ

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『わたしがいどんだ戦い1940年』表紙

わたしがいどんだ戦い 1940年

『わたしがいどんだ戦い 1940年』(読み物)をおすすめします。

『わたしがいどんだ戦い 1939年』の続編。前作には、内反足のせいで母親に虐待され、家に閉じこめられていたエイダが、疎開先でめぐりあった人々と心を通わせることによって、少しずつ変わっていくようすが描かれていた。

この続編でもまだ戦争は続き、エイダと弟が身を寄せていたスーザンの家は空襲で全壊してしまう。そこで地元の名士ソールトン家の使用人が使っていた家に引っ越さなくてはならなくなる。一方エイダはようやく内反足の手術を受けて、歩くこともできるようになる。

そのうちソールトン屋敷は軍に接収され、エイダが苦手とするソールトン夫人や、ユダヤ系ドイツ人の少女ルースも一緒に暮らすことに。当時はまだナチスの残虐性も表面化していなかったので、ルースは敵国人として村の人たちから白眼視されている。そんなこんなでエイダの視野はますます広がり、いろいろなことを考えるようになる。

それにしても、幼い日に受けた虐待の傷はなかなか癒えないものだ。エイダは、弟がスーザンをママと呼び始めることが気に入らないし、生母についてもしょっちゅういじいじと考えてしまう。なかなか素直に自分の気持ちを表現できないエイダに、読んでいてもどかしくなるほどだが、これが現実の姿なのだろう。

戦時中とはいえ楽しいひとときもあれば、スーザンが肺炎になって心細くなるひとときもある。エイダと、ソールトン夫人の娘マギー、そしてルースというこの立場も背景も違う三人がしだいに友情をはぐくんでいく様子も丹念に描かれている。

英語の原題は、「わたしがついに勝利した戦い」。死がすぐそこに迫る戦争という大状況も描いてはいるが、作者が書きたかったのはそれだけではない。むしろ作者は、エイダという悲惨な子ども時代を送ったひとりの少女が、自分の背負わされたものとの戦いに勝利をおさめる物語を書きたかったのだろう。自らも虐待を受けた経験をもつ作者ならではのリアリティが感じられる。

(トーハン週報「Monthly YA」2019年10月14日号掲載)


主人公のエイダは、内反足の手術を経て歩けるようになったものの、弟と一緒に身を寄せていたスーザンの家が空襲で全壊し、地元の名士ソールトン家の人びとやユダヤ系ドイツ人少女ルースなどさまざまな人びととの暮らしを余儀なくされる。死が身近に迫る戦時下、母親に虐待されていたエイダがスーザンたちの支えを得て、背負わされた傷を克服し成長する姿をリアルに描いている。エイダとルースとソールトン家の娘マギーという立場の違う3人の友情も丹念に書かれ、読ませる作品になっている。『わたしがいどんだ戦い 1939年』の続編。

原作:アメリカ/10歳から/養子 馬 戦争 友情

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

 

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『あまねく神竜住まう国』表紙

あまねく神竜住まう国

『あまねく神竜住まう国』をおすすめします。

学校で習う歴史は何年に何があったという事実が中心で、そこに生きていた人物がなかなか浮かび上がってきません。そういう意味では、歴史上の人物を主人公にした文学作品を読むのはおもしろいものです。どこまでが事実で、どこからがフィクションなのかはもちろんあいまいだとしても、作者もいろいろ調べたうえで書いているので、その作者なりに思い描く歴史上の人物が立体的に立ち現れてきます。

本書は、10代半ばの源頼朝を主人公にすえた作品です。調べてみると、伊豆に流されていた頃の頼朝についての史実はほとんどわかっていないらしいので、大部分がフィクションということになるのでしょう。大多数の日本人には義経の敵として人気の低い頼朝を敢えて取り上げていることに、まず興味がわきます。そしてその頼朝にからむのが、『風神秘抄』の主人公である草十郎と糸世です。

冒頭に登場する頼朝は、ひ弱で死の予感につぶされそうになっています。(「元服をしてもまだ幼顔を残しており、体も発育途上の細さだった。(中略)その上、伊豆では見かけないような色白の肌であり、『ひ弱な若様』と言い落とされるのも無理はなかった」)。糸世の勧めで敵の目を欺くために女装しても、だれにも怪しまれないほど線が細いのです。しかし、走湯権現に参詣した際、真っ暗闇の回廊にひとりで入りこみ、権現の真の姿と言われる神竜を心眼で見ます。このあたりは、アフリカなどでは今も行われている成人儀礼を思い起こさせる記述ですね。頼朝はその頃から自分の立場を客観的に見たり、自分の意志をはっきり持ったりするようになり、やがて死んだ姉・万寿姫の化身である大蛇とも対峙することができるようになります。

謎めいた存在である草十郎に興味を持った人は、小学館児童出版文化賞、産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞など様々な賞を受賞している『風神秘抄』もぜひ読んでみてください。

(トーハン週報「Monthly YA」2015年6月8日号掲載)

キーワード:源頼朝、歴史、竜

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『虫ぎらいはなおるかな?』表紙

虫ぎらいはなおるかな?〜昆虫の達人に教えを乞う

『虫ぎらいはなおるかな?〜昆虫の達人に教えを乞う』をおすすめします。

私は、虫はオーケーなほうだ。ダンゴムシだって青虫だってさわれる。ゴキブリの卵を見つけて、子どもたちに見せるために飼っていたこともある。もっともうちの子どもたちは興味を示さなかったのだが。

だから以前ならこの手の本には関心が向かなかったのだが、短大教授をしていたときに、「虫嫌いでも、幼児とうまくつきあえるかな」と心配している幼児教育志望の学生が何人もいることにびっくりしてからは、こうした本には大きな意味があるだろうと考えるようになった。

本書は、そのしつらえがまずおもしろい。著者は、どんな虫にもさわれないほどの虫嫌い。チョウにもセミにも近寄れない。それなのに、なんとか虫嫌いを克服しようと、7人の専門家に会いにいくのだ。会ったのは、子どもと虫について研究している発達心理学者の藤崎亜由子さん、NHKラジオの「子ども科学電話相談」で昆虫の質問に答えている久留飛克明さん、「日本野生生物研究所」代表の奥山英治さん、精巧な虫オブジェを作っているアーティストの奥村巴菜さん、『害虫の誕生〜虫からみた日本史』(ちくま新書)の著者である瀬戸口明久さん、「こわい」という気持ちを分析する認知科学専門家の川合伸幸さん。そして、最後に多摩動物公園昆虫園を思い切って訪れたあと、飼育員の古川紗織さんにも話を聞いている。

著者は、「虫は命の大切さを教えてくれる」とか、「ゴキブリは病原菌を持っていない。殺虫剤のほうが体に悪い」とか、「虫が嫌いなのは観察が足りないからだ」とか、「害虫という言葉は、明治後半になってからの概念だ」などと聞くと、なるほどなるほどとうなずきながらも、なにせ虫嫌いなので、ドロバチの巣作りのおもしろさだの、ツノゼミの不思議な形だの、ツダナナフシの肉球のような脚の先だのについて熱く語られても、ついつい引いてしまう。そして、いつまでも虫に触れられるようにはならず、自分のことを「ヘタレ中のヘタレ」と思ったりもする。虫好き対虫嫌いの落差がユーモラスに伝わってくるし、著者によるイラストも楽しい。

(トーハン週報「Monthly YA」2019年8月12.19日号掲載)

キーワード:ノンフィクション、虫

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『わたしは女の子だから』表紙

わたしは女の子だから〜世界を変える夢をあきらめない子どもたち

『わたしは女の子だから〜世界を変える夢をあきらめない子どもたち』をおすすめします。

私は、教科書的に教えようとする本はあまり好きではないので、この本も最初は敬遠していたのだが、読んでみたらなかなかよかったので紹介したい。

ネパール、ジンバブエ、パキスタン、フィリピン、南スーダン、ウガンダ、ペルー、カナダと、世界のさまざまな国で暮らす女の子たちが、自分が抱えている問題をそれぞれに語っていく。

例えばネパールのアヌーパは、貧困な家庭に生まれ親が借金をしていたので学校に行けず、7歳で奴隷のようなカムラリになる。そして8年間家事労働を毎日させられたあげく、解放されて国際NGOの支援を受け、起業家になる勉強をして、動物用医薬品店を経営している。南スーダンで生まれたキャスリンは、両親が留守の間に近所で銃撃戦が始まり、弟たちを連れて200キロも歩いて国境を越え、ウガンダにある難民キャンプまで逃げる。今はそこで弟たちの面倒をみながら、両親と再会できる日を夢見ている。

ここに出て来る国際NGOとは、プラン・インターナショナルという団体で、世界の女の子たちが、十分な食事をあたえられずに家事労働をさせられ、10代で結婚・出産させられ、収入も発言権もない状態におかれている現状を変えようとしている。

ちなみに2018年の男女平等ランキングを見ると、日本は149か国中110位で、世界平均よりはるかに下だ。この本に登場する国をこのランキングで調べても、日本より下にあるのは、148位のパキスタンだけである(南スーダンはこのランキングに含まれていないが、あとは8位のフィリピンから105位のネパールまですべて日本より上)。つまり私たちの国は、衛生面や教育面ではましかもしれないが、女の子たちが不自由な概念や労働条件などに縛られているという点では、この本に登場する少女たちと共通する問題も抱えている。

ところで、本書は原書のレイアウトをそのまま使っているらしく、横書きの文章がずっと続く。私は日本語は縦書きのほうが読みやすいとおもっているのだが、若い世代は横書きの長い文章にも抵抗はないのだろうか。

(トーハン週報「Monthly YA」2019年6月10日号掲載)

キーワード:少女、貧困、難民

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『クラバート』表紙

クラバート

『クラバート』をおすすめします。

<生きること、死ぬこと、愛すること>

「ハリー・ポッター」シリーズや「ゲド戦記」シリーズには、魔法を学べる学校が出てきましたね。そんな学校に通ってみたいと思っている子どもは多いかもしれません。この本にも魔法を学ぶ学校が出てきます。でも、読んだあとでこの魔法学校に行きたいという子どもは、ほとんどいないでしょう。それくらい、この魔法学校は怖いのです。

主人公は、ヴェンド人の孤児クラバートで、物乞いをしながら暮らしています。ヴェンド人というのは、ドイツの少数民族です。ある晩、夢の中にカラスが現れ、クラバートを水車小屋へと誘います。西洋では、水車は時の象徴や、運命や永遠のシンボルだそうですし、カラスは生と死に関するシンボルです。伝説を下敷きにしているこの作品は、そんないろいろなシンボルに満ちています。

クラバートは、この水車小屋で働くことになるのですが、そこは不思議な場所で、徒弟たちはどんなにがんばっても脱出することはできないし、自殺することさえできないうえ、毎年一人ずつ命を落としていくのです。それに、そこは魔法学校でもあって、親方しか読めない魔法の本に書いてあることを、カラスの姿になった徒弟たちは口伝えに学んでいきます。

食べるものは十分に与えられ、魔法を使えば仕事もそうきつくはありません。そのせいか、他の徒弟たちはずっとこの水車小屋で酷使され、遠からず悲惨な死を迎える運命に甘んじているようです。権力者の親方をやっつければ失うとされる魔法の力にも、しがみついていたいのでしょう。

でも、魔法よりもっと大切なものがあるのではないでしょうか? クラバートはなんとか親方をやっつけて、この運命からも、この水車小屋からも抜け出したいと思うようになります。そんなクラバートを助けるのが、村の、声の美しい娘。二人は、命の危険を顧みず勇敢に親方と対決するのです。

コワーイ本だけど、ハラハラ、ドキドキしながら、生きること、死ぬこと、愛することについて思いをめぐらせることができる作品です。

(「子とともにゆう&ゆう」2012年12月号掲載)

キーワード:魔法、孤児、カラス、夢、生と死

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『カモのきょうだいクリとゴマ』表紙

カモのきょうだい クリとゴマ

『カモのきょうだい クリとゴマ』をおすすめします。

わたしが犬の散歩に行く近くの公園には、カモがいます。夏にいるカモは1種類。カルガモです。冬は他のカモもいっぱいいますが、くちばしの先が黄色いのでカルガモは見分けがつきます。春にはポンポン玉くらいの大きさのひなが、母ガモの後について泳いだり、少し大きくなって池の周りの地面をつっついている姿も見ることができます。

この本の主人公は、そのカルガモ。ある日、著者のお子さんが、カルガモの卵を持ち帰りました。激しい雨で水浸しになった巣を母ガモが放棄し、残った卵をカラスがつついているのを見るに見かねて、拾ってきたのです。その6つの卵から無事に孵化したのが、クリとゴマです。著者の家族は、野鳥を育てていいものかと迷いながら、でも一人前のカルガモに育て上げることを目標にして、べたべたせずにクリとゴマに愛情を注いでいきます。

卵からひながかえる様子、2羽が初めてミミズを見た時の驚き、だんだん水になじんでいく様子、雷雨を経験した時の慌てぶり、2羽の性格の差など、細かい観察による描写にはユーモアがあり、読ませる力があります。絵も文も著者がかき、それに著者の家族の手になる写真がついているので、リアリティも半端ではありません。

クリとゴマは、写真を見ても本当にかわいいのですが、この本は、そのかわいさを「売り」にしてはいません。世話が大変なこと、糞がとてつもなく臭いことなどもきちんと描写されているので、読んでいるうちに命とつきあうことのおもしろさ、楽しさ、そして難しさがおのずとわかってくるのがすごいところ。そう、世の中、かわいいだけのものなんてつまらないですもの。

やがてクリとゴマが成長すると、著者は2羽を自然に帰します。しかも簡単には戻ってこられないようなところへ。でも、それで一件落着したわけではなく、まだまだ「親」の苦労は続くのですが。

楽しく読める、優れた科学読み物です。

(「子とともにゆう&ゆう」2013年2月号掲載)

キーワード:鳥(カモ)、ノンフィクション、自然

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『カタカタカタ』表紙

カタカタカタ〜おばあちゃんのたからもの

『カタカタカタ〜おばあちゃんのたからもの』をおすすめします。

台湾の絵本。女の子のおばあちゃんは、足踏みミシンでいろいろなものを作ってくれる。ある日、女の子の劇の衣装を作っているときにミシンが故障してしまった。修理屋が来ても直せない。でも、おばあちゃんは夜遅くまでかかって手縫いで衣装を間に合わせてくれた。「ほんとうに すごいのは カタカタカタじゃなくて、おばあちゃんだったのね」という言葉がいい。

壊れたミシンは、やがてパパがテーブルにリフォームしてくれた。壊れたら捨てるのではなく、別の物に作り替えてまた使うというストーリーの流れもいい。

ユニークな絵で、おばあちゃんと女の子の温かい交流を伝える。翻訳もリズミカルでわかりやすい。

(産経新聞「産経児童出版文化賞・翻訳絵本賞」選評 2019年5月5日掲載)

キーワード:おばあちゃん、ミシン、台湾、絵本

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『バッタロボットのぼうけん』表紙

バッタロボットのぼうけん

『バッタロボットのぼうけん』をおすすめします。

主人公は犬の子どもたちで、バッタ型のロボットに乗って冒険に出かけるという設定。このロボットが、子どもの持つ知識の範囲内でなるほどと思えるように工夫されているのが楽しい。

ボルネオ、オーストラリア、ニュージーランドの陸地と海と川にすむ虫や動物たちが、生き生きと描かれ、吹き出しの中に簡単な説明も付されている。

ファンタジーの要素も取り入れた知識絵本だが、その土地に生息する動物をリアルに、主人公の犬たちをイラスト風に描くことによって、子どもが混乱しないよう配慮がされている。さらに最後の場面がストーリーに奥行きをもたせ、そこからもう一つの想像がふくらむよう工夫されている。

(産経新聞「産経児童出版文化賞・美術賞」選評 2019年5月5日掲載)

キーワード:ロボット、自然、絵本、動物

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『なっちゃんのなつ』表紙

なっちゃんのなつ

『なっちゃんのなつ』をおすすめします。

なっちゃんという女の子が、河原や野原を歩いて、クズのつる、ひまわり、アオサギ、セイタカアワダチソウ、サルビア、オシロイバナ、雷雨、ガマの穂、ハンミョウなどの自然の生きものや現象に触れあいながら、夏を感じていく絵本。

夏独特の旺盛なエネルギーを感じさせる要素も多いが、セミの死骸、お盆のお墓参り、お供え流しなど、死や、あの世とのつながりを思わせる要素も入っている。

写実的ではないが、動植物の特徴をよく観察して活かしている絵がいい。会えなかった友だちと最後に会って一緒に遊ぶという流れも納得できる。

おもて表紙と裏表紙のつながりにも読者の想像力がふくらむ。

(産経新聞「産経児童出版文化賞・美術賞選評」2020年5月5日掲載)

キーワード:夏、自然、生と死

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『マンマルさん』表紙

マンマルさん

『マンマルさん』をおすすめします。

抽象的な図形マンマルさんが、シカクさん、サンカクさんとかくれんぼをする絵本。黒いキャラクターが暗い洞穴に入ると、そこには正体不明のものがいるという設定なので、いささか怖いのだが、訳者のユーモラスでリズミカルな関西弁がその不気味さを中和している。真っ暗闇の中での黒いキャラクターの気持ちを、目の動きだけで表現している絵もいい。

マンマルさんは、ぞっとして洞穴からあわてて逃げ出したけれど、あれはいい者だったかもしれないと思い直す。そして、「さあ いっしょに め つぶってみ。どんなん みえる?」と、読者にも想像を促す。哲学的な絵本とも言えるが、子どもは子どもなりにおもしろさを味わえる。

(産経新聞「産経児童出版文化賞・翻訳絵本賞選評」2020年5月5日掲載)

キーワード:洞穴、形、謎、哲学、絵本

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『ゆきのひ』表紙

ゆきのひ

『ゆきのひ』をおすすめします。

朝起きると外は雪。ピーターは赤いマントを着て外ヘ出ると、足跡をつけたり、枝から雪を落としたり、雪だるまを作ったり、雪の山を滑り降りたり、ひとりで楽しく遊ぶ。原書刊行は1962年。アフリカ系の子どもを主人公にした絵本がまだ少ない時代に出され、時を超えて読者を獲得している。コラージュを主とした絵のデザインや色づかいは、今でも新鮮ですばらしい。(幼児から)

(朝日新聞「子どもの本棚・冬休み特集」2019年11月30日掲載)

キーワード:雪、遊び、アフリカ系、絵本

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『3人のママと3つのおべんとう』表紙

3人のママと3つのおべんとう

『3人のママと3つのおべんとう』をおすすめします。

理想のお母さん像を勝手に作って、うちのお母さんはちっともそれらしくないな、と思ってる人はいませんか? でもね、お母さんだっていろいろなんです。韓国からやってきたこの絵本に描かれている3人のママは、仕事も性格も家庭環境もまったく違います。子どものお弁当の支度だってそれぞれ。あわてて買いに走るママだっています。それでも、3人とも忙しい毎日のなかで子どものことを気にかけています。だから、お弁当をもって野原に遠足に出かけた子どもたちは、それぞれのママに、それぞれの方法で春の息吹をとどけてあげるのですね。読者の心の中にも春の色が広がります。それにしても、パパの存在が見えないのは、日本と同じということでしょうか? (5歳から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年3月28日掲載)

キーワード:母、弁当、多様性、遠足、春、絵本

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『りんごだんだん』表紙

りんご だんだん

『りんご だんだん』をおすすめします。

最初は、ぴかぴかでつやつやの赤いリンゴの写真。「りんご つるつる」という言葉がついています。かぶりついたら、おいしそうなリンゴです。そのリンゴが、少しずつ少しずつ変わっていきます。しわしわになり、ぱんぱんになり、ぐんにゃりしたかと思うと、くしゃくしゃしたり、ねばねばしたり、だんだんに無残とも言える姿に。そのうちに、あら、虫もわいてくる。

写真家が1年近くの間リンゴを粘り強く観察して記録した絵本。言葉はごく簡潔で、詳しい説明はないのですが、生きているものは、時間とともに否応なく変化していくこと、そして、それを糧にしてまた次の命が育っていくことなどが、リアルな写真から伝わってきます。(幼児から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年5月30日掲載)

キーワード:果物(リンゴ)、腐敗、虫、絵本

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『コピーボーイ』表紙

コピーボーイ

『コピーボーイ』をおすすめします。

前作『ペーパーボーイ』から6年経ち17歳になったヴィクターは、地元の新聞社で雑用係(コピーボーイ)として働いている。人生の大先輩として慕っていたスピロさんが亡くなり、ヴィクターは生前からの約束を果たそうと決意する。それは、「ミシシッピ川の河口に遺灰をまくこと」。約束を実現するための独り旅の中で、ヴィクターは様々な人と出会い、恋もし、吃音とも折り合いをつけて、新たな道を切り開いていく。若い読者にも、困難を乗り越えて未来を信じる力を与えてくれる。(中学生から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年4月25日掲載)

キーワード:旅、恋、吃音、未来

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『故郷の味は海をこえて』表紙

故郷の味は海をこえて〜『難民』として日本に生きる

『故郷の味は海をこえて〜「難民」として日本に生きる』をおすすめします。

日本は難民受け入れ数がとても少ない。それでも、戦争や人権侵害によって命が危うくなり、日本に逃げて来る人はいる。その人たちを、同じ人間として迎えるにはどうすればいい? 著者は、シリア、ミャンマー、バングラデシュ、ネパール、カメルーンなどから逃げて来た人に会い、彼らの故郷の味をふるまってもらいながら、どうして日本にやって来たのか、どんな苦労があるのかなどを聞き出していく。子どもにも親しめる料理や飲み物を入り口にして、難民について考えることのできるノンフィクション。(小学校高学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年1月25日掲載)

