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ギゾギゾ!〜ゾンゴぬまのものがたり

『ギゾギゾ!』表紙
『ギゾギゾ!〜ゾンゴぬまのものがたり』
エミリー・ウィリアムソンとガーナのハッサニヤ・イスラム学校の子どもたち/作 さくまゆみこ/訳
犀の工房
2023.04

ガーナで出版された絵本です。

もともとはIBBYのオナーリスト(世界の優良図書リスト)でこの絵本を知って、「世界の子どもの本展」の出版クラブでのオープニングのときにお披露目し、その後も動画で紹介したりしたら、目をとめてくださった犀の工房の方から、翻訳を頼まれました。

カメとカニとクモが主人公の、環境汚染をなんとかしようとする物語です。ウィリアムソンさんが開いたワークショップの中で出てきた子どもたちのアイデアを活かしてお話ができ、子どもたちが作ったキャラクターをもとに絵が描かれています。近くに実際にあるゾンゴ沼をなんとかきれいにしたいという子どもたちの気持ちがよくあらわれています。巻末にはワークショップの写真も載っています。

犀の工房さんは、小さい会社のようですが、一所懸命に本づくりをなさっています。

(編集:賀来治さん)

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スホーの馬〜アジア・アフリカの民話

『スホーの馬〜アジア・アフリカの民話』 世界おはなし名作全集第10巻

さくまゆみこ文(再話)
小学館
1990.08

私がこの本のために選んで再話したのは、つぎの5話です。オムニバスなのでごちゃまぜ感もありますが、まじめに選んでまじめに訳しました。巻末の「アジア・アフリカ民話の舞台」と「さまざまな動物物語」も書いています。

◆「スホーの馬」・・・モンゴル
絵は、梶山俊夫さん。赤羽さんの絵本で有名な、馬頭琴の由来を語るお話です。私は東京外語大のモンゴル語の教授・蓮見治雄先生に原話を見せていただいて再話しました。「スホー」という名前は、蓮見先生は「スヘ」に近い発音だとおっしゃったのですが、それは何となく変だし、かといって赤羽さんの「スーホ」も使えないかなと思って、こうしました。

◆「アナンシのへびたいじ」・・・ガーナ
絵は本信公久さん。アシャンティの人たちの間に伝わるクモのアナンシを主人公にした昔話です。

◆「ジャッカルとらくだ」・・・東アフリカ
絵は、タンザニアのティンガティンガ派の画家デービッド・ムズグノさんです。タンザニアにいる友人経由で特別にたのんで描いてもらいました。

◆「のうさぎのちえ」・・・中央アフリカ
絵は、長野博一さん。アフリカ民話にたくさん登場するトリックスターのノウサギが活躍しています。

◆「どうぶつのおんがえし」・・・インド
絵は、井上洋介さん。古代インドの説話集「パンチャタントラ」に出てくるお話です。

(編集:桑原勝明さん)


ぼくはまほうつかい

マヤ・アンジェロウ文 マーガレット・コートニー=クラーク写真『ぼくはまほうつかい』さくまゆみこ訳
『ぼくはまほうつかい』
マヤ・アンジェロウ文 マーガレット・コートニー=クラーク写真 さくまゆみこ訳
アートン
2006.09

写真絵本。主人公はガーナのアシャンティ地方(アナンシの話で有名なところですよ)にくらす少年コフィ。コフィが日々の暮らしや機織りの仕事や市場のようすなどを案内してくれます。アンジェロウはアフリカ系アメリカ人で有名な詩人で、ガーナで暮らしていたことがあります。アートンのアフリカの絵本第3弾。
文章を書いたマヤ・アンジェロウはアフリカ系アメリカ人の著名な詩人で、ガーナに住んでいたことがあります。写真を撮ったコートニー=クラークはナミビアに生まれたフォトジャーナリストで、「ンデベレ基金」を創設して、南アフリカの女性や子どものアートを支援する活動も行っています。この絵本をつくるにあたっては、ガーナ各地を取材したそうです。
アートンが今はないので、図書館で見てください。
(装丁:長友啓典さん+久万美那子さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん+堀さやかさん)

◆◆◆

<訳者あとがき>

この絵本の舞台になっているガーナは、金やカカオ(チョコレートやココアの原料)の輸出国として世界的に有名です。日本では、野口英世が黄熱病の研究をした国としても知られています。

ガーナの首都は、南部の大西洋に面したところにあるアクラ。第二の都市はアシャンティ地方にあるクマシ。コフィ君がくらすボンウィレ村は、このクマシから北東に20キロばかり行ったところにあります。ボンウィレは、この絵本にもあるように、ケンテという布の産地としてとても有名な村です。

ケンテは、複雑なデザインをもつ色あざやかな手織りの布で、追われる模様にはどれも意味があると言われています。細く織った布を縫ってつなぎ、大きな布にしていくのですが、手間のかかる豪華な布なので、ガーナの人は、普通は儀式や特別なときに身にまといます。この絵本では、コフィ君が旅に出る時も、海に行く時も誇らしげに胸を張ってケンテを身にまとっていますが、実際は普段着や旅行着ではなく、晴れ着です。また日本だと機織りは伝統的には女性の仕事を思われていますが、ガーナでは男性の織り手のほうがずっと多いようです。

次に「金の腰掛け」の伝説についてご紹介しておきましょう。17世紀にお生・トゥトゥという王様がアシャンティ一帯の小王国をまとめて統一し、ここに大きな王国をつくりました。このとき、空に黄金の腰掛けがどこからともなくあらわれ、オセイ・トゥトゥ王の膝の上に降りてきたという伝説があります。この金の腰掛けはアシャンティ王国のシンボルとなり、新たに即位しようとする王様は、今でも非公開の即位の儀式のときにはその上にすわるそうです。現在のガーナは共和国で王様が治めているわけではありませんが、王様は昔ながらの儀式などをとりおこなっています。

この絵本の表紙で、コフィ君が頭の上にのせているのは、金ならぬ木製の腰掛けです。アシャンティの人たちは、こういう腰掛けにすわってご飯を食べたり、お洗濯をしたり、おしゃべりをしたりするのです。

アフリカの昔話の世界では、「クモのアナンシ」が有名ですが、知恵のまわるいたずら者アナンシも、ガーナのアシャンティ生まれだということをつけ加えておきたいと思います。

最後になりましたが、この絵本を翻訳するにあたっては駐日ガーナ大使のバフォ・アジェバゥワ閣下に貴重なアドバイスをいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

さくまゆみこ