カテゴリー: こんな本出してます

ほーら、これでいい〜リベリア民話

ウォン・ディ・ペイ他『ほーら・これでいい!:リベリア民話』さくまゆみこ訳
『ほーら、これでいい〜リベリア民話』
ウォン=ディ・ペイ & マーガレット・H・リッパート再話 ジュリー・パシュキス絵 さくまゆみこ訳
アートン
2006.10

アフリカの昔話絵本。西アフリカのリベリア北部にくらすダンの人々に昔から伝わる物語。ばらばらに存在していた頭、腕、足、胴体が出会い、合体していく愉快なストーリーを通して、社会の中でもひとりひとりが大事なのだということを子どもたちに教えていたそうです。アートンのアフリカ絵本シリーズ4作目。
(装丁:長友啓典さん+徐仁珠さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん+米倉ミチルさん)

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<訳者あとがき>

西アフリカにあるリベリアは、解放された奴隷の人たちがつくった国です。つまり、アメリカに連れていかれて奴隷として働かされていた人たちが解放後アフリカにもどって19世紀にリベリアという国をつくったのです。リベリアという名前も「自由の国」という意味です。しかし、1980年代からリベリアでは政治が不安定になり、内戦が始まり、多くの人が亡くなったり、難民になったりしました。またこの内戦は、子どもの兵士が大勢使われたことでも知られています。

今は、民主的選挙で選ばれたアフリカ初の女性大統領エレン・ジョンソン=サーリーフさんが国の立て直しや学校教育に力を注いだ結果、外国に逃げていた難民たちも戻り、平和な日々がふたたび訪れようとしています。ただし内戦で荒れ果てた国土や経済をもとにもどすには、まだまだ時間がかかるようです。

この絵本の文章を書いたウォン=ディ・ペイさんは、リベリア北東部のタビタに暮らす語り部の一家に生まれました。ダンの人々に伝わる物語は、おばあさんから教わったそうですが、それだけでなく太鼓をたたいたり、楽器をつくったり、踊ったり、仮面をつくったり、木彫りをしたり、布を染めたり、壁に絵を描いたりすることなども家族から学びました。

今ペイさんはアメリカに住んで、絵本をつくるだけでなく、主に子どもたちのために楽器を演奏しながらリベリアの昔話を語ったり、リベリアのダンスを教えたり、仮面ダンスの公演を行ったりしています。

物語の中にサクラが出て来ます。サクラというと日本の木というイメージが強いかもしれませんが、リベリアの熱帯雨林には野生のサクラの木がたくさん生えていると、ペイさんが教えてくださいました。野生のサクラだと、サクランボも日本のお店で売っているのよりは小さくてかわいい実なのでしょうね(後で調べてみると、アフリカのチェリーは、日本のとまた少しちがうようです)。

この絵本の絵は、ガーナのファンティの人々の間に伝わる「アサフォの旗」からインスピレーションを得て描かれたといいます。アサフォというのは民兵という意味で、地域を守る組織ですが、それぞれの組織が独特の絵柄をアップリケや刺繍で表現した旗を持っているのです。そのデザインや色がおもしろいので、「アサフォの旗」は、今は美術工芸品としても評価されています。

さくまゆみこ


ねむいねむいおはなし

ユリ・シュルヴィッツ『ねむいねむいおはなし』さくまゆみこ訳
『ねむいねむいおはなし』
ユリ・シュルヴィッツ作 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2006.09

アメリカの絵本。ねむいねむい夜が来て、ベッドの中の男の子もねむくなりました。部屋の中のテーブルや椅子も、壁にかかった絵も、窓のカーテンも、みんなねむそうです。ところが、どこからともなくノリのいい音楽が聞こえてきたから、みんなパッチリ目をさまし……でも最後にはまた眠りの世界へと入っていきます。
(装丁:桂川潤さん 編集:山浦真一さん)


ぼくはまほうつかい

マヤ・アンジェロウ文 マーガレット・コートニー=クラーク写真『ぼくはまほうつかい』さくまゆみこ訳
『ぼくはまほうつかい』
マヤ・アンジェロウ文 マーガレット・コートニー=クラーク写真 さくまゆみこ訳
アートン
2006.09

写真絵本。主人公はガーナのアシャンティ地方(アナンシの話で有名なところですよ)にくらす少年コフィ。コフィが日々の暮らしや機織りの仕事や市場のようすなどを案内してくれます。アンジェロウはアフリカ系アメリカ人で有名な詩人で、ガーナで暮らしていたことがあります。アートンのアフリカの絵本第3弾。
文章を書いたマヤ・アンジェロウはアフリカ系アメリカ人の著名な詩人で、ガーナに住んでいたことがあります。写真を撮ったコートニー=クラークはナミビアに生まれたフォトジャーナリストで、「ンデベレ基金」を創設して、南アフリカの女性や子どものアートを支援する活動も行っています。この絵本をつくるにあたっては、ガーナ各地を取材したそうです。
アートンが今はないので、図書館で見てください。
(装丁:長友啓典さん+久万美那子さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん+堀さやかさん)