キーワード:難民、多様性、食べ物、ノンフィクション

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『フラミンゴボーイ』表紙

フラミンゴボーイ

『フラミンゴボーイ』をおすすめします。

イギリスの青年ヴィンセントが旅先の南フランスで話を聞くという枠の中に、フラミンゴが大好きで動物と気持ちを通じ合えるロレンゾと、社会から排斥されてきたロマ人のケジアの物語がおさまっている。ナチスの脅威、戦争に翻弄される人間、差別、動物保護など様々なテーマを扱いながら、巧みなストーリー展開で読者をひきつけ、おもしろく読ませる。(小学校高学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚・冬休み特集」2019年11月30日掲載)

キーワード:動物、差別、戦争

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『オオカミが来た朝』表紙

オオカミが来た朝

『オオカミが来た朝』をおすすめします。

オーストラリアのある一家4代の物語を、子どもをめぐるエピソードでつづっていく作品。一家にからめて語られるのは、不安や恐怖、認知症老人との触れあい、難読症の人や移民への差別、民族間の争い、家族との葛藤などだが、語り口にはユーモアと奥行きがあり、味わいながら読める。最初の物語の主人公ケニーが、最後の物語では曾孫の前に少年の姿で現れて「くじけるな」と呼びかけるのだが、その言葉は子どもたちみんなに向けた作者のメッセージにも思える。(中学生から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年10月26日掲載)

キーワード:家族、歴史、差別

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『月の光を飲んだ少女』表紙

月の光を飲んだ少女

『月の光を飲んだ少女』をおすすめします。

魔法を扱いながら、現代にコミットする物語。舞台は中世的な異世界で、そこではシスター長イグナチアが恐怖と悲しみをもって、従順で信じやすい民を支配している。イグナチア配下の長老会は、魔女への生贄として毎年赤ん坊を1人ずつ森の中に捨てさせるのだが、ある年捨てられたルナは、善き魔女ザンに拾われて育ち、やがて恐怖の世界をひっくり返して新たな世界を作り出そうとする。協力するのは、自然の象徴とも思える沼坊主グラーク、竜のフィリアン、ついに出会えた生母、正直でやさしい若者アンテイン、自分の頭で考える勇敢なエサイン。おもしろく読めて、生と死、支配と被支配、魔法と自然の力などについて思いをめぐらせることができる。(中学生から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年8月31日掲載)

キーワード:魔法、竜、家族、生と死、自然

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『漂流物』表紙

漂流物

『漂流物』をおすすめします。

ある日男の子が、浜辺に打ち上げられた水中カメラを拾う。入っていたフィルムを現像してもらうと、ぜんまい仕掛けの魚や、居間でくつろぐタコなど不思議な写真がいっぱい。知らない子が手に写真を持っている一枚も。それを虫眼鏡や顕微鏡で調べて、男の子はまたびっくり。様々な子どもたちがカメラを介してつながっていく文字なし絵本。自由にお話を想像できるのも楽しい.(小学校低学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」(夏休み特集)2019年7月27日掲載)

キーワード:絵本、海、カメラ

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『天才ルーシーの計算ちがい』表紙

天才ルーシーの計算ちがい

『天才ルーシーの計算ちがい』をおすすめします。

12歳のルーシーは雷に打たれて以来、どんな難問でも解ける数学の天才になった。ある日ルーシーは、親代わりの祖母から、ホームスクールを卒業して学校に行くように言われるのだが、極端な潔癖症だし変な癖もあるのでいじめを受け、すぐに学校が嫌になってしまう。そんなルーシーが、数学以外の世界でも自分の居場所を見つける物語。(小学校高学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年7月27日掲載)

キーワード:学校、いじめ、数学(算数)、居場所

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『あしたはきっと』表紙

あしたはきっと

『あしたはきっと』をおすすめします。

茶色い肌の子どもが主人公の「おやすみなさい」の絵本。「あしたはきっと」という言葉に続いて、子どもの日常を彩る青空や、おいしい食べ物や、だれかの歌声が出てきたかと思うと、だんだん想像がワイルドになって、クジラに乗ったり、「へんちくりんなやつ」を見つけたり、笛を吹きながらカタツムリを散歩させているおじさんに会ったりもする。今日がつらかった子どもにも、明日はきっと素敵なことや不思議なことがありそうと思わせてくれるのがいい。寝る前に読んでも、読んでもらっても、楽しいよ。(小学校低学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年6月29日掲載)

キーワード:絵本、想像

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『嵐をしずめたネコの歌』表紙

嵐をしずめたネコの歌

『嵐をしずめたネコの歌』をおすすめします。

イギリスのコーンウォール地方に伝わる伝説を基にした物語。大嵐が来て海が荒れ、漁師たちが船を出せずに村に食べるものがなくなったとき、年老いた漁師のトム・バーコックは飼い猫のモーザーと一緒に、命がけで海に出て行く。村人たちのために、なんとしても魚をとろうと決意したのだ。細かくていねいに描かれた絵がとてもいい。もともとは横書きの文章量の多い絵本だが、そのままの形では日本の子どもに読みにくいので、文字を縦書きにして絵童話風に仕立てている。(小学校中学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年5月25日掲載)

キーワード:海、ネコ、嵐、伝説、絵物語

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『ひみつのビクビク』表紙

ひみつのビクビク

『ひみつのビクビク』をおすすめします。

異国で暮らすことになった子どもの気持ちを、わかりやすく描いた絵本。不安や恐怖をビクビクという存在で表現している。主人公の少女は、本当に危険なことを避けてくれるビクビクを友だちだと思ってきた。でも言葉もわからない異文化の中に放り込まれると、ビクビクがどんどんふくらみ、少女の気持ちは急速に縮こまってしまう。今後は日本にもこのような子どもが増えてくるだろうと思うと、テーマがタイムリーで、子どもの立ち直る力にも目が向けられている。(5歳から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年4月27日掲載)

キーワード:不安、居場所、絵本

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『夢見る人』表紙

夢見る人

『夢見る人』をおすすめします。

南米のチリに暮らす少年ネフタリは、体は弱くても、空想することや詩を書くのが好き。自然の不思議に目を見張る慣性も持っている。でも、息子の体を鍛え、医者や実務家にしたい父親は、それが気に入らない。継母は、本を読んでくれたり、時には守ったりしてはくれても、夫に刃向かうことはしない。最初はなんとかして父親の愛情を得たいと思っていたネフタリだが、やがて自分が詩や文を書きためたノートを父親が燃やすのを目撃すると、心の自由を求めて故郷を離れ、自分の道を歩み始める。ノーベル賞を受けた詩人パブロ・ネルーダの少年時代を描いた物語。緑色で印刷された文章から情景が生き生きと立ち上がってくる。シスの挿絵もすばらしい。(中学生から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年3月30日掲載)


南米のチリに暮らす少年ネフタリは、夢見ることや詩を書くのが大好きで、自然の不思議に目を見張る感性も持っている。でもひ弱な息子の体を鍛え医者や実務家にしたい父親には、軟弱な役立たずとしか思えない。幼いネフタリはなんとかして父親の愛情を得ようとするが、先住民の人権を守ろうとするおじさんの影響もあり、やがて心の自由を求めて自分の道を歩み始める。ノーベル賞を受けた詩人パブロ・ネルーダの少年時代を描いた伝記的な物語。緑色で印刷された文章は情景を生き生きと伝え、挿し絵もすばらしい。

原作:アメリカ/12歳から/詩 夢 父親 チリ

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2020」より)

 

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『ゆかいな床井くん』表紙

ゆかいな床井くん

『ゆかいな床井(とこい)くん』をおすすめします。

6年生になった暦の隣には、人気者の床井君が座っている。小柄な床井君は下品な話もするけれど、背の高い暦を「デカ女」と呼ばずにうらやましいと言ってくれる。2人と、同じ暮らすにいる多様な子どもたちの1年間を描く短編集。楽しく読んでいくうちに、この2人と一緒に読者も「別の見方」ができるようになるかも。(小学校中学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年1月26日掲載)

キーワード:学校、差別、多様性、友情

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『まめつぶこぞうパトゥフェ』表紙

まめつぶこぞうパトゥフェ〜スペイン・カタルーニャのむかしばなし

『まめつぶこぞうパトゥフェ〜スペイン・カタルーニャのむかしばなし』をおすすめします。

パトゥフェは、豆粒くらい小さいけれど、なんでもやろうとする男の子。踏みつぶされないように「パタン パティン パトン」と歌ってみんなの注意を引きながら歩いていく。ところが、お父さんにお弁当を届けにいく途中、牛に食べられてしまったから、さあ大変。ゆかいで楽しい絵本。(幼児から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年12月29日掲載)

キーワード:絵本、スペイン、牛、昔話

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『ふゆめがっしょうだん』表紙

ふゆめがっしょうだん

『ふゆめがっしょうだん』をおすすめします。

冬の木の芽を、よく見てごらん。だれかの顔に似ているよ。笑っているみたいな顔もあるし、ちょっと怖い顔もあるけど、みんなで歌いながら春を待っているのかな? 自然ってゆかいで不思議。冬の散歩が楽しくなる写真絵本=幼児から

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年11月24日掲載)

キーワード:冬、植物(樹木)、自然、ノンフィクション、絵本

 

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『クリスマスのあかり』表紙

クリスマスのあかり〜チェコのイブのできごと

『クリスマスのあかり〜チェコのイブのできごと』をおすすめします。

1年生のフランタは、ひとりでランプを持って教会に行き、あかりをもらって帰る途中、近所の貧しいおじいさんに会う。おじいさんが亡き妻のお墓に捧げようとした花束が盗まれたと知ったフランタは、なんとかしようと考えをめぐらせる。子どもの細やかな心の動きを伝える文章に、チェコ在住の画家のあたたかい絵がついている。(小学校低学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年11月24日掲載)


クリスマスイブに、1 年生の男の子フランタは手提げランプを持って、ひとりで教会に明かりをもらいに行く。そして帰る途中、近所の貧しいおじいさんが妻の墓に供えようと買った花束が盗まれたことを知り、なんとかしようと考える。トラブルもあるが、やさしい人びとにも出会い、フランタは、しょんぼりしていたおじいさんに花束をわたすことができた。幼い子どもの細やかな心の動きを伝える文章に、チェコ在住の画家のあたたかい絵がついた絵物語。

原作:チェコ/6歳から/クリスマス あかり プレゼント

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」

おすすめ! 世界の子どもの本 2018

JBBYで毎年出すことになっている「おすすめ! 世界の子どもの本 2018」で取り上げた本をご紹介します。

このブックリストは、日本で紹介された世界各国からの翻訳児童書の中から、専門家グループが討議を重ねて、日本の子どもたちに読んでもらいたいすぐれた作品を選び、それぞれの書誌事項とともに、短い紹介文をつけています。オールカラーでA4変形版22頁の冊子です。

この年度の選書・執筆チームは、神保和子さん(司書)、福本友美子さん(翻訳家・研究者)、代田知子さん(埼玉県三芳町立図書館長)、土居安子さん(大阪国際児童文学振興財団理事)、それに私さくまゆみこ(翻訳家)です。

表紙の絵は、荒井真紀さんです。

すぐれた翻訳児童書の紹介のほかに、この号には、原田勝さんと母袋夏生さんのエッセイや、ジョン・キラカさんの絵入りメッセージなども掲載されています。

JBBY「おすすめ! 世界の子どもの本 2018』本文

 

<絵本>(50音順)

『あおのじかん』イザベル・シムレール/文・絵 石津ちひろ/訳 岩波書店(フランス)
『あさがくるまえに』ジョイス・シドマン/文 ベス・クロムス/絵 さくまゆみこ/訳 岩波書店(アメリカ)
『アームストロング:宙飛ぶネズミの大冒険』トーベン・クールマン/作 金原瑞人/訳 ブロンズ新社(スイス)
『うみべのまちで』ジョアン・シュウォーツ/文 シドニー・スミス/絵 いわじょうよしひと/訳 BL出版(カナダ・アメリカ)
『エンリケタ、えほんをつくる』リニエルス/作 宇野和美/訳 ほるぷ出版(アルゼンチン)
『おなじそらのしたで』ブリッタ・テッケントラップ/作・絵 木坂涼/訳 ひさかたチャイルド(イギリス)
『おばあちゃんとバスにのって』マット・デ・ラ・ペーニャ/作 クリスチャン・ロビンソン/絵 石津ちひろ 鈴木出版(アメリカ)
『ごちそうの木:タンザニアのむかしばなし』ジョン・キラカ/作 さくまゆみこ/訳 西村書店(スイス・タンザニア)
『この本をかくして』マーガレット・ワイルド/文 フレア・ブラックウッド/絵 アーサー・ビナード/訳 岩崎書店(オーストラリア)
『金剛山のトラ:韓国の昔話』クォン ジョンセン/再話 チョン スンガク/絵 かみやにじ/訳 福音館書店(日本・韓国)
『サイモンは、ねこである』ガリア・バーンスタイン/作 なかがわちひろ/訳 あすなろ書房(イギリス)
『詩ってなあに?』ミーシャ・アーチャー/作 石津ちひろ/訳 BL出版(アメリカ)
『すききらい、とんでいけ! もぐもぐマシーン』イローナ・ラメルティンク/文 リュシー・ジョルジェ/絵 野坂悦子/訳 西村書店(オランダ)
『ソーニャのめんどり』フィービー・ウォール/作 なかがわちひろ/訳 くもん出版(カナダ)
『空の王さま』ニコラ・デイビス/文 ローラ・カーリン/絵 さくまゆみこ/訳 BL出版
『ちっちゃいさん』イソール/作 宇野和美/訳 講談社(スペイン)
『ドライバーマイルズ』ジョン・バーニンガム/作 谷川俊太郎/訳 BL出版(イギリス)
『どれがいちばんすき?』ジェイムズ・スティーヴンソン/作 千葉茂樹/訳 岩波書店(アメリカ)
『なかないで、アーサー:てんごくにいったいぬのおはなし』エマ・チチェスター・クラーク/作・絵 こだまともこ/訳 徳間書店(イギリス)
『なずずこのっぺ?』カーソン・エリス/作 アーサー・ビナード/訳 フレーベル館(イギリス)
『人形の家にすんでいたネズミ一家のおはなし』マイケル・ボンド/文 エミリー・サットン/絵 早川敦子/訳 徳間書店(イギリス)
『ねむたいひとたち』M.B.ゴフスタイン/作 谷川俊太郎 あすなろ書房(アメリカ)
『ふしぎな銀の木:スリランカの昔話』シビル・ウェッタシンハ/再話・絵 松岡享子、市川雅子/訳 福音館書店(日本・スリランカ)
『ふたりはバレリーナ』バーバラ・マクリントック/作 福本友美子/訳 ほるぷ出版(アメリカ)
『へんてこたまご』エミリー・グラヴェット/作 福本友美子/訳 フレーベル館(イギリス)
『ぽちっとあかいおともだち』コーリン・アーヴェリス/文 フィオーナ・ウッドコック/絵 福本友美子/訳 少年写真新聞社(イギリス)
『本の子』オリヴァー・ジェファーズ、サム・ウィンストン/作 柴田元幸/訳 ポプラ社(イギリス)
『まめまめくん』デヴィッド・カリ/文 セバスチャン・ムーラン/絵 ふしみみさを/訳 あすなろ書房(カナダ)
『もしきみが月だったら』ローラ・パーディ・サラス/文 ジェイミー・キム/絵 木坂涼/訳 光村教育図書(アメリカ)
『森のおくから:むかし、カナダであったほんとうのはなし』レベッカ・ボンド/作 もりうちすみこ/訳 ゴブリン書房(アメリカ)
『ゆめみるじかんよ こどもたち』ティモシー・ナップマン/文 ヘレン・オクセンバリー/絵 石井睦美/訳 BL出版(イギリス)
『りゅうおうさまのたからもの』イチンノロブ・ガンバートル/文 バーサンスレン・ボロルマー/絵 津田紀子/訳 福音館書店(日本・モンゴル)

 

<読み物>(50音順)

『ありづかのフェルダ』オンドジェイ・セコラ/作・絵 関沢明子/訳 福音館書店(チェコ)
『アルバートさんと赤ちゃんアザラシ』ジュディス・カー/作・絵 三原泉/訳 徳間書店(イギリス)
『凍てつく海のむこうに』ルータ・セペティス/作 野沢佳織/訳 岩波書店(アメリカ)
『オオカミを森へ』キャサリン・ランデル/作 原田勝/訳 小峰書店(イギリス)
『カランポーのオオカミ王』ウィリアム・グリル/作 千葉茂樹/訳 岩波書店(イギリス)
『口ひげが世界をすくう?!』ザラ・ミヒャエラ・オルロフスキー/作 ミヒャエル・ローハー/絵 若松宣子/訳 岩波書店(オーストリア)
『紅のトキの空』ジル・ルイス/著 さくまゆみこ/訳 評論社(イギリス)
『こいぬとこねこのおかしな話』ヨゼフ・チャペック/作 木村有子/訳 岩波書店(チェコ)
『さよなら、スパイダーマン』アナベル・ピッチャー/著 中野怜奈/訳 偕成社(イギリス)
『ジョージと秘密のメリッサ』アレックス・ジーノ/作 島村浩子/訳 偕成社(アメリカ)
『世界を7で数えたら』ホリー・ゴールドバーグ・スローン/著 三辺律子/訳 小学館(アメリカ)
『太陽と月の大地』コンチャ・ロペス=ナルバエス/著 宇野和美/訳 福音館書店(スペイン)
『ダーウィンと旅して』ジャクリーン・ケリー/作 斎藤倫子/訳 ほるぷ出版(アメリカ)
『月からきたトウヤーヤ』蕭甘牛/作 君島久子/訳 岩波書店(中国)
『テオのふしぎなクリスマス』キャサリン・ランデル/文 エミリー・サットン/絵 越智典子/訳 ゴブリン書房(イギリス)
『テディが宝石を見つけるまで』パトリシア・マクラクラン/著 こだまともこ/訳 あすなろ書房(アメリカ)
『とびきりすてきなクリスマス』リー・キングマン/作 山内玲子/訳 岩波書店(アメリカ)
『ナンタケットの夜鳥』ジョーン・エイキン/作 こだまともこ/訳 冨山房(イギリス)
『パンツ・プロジェクト』キャット・クラーク/著 三辺律子/訳 あすなろ書房(イギリス)
『ペーパーボーイ』ヴィンス・ウォーター/作 原田勝/訳 岩波書店(アメリカ)
『ぼくたち負け組クラブ』アンドリュー・クレメンツ/著 田中奈津子/訳 講談社(アメリカ)
『ぼくとベルさん:友だちは発明王』フィリップ・ロイ/著 櫛田理絵/訳 PHP研究所(カナダ)
『ぼくはO・C・ダニエル』ウェスリー・キング/作 大西昧/訳 鈴木出版(アメリカ)
『ボノボとともに:密林の闇をこえて』エリオット・シュレーファー/作 ふなとよし子/訳 福音館書店(アメリカ)
『もうひとつのワンダー』R.J.パラシオ/作 中井はるの/訳 ほるぷ出版(アメリカ)
『モルモット・オルガの物語』マイケル・ボンド/作 いたやさとし/絵 おおつかのりこ/訳 PHP研究所(イギリス)
『レイン:雨を抱きしめて』アン・M・マーティン/著 西本かおる/訳 小峰書店(アメリカ)
『わたしがいどんだ戦い 1939年』キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー/作 大作道子/訳 評論社(アメリカ)
『わたしも水着をきてみたい』オーサ・ストルク/作 ヒッテ・スペー/絵 きただいえりこ/訳 さ・え・ら書房(スウェーデン)

 

<ノンフィクション>50音順

『いのちは贈りもの:ホロコーストを生きのびて』フランシーヌ・クリストフ/著 河野万里子/訳 岩崎書店(フランス)
『いろいろいっぱい:ちきゅうのさまざまないきもの』ニコラ・デイビス/文 エミリー・サットン/絵 越智典子/訳 ゴブリン書房(イギリス)
『語られなかったアメリカ史:オリバー・ストーンの告発1.2』オリバー・ストーン、ピーター・カズニック/著 スーザン・キャンベル・バートレッティ/編著 鳥見真生/訳あすなろ書房(アメリカ)
『ゴードン・パークス』キャロル・ボストン・ウェザーフォード/文 ジェイミー・クリストフ/絵 越前敏弥/訳 光村教育図書(アメリカ)
『サリバン先生とヘレン:ふたりの奇跡の4か月』デボラ・ホプキンソン/文 ラウル・コローン/絵 こだまともこ/訳 光村教育図書(アメリカ)
『サルってさいこう!』オーウェン・デイビー/作 越智典子/訳 偕成社(イギリス)
『しくみがまるわかり! 骨のビジュアル図鑑』ベン・モーガン、スティーブ・パーカー/著 太田てるみ/訳 岩崎書店(イギリス)
『すごいね! みんなの通学路』ローズマリー・マカーニー/文 西田佳子/ 訳 西村書店(カナダ)
『正義の声は消えない:反ナチス・白バラ抵抗運動の学生たち』ラッセル・フリードマン/著 渋谷弘子/訳 汐文社(アメリカ)
『庭のマロニエ:アンネ・フランクを見つめた木』ジェフ・ゴッテスフェルド/文 ピーター・マッカーティ/絵 松川真弓/訳 評論社(アメリカ)
『発明家になった女の子 マッティ』エミリー・アーノルド・マッカリー/作 宮坂宏美/訳 光村教育図書(アメリカ)
『走れ!! 機関車』ブライアン・フロッカ/作・絵 日暮雅通/訳 偕成社(アメリカ)
『ファニー:13歳の指揮官』ファニー・ベン=アミ/著 ガリラ・ロンフェデル・アミット/編 伏見操/訳 岩波書店(フランス)
『プーさんとであった日:世界でいちばんゆうめいなクマのほんとうにあったお話』リンジー・マティック/文 ソフィー・ブラッコール/絵 山口文生/訳 評論社(アメリカ)
『マララのまほうのえんぴつ』マララ・ユスフザイ/作 キャラスクエット/絵 木坂涼/訳 ポプラ社(アメリカ)
『みどりの町をつくろう:災害をのりこえて未来をめざす』アラン・ドラモンド/作 まつむらゆりこ/訳 福音館書店(アメリカ)
『耳の聞こえないメジャーリーガー ウィリアム・ホイ』ナンシー・チャーニン/文 ジェズ・ツヤ/絵 斉藤洋/訳 光村教育図書(アメリカ)
『もしも地球がひとつのリンゴだったら』デビッド・J・スミス/文 スティーブ・アダムス/絵 千葉茂樹/訳小峰書店(アメリカ)
『ラマダンのお月さま』ナイマ・B・ロバート/文 シーリーン・アドル/絵 前田君江/訳 解放出版社(イギリス)
『わたしたちのたねまき:たねをめぐるいのちたちのおはなし』キャスリン・O・ガルブレイス/作 ウェンディ・アンダスン・ハルパリン/絵 梨木香歩/訳 のら書店(アメリカ)

 

 

 

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大塚敦子『犬が来る病院』

犬が来る病院〜命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと

『犬が来る病院〜命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと』をおすすめします。

聖路加国際病院の小児病棟の子どもたちを3年半にわたって取材したドキュメンタリー。日本で初めて小児病棟にセラピー犬を受け入れたこの病院で、犬の訪問活動をどうやって始めたのか、子どもたちの反応はどうだったのか、子どもたちが豊かな時間を過ごすための配慮がどう行われていたか、多くのスタッフがどう連携してトータルケアをめざしたのか、などについて述べられている。4人の子どもたちとその家族が、それぞれ病に直面して歩んだ軌跡も感動的。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<ノンフィクション>掲載)

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浜矩子『お金さえあればいい?』

お金さえあればいい?〜子どもと考える経済のはなし

『お金さえあればいい?〜子どもと考える経済のはなし』をおすすめします。

とてもわかりやすい文章と、ユーモアたっぷりのイラストで、お金や経済について学ぶ本。お金はなんのためにあるの? 経済とは本来どんなものなの? 今の日本経済に警鐘を鳴らす著者は、本当の経済は人と人が出会う場をつくるもので、そこからは幸せが生まれてこなくてはいけないという。利益ばかりを追い求めるような偽の経済活動を賢く見ぬいて、お金にふりまわされないで幸せになるためには、どうしたらいいか。それを本書は伝えている。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<ノンフィクション>掲載)

キーワード:経済、社会、お金、しあわせ

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中山茂大文 阪口克写真『世界中からいただきます!』

世界中からいただきます!

