『わたしがいどんだ戦い1940年』表紙
『わたしがいどんだ戦い 1940年』
キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー/著 大作道子/訳
評論社
2019.07

『わたしがいどんだ戦い 1940年』をおすすめします。

『わたしがいどんだ戦い 1939年』の続編。前作には、内反足のせいで母親に虐待され、家に閉じこめられていたエイダが、疎開先でめぐりあった人々と心を通わせることによって、少しずつ変わっていくようすが描かれていた。

この続編でもまだ戦争は続き、エイダと弟が身を寄せていたスーザンの家は空襲で全壊してしまう。そこで地元の名士ソールトン家の使用人が使っていた家に引っ越さなくてはならなくなる。一方エイダはようやく内反足の手術を受けて、歩くこともできるようになる。

そのうちソールトン屋敷は軍に接収され、エイダが苦手とするソールトン夫人や、ユダヤ系ドイツ人の少女ルースも一緒に暮らすことに。当時はまだナチスの残虐性も表面化していなかったので、ルースは敵国人として村の人たちから白眼視されている。そんなこんなでエイダの視野はますます広がり、いろいろなことを考えるようになる。

それにしても、幼い日に受けた虐待の傷はなかなか癒えないものだ。エイダは、弟がスーザンをママと呼び始めることが気に入らないし、生母についてもしょっちゅういじいじと考えてしまう。なかなか素直に自分の気持ちを表現できないエイダに、読んでいてもどかしくなるほどだが、これが現実の姿なのだろう。

戦時中とはいえ楽しいひとときもあれば、スーザンが肺炎になって心細くなるひとときもある。エイダと、ソールトン夫人の娘マギー、そしてルースというこの立場も背景も違う三人がしだいに友情をはぐくんでいく様子も丹念に描かれている。

英語の原題は、「わたしがついに勝利した戦い」。死がすぐそこに迫る戦争という大状況も描いてはいるが、作者が書きたかったのはそれだけではない。むしろ作者は、エイダという悲惨な子ども時代を送ったひとりの少女が、自分の背負わされたものとの戦いに勝利をおさめる物語を書きたかったのだろう。自らも虐待を受けた経験をもつ作者ならではのリアリティが感じられる。

(トーハン週報「Monthly YA」2019年10月14日号掲載)