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<訳者あとがき>

この絵本の舞台になっているガーナは、金やカカオ(チョコレートやココアの原料)の輸出国として世界的に有名です。日本では、野口英世が黄熱病の研究をした国としても知られています。

ガーナの首都は、南部の大西洋に面したところにあるアクラ。第二の都市はアシャンティ地方にあるクマシ。コフィ君がくらすボンウィレ村は、このクマシから北東に20キロばかり行ったところにあります。ボンウィレは、この絵本にもあるように、ケンテという布の産地としてとても有名な村です。

ケンテは、複雑なデザインをもつ色あざやかな手織りの布で、追われる模様にはどれも意味があると言われています。細く織った布を縫ってつなぎ、大きな布にしていくのですが、手間のかかる豪華な布なので、ガーナの人は、普通は儀式や特別なときに身にまといます。この絵本では、コフィ君が旅に出る時も、海に行く時も誇らしげに胸を張ってケンテを身にまとっていますが、実際は普段着や旅行着ではなく、晴れ着です。また日本だと機織りは伝統的には女性の仕事を思われていますが、ガーナでは男性の織り手のほうがずっと多いようです。

次に「金の腰掛け」の伝説についてご紹介しておきましょう。17世紀にお生・トゥトゥという王様がアシャンティ一帯の小王国をまとめて統一し、ここに大きな王国をつくりました。このとき、空に黄金の腰掛けがどこからともなくあらわれ、オセイ・トゥトゥ王の膝の上に降りてきたという伝説があります。この金の腰掛けはアシャンティ王国のシンボルとなり、新たに即位しようとする王様は、今でも非公開の即位の儀式のときにはその上にすわるそうです。現在のガーナは共和国で王様が治めているわけではありませんが、王様は昔ながらの儀式などをとりおこなっています。

この絵本の表紙で、コフィ君が頭の上にのせているのは、金ならぬ木製の腰掛けです。アシャンティの人たちは、こういう腰掛けにすわってご飯を食べたり、お洗濯をしたり、おしゃべりをしたりするのです。

アフリカの昔話の世界では、「クモのアナンシ」が有名ですが、知恵のまわるいたずら者アナンシも、ガーナのアシャンティ生まれだということをつけ加えておきたいと思います。

最後になりましたが、この絵本を翻訳するにあたっては駐日ガーナ大使のバフォ・アジェバゥワ閣下に貴重なアドバイスをいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

さくまゆみこ


アフリカの大きな木 バオバブ

ミリアム・モス文 エイドリアン・ケナウェイ絵『アフリカの大きな木バオバブ』さくまゆみこ訳
『アフリカの大きな木 バオバブ』
ミリアム・モス文 エイドリアン・ケナウェイ絵 さくまゆみこ訳
アートン
2006.08

ノンフィクション絵本。アフリカの大地にどっしりと根をおろし、空に向かって枝をひろげ、何千年も生きつづけるバオバブ。バオバブという木のふしぎと、サバンナに生きる動物たちの生き生きとした表情が楽しめる科学絵本です。アートンのアフリカの絵本第2弾!
(装丁:長友啓典さん+徐仁珠さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん+船渡川由夏さん)

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<訳者あとがき>

私が最初にバオバブという木があることを知ったのは、サン=テグジュペリの『星の王子さま』を読んだときでした。バオバブという言葉のひびきがとてもおもしろくて記憶に残ったのですが、同時にこの物語には、バオバブはとても悪い木だと書かれていました。毒気を発してはびこり、しまいには星を破裂させるというのです。だから芽が出ているのを見つけしだいひっこ抜かなければいけないのだ、と。

その後私は、ナイジェリアの北部でバオバブの木を実際に見る機会にめぐまれました。そのときは乾季だったので、バオバブはすっかり葉を落としていました。ちょっと見ただけでは枯れているように見えるのですが、近づいて見ると太い幹からはしっかりとした生命力が感じられ、ふしぎな思いに打たれたものです。

東アフリカに行ったときには、バオバブの繊維でつくったバッグを手に入れ、もっといろいろ知りたくなって調べてみると、バオバブは悪い木であるどころか、とても役に立つすばらあしい木だということがわかってきました。バオバブには年輪がないので樹齢を調べるのはむずかしいのですが、2000年以上生きていると信じられている木もあるようです。この絵本を見ていただけばわかりますが、どっしりと立って、まわりの人間や動物に憩いの場や、子育ての場や、住まいを提供し、食べ物や生活の道具をもたらしてくれる木、それがバオバブだったのです。とくにバオバブの巨樹は、神聖な木とみなされたり、村人たちの集会の場となったりしています。西アフリカのセネガルのように、バオバブを国の木と制定して大事にしている国もあります。