『世界中からいただきます!』をおすすめします。

世界各地の普通の家に居候して、家族の素顔や、いつもの暮らしを見せてもらい、普通の食事を食べさせてもらう。そんなふうにして集めたモンゴル、カンボジア、タイ、ハンガリー、イエメン、モロッコなど14カ国の17家族の生き方が、食を中心に写真とともに紹介されている。楽しいレイアウトのおかげで、日本の読者にも親しみやすく読みやすくなっている。コラムでは、世界の主食や屋台やトイレ、日本から持って行って喜ばれたお土産なども紹介されている。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<ノンフィクション>掲載)

キーワード:ごはん、台所、料理、異文化理解

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森枝卓士/写真・文『干したから・・・』

干したから・・・

『干したから・・・』をおすすめします。

食をテーマとするカメラマンがつくった写真絵本。世界各地で見つけた乾燥食品を写真で示しながら、干すことによる食品の変化や、干すことの意味や目的を、わかりやすく説いている。野菜や果物や魚や肉や乳製品は、干すと水分がぬけて腐りにくくなり保存がきくようになるのだが、その点に子どもが興味をもてるよう伝え方が工夫されている。めざし、梅干しなど乾燥食品を使った日本の典型的な食事や、野菜の簡単な干し方も紹介されている。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<ノンフィクション>掲載)

キーワード:食べ物、干物、自然、知恵

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鈴木まもる『わたり鳥』

わたり鳥

『わたり鳥』をおすすめします。

世界の渡り鳥113種の旅を描いたノンフィクション絵本。なぜ長距離を移動するのか、どんなルートがあるのか、どんなところにどんな巣をつくるのか、渡りの途中でどんな危険に遭遇するのか、何をたよりに移動するのか、などを、子どもにもわかる文章と興味深い絵で説明している。巻末には、本書に登場する渡り鳥44種それぞれの大きさや姿、巣の大きさ、卵の色や形、渡りのルート、繁殖地と冬期滞在地などを紹介する一覧と、「世界のわたり鳥地図」も掲載している。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<ノンフィクション>掲載)

キーワード:渡り鳥、生き物、環境

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山本悦子『神隠しの教室』

神隠しの教室

『神隠しの教室』をおすすめします。

ある日、5人の子どもたちが学校で行方不明になる。5人とは、いじめを受けていた加奈、ガイジンといわれているブラジル人のバネッサ、虐待されているみはる、情緒不安定の母親にネグレクトされている聖哉、そして単身赴任の父親と2年も会っていない亮太。みんな「どこかへ行ってしまいたい」と思っていた子どもたちだ。この子たちは、戻ってこられるのか? 戻るには何が必要なのか? 読者は謎にひかれて読み進むうちに、現代日本の子どもをとりまく社会にも目を向けることになる。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<読みもの>掲載)

キーワード:いじめ、ネグレクト、ミステリー、学校

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藤重ヒカル著 飯野和好絵『日小見不思議草紙』

日小見不思議草紙

『日小見不思議草紙(ひおみふしぎぞうし)』をおすすめします。

江戸時代を舞台にした5篇のファンタジー短編集。不思議な刀のおかげで鼻にタンポポが咲き、相手が笑ってしまうので戦わずして勝てる侍の話、野原で出会った不思議な女の子にすばらしい絵の具をもらって出世する絵描きの話、クマの助けを借りて一夜にして堰堤を築く話など、どれも短いなりにまとまりがよく、おもしろく読める。それぞれの短編の前後に江戸時代と現代を結びつける仕掛けもあり、虚実の境がわざとあいまいになっている。ユーモラスな味わいを支えている挿絵もいい。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<読みもの>掲載)

キーワード:ファンタジー、江戸時代、変身

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岩瀬成子『春くんのいる家』

春くんのいる家

『春くんのいる家』をおすすめします。

新しい家族の形をテーマにしたフィクション。日向は、両親が離婚した後、母と一緒に祖父母の家で暮らしているが、そこに、従兄の春も加わって一緒に暮らすことになった。春は、父親が病死し母親が再婚した結果、跡取りとして祖父母の養子になったのだ。新たな5人家族は、最初はぎくしゃくしていて、感情も行き違う。しかし、春が子ネコを拾ってきたことなどをきっかけに、徐々に、みんなが寄り添い合い、新たなまとまりを作り出していく。その様子を感受性豊かな日向の一人称で描いている。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<読みもの>掲載)

キーワード:家族、友だち、ネコ

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八百板洋子文 斎藤隆夫絵『猫魔ヶ岳の妖怪』

猫魔ヶ岳の妖怪

『猫魔ヶ岳の妖怪』をおすすめします。

この絵本には、福島県各地に伝わる伝説「猫魔ヶ岳の妖怪」「天にのぼった若者」「大杉とむすめ」「おいなりさまの田んぼ」の4話が入っている。原発事故前の福島は、自然豊かなとても美しい土地だった。ここに収められた伝説からもそうした地域の背景がうかがわれ、人間と動物や自然の結びつき、人間には計り知れない自然の力などが感じられる。再話は、ブルガリアと日本の民話の研究者・翻訳者。絵も、伝説の雰囲気をよく伝えている。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<絵本>掲載)

キーワード:昔話、福島

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わたりむつこ/作 でくねいく/絵『こうさぎとほしのどうくつ』

こうさぎとほしのどうくつ

『こうさぎとほしのどうくつ』をおすすめします。

4匹の子ウサギのきょうだいが、嵐を逃れるために洞窟に入りこみ、となりの子ウサギたちとも出会って、洞窟の中を探検する。そのうち、ランタンを落とし、真っ暗な中で子ウサギたちは洞窟の中の大広間にすべり落ちてしまう。ところがその大広間の天井には、星のような光がまたたいていて、子ウサギたちを洞窟の出口へと案内してくれた。最後は家にもどって一安心。子ウサギたちの驚き、不安、安堵、幸福感など心のうちを、顔の表情や変化に富む背景の色でうまく表現している。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<絵本>掲載)

キーワード:ウサギ、友だち、冒険

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ひらののぶあき文 あべ弘士絵『手おけのふくろう』

手おけのふくろう

『手おけのふくろう』をおすすめします。

桜の木のうろで子育てをしていたフクロウ夫婦は、ある年その桜の木が倒れていたので次の場所を探すが見つからない。ついに民家の軒下に下げてあった手桶を巣にすることにした。父さんフクロウは、雨や雪の時は翼を広げて巣を守り、ひながかえると獲物をつかまえて運び、ハクビシンを体当たりで撃退する。やがて3羽のひなが無事に巣立ち、一家は森に帰っていく。民家のおじいさんもあたたかく見守る。著者は鳥の生態に詳しく、フクロウの子育てのようすがとてもリアルだし、絵もいい。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<絵本>掲載)

キーワード:自然、親子、フクロウ

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田島征三『あめがふるふる』

あめがふるふる

『あめがふるふる』をおすすめします。

雨の日に、ふたりだけで留守番をしている兄のネノと妹のキフは、窓の外をながめていると、フキの葉の傘をさしたカエル、たくさんの巨大なオタマジャクシ、くるくる回るカタツムリ、踊っている木や草や野菜などが次々にあらわれる。そして魚に誘われて向こうの世界にとびこんだ兄妹は、困っている小さな動物たちを笹舟をたくさん作って、のせていく。やがてお母さんが帰ってきて、子どもたちは現実に戻る。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<絵本>掲載)

キーワード:雨の日、冒険、思いやり

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吉野万理子『部長会議はじまります』

部長会議はじまります

『部長会議始まります』をおすすめします。

物語は、こんな校内アナウンスで始まる。「四時から、臨時の部長会議を始めます。文化部の部長のみなさんは、大講堂に集まってください」。ここは、私立の詠章学園の中等部。

第一部(部長会機はじまります)は、文化部の部長会議で、美術部が文化祭のために作ったジオラマにだれかがいたずらした事件をめぐって展開する。怒っている美術部の部長、怪しげな部活だと思われて悩んでいるオカルト研究部部長、いろいろなことに自信のない園芸部部長、ミス・パーフェクトと言われる華道部部長、恋をしている理科部部長。会議は紛糾する。犯人はだれなのか? いじめがからんでいるのか? それとも恨みか?

第二部(部長会議は終わらない)は、運動部の部長会議。第二体育室が取り壊されることになり、そこを使っていた部の活動を保証するため、運動場やグラウンドの使用を譲り合わなくてはいけなくなる。はじめのうちはほとんどの部長が、自分の部が損にならないように立ち回ろうとするが、だんだんに解決策を見出していく。卓球部、バスケ部、バレー部、和太鼓部、サッカー部、野球部の各部長に、パラスポーツをやりたいと言う人工関節の生徒もからんで、意外な展開に。

章ごとに語り手が変わるので、それぞれの登場人物についても、「他人はこう見ている」のと「自分はこう思っている」との落差がわかり、立体的に見えて来る。また他人にはうかがい知れない悩みを各人が抱えていることもわかってくる。人は見かけとは違うのだ。

楽しく読めて、読んだ後、まわりの人たちにちょっぴりやさしくなれる学園物語。

(トーハン週報「Monthly YA」2019年4月8日号掲載)

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遠藤敏明『木でつくろう手でつくろう』

木でつくろう手でつくろう

『木でつくろう手でつくろう』をおすすめします。

原発事故以来、「ふるさと」という歌が流行っています。福島には美しい場所がたくさんあり、私の友人をふくめ有機農業で頑張っていた人もたくさんいました。私自身はあまりにも情緒に流れる気がして「ふるさと」はうたいませんが、「うさぎ追いしかの山」や「小鮒釣りしかの川」が放射性物質という毒に穢されてしまったという事実からは、これからも目を背けないでいようと思います。尖閣諸島や竹島は日本の領土だと主張するのもけっこうですが、それよりずっと広い範囲の「領土」を私たちは原発事故で失ってしまったのではないでしょうか。

と、そんなことを思いつつ年が明けたので、同じことをもっとポジティブな視点から考えようと思い、今回はこの本を推薦することにしました。

この本で語られているのは「木」です。木材の知識や、簡単にできる木工もいろいろ紹介されています。でも、スウェーデンで暮らした体験をもつ著者は、木だけではなくいろいろな素材に愛情を注ぎ、理解し、時間をかけてそれと対話しながら何かをつくりあげる、という生き方そのものが大切なのだと語りかけてきます。手作りのものにかける時間は、能率や効率という視点から見れば無駄かもしれません。それに、そんなふうにしてつくったものは、GNPやGDPには貢献しないかもしれません。けれど、と私は思うのです。さまざまな電化製品やファストフードをはじめ便利漬けになってしまっている私たちは今、もう一度自然のものの「手触り」や自分で工夫してつくる力を取り戻す必要があるのではないかと。

(「トーハン週報」Monthly YA 2013年2月号掲載)

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ジェーン・サトクリフ文 ジョン・シェリー絵『石の巨人〜ミケランジェロのダビデ像』

石の巨人〜ミケランジェロのダビデ像

『石の巨人〜ミケランジェロのダビデ像』をおすすめします。

今回取り上げるのは、ミケランジェロを主人公にした絵本です。

ミケランジェロのダビデ像は、あちこちにレプリカがあるので、見たことがある方も多いでしょう。2012年には島根県奥出雲町にもレプリカが設置され、「裸はけしからん。パンツをはかせろ」と言い出す人も出て話題になりましたね。

この絵本は、フィレンツェの街にはクリーム色の大きな大理石が40年も置きっぱなりにされていたこと、この石を使ってダビデ像をつくることを依頼された何人かの彫刻家が、断ったり途中で彫るのを辞めてしまったことなど、前史をまず語っています。

やがて(実際は1501年)とうとうこの仕事を引き受けたミケランジェロは、周りに木の囲いを張りめぐらせて秘密裏に仕事を進めるのですが、彼には石の中に埋もれている形が早くから見えていたようです。それから実際に彫像ができて広場前に設置されるまでの苦労が絵と文章であらわされています。

ルビがふってあるので、小学生から読めますが、若い人が読んでもなかなかおもしろい。天才ミケランジェロの人となりや、この石像が生まれたいきさつがわかります。

文章を書いたサトクリフはアメリカ人で、この絵本で初めて日本の読者にお目見えしました。イギリス人であるシェリーの絵は、『ジャックと豆の木』(福音館書店)や、「チャーリー・ボーンの冒険」シリーズの挿絵でもおなじみの、あたたかくて楽しい雰囲気をもっているのですが、ダビデ像だけは大変リアルに描いてあります。ミケランジェロへのオマージュとい意味もこめられているのでしょうか。

(「トーハン週報」Monthly YA 2013年12月9・16日合併号掲載)

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ポール・モーシャー『あたしが乗った列車は進む』

あたしが乗った列車は進む

『あたしが乗った列車は進む』をおすすめします。

少女が一人、長距離列車に乗っている。壊れた腕時計をはめ、「ライダー(乗客)」というカードを首からぶら下げて。隣にすわっているのはドロシア。親戚でも友だちでもない。少女がちゃんと目的地につけるように見張っているのだ。少女は、『太陽はかがやいている』という題の小さな本をお守りのように持っているけれど、自分は太陽とは縁遠い存在だと思っている。少女は、助けはいらないし自力でなんとかしようと気を張っているが、自分が人から傷つけられるような弱い人間だということにむかついてもいる。

物語は、少女がこれまでのことを回想する過去の流れと、列車の中で出会った人々との交流を描く現在の流れの、両方で進んで行く。回想場面には、ドラッグ中毒の母親、ニコチン中毒の祖母などが登場し、ネグレクトされた少女が、愛をほとんど感じられない暮らしをしてきたことがわかってくる。そのせいで少女は自己肯定感を持てず、ウソもつくし万引きもする。少女は、知っている身内をすべて失って、会ったこともない大おじさんの住むシカゴに向かう途中なのだ。

でも現在の流れの中では、旅の間に少女は少しずつ変わっていく。軽食カウンターで働くニール、ドーナツをくれたり一緒にクロスワードパズルを楽しんだりするカルロス、ギンズバーグの詩集『吠える』を貸してくれる少年テンダーチャンクス、そしてじつは思慮のあるドロシアたちとの出会いが、少女に本来のかがやきを取り戻させてくれるのだ。少女は、「あたしは、自分で選んだふうにしかならない」と思えるようになり、これからの自分に希望をもちはじめる。最後のほうで、自分の存在を否定しようとする自分を映している鏡を壊す場面は、象徴的だ。

自分をなかなか好きになれない年頃の子どもたちにすすめたい。

(「トーハン週報」Monthly YA  2018年10月8日号掲載)

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ユベール・マンガレリ『おわりの雪』

おわりの雪

『おわりの雪』をおすすめします。

夏なのに雪? といぶかしむ方もおいでかもしれません。そう、暑いさなかに冬の本を読むのは、なかなかいいのです。想像力のおかげで少しは涼しくなったりして。

主人公の少年の父親は病気で寝たきりになっており、一家三人は、その父親の年金を頼りにくらしています。母親は、夜になるといつもこっそり出かけていきます。少年も、養老院で老人たちの散歩の介助をして少しばかりのお金をもらっています。時には、子ネコや老犬を「始末してほしい」と頼まれることもあります。つまりこの少年はまだ長い年月を生きてはいないのに、もう死のすぐそばにいるのです。

孤独な少年には、ほしいものがひとつだけあります。それは、古道具屋で売っているトビ。自由に空を飛び回れる翼を持ったトビのそばに腰をおろして、少年は時間を過ごします。そして、想像の中でつくりあげた話を父親にして聞かせるのです。

これは明るい元気な物語ではなく、暗い静かな物語で、少年の周囲にも白い雪や冬枯れた風景が広がっています。父親が死を迎えるということはあるにせよ、外側で大きな事件が起こるわけではありません。でも、すぐれた描写によって、その瞬間その瞬間を「生きている」この繊細な少年の思いが、とてもリアルに読む者にも伝わってくるのです。そういう力をもった文章、そして翻訳です。

著者のユベール・マンガレリは、おとなの本と子どもの本のボーダーにあるような作品を書いているフランスの作家です。

(「トーハン週報」Monthly YA 2013年8月12日号掲載)

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村中李衣『チャーシューの月』

チャーシューの月

『チャーシューの月』をおすすめします。

私がつきあっている子ども学科の学生は、保育士の資格を得るために、いろいろな施設にも実習に出かけていきます。知的障碍者の施設や母子生活支援施設や児童養護施設に行くことになった学生たちは、最初は不安を抱えています。「対応できるのか」「暗い場所なんじゃないか」「手に負えないことが起こるんじゃないか」という心配をしているのです。でも実際に行ってみると、90%以上の学生が、生きることを基本を考えさせられるような大変いい体験をさせてもらい、顔つきもしっかりして帰ってきます。「楽しかった」と言う学生もたくさんいます。

でも、そういうところでの暮らしを内側から書いた作品はそう多くはありません。この作品の舞台は、あけぼの園という児童養護施設。ここで暮らして中学生になったばかりの美香が、物語の語り手です。ある日、そこに六歳の明希(あき)がやってきます。明希の父親も母親も生きているのですが、娘を育てることができないのです。

物語は美香と明希を中心に、まわりの子どもたち、職員たち、親たちを描いていきます。すてきなのは、子どもたちがハンデのある環境にもかかわらず、自分を大事にして成長していくこと。美香は最初、明希をふくめ他者をうざったいとしか思っていないのですが、やがて他者に手をさしのべるようになっていきます。もう一つすてきなのは、親をふくめだれかを悪者にしたりしないこと。作者は、おとなも変われるはずと思っているのかもしれません。

(「トーハン週報」Monthly YA  2013年4月8日号掲載)

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<子どもが素敵>

チャーシューの月って何でしょう? いったいどういうこと? 不思議に思う人もいるかもしれませんが、読んでいるうちにどんな心もようを表しているかわかってきます。

舞台はあけぼの園という児童養護施設。ここで暮らして中学生になったばかりの美香が、物語の語り手です。ある日、6歳の明希(あき)が、お父さんに連れられてあけぼの園にやってきます。明希は何か失敗するとすぐに「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返しますが、その一方、何でも写真に撮ったように記憶できるという特技ももっています。

美香は、優等生ではありません。いらいらしたり、むかついたり、突っ張ったりしています。「わたしたちに小さい子への思いやりをもてなんていってもムリな話だ。わたしたちが小さかったとき、いったいだれが思いやりをくれたっていうんだろ」と、反発もします。そりゃそうですよね。

美香は、最初は新入りの明希をうざったいと思います。でも、美香はよく見ているのです。それでいざというときは心配になって、どうしても「思いやって」しまうのです。美香より2歳年上の信也も同じです。つらい思いをしてきた体験があるからこその「思いやり」なのかもしれません。

施設の職員たちは、ダルマ園長を含めみんな善人面をするわけではなく、子どもたちにしょっちゅう悪態をつかれながら、そしておそらく限界を超えないことを自分に命じながら、公平に子どもたちを愛しています。でも、子どものほうでは「たった一人のわたしを見て」「たった一人のぼくを愛して」と叫んでいるのでしょう。そんな中で美香は自分を捨てることなく、場面場面で何かを自分で選び取って、成長していきます。そして、両親の間で引き裂かれていた明希も、本能的にでしょうか、母親に引き取られるのを拒否し、父親が迎えにくるまで待っていることを選び取ります。

地元の児童養護施設で、子どもたちと絵本の読み合いをしながら、さまざまな子どもの心もようと出会ってきた著者ならではの、熱い作品です。

(「子とともにゆう&ゆう」2013年3月号掲載)

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現代語で読むたけくらべ

現代語で読む たけくらべ

『現代語で読む たけくらべ』をおすすめします。

「廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火うつる三階の騒ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行來にはかり知られぬ全盛をうらなひて・・・・・・」

思い返してみれば、私も原文で『たけくらべ』を読んだことがある。注釈付きの本だった。大門というのは吉原の門のことだとか、お歯黒どぶというのは、遊女が逃げないように遊郭のまわりにつくられたどぶだ、というような注が下の方に入っていた。原文をそのまま読んだだけでは意味がよくわからないので、目を原文から注へ、注から原文へと行ったり来たりさせながら読んだ。でも、そういう読み方ではなんとか意味を理解するのが精一杯で、文学作品として楽しむというところまではいかなかったのをおぼえている。

私は古典の現代語訳はもともとあまり好きではないのだが、今回本書を読んで、これもありだな、と思った。その昔原文を読んだときよりは、よほどおもしろく読めたからだ。

「ここから表通りを回っていけば、吉原遊郭の大門にある見返り柳までは遠い。しかし、吉原を囲む真っ黒などぶ川には、芸者を揚げて騒ぐ三階の灯りが手に取るように映っている。人力車の行き来はひっきりなしで、はかりしれないほどの吉原の繁盛ぶりが想像できる」というのが、本書の現代語訳。

ただ「訳者」も後書きで述べているように、原文のリズムや響きを味わうためには、本書を読んだ後でもいいから、ぜひ原文のほうにも触れてもらいたい。動画サイトにも朗読があるのだから。

(「トーハン週報」Monthly YA  2012年12月10・17日合併号掲載)

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ジャクリーン・ケリー『ダーウィンと出会った夏』

ダーウィンと出会った夏

『ダーウィンと出会った夏』をおすすめします。

舞台は1899年のテキサス。今とは違って、女の子が思い切って好きなことができる時代ではありません。11歳のコーリー(キャルパーニア)は、兄3人、弟3人のまん中にはさまれた唯一の女の子。同じ屋根の下には、古い小屋(かつての奴隷小屋)で実験三昧の日々を送る祖父も住んでいます。

親たちは、女の子は刺繡や料理がちゃんとできるようになって、年頃になれば社交界にデビューしなくてはならないと言いますが、コーリーの思いは別のところにあります。変わり者の祖父は、「実験室」で蒸留酒をつくろうとしていただけでなく、しょっちゅう自然の中へ出かけていき、ついてきた孫娘に、目に触れる生き物についていろいろな話をしてくれます。おかげでコーリーは博物学に興味しんしんなのです。

でもコーリーが自分らしい生き方を貫くのは、今よりずっと難しいことでした。各章の冒頭にはダーウィンの『種の起源』からの文章の抜粋があって、悩んでいるコーリーの背中を押してくれているようです。

祖父ばかりでなく、兄弟たちそれぞれのエピソードにもユーモアがあり、楽しく読めます。コーリーが祖父の話を聞いてどんどん科学的な見方を獲得していく過程も、リアルに書かれています。祖父がしてくれる話は単なる知識ではなく、人生体験に基づく味わい深い物語になっています。自然科学の分野ではあっても、こういう物語から入れば子どもたちは大いに興味をもつようになり、理科離れも食い止められるのではないでしょうか。

(「トーハン週報」Monthly YA  2011年10月14日号掲載)

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『さがしています』アーサー・ビナード/作 岡倉禎志/写真

さがしています

『さがしています』をおすすめします。

昨年の3月11日以降、子どもの本の作家たちからも、いろいろな作品が生まれてきました。でも、出版された作品の中に、世界に向けて推薦できるものは、なかなかありませんでした。もう少し心の中で熟成する時間が必要なのかもしれないなあ、と思っていたとき、この絵本にめぐりあいました。

この絵本でとりあげているのは、福島ではなく広島です。主人公は、広島平和記念資料館に所蔵されている品々です。でも、この品々が言葉を語りだすと、福島が見えてきます。そして、広島や長崎がまだ終わっていないことも、私たちが、この先どんな未来を創らなければならないのかも。

アルミの弁当箱、理髪店の時計、軍手、鉄瓶、眼鏡・・・・・・。そのうちのいくつかは、私も平和記念資料館で見た記憶があります。でも、ビナードさんは見ただけで終わらせず、物たちが発する声なき声に耳を傾け、想像し、考え、悩み、物たちと私たちをつなぐ詩を書いて、その物たちの背後にいる人たちの息づかいや、あのときピカドンによって断ち切られた生のぬくもりを、みごとに浮かび上がらせました。それだけではありません。ビナードさん独特の日本語の表現がいいのです。普通の平板な日本語とはひと味違うからこそ、右から左にするすると消えていかないで、読む人の胸に残ります。

私は、若い人たちを教える立場になって以来、絵本や児童文学で何ができるかを考えてきました。この絵本には、その答えの一つがあるのではないかと、いま思っています。

(「トーハン週報」Monthly YA  2012年10月8日号掲載)

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『声めぐり』齋藤陽道著

声めぐり

『声めぐり』をおすすめします。

思わず引き込まれて、ところどころ立ち止まって考えながらも、私は一気に最後まで読みました。著者は写真家であり、障害者プロレスのレスラーです。

最初に、耳がよく聞こえず、補聴器をつけての発音訓練に明け暮れていた幼い頃の辛い日々が語られますが、その後、ろう学校に入って手話が使えるようになり、著者は「音声言語ができてこそ一人前だという呪い」から解放されます。

「ろう学校の生活は、本当に楽しかった。もし、家の近くにろう学校がなかったらと思うと恐ろしくなる。何に対しても『早く終われ』と願うばかりだった過去。何に対しても終わりを一刻も早くと願う気持ちは、やがて自分の命を断つことに向けられていただろう。それはとてもリアルに想像できる未来だった」。

もう少し先には、手話についての、こんなすてきな文章もあります。

「行き交う人々の直線的な動きと比べると、手話の動きはまるくて球体的なので、とても目立つ。手話を見ようとして意識をそこに向けるとき、ひしめきあう雑踏が消えて、ともだちという存在一点へと収斂していく」。

著者は、しだいに手話だけでなく、体感できるものを「声」として捉えるようになります。写真も声だし、障害者プロレスも、相手とのコミュニケーションの手立てとしての声なのです。音声言語だけでなく、じつに多様な「声」が存在することが、読者にも伝わってきます。

それにしても本書の言葉は、一つ一つが心に響きます。それは、著者が本当に言いたいことを、自分の表現で語っているからなのでしょう。表面的な言葉ではなく、かといって斜に構えた言葉でもなく、統合された一つの身体からまっすぐに出てくる言葉が、ここにはあります。今、そのような言葉を発したり書いたりする人は少なくなり、出来合いの言葉を借りて語る人が多くなってきたことを思うと、本書の存在はとても貴重です。

(「トーハン週報」 Monthly YA 2018年12月10日号掲載)

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『フラダン』表紙

フラダン

『フラダン』をおすすめします。

男子高校生の主人公が、強引な勧誘を受けてしぶしぶのぞいてみたフラダンス愛好会は、なんと女子ばかり。
と、そこへ個性バラバラなほかの男子3人も入ってきて、「フラガールズ甲子園」に向けた特訓が始まってしまう。
笑いながらぐんぐん読める青春小説だが、福島を舞台に、多様な人々とのふれ合いや原発事故のその後をめぐる状況も描かれていて、味わいが深い。

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年7月28日掲載)

笑いながら読める青春小説だが、福島の原発事故をめぐる状況や、多様な人々とのぶつかりあいや交流なども書かれていて味わいが深い。工業高校に通う辻本穣(ゆたか)は、水泳部をやめたとたん「フラダンス愛好会」に強引に勧誘される。しぶしぶ行ってみると、女子ばかり。ところが、シンガポールからのイケメン転校生、オッサンタイプの柔道部員、父親が東電社員である軟弱男子も加入してくる。穣は男子チームを率いることになり、最初は嫌々だが、だんだんおもしろさもわかってきて、真剣になっていく。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<読みもの>掲載)

キーワード:フラダンス、青春、震災、福島

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たしろちさと作『はなびのひ』佼成出版社

はなびのひ

『はなびのひ』をおすすめします。

子ダヌキのぽんきちは、今夜は花火職人の父親がでかい花火をあげるというので、朝からそわそわ。そのうち母親から、父親に握り飯を届けてくれと言われて、ぽんきちは勇んで出かける。その後ろから、もう花火が始まるのかと勘違いした、ご近所さんがぞろぞろ。動物たちで描く江戸の花火大会の絵本。

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年7月28日掲載)

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濱野京子著『ドリーム・プロジェクト』PHP研究所

ドリーム・プロジェクト

『ドリーム・プロジェクト』をおすすめします。

同居した祖父が寂しそうなのに気づいた中2の拓真は、友だちの知恵と協力も借りて、かつて祖父が住んでいた山間の家を地域の集会所にしようと、クラウドファンディングで古家の修理費を集めることに。

果たしてお金は集まるのか? どきどきしながら楽しく読めて、社会参加の仕方についても考えられる作品。

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年6月30日掲載)

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トンケ・ドラフト作 西村由実訳『青い月の石』岩波少年文庫

青い月の石

『青い月の石』をおすすめします。

伝承遊び歌から始まる冒険物語。

少年ヨーストは、青い月の石を手に入れようと、いじめっ子のヤンと一緒に地下世界の王を追っていく。その途中で出会うイアン王子は、父王が地下世界の王と交わした約束を果たしにいくところだ。

3人は、地下世界の王の末娘ヒヤシンタに助けてもらい、それぞれの任務を遂行して無事に戻ってくるのだが、タブーをおかしたイアン王子は、最愛のヒヤシンタのことを忘れてしまう。そこで今度は少女フリーチェも加わり、王子に記憶を取り戻させるための次の冒険が始まる。

オランダ屈指のストーリーテラーが伝承物語のモチーフをふんだんに使い、豊かなイメージで現実とファンタジーの間に橋を架けた作品。

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年5月26日掲載)


伝承遊び歌で始まり、ぐんぐんひっぱっていく冒険物語。祖母と暮らすいじめられっ子のヨーストは、青い月の石を手に入れようと、地下世界の王マホッヘルチェを追っていく。途中で出会ったイアン王子とたどりついた地底の国で難問をつきつけられるが、マホッヘルチェの娘ヒヤシンタが助けてくれる。ようやく地上に戻ると、タブーを侵したせいで愛するヒヤシンタのことを忘れたイアン王子に記憶を取り戻させるため、次の冒険が始まる。昔話のモチーフを使い、現実とファンタジーの間に橋をかけた作品。2020 年JBBY 賞受賞作。

原作:オランダ/10歳から/石 冒険 地下世界 タブー

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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寮美千子文 小林敏也画『イオマンテ:めぐるいのちの贈り物』ロクリン社

イオマンテ〜めぐるいのちの贈り物

『イオマンテ〜めぐるいのちの贈り物』をおすすめします。

アイヌの熊送りの儀式をめぐる絵物語。

少年の家出は、父親が仕留めた母熊の子どもを神として大事に育てるが、やがて別れの日がやってくる。

詩的な文章と美しい絵が独特の世界をつくり、生命が軽視されることも多い今の時代に、「いのちのめぐみ」を受け取るとはどういうことかを伝えようとしている。

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年4月28日掲載)

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ライナー・チムニク作・絵 上田真而子訳『熊とにんげん』徳間書店

熊とにんげん

『熊と人間』をおすすめします。

喜びと美しさと悲しみがたっぷりつまった絵物語。主人公は、踊る熊と、熊と一緒に旅をする「熊おじさん」。おじさんはお手玉の名手で、熊にお話を聞かせ、季節の変化を楽しみ、角笛で澄んだ音を奏でる。

心に響く名訳で、人間が生きるうえで必要なものは何かを考えさせてくれる。

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年2月24日掲載)


旅芸人の「熊おじさん」はお手玉の名手で、手回しオルガンのメロディに合わせて熊が踊るのも見せながら、村から村へと旅をし続けていた。おじさんは相棒の熊をこよなく愛し、熊の言葉がわかり、季節の変化を楽しみ、澄んだ音を角笛で吹いた。心に響く名訳で、人間が生きるのに本当に必要なものは何かを読者に気づかせてくれる、喜びと美しさと愛と哀しみがたっぷりつまった絵物語。1982 年に翻訳出版されたチムニクのデビュー作が、出版社をかえて復刊された。

原作:ドイツ/10歳から/クマ 旅芸人 愛

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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エミリー・バー『フローラ』

フローラ

『フローラ』をおすすめします。

主人公のフローラは17歳。10歳の時に交通事故に遭い、それ以降の記憶は数時間しか保てなくなっている。そのフローラが恋をしたのは、親友ペイジの彼氏だったドレイク。このドレイクって男、見た目はいいけど、最初からどうもうさんくさい。フローラの記憶障害につけこんでいるふしがある。

でも、フローラは「ビーチでドレイクとキスした」ことを忘れないようにノートに書き、それを何度も見返し、ますます想像を膨らませて、ドレイクが引越した先のスヴァールバルへと出かけていく。

ところで、事故の際、車を運転していた母親は、この事故を自分のせいだと思い込み、娘のフローラを真綿でくるむようにして育て、常に精神安定剤や抗うつ剤を飲ませて、危険な目に遭わないように「守っている」。でも、フランスに住んでいる息子(フローラの異父兄)がガンで死にかけているというので、やむをえずフローラをペイジに託して夫と一緒に息子のもとへ駆けつける。ところが託された方のペイジは、フローラに彼氏を取られたと思い込み、付き添いを放棄してしまう。というわけで、家にだれもいなくなったすきに、フローラは旅に出るのだ。

こういう状態におかれたフローラが、自分ひとりで計画を練り、フライトや宿を予約し、旅の準備をするのは、ずいぶんと大変なことだ。でも、すべてメモを取って絶えずそれを確認しながら、なんとかやりとげていく。読者は、フローラの勇気に感心しながらも、不誠実らしいドレイクとはうまくいかないとだろうと予感して、ハラハラしながら物語を読み進めることになる。

甘いラブストーリーではない。スヴァールバルでフローラが出会った人が言う。「きみはここにドレイクを見つけにきたんじゃないと思うよ。自分自身を見つけにきたんだ」。そう、これは、母親が勝手に作ったイメージから脱け出して、本当の自分をさがそうとする、勇気ある女の子の物語でもある。

(「トーハン週報」Monthly YA 2018年8月13・20日合併号掲載)


交通事故の後遺症で、記憶が短時間しか保てない17 歳のフローラは、ドレイクに恋をした。交通事故が自分のせいだと思い込んでいる母親は、フローラに精神安定剤や抗鬱剤を飲ませ真綿でくるむように保護しているが、フランスに住む息子が癌で死にかけていると知らされ家を留守にする。そのすきにフローラは自分で苦労して計画を練り、ドレイクの引っ越し先スヴァールバルへと出かけていく。それは、母親から自立し、本当の自分を探すための旅でもあった。主人公の成長がリアルに伝わってくる。

原作:イギリス/13歳から/記憶障害 母親からの自立 自分探し

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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ジョン・ボイン『ヒトラーと暮らした少年』

ヒトラーと暮らした少年

『ヒトラーと暮らした少年』をおすすめします。

先日他界されたかこさとしさんは、子どもの視点をずっと持ち続けながら、何事もきとんち理論的に考える方だった。そのかこさんでさえ、子どもの頃は軍国少年で、15歳のときに図書館通いもやめる。文芸作品の読書などという軟弱なものは捨てて、軍人になる勉強をしなくては、と思ったからだ。しかし、視力が悪くなり軍人になることができずに命拾いをする。そして戦後、「誤った戦争をなぜ正義だと思い込んでしまったのか」と自問し、「私のような間違った判断をしないよう、真の賢さを身につけるお手伝いをしていこう」と考えて、子どもの本を書き始める。

本書は、主人公のピエロが7歳の時から始まる。ピエロはフランスに住んでいて、アンシェルという、耳の聞こえない親友がいる。ピエロの父はドイツ人で母はフランス人だが、二人ともやがて亡くなり、孤児となったピエロはドイツ人の叔母に引き取られ、ドイツ南部の山岳地帯にあるベルクホーフで暮らし始める。ベルクホーフはヒトラーの別荘で、ピエロはペーターと名前を変え、ここでヒトラーと出会い、かわいがられ、憧れ、ヒトラーの思想に染まっていく。そして、叔母さんたちのヒトラー暗殺計画を知ると、ヒトラーに知らせ、結果としておばさんは処刑されてしまう。ペーターは、自分の世話をしてくれたおばさんよりヒトラーの方を選び、ユダヤ人のアンシェルともぷっつり関係を絶つ。

先ほど、かこさん「でさえ」と書いた。もう一度ここで、多文化に親しんでいたはずのピエロ「でさえ」と書いてもいいかもしれない。子どもは、周囲の熱狂に左右されやすい。

オーストラリアのジャッキー・フレンチも、先生や親をはじめ周りがみんな間違った思想の持ち主だったら、子どもは簡単に染まってしまうかもしれないという危惧を持って、『ヒットラーのむすめ』(鈴木出版)を書いた。

子どもには、ゆかいな楽しい本も必要だ。でも、「真の賢さを身につける」助けになるような本も必要だと、私は最近つくづく思う。本書はそんな一冊。

(「トーハン週報」Monthly YA 2018年6月11日号掲載)


ドイツ人の父とフランス人の母の間に生まれたピエロは、両親とも亡くなるとドイツ人の叔母にひきとられる。叔母はヒトラーの別荘で家政婦をしていた。ピエロは、ヒトラーにかわいがられ、憧れを抱き、ヒトラーの思想に染まっていく。名前もペーターに変え、耳の不自由なユダヤ人の親友とは連絡を絶ち、叔母を裏切ってヒトラーに暗殺計画を密告する。強烈な存在の影響でどんどん変わっていく少年の姿は恐ろしいが、真の賢さとは何かについて考えさせてくれる。

原作:イギリス/13歳から/ヒトラー 第二次世界大戦

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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出久根育『チェコの十二ヵ月』

チェコの十二カ月〜おとぎの国に暮らす

『チェコの十二カ月〜おとぎの国に暮らす』をおすすめします。

チェコ在住の日本人画家によるエッセイ集。理論社のウェブサイトに十一年間にわたって掲載されていたものに加筆し、新たにすてきな絵を入れてあります。

たとえば冒頭の「冬から春へーー緑の季節を迎える前の春の色はことさら美しく感じます。厳しい冬を乗り越えた喜びとともに目に映る色だからでしょうか。夏の緑、秋の黄色、冬の灰色、では春の色は何色でしょう。春の風景はすべての季節の色が、点描で幾重にも重なって、水でふんわりとにじんだ絵のようです」という文章からも、もう少し先の「膨らんだ芽から小さな若葉が、生まれて初めての空を早く見ようと、我先にと押し合います。やわらかくて瑞々しく、子どもの肌のような透明な若葉です」という文章からもわかるように、感受性豊かな画家としての目をあちこちに感じます。だからかもしれませんが、私は一度しか行ったことのないチェコの田舎の情景が目の前にうかんできて、わくわくしました。

南モラビアの氏を追い出すお祭りや、チェコの伝統的な復活祭の様子、魔女の人形や絵を燃やす行事、ぶどうの収穫祭、マソプストなど珍しい風習も、楽しい絵とともに紹介されています。

夜汽車に乗って体験した芝居の話や、ビロード革命を記念するデモのことや、チェコではクリスマスにどんなお祝いをするのか(だれもおいしいと思っていないらしいのに、みんなコイの料理を食べるんですって)、なんていう話も、おもしろい。

画家さんの中にも、何度でも読み返したくなるような味のある、とてもじょうずな文章を書く方がいます。出久根さんもその一人。

読んでみると、副題にある「おとぎの国」に紛れ込んだような気持ちになれます。しかも、この「おとぎの国」は現実に存在している。そこが、またいいんですよね。

(「トーハン週報」Monthly YA 2018年4月9日号掲載)

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TOTO BONA LOKUA

TOTO BONA LOKUA(トト ボナ ロクア)

アーティスト:Richard Bona, Lokua Kanza, Gerald Toto
レーベル:Sunny Side

 

 

 

リチャード・ボナはカメルーン出身(ベーシストとしても有名)、ロクア・カンザはザイール(コンゴ出身)、ジェラルド・トトは西インド系のフランス人(生まれたのは、マルティニクという説とパリという説があります)。

この3人はふだん別々に音楽活動をしているのですが、ここではユニットを組んで、一緒に歌ったり演奏したりハモったりしています。それぞれの母語で歌っている曲は、私には意味がわからないのですが、英語で歌っている曲もあります。

小鳥の声や口笛や子どもの声が入っていたりして、うっとうしい季節に聞くと、さわやかになれます。

この3人がLugano Jazz Festivalに出演したときの映像が、以下にあります。

 

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Rough Guide to African Lullabies

Rough Guide to African Lullabies
(アフリカの子守唄入門)

アーティスト:Various
レーベル:World Music Network

 

前に紹介したAfrican Lullabyは、アフリカ各地の伝統的に子守唄を取り上げていましたが、こちらは、アフリカ各地の多彩なミュージシャンや楽器を紹介するのがメインの目的で、夜聞くのにふさわしい落ち着いた曲を集めてあります。

1曲目は南アフリカの男性アカペラ・グループのレディスミス・ブラック・マンバーゾ、3曲目はベナンのアンジェリック・キジョー、4曲目はマリのグリオの家系でンゴニを弾くバセク・クヤテ、5曲目はマリの二人の巨匠、ギタリストのアリ・ファルカ・トゥーレとコラ奏者のトゥマニ・ジャバテ、15曲目は南アフリカのミリアム・マケバと有名なアーティストを入れています。

国で言うと、南アフリカ、コンゴ、ベナン、マリ、モザンビーク、カーボベルデ、ソマリア、エチオピア、ガーナ、ジンバブウェ、セネガル、ギニア、タンザニアとこちらも多様だし、聞ける楽器も、本来はグリオの楽器だったンゴニやコラ、ギター、シンセサイザー、セプレワ(古いガーナの弦楽器)、ンビラ(親指ピアノ)、バラフォンなど様々です。歌が入っている曲もあるし、楽器だけの曲もあります。

私は個人的には、African Lullabyの方が好きなのですが、こちらも夜などにボリュームをおさえて聞くと、なかなかいいのです。最後は、タンザニアの歌「マライカ」を南アフリカ出身のミリアム・マケバが歌っています。

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キム・スレイター『セブン・レター・ワード』

セブン・レター・ワード〜7つの文字の謎

『セブン・レター・ワード〜7つの文字の謎』をおすすめします。

スクラブルって知ってる? アルファベットの文字が書かれたコマをボードのマスに並べて単語をつくっていくゲームなんだけど、この作品ではそのスクラブルがモチーフとして使われている。まるで、『不思議の国のアリス』がトランプを『鏡の国のアリス』がチェスをモチーフにしてたみたいにね。

主人公のフィンレイはイギリスで暮らす14歳の男の子。母親が何もいわずに家を出ていって以来、吃音がひどくなっている。今は家の設備工事をする父親と二人で暮らしているのだが、学校でも家でも、言葉がなかなか出てこないので、だれかが先を越して言ってしまったり、からかわれたり、いじめられたりする。でも、フィンレイの頭の中には言葉がたくさんつまっていて、さらに新しい言葉をコレクションしているから、スクラブルはお手のものなのだ。たいていはオンラインで、会ったことのない相手と対戦している。実際に会話する必要がないので、気が楽だからね。

物語は、いくつかの謎をめぐって展開する。フィンレイの母親はどうして消えたのか? フィンレイがネット上で知り合ったアレックスとは何者なのか? 父親は何を隠しているのか?