バオバブは世界に10種類以上あって、アフリカ大陸のほかにマダガスカル島やオーストラリアにも自生していますが、この絵本に描かれているのはアフリカ大陸に育つバオバブ(学名でいうとアダンソニア・ディギタータ)です。

さくまゆみこ


いちばんのなかよし〜タンザニアのおはなし

ジョン・キラカ『いちばんのなかよし:タンザニアのおはなし』さくまゆみこ訳
『いちばんのなかよし〜タンザニアのおはなし』
ジョン・キラカ作 さくまゆみこ訳
アートン
2006.07

タンザニアのティンガティンガ派の画家による、楽しい絵本です。親友だったゾウとネズミ(ずいぶんと体の大きさが違うのに!)が、とっても愉快な絵を通して、本当の友情について教えてくれます。ボローニャ国際児童図書展ラガッツィ賞受賞作品。(装丁:長友啓典さん+徐仁珠さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん)

ボローニャ国際児童図書展ラガッツィ賞受賞

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<訳者あとがき>

ボローニャ国際児童図書展でラガッツィ賞を受賞したこの絵本は、タンザニアの絵本作家ジョン・キラカが出版した2冊目の絵本です。この独特な趣のあるゆかいな絵は、ティンガティンガ派とよばれるタンザニアの画家たちの流れから生まれました。

この流派の始祖はエドワード・サイディ・ティンガティンガという1932年生まれのユニークな人で、農夫、庭師、八百屋、刺繡屋、ペンキ屋、ミュージシャンなどの仕事をしながら、絵も描いていました。最初は自転車にぬるペンキで、合板に描いていたといいます。タンザニアの動物や自然や人々の暮らしを描くその絵は、しだいに評判になり、観光客にも人気が出て売れるようになったため、ティンガティンガは親戚や友人の若者たちに教えるようになります。こうして画家のグループができたのですが、彼自身は1972年に友人たちと乗っていた車が盗難車とまちがえられて(あるいはティンガティンガが知っていたかどうかは別として、実際に盗難車だったという説もあります)パトカーに追跡され、警官に撃たれて不慮の死をとげました。

しかしティンガティンガの死後も弟子たちは活動をつづけ、今は画家たちがたがいに技をみがきあったり助け合ったりしています。ティンガティンガ派の画家の中には、観光客向けのきまりきった絵を描く人もいますが、この絵本の作者ジョン・キラカのように、豊かな独創性をもって新たな世界を切りひらいていく画家も生まれてきています。

タンザニアだけでなくアフリカ大陸はおもしろい昔話の宝庫で、動物を主人公にした昔話もたくさんあります。人間を主人公にすると、自分の悪口をいっているのではないかと勘ぐる人も出てきます。社会に波風が立つことにもなりかねないので、動物を主人公にして語ることが多いのです。

この物語は、そうした豊かな昔話にもとづいてそこにオリジナルな味わいをつけくわえたものだと思われますが、最初に本にしたのはスイスの出版社でした。私は、キラカさんが書いた英語の文章と、スイスで出版されたドイツ語の文章の両方を参照しながら、日本語に翻訳しました。

この絵本の舞台になっているタンザニアは、東アフリカにあります。赤道が近いので、季節が日本のように四つあるのではなく、雨季と乾季に分かれています。農業は今でも天候に左右される部分が大きく、雨がふるはずの雨季に日照りがつづくと、この絵本にあるように、みんなが食べるものに困るということになります。

絵本の中でバッファローやサイやシマウマが身につけているのは、カンガというきれいな布です。カンガは、巻きスカートにしたり、赤ちゃんをおぶうのに使ったり、テーブルクロスに使われたりと、暮らしの中でさまざまに用いられています。

また21ページには、果物や木の実を入れておくかご、土を焼いてつくるつぼ、ヒョウタンでつくったひしゃくなど生活の道具が描かれていますし、23ページには、板にくぼみを彫って、そこに小石や豆などを入れてあそぶバオとよばれるゲーム盤が描かれています。絵本に登場するのは動物たちですが、タンザニアの人々の暮らしぶりがわかる絵になっているのですね。

さくまゆみこ


おとうとは青がすき〜アフリカの色のお話

イフェオマ・オニェフル『おとうとは青がすき:アフリカの色のお話』さくまゆみこ訳
『おとうとは青がすき〜アフリカの色のお話』
イフェオマ・オニェフル作・写真 さくまゆみこ訳
偕成社
2006.06