その一方で、今のイギリスのティーンエージャーたちが直面しそうな日常的な出来事(異質な者へのいじめ、外国人へのヘイト、全国学校スクラブル選手権大会、勇気、信念)などについても、ていねいに描いていく。スクラブルというゲームのおもしろさや、技をみがく方法についても書いてある。

個人的にちょっとだけ物足りなかったのは、母親の描き方。著者の前作『スマート』もそうだったけど、主人公の母親は犯罪者を告発しようとはせず、妥協したり身を引いたり我慢したりしてしまう。まあ、だからこそ、脅しもハンデも乗り越えようとする主人公がより強い印象を残すのかもしれないけどね。

(「トーハン週報」Monthly YA 2018年2月12日号掲載)

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ヨーレン詩 ショーエンヘール絵『月夜のみみずく』

月夜のみみずく

『月夜のみみずく』をおすすめします。

みんなが寝静まった冬の夜更け、女の子が父親と一緒に雪を踏みしめながら森の中へと入っていく。そっと静かに耳をすませて。ミミズクに会うために。日常とは違う不思議な時間を父親と共有し、自然の驚異に触れたときの、胸のときめきが伝わってくる絵本。[小学校低学年から]

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年12月23日掲載)

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ガルブレイス文 ハルバリン絵『わたしたちのたねまき』

わたしたちのたねまき〜たねをめぐるいのちたちのおはなし

『わたしたちのたねまき〜たねをめぐるいのちたちのおはなし』をおすすめします。

春になったら芽を出す種。その種をまくのが人間だけじゃないって、知ってた? 風も小鳥も太陽も雨も川もウサギもキツネもリスも種まきをしてるんだって。どうやって? この絵本を見ると、わかってくるよ。見返しに様々な種の絵が描いてあるのも、おもしろいね。[小学校中学年から]

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年12月23日掲載 *テーマ「冬休みの本」)


人間は植物を育てようとして畑や庭に種をまくが、人間以外にも種をまいているものがいる。それは、風、小鳥、太陽、雨、川。そしてウサギやキツネやリスなどの動物たちも。でも、いったいどうやって? それがわかってくるのがこの絵本。見ているうちに、自然の中に存在するものは、みんなお互いに利用し合い、助け合いながら、命をつないでいることもわかってくる。絵が親しみやすく、訳もリズミカル。見返しに描いてあるさまざまな種子の絵もおもしろい。

原作:アメリカ/6歳から/種、自然、動物、命のつながり

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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レベッカ・ボンド『森のおくから』

森のおくから〜むかし、カナダであったほんとうのはなし

『森のおくから〜むかし、カナダであったほんとうのはなし』をおすすめします。

先月他界した作者が残してくれた絵本。ホテルを経営する母や周りの大人を見ながら育つアントニオは、山火事で湖の中に避難したときに不思議な光景を目にする。祖父の実体験に基づき、様々な人間と様々な動物が共有した特別なひとときを描いている。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年9月30日掲載)


アントニオの母親は、カナダの森の中の小さな町でホテルを経営している。アントニオの友だちはホテルで働く大人たちだ。森には野生動物がたくさんいるが、人間の前にはあまり姿を現さない。ある時、山火事が起こり、湖の中に避難したアントニオは不思議な光景を目にする。大きな獣も小さな獣も次々に森から出てくると、人間のいる同じ湖の中に入ってきたのだ。作者の祖父の実体験を下敷きに、さまざまな人間とさまざまな動物が共有した特別なひとときを描いている。

原作:アメリカ/小学低から/森 野生動物 山火事

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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キャサリン・ランデル『オオカミを森へ』

オオカミを森へ

『オオカミを森へ』をおすすめします。

舞台は20世紀初頭のロシア。貴族のペットだったオオカミを野生にもどす仕事をしていたマリーナは、暴君の将軍に従わず、逮捕監禁されてしまう。マリーナの娘のフェオは、兵士イリヤや革命家のアレクセイ、そして子どもたちやオオカミたちと共に、母を取り戻しに都へと向かう。くっきりしたイメージを追いながら楽しめる冒険物語。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年10月28日掲載)


舞台は20世紀初頭のロシア。貴族たちが飼えなくなったオオカミを野生に戻す「オオカミ預かり人」の仕事をしていたマリーナは、将軍に言いがかりをつけられて逮捕され、サンクトベテルブルクに連れ去られてしまう。人間よりオオカミを友だちとして育った、マリーナの娘フェオは、将軍の支配に疑問を持ったイリヤや、革命家のアレクセイ、そして大勢の子どもたちやオオカミと一緒に、母を取り戻しに都へと向かう。人物造形がくっきりしていて、ストーリーもおもしろい冒険物語。

原作:イギリス/10歳から/オオカミ ロシア 革命 子どもの戦い

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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谷山彩子『文様えほん』

文様えほん

『文様えほん』をおすすめします。

文様とは、「着るものや日用品、建物などを飾りつけるために描かれた模様」とのこと。日本でも、縄文時代からヘラや竹筒や貝殻や爪を使って土器や人形に描かれていたし、現代でもラーメン鉢や衣服に描かれている。モチーフは、植物、動物、天体や自然など様々だし、線や図形を組みあわせた幾何学文様もある。

本書は、そうした文様の種類を教えてくれるだけではない。地図で、世界各地の文様の違いや、伝播による変容を見せたり、四季折々の生活や町の風景の中にひそんでいる文様を示したりもする。巻末に用語集や豆知識もついたノンフィクション絵本だが、読んだあとの子どもたちには、身のまわりのあちこちに文様を発見していく楽しみが待っていそうだ。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年11月25日掲載)

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ウィリアム・グリル『シャクルトンの大漂流』

シャクルトンの大漂流

『シャクルトンの大漂流』をおすすめします。

アーネスト・シャクルトンはアイルランド生まれの探検家で、三度も南極探検に出かけた。一時はほかの著名な探検家の陰で忘れられていたが、最近は極限状況におけるリーダーとしてのシャクルトンに焦点を当てた本がいろいろ出ている。映画にもなった。

この本は、シャクルトンが三度目にエンデュアランス号で南極探検に出かけた時のことを描いている。といっても舞台は白い氷の世界だし、登場するのは探検隊の男たち。船も壊れるし、探検は成功したとは言えない。絵本にするには難しい題材だ。

しかし、百貨店ハロッズの広告イラストレーションを仕事にしていたグリルは、困難続きのこのサバイバル物語を見事におしゃれな絵本にしてみせた。そしてデビュー作のこの絵本で、イギリス最高の絵本にあたえられるグリナウェイ賞を受賞した。船に積み込んだ道具を細かく描いたり、コマ割り手法を使ったり、見開きいっぱいに大波にもまれる小さな船を描いたり・・・。レイアウトも斬新で、ビジュアル的な工夫があちこちに見られる。

最近の絵本は幼児や小さな子どものためのものとは限らない。この絵本も、かえって中高生が読んだほうがおもしろいのではないだろうか。そして絵本はあらゆるテーマの入門書ともなる。まずこの作品を手に取ってみて、興味を持ったら次に『エンデュアランス号大漂流』(E.C.キメル著 千葉茂樹訳 あすなろ書房)や『そして、奇跡は起こった!』(J.アームストロング著 評論社)なども読んでみてほしい。

(「トーハン週報」Monthly YA 2017年2月13日号掲載)

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ジル・ルイス『紅のトキの空』さくまゆみこ訳

紅のトキの空

『紅のトキの空』をおすすめします。

今回は書評用に送られて来た本の中に、自分がかかわった作品が入っていたので、それを紹介したい。

著者のジル・ルイスは獣医の資格を持つイギリスの女性作家で、『ミサゴのくる谷』『白いイルカの浜辺』(共にさくま訳 評論社)など、動物や鳥の登場する作品をたくさん書いている。この作品にも、ショウジョウトキという紅色の鳥(「何百何千もの群れが飛んできて、木にとまります。それは、暗い空にともる紅のランタンみたいに見えます」)やハトやワニが象徴的に登場してくる。

主人公の女の子スカーレットは中学1年生。家族は、精神を病む母親と、異父弟で発達の遅れているレッド。スカーレットは、自分がしっかりしないと、愛している家族がばらばらにされてしまうと思って、弟や母親の世話も洗濯も掃除も買い物も、そして勉強もがんばっている、どこから見てもけなげな少女だ。

ところがある日、母親のタバコの不始末が原因で、住んでいたアパートが火事になり、一家は焼け出されてしまう。それにより、母親は病院へ、弟は保護施設へ、そしてスカーレットは一時的な里親のもとへ。でも、レッドには自分がどうしても必要だと思っているスカーレットは、ひそかに弟を誘拐して一緒に暮らす計画を練る。そして、誘拐には成功するのだが・・・。

ジル・ルイスの人間を見る目が深い。そして、里親になったルネの一家や、傷ついた鳥を保護しているマダム・ポペスクなど、子どもを理解する大人が登場するのもいい。

子どもに寄り添って物語を紡ぎ出す著者は、スカーレットの「けなげさ」をそのままよしとするのではなく、最後にすてきな解決法を用意している。

(「トーハン週報」Monthly YA 2017年4月10日号掲載)

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戸森しるこ『理科準備室のヴィーナス』

理科準備室のヴィーナス

『理科準備室のヴィーナス』をおすすめします。

戸森しるこは、これまで作品を3点出版しているが、どの作品でも、〈生きていくことや、心の動き方って、そう単純じゃないよね。でも、だからこそ楽しいしおもしろいんだよね〉ということを、伝えてくれている。

3作目のこの作品の主人公は、中学1年生の結城瞳。友達からのけ者にされたりもしている。

この年齢って、自分探しもし始めるけど、他者の多様性をそのまま均並みに受け入れるよりは、自分が魅力的だと思う存在に限りなく濃密に惹かれていく時期かもしれない。今回瞳がどうしようもなく惹かれてしまったのは、「理科準備室のヴィーナス」つまり、第二理科準備室で授業のない過ごすことの多い理科担当の人見先生。顔がヴィーナスに似ている。年齢は31というから瞳よりはずっと大人で、シングルマザーらしい。学校の規則など気にしないところも、生徒を前にして一人でお菓子を食べるところなんかも、魅力的。「誰より美しく、誰よりやさしくて、そしてとても危険な人」だ。

でも、瞳は、もう一人、別の角度から人見先生をじっと見ている男子がいるのに気づく。それが正木くん。これは、人見先生に憧れてしまった繊細にして大胆な二人の中学生の物語。瞳と正木君は、同じように先生を想っているようでいて、少し違う。性別が違うから、微妙なバランスの上で揺れる三角関係だ。

後になってから、瞳は考える。「放課後の理科準備室で、私たちはたしかに同志だった。手の届かないものに近づくために、いなくちゃならない存在だった」と。

この作品は、ストーリーだけを追っていたら味わえない。一つ一つの描写や言葉に意味が潜んでいるから。でも、たまにはこういうのも読んでみない? よくわからないところが残ってもいいからさ。

(「トーハン週報」Monthly YA 2017年10月9日号掲載)

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キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー『わたしがいどんだ戦い1939年』表紙

わたしがいどんだ戦い 1939年

『わたしがいどんだ戦い 1939年』をおすすめします。

舞台は第二次世界大戦下のイギリス。内反足のエイダは、「奇形の子は恥だから隠さなくては」と考える無知な母親によって、ロンドンにある家の中に閉じ込められ、学校へも行くことができず、母親の暴力にさらされながら家事奴隷にされている。そのうち、近隣の子どもたちが疎開することになり、エイダも弟のジェイミーと一緒に家を離れたいと強く思い、ひそかに歩く練習を始める。

母親の留守中にうまく疎開児童の群れに紛れ込めたところまではよかったのだが、疎開先では最後まで引き取り手がなく、エイダとジェイミーの世話は、疎開児童を受け入れるつもりがなかったスーザンに押しつけられてしまう。

これまで世間のことは何も知らないエイダが、この環境の中でどう成長していくかが、本書のテーマだ。第二次大戦も影を落としてはいるが、そればかりではなくエイダは、母親の無理解と愛の不在、子どもが苦手なスーザン、なじみのない疎開先の環境、すぐパニックに陥ってしまう自分や自分の中の人間不信とも懸命に戦わなくてはならない。子どもにとっては、こっちのほうが戦争より大きな戦いと言えるだろう。

同じ時代の疎開児童を取り上げた『おやすみなさい、トムさん』(ミシェル・マゴリアン著 中村妙子訳 評論社)も、母親に虐待される子どもと、偏屈でつき合いの悪い引き取り手の出会いを描いていた。この二冊には共通するところがたくさんあるが、本書の著者は自分も虐待の経験者であることから、ちょっとしたことが引き金になってエイダがパニックに陥ってしまうところなど、本書ならではのリアルな描写も登場する。

長い作品だが、最後は明るいので、安心してどきどきはらはらしてみてほしい。

(「トーハン週報」Monthly YA 2017年12月11日号掲載)


ゾウと旅した戦争の冬

『ゾウと旅した戦争の冬』をおすすめします。

本書の構造は二重になっています。老人介護施設にいるリジーというおばあさんが、昔のことを思い出して語る話を、「わたし」とその息子のカールが聞く、という外枠の物語がまずあります。そして、その枠の中で、リジーの若き日と今を結ぶ物語が展開していきます。

枠の中の物語は、書名からもわかるように戦争ものではありますが、ほかの戦争ものと違う本書の特徴は、子どものゾウが出てくるところ。このゾウが、悲惨さや息苦しさをうまく中和させる役割を果たしています。

作者はイギリス人ですが、舞台はドイツ。ドレスデンで暮らしていた母親と子ども二人の家族が、大空襲を受けて、動物園から預かっていた子ゾウといっしょに避難しなくてはいけなくなります。とりあえず親戚の家に身を寄せようとしますが、そこで出会ったのは、なんと敵である英国空軍のカナダ人兵士。この兵士ペーター(ピーター)は、父親がスイス人でドイツ語も話せるのですが、氷の池に落ちたリジーの弟の命を救ったことから、この家族やゾウといっしょに避難の旅を続けることになります。

著者のモーパーゴは、社会的な問題をリアルに取り上げながら、人間の心理をとてもうまく描くことのできる作家です。でも本書には、ありそうだけど「出来過ぎ」と思えなくもない設定がいくつか登場します。大体ゾウにこんな旅ができるのでしょうか? でもね、二度目に読んでみて、モーパーゴの物語づくりのうまさに、私はうなってしまいました。

このお話ってもしかすると……と思う読者もいると、著者は最初から考えていたのだと思います。うまくできています。危険、恋、裏切り、再会……極上のストーリーテリングです。

(「トーハン週報」Monthly YA 2014年4月14日号掲載)


カトリーン・シェーラー作『キツネとねがいごと』

キツネとねがいごと

『キツネとねがいごと』をおすすめします。

今回は哲学的な絵本を。作者は、言語障碍の子どもたちに美術を教えながら、イラストレーターとしても活躍しているスイス人のカトリーン・シェーラー。年老いたキツネ(この作者の絵本には、キツネやネズミを主人公にした作品が多い)が、朝目をさますと、鼻先にはリンゴのにおいがただよい、耳にはツグミの鳴き声が聞こえてくる。はっとして外に飛び出てみると、木に実った大事なリンゴをツグミがつついている。ウサギやネズミもやってきて、だれも年寄りキツネなど怖がらず、どんどんリンゴの実を食べてしまう。

キツネには体力も敏捷性もないものの知恵があった。罠をしかけると、イタチがかかる。なんとこのイタチは魔法が使えるというので、逃がすかわりに、リンゴの木に触れた者はみんな木にくっつくという魔法をかけてもらう。やがてリンゴの木にはだれも近づかなくなり、キツネはリンゴをひとりじめ。と、ここまでは普通の絵本なのだが、ここから先がちょっと違う。

ある日、死神がキツネを迎えにきた。ところでこの死神、キツネの顔をしている。ふーん、そりゃそうだよね。人間やウサギの顔じゃおかしいものね。で、まだ死にたくないキツネが、最後に食べたいからリンゴをとってくれと死神を木に登らせると、案の定、死神は木にくっついて降りてこられなくなる。

さあ、これでキツネは永遠に生きることができるようになった。でも、それって、ほんとに幸せなの? 死神が困った顔をするどころか、ほほえんでいるのはなぜ?

原書名には「死」という言葉が入っているから「死」がテーマではあるのだが、この絵本から受け取るものは読者の年齢によって違うかもしれない。別紙に描いたものを切り抜いてコラージュした絵は、時とともにキツネの表情が変わっていくのをうまく表現している。

(「トーハン週報」Monthly YA 2017年8月14/21日号掲載)


みずまき

『みずまき』をおすすめします。

かんかん照りの暑い日には水まきがいちばん。女の子がホースで勢いよく水をまくと、あっちからもこっちからも小さな生き物が顔を出す。
この分じゃ、この女の子もびしょぬれだな、と思っていると、最後にはちゃんと浴衣を着せてもらって涼しそう。
命の豊かさが感じられる絵本。品切れ中なので図書館で見てね。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年7月29日掲載)


角野栄子『靴屋のタスケさん』

靴屋のタスケさん

『靴屋のタスケさん』をおすすめします

「わたし」は、靴屋のタスケさんの手仕事に興味しんしん。金づちでトントンたたいたり、火で何かをあぶったり……。作者の子ども時代が背景にあるので戦争も影を落としているけれど、タスケさんの職人技に見とれる体験は楽しい。夏休みはプロの仕事を見るいいチャンス。絵も赤が印象的。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年7月29日掲載)

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『靴屋のタスケさん』をおすすめします。

職人の手仕事に興味をひかれる戦時下の幼い少女の気持ちをみずみずしく描いたフィクション。舞台は1942年の東京。小学校1年生の「わたし」が住む地域に、若い靴職人のタスケさんが店をだす。少女は放課後になると靴屋に行き、タスケさんのプロの仕事ぶりに見とれる。極度の近眼のため徴兵を免れていたタスケさんだったが、やがて戦況が悪化すると少女の前から姿を消す。兵隊にとられたのだ。おだやかな日常と、暴力的な戦争の対比がうかびあがる。 キーワード:戦争、友情、切なさ

(JBBY「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<読みもの>掲載)

 


ジュディス・カー『アルバートさんと赤ちゃんアザラシ』

アルバートさんと赤ちゃんアザラシ

『アルバートさんと赤ちゃんアザラシ』をおすすめします

店を売って生きがいをなくしていたアルバートさんが、海で、親を亡くしたアザラシの赤ちゃんに出会う。このままでは死んでしまうと連れ帰ることに。
でも、アパートはペット禁止で、うるさい管理人もいる。動物園で飼ってもらうもくろみもはずれ、さあ困った。
作者の父親の実体験をもとにしたお話で、絵も楽しい。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年6月24日掲載)


仕事を辞めて生きがいをなくしたアルバートさんが、海に出かけた時に、親を亡くしたアザラシの赤ちゃんに出会う。このままでは死んでしまうと連れ帰ることになったのはいいが、アルバートさんのアパートはペット禁止で、うるさい管理人もいる。なんとかごまかしてアパートで飼っていると、とんだ事件が次々に起こる。作者は、父親の実体験を下敷きにして、最後はアルバートさんにとってもアザラシにとっても幸せな、楽しいお話に仕上げている。

原作:イギリス/8歳から/アザラシ ペット 動物園

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)


鳴海風『円周率の謎を追う』

円周率の謎を追う〜江戸の天才数学者・関孝和の挑戦

『円周率の謎を追う:江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』をおすすめします

関孝和という名前は知っていても、どんな人かを私は知らなかった。江戸時代の和算の達人ということを知っていただけである。本書はその関孝和を、血の通った人間として描き出そうとしている。数学が好きで儒学や剣術にはなかなか身が入らなかったこと、数学の師匠の娘である香奈と励まし合って学んだこと、数学好きのライバルたちと切磋琢磨したこと、けれども勤め(御用)をおろそかにできず数学だけを専門にするわけにはいかなかったことなどが、読みやすいストーリーとして語られているので、興味をもって読める。

後書きには、関孝和という人は、天才的な業績を残したにもかかわらず、いつどこで生まれたのかもわからず、その人生には謎が多いと書かれている。つまり、子どもの頃のことや折々に出会った人との会話などは、著者が想像して描いたフィクションとも言える。でも様々な文献に当たったうえでの想像であるからか、何かに一途になって心の中に消えない炎を持ち続けていた人だということが、無理なくしっかりと浮かび上がってくる。

私たちが約3.14と学校で習う円周率も、関が学び始めた頃は3.16とされていた。それに疑問を感じて関が追求しようとする過程や、漢文から思いついて数式を表現する方法を編み出すところなどが、スリルに富んだ推理小説のように描かれていて、おもしろい。出世やお金儲けには関係なくても、情熱を注げるものを持っていた人の楽しさが伝わってくる。

次は、「わたし、女数学者になります」と宣言して(ここもフィクションかもしれないが)、関を励ましつづけた香奈についても、もっと知りたくなった。

(「トーハン週報」Monthly YA 2017年6月12日号掲載)

 

関孝和の一生を、円周率を探る研究を核にして描いている。私たちが約3.14と学校で習う円周率も、関が学び始めた頃は3.16とされていた。それに疑問を感じて追求しようとする過程や、漢文から思いついて数式を表す方法を編み出すところなどがスリルに富んだ推理小説のように描かれている。同時に、この数学者が何かを一途に追求し、消えない炎を持ち続けていたひとりの人間として浮かび上がってくるので、読み物としてもおもしろい。さまざまな文献を研究して書いた労作。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<ノンフィクション>掲載)

キーワード:数学、歴史、江戸時代、円周率、関孝和


ニコラ・デイビス文 エミリー・サットン絵『いろいろいっぱい』

いろいろいっぱい〜ちきゅうのさまざまないきもの

『いろいろいっぱい〜ちきゅうのさまざまないきもの』をおすすめします

都会に暮らしていると、この地球は人間が治めているという錯覚に陥ってしまう。でも、実際は違う。この惑星には数え切れないほど多様な生き物が暮らしていて、それぞれがたがいにつながって一つの美しい模様をつくっているのだ。

だから、ある生き物が絶滅するということは、そこにつながっている生物にとっても問題だということ。人間もその美しい模様の一部なのだから、壊さないで大事にしていかないとね。

シンプルな絵本だが、読み進むうちにそんなことが伝わってくる。なにより絵がすばらしいし、文字が大小二種類あるので、小さい子になら、大きい文字だけ読んであげてもいい。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年4月29日掲載)


この地球には数え切れないほど多様な生き物が暮らし、互いにつながってひとつの美しい模様を織りあげている。だから、ある生き物が絶滅すると、そこにつながっている生物にとっても問題が起こる。人間もその美しい模様の一部だから、みんなが生きていかれる環境を守る必要がある。こうしたことを子どもにもわかるように、シンプルな文章とすばらしい絵で表現した絵本。文字が大小2種類あるので、小さい子には大きい文字だけ読んであげてもいい。

原作:イギリス/6歳から/生物多様性、環境破壊、絶滅

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)


西村繁男『あからん:ことばさがし絵本』

あからん

『ことばさがし絵本 あからん』をおすすめします

「あ」から「ん」まで、それぞれの文字で始まることばをさがす楽しいあいうえおの絵本。

たとえば「た」だと、「たこあげする たぬきに たこ たいあたりする」というゆかいな文に出てくるものだけでなく、ほかに9個の「た」で始まるものが描かれています。さあ、何かな?

「ん」もおもしろいよ。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年3月25日掲載)


ミシェル・エドワーズ文 ブライアン・カラス絵『ソフィアのとってもすてきなぼうし』

ソフィアのとってもすてきなぼうし

『ソフィアのとってもすてきなぼうし』をおすすめします

ソフィアは、おとなりのおばちゃまと仲良し。おばちゃまは毛糸で帽子を編んでみんなにあげるのが好きだけど、自分は帽子がなくて寒そう。ソフィアは作ってあげようとするけれど、できたのは穴だらけのおばけみたいな帽子。どうしたらいい? 他者に心を向けることで、自分もあたたかくなる終わり方がすてきだ。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年2月25日掲載)


アレックス・ジーノ『ジョージと秘密のメリッサ』

ジョージと秘密のメリッサ

『ジョージと秘密のメリッサ』をおすすめします

4年生のジョージは、体は男の子でも自分は女の子(メリッサ)なのだと感じている。しかし、学校でも家でもそのことは秘密にしている。学年で『シャーロットのおくりもの』の劇を上演することになっても、ジョージがやりたいシャーロットの役は、女子の役という理由でやらせてもらえない。

でも、やがて親友のケリーが、あるがままのジョージを受け入れて、午後の部の役をひそかに代わってくれたり、女の子同士の楽しい時間を設けたりしてくれる。家族も徐々にジョージを理解するようになる。

自らもトランスジェンダーである作家が書いただけに、「男の子のふりをするのは、ほんとうに苦しいんだ」というジョージの叫びも心理描写もリアルだ。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年1月28日掲載)


アン・M・マーティン『レイン』表紙

レイン〜雨を抱きしめて

『レイン〜雨を抱きしめて』をおすすめします

父親と暮らす5年生のローズは、高機能自閉症と診断され、周囲にうまく適応できない。拾ってきた犬のレインが友だちだが、ハリケーンで行方不明に。必死の捜索で見つかった後のローズの行動が、周りの状況を変えていく。

自分がほかの大勢とはどこか違うと感じている子どもたちに、元気をくれる本。

(朝日新聞「子どもの本棚」2016年12月24日掲載)


おばあちゃんとバスにのって

『おばあちゃんとバスにのって』をおすすめします

この絵本のおばあちゃんは、お金や効率よりも人とのふれあいを大切にしています。行き先は、困っている人にごはんを出す食堂。ぼくも手伝って奪った食事をみんなが笑顔で食べてくれると、心もあったかに。

(朝日新聞「子どもの本棚」2016年11月26日掲載 *テーマ「ぬくもり」)


『おばあちゃんとバスにのって』をおすすめします。

どんなときにも人生を楽しめるって、いいよね。でも、それにはちょっとしたコツが必要。

この絵本のおばあちゃんは、人生を楽しむ達人。髪は白いけど、黒い服に赤い傘、緑色のネックレスにピアスのおしゃれさん。孫息子のジェイが「なんでバスを待たなきゃいけないの?」と不満げにたずねても、「だって、バスの方が楽しいんじゃない?」なんて答えてすましている。

おばあちゃんとジェイが乗ったバスには、チョウを入れたビンを抱えたおばさんも、スキンヘッドにタトゥーのこわもて男も、ギターをつま弾く帽子の男も乗っている。盲導犬を連れた人も乗ってくる。おばあちゃんはみんなにあいさつし、鼻歌をうたう。にこにこ顔がまわりにも広がり、帽子の男の演奏と歌にみんなが聞きほれる。

バスが終点で停まると、そこはジェイが「汚くていやだなあ」と感じるような街だ。道はがたがたで、家のドアは壊れ、あちこちに落書きもしてある。でも、おばあちゃんは「ここでもちゃんと美しいものは見つけられるのよ」と言って、空にかかった虹に、いち早く目をとめる。

二人が向かったのは、ボランティア食堂。英語だとスープキッチン。無料で、あるいはとても安い料金で食事ができるところだ。日本で言うと、おとなも来られる子ども食堂みたいな感じかな。おばあちゃんはエプロンをかけて、次々とやってくる人たちに食べ物をよそっていく。ジェイも手伝う。そこは、人と人が触れあうことのできる場だ。ひとり暮らしの人も、友だちに会える。こういうところなら、お腹だけじゃなくて心も満たされるはず。食堂に来るのは恵まれない人たちだけど、貧しいとかかわいそうという視点はまったくなくて、だれもが楽しそうだ。原書は、アメリカでニューベリー賞とコルデコット賞銀賞を受賞した。

(「トーハン週報」Monthly YA 2016年12月12日号掲載)

 


『おばあちゃんとバスにのって』をおすすめします。

雨の日曜日、ジェイはおばあちゃんと一緒にバスに乗ってお出かけ。おしゃれなおばあちゃんは、人生の楽しみ方がちゃんとわかっていて、乗ってくる人たちにあいさつし鼻歌をうたう。すると、にこにこ顔がまわりにも広がっていく。終点で降りてふたりが向かったのは、ボランティア食堂。ふたりは、ここにやってくる恵まれない人たちに食事をよそい、さまざまな人との触れあいを楽しむ。生きていくうえで何が本当に大事かがわかってくるような絵本。ニューベリー賞、コールデコット賞オナー。

原作:アメリカ/3歳から/おばあちゃん バス 多様性

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)


松岡享子文 林明子絵『おふろだいすき』

おふろだいすき

『おふろだいすき』をおすすめします。

寒くなると、おふろがうれしいですね。しかも、このおふろには不思議がいっぱい。もわもわの湯気の中から、カメやらペンギンやらカバやら、なんとクジラまで出てきます。想像がふくらむ絵本です。最後におふろから上がって、お母さんが差し出すタオルにくるまれる男の子が、ほっかほかでなんとも幸せそう。

(朝日新聞「子どもの本棚」2016年11月26日掲載 *テーマ「ぬくもり」)


ヴィンス・ヴォーター『ペーパーボーイ』表紙

ペーパーボーイ

『ペーパーボーイ』をおすすめします。

主人公のヴィクターは、ケガをさせた友だちへの罪滅ぼしのため、夏休みの1か月間自分がかわって新聞配達をすると申し出る。ヴィクターは何か言おうとするとどもるので、文節と文節の間にssss・・・を挟んだり、もっと簡単に言える言葉をさがしたり、時には緊張のあまり気絶してしまったりする。

時代は1959年。現代的な言語療法の研究が始まったばかりという時期で、人種差別もまだ激しかった。場所はテネシー州のメンフィス。自分も吃音をもっている著者が、故郷を舞台に回想を織り交ぜながら書いている。

吃音は、「ちょうど世界がひらけて広がる時期に、その人を孤立させ、周囲を困惑させる存在にしてしまう」(作者覚え書より)が、ヴィクターは配達先で否応なくさまざまな人たちと知り合う。美人だけど不幸を背負っていそうな奥さん、本がたくさんある家に住んでいて難しい言葉が好きなおじいさん、いつ行ってもテレビの前にかじりついている少年・・・。通りでクズ拾いをしているR・Tや、芝刈りを仕事にしている巨体のビッグ・サック、そしてだれよりも知恵がありそうなマームというメイドさんからも、ヴィクターは人生について多くのことを学んでいく。そして、見聞きしたこと、考えたことをイプライターで記録していく。

彼が書く文章には、カンマがない。カンマは息継ぎの印だとわかっていても、しゃべる時にたくさん息継ぎをしてしまうヴィクターは、書く時は息継ぎなしにすらすら表現したいのだ。翻訳も、読点なしだが読みやすい日本語になっている。

世界がひらけてヴィクターが成長していく物語の途中には、ヴィクターが父親とは血がつながっていないとわかる事件や、ヴィクターのナイフやお金を盗んだR・Tに、取り返しにいったマームが殺されそうになったり、ビッグ・サックが駆けつけて急場を救ったりという事件も入ってきて、読者をぐんぐん引っ張っていく。

(「トーハン週報」Monthly YA 2016年10月10日号掲載)


吃音を持ち、世間とのつき合いが苦手なヴィクターは、ケガをさせた友だちに代わって、夏休みの1か月間、新聞配達をすると申し出る。その配達がきっかけとなり、ヴィクターは、美人だけど不幸の匂いがする主婦、本がたくさんある家に住むおじいさん、いつでもテレビにかじりついている少年、通りでクズ拾いをしているR.Tなど、否応なくさまざまな人たちに出会うことになる。ヴィクターの成長物語でもあるが、間にさまざまな事件が入り込み、読者をぐんぐん引っ張っていく。翻訳もみごと。

原作:アメリカ/12歳から/新聞配達、出会い、成長

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)


萱野茂文 どいかや絵『ひまなこなべ:アイヌのむかしばなし』

アイヌのむかしばなし ひまなこなべ

『アイヌのむかしばなし ひまなこなべ』をおすすめします。

心根のいいアイヌに仕留められたクマの神様は、その魂を天の国へ送る宴で目にした若者の素晴らしい踊りが忘れられません。クマの姿で何度も地上にやって来ては同じアイヌの矢に当たり、宴で若者の正体をつきとめようとします。このアイヌは、クマの肉や毛糸をたくさんもらって裕福に。さて「暇な小鍋」とは?

アイヌ文化の継承に力を尽くした萱野が採集したこのお話には、道具には魂が宿ると考え、カムイ(神)として敬ってきたアイヌの人たちの考え方がよくあらわれています。人間は他の生命をいただいて生きている、ということの重みも伝わります。独特の文様を取り入れた絵も子どもにわかりやすくて楽しい絵本に仕上がっています。

(「朝日新聞 子どもの本棚」2016年9月24日掲載)


いとうみく『アポリア』

アポリア〜あしたの風

『アポリア〜あしたの風』をおすすめします。

2011年の東北大震災に関連する本は、これまでにもいろいろ出ている。この作品も、その系列に入るが、なんと舞台は東京近辺で、時代は近未来に設定されている。

主人公は中2の一弥。ふとしたきっかけから同級生に殺意をいだいた自分が恐ろしく、人間と付き合うことを絶って不登校になり、自分の部屋に閉じこもっている。ある日、突然大地が大きく揺れ、津波が襲ってくる。母子家庭の一弥は、なんとかして母親を助けようとするが、そばを通りかかったタクシー運転手の片桐に腕をつかまれ、無理やり避難させられる。一弥は片桐を恨み、避難先でも最初はだれにも心を開かない。

震災というのは、大きな悲しみや苦しみをもたらす一方で、これまでの社会では出会わなかった年齢も職業も背景も異なる人たちが生身の人間として出会うきっかけにもなりうる。

この作品の縦糸は、そうした出会いを通して少しずつ変わっていく一弥の物語である。子どもとおとなの中間にある中2という年齢だからこその揺れも、うまく描かれている。

また横糸となっているのは、一弥が出会う人々がそれぞれに背負っている物語である。片桐以外にも、一弥の叔父である健介、無理心中を図った祖父と一緒に避難している4歳の草太、自分の欲に負ける一方で他人を偽善者とののしる元看護師の中西、ネコと一緒に助けられた中3の瑠奈などが登場し、それぞれが生身の人間としてぶつかり合いながら、死を目の当たりにしてたじろぎ、いのちについて思いをめぐらせ、やがてそれぞれに生へ向かう道を歩み始める様子が描写されていく。限られたページ数の中で多様な人々それぞれの物語を描ききるのは至難の技だが、一人一人の人間を描こうとした著者の努力によって、骨太の作品として立ち上がっている。

ちなみに「アポリア」とは、ギリシア語で「道がないこと」を意味しているという。

(「トーハン週報」Monthly YA 2016年8月8日号掲載)


雨宮処凜『14歳からの戦争のリアル』

14歳からの戦争のリアル

『14歳からの戦争のリアル』をおすすめします。

戦争って、これまでは無関心でも生きてこられたけど、もうそういうわけにはいかなくなってきた。そう私は感じている。愚かな政治家と、私を含めだまされやすい民のせいで、「戦争をしない」という先人の決断がペケにされようとしているからだ。

戦争はいけないと呪文のように言われて育ってきたものの、「学校で習う『戦争』の話は、ひたすらに暗く、怖く、そして時に説教臭かった。『平和な時代』に生まれたことを、なんだか責められているような気になった」と著者は書く。

でも、戦争って、ほんとうはどんなものなのか? 誰が死んで誰が得をするのか? 著者は「戦争」に深くかかわった人たちにインタビューして疑問をぶつけ、リアルに迫ろうとする。

インタビューに登場するのは、イラク戦争に米海兵隊員として従軍したロス・カプーティさん、太平洋戦争でトラック島に攻め込んだ金子兜太さん、イラクでボランティアを続ける高遠菜穂子さん、戦争解決請負人と呼ばれる伊勢崎賢治さん、戦場出稼ぎ労働者からジャーナリストになった安田純平さん(今シリアで拘束されていますね)、徴兵拒否してフランスに亡命した韓国人のイ・イェダさん、元自衛官の泥憲和さん、女優として戦地を慰問した体験を持つ赤木春恵さんの8人。最前線で戦争を体験したこの8人の話からは、図式的ではないそれぞれの戦争現場でのリアルが浮かび上がってくる。

先日私はフォト・ジャーナリストとして世界各地の戦場を経験している高橋邦典さんの話を聞いた。彼も、「戦場の死体の匂いは、いったん知ると遠くにいても風向きしだいでわかるようになってしまう。戦争はぜったいに嫌だと思うようになる」と語っていた。

政治家や学者とは違って、生身で戦争のリアルと向き合い、そしてなんとか生き残った(安田さんにも生きて帰ってきてほしい)人たちの話は、ふだんメディアには流れない。とんでもないことになってしまう前に、読んで考えてみない?

(「トーハン週報」Monthly YA 2016年6月13日号掲載)


あべ弘士『宮沢賢治「旭川。」より』

宮沢賢治「旭川。」より

『宮沢賢治「旭川。」より』をおすすめします。

宮沢賢治の「旭川」という詩を基にして、そのエッセンスを活かしながら、言葉を紡ぎ、絵で表現した絵本。

賢治の詩が内包するさわやかさや軽やかさを、みごとに表現している。動物中心の絵本を数多く出してきた作者だが、この絵本の主人公は、帽子をかぶって馬車に乗る賢治。しかし、その周囲には動物も登場し、馬ばかりでなく大きな蝶やフクロウやオオジシギが随所に登場している。

中でも原詩には出てこないオオジシギを、作者は、「天に思いを届け、天の声を聞いて返ってくる使者のようだ」として、三見開きを使って、大きく扱っている。この鳥に、賢治を象徴させているのだろうか。

画面ごとの構成や、余白の使い方、流れや変化のつけ方もすばらしく、この作者がこの絵本で新たな境地を切りひらいたことを思わせる。

(産経新聞児童出版文化賞講評2016.05.05掲載)


ポーラ・メトカーフ文 スザンヌ・バートン絵『いもうとガイドブック』

いもうとガイドブック

『いもうとガイドブック』をおすすめします。

姉から見た妹を描いた絵本。兄弟や姉妹について描いた絵本はたくさんあるが、その多くは年上の子どもが年下の子どもに親をとられたように感じて複雑な気持ちを抱く様子を表現している。この絵本にもその要素はあるが、それだけではないのがおもしろいところ。

絵も軽妙でゆかいだが、それ以上にユーモアにあふれた文章が楽しく、クスッと笑わせてくれる。

このくらいの年齢の姉妹なら似たような経験をしたことがあるはずで、それぞれの体験と重ね合わせて読めば、実際の兄弟姉妹関係にも余裕が生まれるのではないだろうか。

あたたかいユーモアを短い言葉でうまく訳すのはとても難しいものだが、翻訳はそのユーモアを、細かいニュアンスまで含めてみごとに日本語に移しかえている。そのおかげで、日本の子どもにも十分に楽しめる絵本になった。

(産経新聞児童出版文化賞講評2016.05.05掲載)


『10代のためのYAブックガイド150!』

今すぐ読みたい! 10代のためのYAブックガイド150!

『今すぐ読みたい! 10代のためのYAブックガイド150!』

近頃の中高生はあまり本を読まないという。小学生は、読書推進ボランティアが読み聞かせをしたり、ブックトークをしたり、朝読なども盛んだったりするので、まだ読むのだが、中高生になるとほかに面白いことも、塾や部活など忙しいことも出てくるから、本なんか読んでらんないということらしい。

それに町の本屋さんに行っても、近頃は味のある本はあまり置いてない。まして児童書などは少しでもあればいいほうだ。私の近所でも、駅前の本屋さんがつぶれてしまった。というわけで、本は中高生の目になかなか触れなくなってもきている。この年齢だと、学校の先生がおすすめする本への猜疑心も強いだろう。だからこそ当コラムを役立ててもらうといいとは私も思っているのだが、たまには1冊ずつのおすすめじゃなくて、たくさんのおすすめの中から選びたいと思う生徒もいるだろう。

そこで、今回はこのブックガイド。中は (1)10代の「今」を感じる本 (2)社会を知る、未来を考える本 (3)見知らぬ世界を旅する本 (4)言葉をまるごと味わう本 (5)現実を見つめる本、と5つの章に分かれている。そして各章が、たとえば1章だったら、「学校のリアル」「部活へGO!」「自分って何者?」「友情、恋、冒険、青春!」なんていうふうにまた分類されているので、自分が気に入ったジャンルで本をさがしやすい。執筆者は、評論家、書店員、作家(森絵都、佐藤多佳子、那須田淳も書いている)、研究者、司書、編集者など25人。それぞれの人が気に入った作品について、おすすめのポイントを熱っぽく語っているのがうれしい。

ちょっと時間ができたけど、何を読んでいいかわからないな、という人たちは、ぜひこれをパラパラとめくってみてほしい。軽妙なエンタメから重厚な社会派までよりどりみどりだ。

(「トーハン週報」Monthly YA 2016年4月11日号掲載)


R.J.パラシオ『ワンダー』

ワンダー

『ワンダー』をおすすめします。

初めてだれかに会ったとき、最初に意識するのはその人の顔だろう。私たちはお互いに顔を見てコミュニケーションをする生物なのだから。でも、その顔の造作やバランスがほかの人のそれとは大きく違っていたら、私たちはどんな反応をするだろうか? 凝視する? 目をそらす? それとも顔の奥にあるその人の心をのぞこうとする?

この物語の主人公はオーガスト(オギー)。「外見については説明しない。きみがどう想像したって、きっとそれよりひどいから」と自分で述べているのだが、先天的に顔に障碍があり、生まれてから27回も手術を繰り返していた。そして学校には行かずに、母親から勉強を教わってきた。

ところがオーガストは、中学にあがる年齢(アメリカの話なので、5年生から中学生なのだが)になって、初めて学校というものに行くことになる。当然のことながら、オーガストは緊張と不安に押しつぶされそうになっている。懸念は的中し、オーガストは学校で、奇形児とかゾンビっ子とかペスト菌などと呼ばれることになる。この世界は、オーガストのような存在には決してやさしくないのだ。

語り手は、オーガストばかりでなく、姉のヴィア、いつもオーガストと一緒にお昼を食べているサマー、親友だけど途中でぎくしゃくしてしまうジャック、ヴィアのボーイフレンドのジャスティン、ヴィアの以前の親友ミランダ、と次々変わっていく。複数の視点を通して、立体的に状況が浮かび上がる。オーガストの存在を鏡にして、周囲の人たちの人となりも浮かび上がる。

障碍を持った人には親切にしなくてはならないとお題目を唱える本ではない。理想的なあるべき姿を提示する本でもない。リアルである。けれど、そう甘くはないこの世界にも、はかない者、弱い者を守ろうとする人たちが存在することを、この作品はきちんと描いていく。「かわいそう」という視点がないのが、何よりいい。

(「トーハン週報」Monthly YA 2016年2月8日号掲載)


マイケル・モーパーゴ『走れ、風のように』

走れ、風のように

『走れ、風のように』をおすすめします。

世の中には旬の作家というのが確かにいる。マイケル・モーパーゴは今がまさに旬。日本でも次々に翻訳出版されているのだが、最近のモーパーゴは、テーマは違っても、それも粒ぞろいでおもしろい。

この作品の主人公は、犬のグレイハウンド。生まれて間もなく川に捨てられて溺れそうになっていたところを、少年パトリックに救われる。そしてベストフレンドと名づけられ、とても大事に飼われている。しかしある日、走るスピードに目をつけられ、誘拐されて売り飛ばされ、ドッグレース用の犬に仕立てられる。飼い主は金儲けしか考えず、勝てない犬は容赦なく殺処分にするという男である。犬の運命はどうなるのかと、はらはらさせられるが、今度はベッキーという少女に助けられる。

ベッキーは、ブライトアイズと名づけたこの犬を連れて家出をするのだが、子どもの家出というのは、残念ながらたいていはうまくいかない。そこで主人公の犬は、今度はジョーという、妻を亡くしたおじいさんに引き取られて、パディワックと名づけられる。

『戦火の馬』でも、モーパーゴは馬を主人公にしてさまざまな人間模様を描いていたが、この作品でも、犬を主人公にしながら、パトリックとベッキーとジョーの心の有りようを、実にうまく描き出している。ストーリーの作り方もうまい。そういえば、本書と同じ頃に翻訳が出た『月にハミング』も、ストーリー作りのうまさが際だっていた。

モーパーゴは、ドッグレースを引退したグレイハウンドが銃殺されているという新聞記事を読んで、この物語を書いたという。新聞記事一つから、これだけおもしろくて社会的な視点もあるストーリーが書けるなんて、旬の作家ならではのことかもしれない。

(「トーハン週報」Monthly YA 2015年12月14日号掲載)


ジル・ルイス『白いイルカの浜辺』表紙(さくまゆみこ訳 評論社)

白いイルカの浜辺

『白いイルカの浜辺』をおすすめします

今回は、私がかかわった本を紹介したい。

主人公は、難読症もあって学校でもいじめられている少女カラ。海洋生物学者の母親は、野生のイルカを調査している時に行方不明となってしまったが、カラはいつか帰ってくるものと信じている。カラの父親は、妻が行方不明になったショックや、自分も難読症を抱えているせいもあって、娘との生活をなかなか立て直せないでいる。カラと父親は、ベヴおばさんのもとに身を寄せているが、おばさんには近々赤ちゃんが生まれることになっており、カラたちは住む場所もさがさなくてはならない。

そんな時、カラの学校に転校生フィリクスがやってきた。裕福な家庭に生まれたフィリクスは、脳性麻痺で手足が不自由だが、人一倍の自信家でもあり、ITオタクでもある。

カラとフィリクスは育ちも興味も違う、いわば異文化的な存在なので最初は反発しあうのだが、お互いの異文化性を理解してからは仲間になっていく。

カラにとってはおなじみの、ヨットで海に出る楽しさをフィリクスも知ったことから、二人はお互いを再発見し、ケガをしたアルビノの子イルカの命を助けようとする気持ちが二人の結びつきを強める。

本書は、ハラハラどきどきの冒険物語(特に最後のあたり)であり、親と子の葛藤の物語でもあり、地域や政治とのかかわりの物語でもあり、大自然とITを対比する物語でもあり、そして何より動物について深く知ることのできる物語でもある。前作の『ミサゴのくる谷』同様、動物や自然についての描写は的確でウソがない。

子どもたちが、海の美しさを守りたいという気持ちから環境破壊に異議を唱え、底引き網漁を解禁しようとする利権社会やおとなの意識を崩していくあたりも、おもしろい。

平澤朋子さんの絵がまたとってもすてき。

(「トーハン週報」Monthly YA 2015年10月12日号掲載)


アーサー・ビナード『もしも、詩があったら』

もしも、詩があったら

『もしも、詩があったら』をおすすめします。

アーサー・ビナードはこんなふうに始める。

「もしも」と言っただけで、まわりの世界が、ちょっと違って見える。
「もしも」から出発して、想像をめぐらしてみると、新天地に到達することがある。
「もしものとき」にそなえて、ぼくらは生きのびようとする。
詩が生まれるきっかけになるのも、この「もしも」だ。

そう、確かに。
もしも、と仮定してみただけで、今とは違った世界が見えてくる。

本書は、シェークスピアだのウィリアム・ブレイクだのジャック・プレヴェールだのから、ボブ・ディランやまど・みちおや吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」まで、「もしも」にまつわる古今東西の詩を取り上げている。

取り上げるといっても、これは教科書ではないし、ただ単に詩を紹介する本でもない。アーサーの生きてきた道の途上にあったあれこれのエピソードや、それぞれの詩に触発された思索が書かれているので、奥行きがある。

アーサーの日本語の言い回しには時にはっとさせられるし(これは、ほかのエッセイの本でもだけど)、「日本語だと鳥の翼も〈羽〉だし羽毛も〈羽〉だけど、英語ではこの二つを同一視することはありえない」(アーサーは、同音異義語と言ってるけど、これもその範疇なのかな?)なんていう豆知識も手に入る。たいていの場合、英語の詩と、それを日本語に訳したものとが載っているので、比べてみて、あーだのこーだの言うこともできる。ところどころに入っているアーサーのイラストも、なかなか趣があっていい。つまり、いろんな楽しみ方ができる本だ。

最後に載っているアーサー自身の詩「ねむらないですむのなら」は、ほかのどの詩よりも辛辣なので、心して読んでほしい。

(「トーハン週報」Monthly YA 2015年8月10日号掲載)


亀山亮『戦場』

戦場

『戦場』をおすすめします。

「戦場カメラマン」と呼ばれる人たちも、いろいろです。生と死の間をかいくぐる体験を積んでいるうちに刹那的になる人もいれば、逆に哲学的になる人もいます。その体験をくぐり抜けて自分のやりたいことを見つける人もいるし、その体験を売り物にしてバラエティ番組で稼ぐ人もいます。

本書は、そんな戦場カメラマンの一人であり、戦場で片目を失った著者が、「若い頭と心」で見聞きした戦場と、戦争にさらされた人たちを写真と文章で描いています。取り上げられているのは最初がパレスチナで、あとは主にアフリカの国々。恐怖やとまどい、迷いや悩みも書かれているので、若い読者たちも、身近なものとして読めるかもしれません。

多くの戦場カメラマンたちは、日本ののんびりした日常と、戦場の緊迫感の間でとまどい、どちらが本当の現実か考えたりいらだったりし始めます。そのあたりも、あえて整理せず迷うままに書かれているのがリアルです。それと同時にこの著者は、戦争は憎しみや差別が引き起こすものというより、経済・政治のシステムが引き起こすものではないかということに気づいています。たとえばこんな文章。「爆撃で人が死ねば死ぬほど莫大な利益を得てほくそ笑む人間たちが存在する。巨大な経済システムがうごめいて、知らないあいだに人々は殺す側と殺される側に隔てられていく」。

そう、戦争をとめようと思ったら、「戦争をさせている力」について考えてみることが必要なんですね。この国の政治家が言っていることを鵜呑みにしていたのでは、ますます戦争に近づいていきます。総理大臣が唱える「積極的平和主義」にちょっとでも疑問を持った人には、特におすすめです。

(「トーハン週報」Monthly YA 2015年4月13日号掲載)


いとうみく『空へ』

空へ

『空へ』をおすすめします。

短編集のようでもありますが、読んでいくうちに、1冊まるごと物語がつながっていることがわかります。

主人公は小学校6年生から中学生になった佐々木陽介。「とうちゃん」はくも膜下出血に脳梗塞を併発して亡くなり、「かあちゃん」と幼い妹の陽菜(ひな)の3人家族になりました。単親家庭になってすぐに「かあちゃん」は電池が切れたようになったこともあり、陽介は自分ががんばらなくては、強くならなくては、とひたすら思っています。でも、まだ子どもなので、知らないこともいっぱいあり、そうそううまくはいかないのですね。

けれど、そういう立場だからこそ、見えてくることもたくさんあるのです。そして、そういう状況だからこそ、まわりの人とつながれるチャンスもめぐってくるのです。

何が何でもただがんばる、という根性ものではありません。悲しい、つらいというお涙ちょうだいの物語でもありません。

この本に収められた6つの小さな物語は、陽介の日常とその時々の気持ちを描きながら、彼をとりまくさまざまな人間模様もうかびあがらせていきます。しかも、同年代だけではない、世代の違う人たちの人間模様も。

最初の物語「おかゆ」は、陽介が陽菜をお医者さんに連れてきたところから始まり、どうしてそういう羽目になったのかを説明する過程で、「とうちゃん」の死と一家の事情が明かされています。そして最後の物語「神輿」は、町内の祭りで神輿をかつぐのが大好きだった「とうちゃん」の代わりに陽介が神輿をかつぐシーンで終わっています。

いろいろな思いを抱きながらもまっすぐに進んでいこうとする陽介を、ついつい応援したくなる、さわやかな読み心地です。

いとうみくさんは、『糸子の体重計』で児童文学者協会の新人賞をとり、『かあちゃん取扱説明書』でも話題になった、これからがとても楽しみな作家です。

(「トーハン週報」Monthly YA 2014年12月8日号掲載)


マイケル・モーパーゴ『希望の海へ』

希望の海へ

『希望の海へ』をおすすめします。

社会的な視点をもちながらストーリーテラーの腕も抜群というマイケル・モーパーゴが、本書で扱うのは、最近になってわかってきた児童移民の問題です。イギリスから「孤児」(本当の孤児はわずか)たちがオーストラリア、カナダ、南アフリカなどへ送られ、第二次大戦後にはその人数もピークに達したと言われています。

第一部を語るのは、アーサー・ホブハウス。まだ幼いうちに船に乗せられイギリスからオーストラリアにやって来たものの、引き取られた先の農場で奴隷としてこき使われます。さんざん我慢を重ねた後にアーサーは年上の友と一緒に逃げ出し、黒い肌の人たち(先住民ですね)に助けられ、「ノアの方舟」と呼ばれる場所でようやく愛を注いでくれる人に出会います。でも、そこでずっと幸せに暮らしたわけではありません。まだまだ山あり谷ありの人生が彼を待ち受けていました。アーサーがその波瀾万丈の人生の中で持ち続けていた唯一のものは、小さな鍵です。それは姉のキティをさがす鍵でもありました。

そして第二部を語るのは、アーサーの娘のアリーです。父親のかわりにまだ見ぬ伯母キティに会うためひとりでヨットに乗り、数々の困難を乗りこえてイギリスまで航海します。複数の文化を背負った(母親はギリシア人)女の子アリーが単独で冒険するという設定がなかなかいいうえに、航海についてくるアホウドリ、アリーと宇宙飛行士との交信、そして父親から手渡された鍵の謎など、第二部にもさまざまな仕掛けがつまっています。果たしてアリーは、伯母のキティを捜し当て、鍵で何かをあけることができたでしょうか?

わくわくしながら読めます。

(「トーハン週報」Monthly YA 2014年10月13日号掲載)


エリザベス・レアード『戦場のオレンジ』

戦場のオレンジ

『戦場のオレンジ』をおすすめします。

いい作品を書いているのはわかるけれど、なぜか心の奥底まで響かない作家がいます。私にとってエリザベス・レアードはそんな作家の一人でした。きっと読者である私との相性の問題なのでしょう。

なので今回も、この作品を取り上げようと即決したわけではありませんでした。でも、迷っているとき、雨宮処凜さんの「若い女性に戦争の現実味を伝えるには、服が汚れる、おしゃれが出来なくなると説明するのがいちばん響く」という言葉が目にとびこんできました。

爆撃される、殺されるというのは、今やバーチャル世界の出来事となり、実感が持てないのだと思います。服が汚れるなんていうのは、日常世界でも体験することなので、逆にリアリティをもって迫ってくるのでしょう。

それならと、今回はこの本を取り上げることにしました。これを読めば、もう少しリアルなイメージが持てるようになるかもしれないと思ったからです。

本書の舞台は内戦下のベイルートで、敵と味方の間にグリーンラインと呼ばれる境界線が走っています。主人公は10歳のアイーシャ。父親は外国に出稼ぎに行き、母親は家に爆弾が落ちてから行方不明で、アイーシャを頭に3人の子どもがおばあさんと暮らしています。そのおばあさんが生きていくのに必要な薬を手に入れるため、アイーシャはグリーンラインを越えて敵の領域まで侵入し、お医者さんを訪ねます。

物語の中には、このお医者さんをはじめ、やわらかい心を持った人たちが登場してきます。でも、戦争という状況は、そのやわらかい心がのびやかに息づくのを許してはくれません。そのあたりのことがとてもよく書かれています。

(「トーハン週報」Monthly YA 2014年8月11日号掲載)


Youssou: Nelson Mandela

ミュージシャンたちの反アパルトヘイト

アフリカ子どもの本プロジェクトのメルマガに載せたものを、ここにも載せておきます。加筆してあります。

世界中でアパルトヘイトに反対する運動が盛り上がり、マンデラを釈放せよという要求が高まったとき、ミュージシャンたちもその運動に加わったり、率先して活動したりしていました。

今回調べてみると、ずいぶんいろいろな人たちが、反アパやマンデラについての曲を歌ったり演奏したりしていることがわかりました。そのいくつかをご紹介します。

アパルトヘイトに反対するミュージシャンたち:サン・シティ /  Artists United Against Apartheid : Sun City


「サン・シティ」とは、南アフリカにあった白人専用リゾートの通称で、南アにおけるアパルトヘイト(人種隔離政策)の象徴。そこでは、多くの有名ミュージシャンたち(クィーンやエルトン・ジョンなど)が多額の出演料にひかれてコンサートを行っていました。このアルバムは、そのサン・シティに象徴されるアパルトヘイトに抗議する世界中のアーティストたちによって制作された作品。マイルス・デイヴィス、リンゴ・スター、ボノ、ブルース・スプリングスティーン、ボブ・ディラン、ピーター・ガブリエル、ジミー・クリフ、ホール&オーツ、ルー・リード、ジャクソン・ブラウンほか合計49人・組のアーティストが参加し、「こんなリゾートでは演奏しないぞ」と歌って、当時大きなニュースとなりました。政治的に保守的なラジオ局などではオンエアされませんでしたが、ビルボードでは最高38位を記録しました。

スティービー・ワンダー:イッツ・ロング(アパルトヘイト)/ Stevie Wonder : It’s Wrong (Apartheid)


「アパルトヘイトは、奴隷制やホロコーストと同じように、間違っている」と歌っています。この動画ではスティーヴィーが日本人を持ちあげるコメントをしていますが、「ほんとにそうだといいんだけど」としか言いようがありませんね。

ユッスー・ンドゥール:ネルソン・マンデラ / Youssou N’dour:Nelson Mandela

ユッスーはセネガルの歌手で、この間まで大臣を務めていました。私はこのCD持ってますよ。(上のCDジャケットがそれ。ユッスーが若いですね)

ザ・スペシャルズ:ネルソン・マンデラを釈放しろ / The Specials: Free Nelson Mandela

ザ・スペシャルズは、イングランドの2トーンバンド。

ジョニー・クレッグ:アシンボナンガ / Jonny Clegg: Asimbonanga

ジョニー・クレッグは、イギリス生まれでローデシア(現ジンバブエ)やザンビア、南アで育ち、マンデラと同じウィトワーテルスランド大学に学んだ白人ミュージシャン。アパルトヘイトに反対していただけでなく、自分のバンドにも黒人と白人の両方がいました(それが危険だった時代にも)。アシンボナンガは、「彼(マンデラ)の姿を見ていない」という意味で、ロベン島に収監されていたマンデラのことを歌っています。
この動画では最後のほうに自由になったマンデラさんが出て来て、踊っています。

カシーフ:ボタボタ(反アパルトヘイトの歌)/ Kashif: Botha Botha (Anti-Apartheid Song)

カシーフは、アフリカ系アメリカ人。イスラム教に改宗してからマイケル・ジョーンズという名前をカシーフに変えました。
ボタは、人種差別政策撤廃を求める国際世論に対して、アパルトヘイトを死守しようとした南アフリカの首相(1978〜1984)、大統領(1984〜1989)

ヒュー・マセケラ:マンデラを返せ / Hugh Masekela : Bring Back Nelson Mandela

ヒュー・マセケラは、南ア出身のトランペット、フリューゲルホーン奏者、歌手。ミリアム・マケバと結婚していたこともある人です。

ピーター・ガブリエル:ビコ / Peter Gabriel: Biko

「黒人意識運動」を唱えてアパルトヘイトに反対し、1977年に拷問による脳挫傷で死去した南アフリカの活動家スティーヴ・ビコについて歌っています。ガブリエルは、ライヴで反アパルトヘイトを聴衆に訴え、この曲をアンコールの最後の曲としていつも歌っていました。

ヴーシー・マーラセラ:きみたちが帰ってくるとき / Vusi Mahlasela: When You Come Back

ヴーシー・マーラセーラは、南アフリカのミュージシャン。この歌は、1994年のマンデラの大統領就任式でも歌われ、2010年のFIFAワールドカップのテーマソングとしても使われました。「きみたち」は、南アを逃れて政治亡命した人々を指しているそうです。

ミリアム・マケバ+レディスミス・ブラック・マンバーゾ:コシ・シケレリ / Miriam Makeba & Ladysmith Black Mambazo: N’kosi Sikeleli

1987年ジンバブウェでの映像。後に新生南アフリカの国歌となるコシ・シケレリを歌っています。まだマケバも南アフリカに帰国することはできていません。ポール・サイモンやヒュー・マセケラの姿も。

<h2ミリアム・マケバ+ヒュー・マセケラ:ソウェトブルース / Miriam Makeba & Hugh Masekela: Soweto Blues

1976年のソウェト蜂起の時に警官に撃たれて亡くなったり逮捕されたりした子どもたちのことを歌っています。「子どもたちがたくさん死んでいるのに、ちょっとした騒ぎがあったとしか報道されない」と。マセケラが作った歌です。

◆ミリアム・マケバ:愛する人たちに / Miriam Makeba: To Those We Love (Nongqongqo)

アパルトヘイト体制をくつがえそうとして逮捕され牢獄にいるネルソン・マンデラやウォルター・シスルたちのことを思って歌っています。An Evening with Belafonte/Makebaというグラミー賞をとったアルバムの中に入っています。

ノムフシ&ザ・ラッキー・チャーム:ネルソン・マンデラ・ソング / Nomfusi & The Lucky Charm: Nelson Mandela Song

ノムフシは、ケープ州東部のタウンシップで生まれた新世代のミュージシャン。父親は21年間投獄され、サンゴマをしていた母親はメイドをしながらひとりでノムフシを育てました。


デボラ・ノイス『「死」の百科事典』

「死」の百科事典

『「死」の百科事典』をおすすめします。

若い時って、大人になってから以上になぜか「死」が気になるものです。私は、中学生・高校生の頃、北村透谷とか有島武郎とか芥川龍之介とか太宰治とかヘミングウェイとか、自分が読んだ本の作家の自殺が気になって仕方がありませんでした。

で、この本です。まず扉をあけると「死ぬのって、きっとすごい冒険なんだろうな」というピーター・パンのかなり挑発的な言葉が目にとびこんできます。そう言えば『影との戦い』(ゲド戦記1)の冒頭にも、「光は闇に/生は死の中にこそあるものなれ」という言葉がありましたっけ。生と死は背中合わせだとすると、生が冒険だった人は死も冒険なのかもしれないし、よりよい生き方をした人にはよりよい死(ぽっくり逝くとか)も待っているのかな、なんて思ったりします。

で、もう一度この本です。開いて見ると、「連続殺人犯」、「黒魔術」、「死体泥棒」、「生贄の未亡人」、「アンデッド」(これは吸血鬼やゾンビやバンパイアなんかのことですね)なんて、おどろおどろしげな項目もあります。「死神」という項目があるかと思うと、「死神をだます」という項目もあります。興味をひく図版もたくさん入っています。でも、出版社と翻訳者を見ればわかるとおり、センセーショナルに売ろうとする本ではなく、これはまじめな本なのです。「自殺」という項目を読んでみたら、国連の世界保健機関によれば、年間の自殺者は世界で100万人といわれ、戦争と殺人による死者の数を上回っている、なんてことも書いてありました。

エッセイ風の文章を拾い読みしてみても、逆に「生」を考えるきっかけになりそうです。

(「トーハン週報」Monthly YA 2014年6月9日号掲載)


村山純子『さわるめいろ』

さわるめいろ

『さわるめいろ』をおすすめします。

目の不自由な子どももそうでない子どもも、一緒に楽しめる絵本。

いくつかの出版社から出ている「てんじつきさわるえほん」の1冊で、シリーズのほかの絵本はロングセラー絵本の点訳化だが、本書は内容もオリジナル。市販の点字絵本はこれまで、印刷・製本上のさまざまな問題から、かなり高額な値段をつけざるをえず、だれもが買えるようなものとはなっていなかった。

今回のこのシリーズは、平成14年から出版社、印刷会社、作家、画家、デザイナー、点訳ボランティア、研究者などが定期的に集まって話し合いを重ねたなかから生まれたもので、絵に重ねて樹脂インクで盛り上げ印刷をし、蛇腹式の製本を取り入れてコストを抑えている。

本書は、日本の伝統模様などを使い、そこに樹脂の点々をのせているが、実際に目の見える子と不自由な子が一緒に遊ぶと、見える子が教わるという場合も多い。

このような試みが今後も続いていくことを願いたい。

(「第61回産経児童出版文化賞大賞 選評」産経新聞 2014年5月5日掲載)


In the Heart of the Moon

In the Heart of the Moon(月の真ん中で)

ミュージシャン:Ali Farka Touré & Toumani Diabat(アリ・ファルカ・トゥーレ & トゥマニ・ジャバテ)
レーベル:World Circuit
(日本版はライス・レコード)

 

 

アリ・ファルカ・トゥーレ(1939-2006)はマリ北部の生まれの、ブルーズを演奏するギタリスト。トゥマニ・ジャバテ(1965-)は、コラ奏者で、マリ南部生まれの伝統的な家系のグリオ。この二人が、マリの首都バマコにあってニジェール川を見下ろすマンデ・ホテルの最上階で録音したアルバムです。北部の民族ソンガイ/プールの曲と、南部の民族バンバラの伝統曲などが入っています。リハーサルなし、編集もなしだそうで、流れるように演奏したままが録音されています。4曲目の「ニャフンケの市長さん」は、ちょうどニャフンケの市長に就任したアリを、グリオのトゥマニが賞賛している曲になっています(グリオはほめ歌を歌ったり演奏したりするのも仕事の一つ)。ちなみに市長になったアリは私財をつぎこんで、地域のインフラ整備に努めたそうです。

アリ・ファルカ・トゥーレはアメリカのブルーズに魅せられて欧米で活躍したミュージシャンですが、音楽で身を立てる前はタクシーの運転手や自動車の整備工もしていたとのこと。トゥマニ・ジャバテは5歳の時からコラ(ヒョウタンに動物の皮を張った21弦の楽器)を弾いていたそうですが、子どもの頃ラジオから流れてくるアリの曲を変わった音楽だなあと思いながら聞いていたと言っています。

このアルバムは2006年にグラミー賞を受賞しますが、アリはすでに亡くなっていて、授賞式に出席できたのはトゥマニだけでした。このアルバムの日本版はライス・レコードから出ています。

以下の動画には、当時の録音風景や2005年にブリュッセルで行ったコンサート風景などが入っています。

トゥマニ・ジャバテは、今年5月に息子のシディキ(トゥマニのお父さんと同じ名前なんですね)と新しいアルバムを出すのですが、そのプロモーションビデオがこちら。トゥマニは700年続くグリオの71代目だそうです。私と同じようにコラの音色が好きな方には、こちらもお薦め。


Sangoma

Sangoma_2Sangoma (サンゴマ)

アーティスト:Miriam Makeba (ミリアム・マケバ)
レーベル:Warner Bros.

 

 

「ママ・アフリカ」と呼ばれ、歌手としてだけでなく人権活動家としても活躍したミリアム・マケバのCDを、私はたくさん持っています。10代のときから76歳で亡くなるまでマケバは舞台に立っていたし、CDもたくさん残していて、その歌い方や歌声は、年齢や時期によって、少しずつ変わっています。若くして故郷の南アフリカから追放処分を受けたマケバは、イギリス、アメリカ、ジャマイカ、マリなど世界各地を転々として暮らすのですが、ようやく故郷の土を踏むことができたのは、1990年。30年以上たっていました。

たくさんあるCDの中で私がいちばん好きなのは、これ。最初に発売されたのが1988年なので、50代のマケバの歌声です。自分のルーツを思い出して、子どもの時に聞いた歌や、村でみんなが歌っていた伝統的な歌を吹き込んでいます。楽器はほとんど入っていないアカペラで、女声コーラスがバックを務めています。

「サンゴマ」というのは、南アフリカの呪術医のことです。マケバのお母さんはある日、足にバイキンが入ったのか腫れ上がってしまい、どんな治療法でも治すことができなくなります。西洋医学のお医者さんでは埒があかないので、伝統的なお医者さんのところへ行きます。すると、「アマドロジがついているから、修行をして力をつけないと、その霊にのっとられてしまう」と怖いことを言われます。アマドロジというのはアフリカにたくさんいる霊の一つで、この霊にとりつかれると、サンゴマになるしかないのです。結局お母さんは苦しい修行(山伏の修行のようなものでしょうか)の末サンゴマになって、祖先の霊をよびよせたり、人々の病を治したりするようになります。マケバの娘のボンギにも、その力の一部が遺伝していたらしいのですが、ボンギは修行をする機会がなかったので、そのせいもあるのか、心の病にかかって亡くなっています。

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マジック・リアリズムという言葉は、南米の文学の特徴を説明するときによく登場しますが、アフリカの人が書いたものを読むと、普通のリアルな日常生活の中に不思議なことがいっぱい出てきます。マケバ自身も、お母さんから譲り受けた衣装を着て舞台に立ったときは、その時に起こったことをいつも何ひとつおぼえていない、と語っていますが、そんなこともマジック・リアリズムの一つでは?

マケバの自伝『わたしは歌う』(ミリアム・マケバの話したことをジェームズ・ホールが聞き書きしています。さくまゆみこ訳 福音館書店)は、もう版元品切れですが、興味のある方は古書店や図書館で探してみてください。

http://www.amazon.co.jp/Sangoma-Miriam-Makeba/dp/B009YRVSQA/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1393392069&sr=1-1&keywords=sangoma


Acoustic Africa

Accoustic_africaAcoustic Africa (アコースティックなアフリカ)

アーティスト:various
レーベル:Putumayo World Music

 

 

現代のアフリカ音楽を知ろうと思ったら、これがお薦めの一枚です。セネガル、ギニア・ビサウ、マダガスカル、ベナン、南アフリカ、コンゴ、マリ、コートジボワールなどアフリカ各地出身でいまワールド・ミュージックの舞台で活躍しているミュージシャンたちが登場しています。

アンジェリク・キジョー、ジェリマディ・トゥンカラ、ハビブ・コイテ、ヴシ・マラセーラといった大御所も入っていますが、それほど有名ではない人も入っています。それにPutumayoのプロデュースなので、信頼できます。

1曲目の「ソーリ」(移民)を歌っているジョガルは、セネガルの小さな漁村に生まれたミュージシャンで、今はパリに住んでいます。異国で暮らすアフリカ人がルーツや祖先の価値を思い出しているという内容です。

2曲目の「ミンジェー・ドス・メル」を歌っているエネイダ・マルタは、ギニア・ビサウの歌手で、歌のバックには水カラバッシュ(水桶に大きなヒョウタンをうかべてたたく伝統的な楽器)、コラ、ハープが入っています。女たちに平等を実現しようとよびかける歌です。

3曲目の「ミサフータカ・ニァカマ」を歌っているラジェリーは、マダガスカルのミュージシャンで、赤ちゃんのとき右手を失っていますが、それを感じさせないヴァリハ(竹でできた筒型の弦楽器。弦は自転車のブレーキの針金でつくるそうです)の名手です。庶民の日々の苦労をうたっています。

今は中古でしか手に入らないようです。


キンバリー・ウィリス・ホルト『ローズの小さな図書館』

ローズの小さな図書館

『ローズの小さな図書館』をおすすめします。

最初に登場するのは、父親が蒸発して貧しくなった家庭のローズ。家計を助けるために年齢を偽り、14歳で移動図書館車のドライバーとして働き始めます。1939-40年のことです。でも、この本の主人公はローズだけではありません。第二部はローズの息子のマール・ヘンリー(時代は1958-59年)、第三部はマール・ヘンリーの娘のアナベス(1973年)、第四部はアナベスの息子のカイル(2004年)が主人公になっています。

四部構成になったどの物語も図書館が舞台というわけではなく、主人公の中には本嫌いもいます。内容も、不注意でわなに愛犬がかかってしまった話、恋といじめの話、アルバイトで子どもの劇を手伝う話など、様々です。とはいえ、だれもが、なんらかのかたちで本や図書館にかかわっています。

この作品には、4世代にわたるアメリカの10代の日常の変遷を生き生きとたどれるおもしろさがあります。人によって本の読み方も、本に求めるものもいろいろだということも、よくわかります。21世紀に入ると、アメリカでもホームレスの人たちが図書館を昼の居場所にして、ハリー・ポッターなどを読んでいる、なんてこともわかります。ただし、カタカナ名前がたくさん出てくるので、本の最初のほうに載っている家系図を見ながら読み進めるといいでしょう。

そして最後の第五部には、ひいおばあちゃんになったローズがもう一度登場します。79歳のローズはこれまでの体験を本に書いてとうとう出版したのです。お祝いの場に、ここまでの物語に登場してきた人物が勢揃いする(亡くなった人は別ですが)のも、おもしろいところです。

(「トーハン週報」Monthly YA 2014年2月10日号掲載)


羽生田有紀 文 島田興生 写真『ふるさとにかえりたい:リミヨおばあちゃんとヒバクの島』

ふるさとにかえりたい〜リミヨおばあちゃんとヒバクの島

『ふるさとにかえりたい 〜リミヨおばあちゃんとヒバクの島〜』をおすすめします。

語り手は73歳のリミヨおばあちゃん。おばあちゃんの生まれ故郷はロンゲラップ島。太平洋のマーシャル諸島共和国にあります。おばあちゃんは13歳の時(1954年)ヒバクしました。となりのビキニ環礁で水爆実験が行われたからです。この時の核爆弾は、広島型原爆の1000倍の爆発力をもつ水素爆弾で、ブラボー(なんという名前!)と呼ばれていました。アメリカは3年後に安全宣言をして、避難していたロンゲラップ島民の帰還を促したのですが、帰還した島民の多くが甲状腺に腫瘍ができ、子どもの多くが白血病で死亡したそうです。

この本はそうした事実を、もう一度今の時代に生きる私たちに知らせるだけではなく、ロンゲラップでヒバクし、マジュロ島に避難し、それから60年たった今も故郷に帰れずに毎日の暮らしを営んでいる一人の普通のおばあちゃんの、生きた証言です。ロンゲラップに帰島して小学校の先生になったとき、子どもたちの体が日に日に弱っていくのを目撃したこと、再避難が必要になってNGOのグリンピースが来てくれたこと(アメリカは再避難を認めなかったうえ、表土の除染さえ44年後まで行わなかったのです)、そして今考えていること、今感じていることが写真と文字で語られています。

私は、このリミヨおばあちゃんの話を読むまでは、ビキニの核実験が60年後の今でもなお島民の暮らしに大きな影を落としていることを知りませんでした。どうしても福島と重ねて考えてしまいます。


ローレンス・アンソニー『象にささやく男』

象にささやく男

『象にささやく男』をおすすめします。

これは厳密に言うと、児童書ではありません。一般書です。ルビもありません。でも、高校生くらいからなら、ずんずん引き込まれて、とてもおもしろく読めるノンフィクションです。

舞台は南アフリカの私立野生動物保護区トゥラ・トゥラ。別の保護区から脱走をくりかえし、処分されそうになっていたゾウの群れを著者がひきとることから物語が始まります。でも、このゾウたちは群れのリーダーと子どもを撃ち殺されて人間不信の固まりになっています。だから当然一筋縄ではいかないのですね。でも、時には命がけで、著者はこのゾウたちの信頼を勝ち取ろうと努力します。

この著者は、こんなふうに考える人です。「そもそも群れを引き取ったとき、ゾウはそのまま薮(ブッシュ=荒野)に放つつもりだった。彼らとつながりを持とうなどとは考えていなかったのである。私は、すべての野生動物はそうあるべきだと思う。すなわち、野生ということである。脱走劇や再定住の苦しみ、兄弟の処分などといった事情で、私はしぶしぶ介入せざるを得なくなったまでである。家長のナナに人間を少なくとも一人信用してもらって、人間全体に対する恨みを少しでも和らげてほしかったのである。それが実現し、彼女にも群れがもういじめられないことが分かった。これで、私の使命は終わったのだ。人間と接触しすぎると原野で必要とされる彼らの野生が損なわれることを、私は強く意識していた。」

著者の創意工夫と忍耐強さのおかげで、ゾウたちはトゥラ・トゥラが安心できる場所だということを理解し、徐々に穏やかさを取り戻していきます。そしてゾウはゾウ、人間は人間としてくらせるようになるのですが、著者とゾウの間にある強い結びつきはずっと消えなかったようで、不思議なことに著者が外国へ行って帰ってくる日には、ゾウたちがちゃんとわかっていていつも門のところで出迎えたそうです。赤ちゃんが生まれれば必ず見せにきたし、著者が亡くなった日も、ゾウの群れが家まで弔いにやってきたそうです。

ゾウだけではなく、密猟者、山火事、ライオン、サイ、水牛なども登場し、ハラハラ、ドキドキのとてもおもしろい本に仕上がっています。エンタメでもありながら考えさせられる種をちゃんともっている、そんな一冊です。

この著者はとても正義感の強い人らしく、2003年にはイラク戦争の開戦直後のバグダッドに行って、飢え死にしそうになっていた動物たちを救うという活動もしています。とくにアフリカの自然がどんどん破壊されていくことを憂い、野生生物が自由に生きられる場所をつくろうとしていました。亡くなられたのが本当に残念です。

翻訳者は、英語とフランス語のすばらしい同時通訳者、中嶋さんです。


あまんきみこ文 山内ふじ江絵『鳥よめ』

鳥よめ

『鳥よめ』をおすすめします。

今回は絵本をとりあげます。

日本の灯台は、今やすべて無人化されていますが、かつては灯台守と言われる職員が常駐して、灯をともしたり消したり、レンズをみがいたり、故障の修理をしたりして航路の安全を守っていました。この絵本はその灯台守の仕事をしている周平さんが主人公で、民話風に語られています。

「灯台のあかりを消すと、周平さんは、らせん階段をゆっくりおりていきました。右の足を、少しひきずっています」

日本が戦争をしていた時代、周平さんは、子どもの時のけがが原因で右ひざが曲がらず兵隊になれなかったので、苦労の多い灯台の仕事を自ら選んで引き受けています。

ある朝、周平さんの前にほっそりした娘があらわれます。この娘は、以前助けたカモメなのですが、海の神のところにいって人間に姿を変えてもらったのです(ここはちょっとアンデルセンの人魚姫みたいですね)。周平さんと娘は夫婦になりますが、娘は背中にたたんだ翼を一日一回広げて鳥に戻り、空を飛ばないと死んでしまいます。しかも、その時に人に見られてはならないというのです。

娘を大事に思っていた周平さんは、鳥よめに空を飛ぶ時間を保証してやり、その姿を見ることは決してせずに、二人で仲良く暮らしていました。

ところがある日、灯台の守備を任された兵隊が六人もやってきたことから悲劇が始まります。周平さんたちの貧しいながらも幸せな暮らしや、細やかな愛する心の通い合いは、「戦争」という大義名分に踏みつけにされてしまうのです。二人の深い悲しみが、切々と伝わってきます。

子ども時代に太平洋戦争を体験したあまんさんの文章に、山内さんの味わい深い絵がついています。漢字にルビが振ってありますが、小学生より、中学生、高校生に読んでもらいたい絵本です。

(「トーハン週報」Monthly YA 2014年2月掲載)


African Lullaby

African_lullabyAfrican Lullaby (アフリカの子守唄)

アーティスト:various
レーベル:Ellipsis Arts

 

 

南アフリカ、ナイジェリア、マリ、ザンビア、ケニア、セネガル、ウガンダ、ギニア、コートジボワール、ジンバブエなどに伝わる子守唄を集めたものです。聞いていて、とにかく心地よいです。唄が中心で、ドラム、コラ、カリンバ、ギターなどによるシンプルな伴奏がついています。

子守唄はアフリカでも親子のつながりを強めるのに大きな役割を果たしていて、お母さんはよく子どもをおぶって家事をしたり畑で働いたりするときに子守唄をうたっています。子どもたちは日常生活の一部としてこうしたうたやリズムを体にしみこませながら成長していきます。

アフリカの子守唄にはいろいろな種類があります。「おやすみ、かわいい子。わたしはここにいて、ちゃんと見守っているからね。だから心配しないでぐっすりおやすみ」という内容のものが多いのですが、中には昔話を語っているものも。ナイジェリアの「オルロンビ」はその一つで、月の光の唄ですが、ちょっと悲しい。子どものない女の人が樹木の女神イコロに子どもを授けてほしいと願い、イコロはその願いを聞き届けますが、その後赤ちゃんを取り上げてしまいます。全能の神オロドゥマレ以外に、そういう願いをしてはいけなかったというのです。

子どもにモラルや責任を教える唄もあります。ザンビアの「マヨ・パパ」は、子どもが小さいときは親が何から何まで世話をしてくれるけれど、一人前になった暁には、子どもが親の世話をするのですよ、と教えています。

アフリカの子守唄には食べ物もよく出てきます。ウガンダ出身で孤児を助けるための活動もしているサミテが自分の娘ルルテのために作った子守唄「ウェバケ」には、オレンジ、グァバ、マンゴー、パッションフルーツなどが登場しています。

またジンバブエのステラ・ランビサイ・チウェシェがうたう「チシゾ」のように、子守唄の形を借りながら、仕事を探しに子どもを置いて遠くの町に行ってしまった夫を思う内容のものもあります。

そしてアフリカの子守唄は、お母さんだけがうたうものではありません。お父さんも、おじいさん、おばあさんも、ほかの親族もうたいます。このCDにも男の人がうたっているものがたくさん入っています。

1曲目は、南アフリカの「ツラ・ムトゥワナ」で、レディスミス・ブラック・マンバーゾがズールー語で歌っています。レディスミス・ブラック・マンバーゾはおじさんたちのアカペラグループで、ポール・サイモンのグレースランドやマンデラの大統領就任式でもうたっています。私は大好きなグループで、グラミー賞も受賞し、財団(Ladysmith Black Mambazo Foundationもつくって、南アフリカの子供たちに、彼らの伝統文化と音楽を教えています。


Heart of the Forest

Heart_of_the_forestHeart of the Forest :The Music of the Baka Forest People of Southeast Cameroon
(森の奥で:カメルーン東南部の森に暮らすバカ人の音楽)

アーティスト:森に住む人たち
レーベル:Hannibal

 

カメルーン南部の熱帯雨林に暮らす小柄なバカ人の音楽です。手作り楽器を演奏しながらポリフォニーの歌声が響きます。虫の声や川の音や木のそよぎなどがバックに入っています。熱帯雨林にいるような気分になれます。

この人たちの音楽には
(1)楽しみのための音楽・・・朝、女性や子どもが川で水浴びをするとき、水を太鼓のようにたたくいたり、子どもが遊びながら歌ったりするもの。
(2)倫理的・精神的な教育のための音楽・・・コンバと呼ばれる神様からの教えを伝えるもの。
(3)儀式で使われる音楽・・・守護霊と交信したり、森の守護を願ったり、共同体の結びつきを強めるためのもの。
と3種類あるそうです。

ヨーデルのような声は、精霊の世界や亡くなった親族と交信したりするのに使われるそうです。

http://www.bakabeyond.net/album_hotf.html
http://www.cduniverse.com/search/xx/music/pid/1006239/a/heart+of+the+forest.htm

水太鼓の動画はこちら。

西欧の影響が少し入ってくると、こうなるのかな?

男の人が葉っぱを持って、踊っている女の人のお尻をあおるようにするのが面白いですけど。


長倉洋海写真 谷川俊太郎文『小さなかがやき』

小さなかがやき

『小さなかがやき』をおすすめします。

長倉さんが、エルサルバドル、アフガニスタン、ブラジル、ウィグル、南アフリカ、コソボ、ベネズエラ、レバノンなど世界各地で撮った子どもの写真に、谷川さんの詩がついています。写真も詩も、他の本で見たことがあるのと、初めて見るのとがあります。どこかで見たものでも、古い感じはしません。また心に届きます。写真と詩の組み合わせがいいからでしょう。

たとえば、エルサルバドルの戦争避難民の子どもたちが新生児を囲んで笑っている写真には、「生まれたよ ぼく」という詩がついています。

「生まれたよ ぼく
やっとここにやってきた
まだ眼は開いてないけど
まだ耳も聞こえないけど
ぼくは知っている
ここがどんなにすばらしいところか
だから邪魔しないでください
ぼくが笑うのを ぼくが泣くのを
ぼくが誰かを好きになるのを

いつかぼくが
ここから出ていくときのために
いまからぼくは遺言する
山はいつまでも高くそびえていてほしい
海はいつまでも深くたたえていてほしい
空はいつまでも青く澄んでいてほしい
そして人はここにやってきた日のことを
忘れずにいてほしい」

私は長倉さんが子どもを撮った写真がとても好きなのですが、この本は写真をより深く味わうために詩があり、詩をより深く味わうために写真がある、という有機的な構成になっているのがいいなあ、と思いました。
自分に最初の子どもが生まれたとき、私はその子はもちろんですが、それだけでなく世界中の子どもがいとおしくなりました。その時のことを思い出しました。

オビには「写真家と詩人がとらえた無垢なまなざしの光」とあります。このオビを書いた人は子ども=無垢と思ったのでしょうか? 谷川さんは、「赤んぼのまっさらなタマシイは おとなの薄汚れたタマシイよりも上等だ」と書いています。上等=無垢? 生まれたての赤ちゃんはともかく、子ども=無垢ととらえると、子どもの本質を見誤るかもしれないと、私自身は思っています。でも、子どもたちは大きな可能性と大きな力を秘めています。それをつぶしているのが、私たちおとなです。


荒井良二『あさになったので まどをあけますよ』

あさになったので まどをあけますよ

『あさになったので まどをあけますよ』をおすすめします。

朝になったら窓をあける。何気ない日常のしぐさだが、窓をあければそこには緑の自然があり、さわやかな風が吹き、海がきらめき、人々が会話をしている。

この絵本に描かれている「窓をあける」は、一日一日を新たに迎えたことを喜び、まわりのものをていねいに感じていく行為なのではないだろうか。またそれは、自分の心を開くことにもつながっているかもしれない。

2つの見開きを1つのまとまりにした場面展開には変化があり、どの風景も世界の広がりを感じさせる。

途中で2度繰り返される「きみのまちは はれてるかな?」という言葉も、読者に自分の周囲にも目を向けるように促すことによって、この絵本にもう一つの広がりを持たせている。

2011年の大震災後、日常の当たり前は、当たり前でなくなってしまった。この絵本は、被災地の人たちとのワークショップを何度も行ったことから生まれたとのこと。作者はそうした体験をベタに表現するのではなく、見事に自分の中で昇華して完成度の高い作品に仕上げている。

(2012年5月5日 産経児童出版文化賞「大賞」選評)