写真絵本。赤は大おじさんの帽子の色、緑はヤシの葉っぱの色、金色はお母さんのネックレスの色…..。お姉さんのンネカが、「青がすき」という小さな弟のチディに、ほかにもすてきな色があるんだよ、と教えてあげます。ページをめくるたびに鮮やかな色が目に飛びこんできて、楽しみながらアフリカの文化に親しむことができます。ナイジェリア出身の著者がアフリカの暮らしや文化を楽しく伝える写真絵本シリーズの1冊。
(編集:和田知子さん)

 

 


ひみつのもり

ジーニー・ベイカー『ひみつのもり』さくまゆみこ訳
『ひみつのもり』
ジーニー・ベイカー作 さくまゆみこ訳
光村教育図書
2006.06

海の中に存在する神秘的な森を、美しいコラージュで表現しました。最初は小さな魚の死など気にしなかった少年が、その森の神秘にふれることによって、変わっていきます。海辺や海の中の表現がとてもすてきです。

ジーニー・ベイカーは、イギリスに生まれますが、オーストラリアに移住してから自然や環境問題をテーマに、精巧なコラージュを使った絵本をたくさん出しています。どれも、私は大好きです。最近の作品は、環境だけでなく社会全体に目を向けて作品をつくっているように思います。
(装丁:則武 弥さん 編集:相馬 徹さん)

オーストラリア原生自然保護協会賞受賞


ヘブンショップ

デボラ・エリス『ヘブンショップ』さくまゆみこ訳
『ヘブンショップ』
デボラ・エリス著 さくまゆみこ訳
鈴木出版
2006.04

カナダのフィクション。アフガンの子どもたちを描いてきたエリスが、今回はアフリカに出かけて子どもたちを取材し、エイズやエイズ孤児の問題に焦点を当てました。主人公は13歳のマラウイの少女ビンティ。親をエイズで亡くし、親戚に引き取られますが、そこでこき使われたうえに盗みの疑いをかけられて逃げだし、田舎のおばあさんを訪ねていきます。そのうちおばあさんも亡くなり、子どもたちだけで生きていく方法を考えます。あすなろ書房から出した『沈黙のはてに』と同じテーマですが、こちらは小学生高学年から。
(絵:斎藤木綿子さん 編集:今西大さん 装丁:こやまたかこさん)

*ジェーン・アダムズ児童図書賞銀賞


生霊わたり

ミシェル・ペイヴァー『生霊わたり』さくまゆみこ訳
『生霊わたり』 (クロニクル千古の闇2)

ミシェル・ペイヴァー著 さくまゆみこ訳
評論社
2006.04

イギリスのファンタジー。トラクが暮らす森を得体の知れない病が襲い、トラクはその治療法を捜しに旅立ちます。しかし海辺に出たトラクはアザラシ族の少年たちに捕らえられ、島に連行されてしまいます。魂食らいの意外な正体が暴かれていくこの巻は、海が舞台。レンとウルフも再び活躍します。1巻よりさらにおもしろさを増しています。
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)


ぼくはマサイ〜ライオンの大地で育つ

ジョゼフ・レマソライ・レクトン『ぼくはマサイ:ライオンの大地で育つ』さくまゆみこ訳
『ぼくはマサイ〜ライオンの大地で育つ』
ジョゼフ・レマソライ・レクトン著 さくまゆみこ訳
さ・え・ら書房
2006.02

原マサイの著者が書いたノンフィクション。ケニア北部の遊牧民の子として生まれ、キリスト教の学校に入り、伝統文化と西欧文化の間で悩みながら成長した著者の半生記。ライオン狩りの恐怖、初めて学校に入ったときのとまどい、伝統的な遊牧民の暮らし、サッカーで大統領の応援を受けたこと、アメリカに渡るときの不安などが、素朴で真摯な語り口で語られていきます。渇きで死にそうになったとき牛の鼻をなめて生き延びたという話など、びっくりするようなエピソードも。
著者のレクトンさんは、その後1年の半分はアメリカで教え、もう半分はケニアの遊牧民の福祉のために活動していましたが、今はケニアの政治家になっておいでのようです。
(編集:服部義治さん)


沈黙のはてに

アラン・ストラットン『沈黙のはてに』さくまゆみこ訳
『沈黙のはてに』
アラン・ストラットン著 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2006.01

カナダのYA小説。HIV/エイズがテーマです。舞台は南部アフリカ、主人公は16歳のチャンダ。母親と義父、妹二人、弟と暮らしています。義父がエイズになり、母親は自分もエイズにかかっていることを知り、子どもたちに迷惑をかけまいと一人で田舎に戻ります。「エイズ」という語はタブーで、口にすれば地域で仲間外れになるからです。同じようにエイズで両親を亡くした親友エスターと支え合いながら、チャンダが沈黙のタブーを破り、運命を切りひらいていこうとする物語。
『ヘブンショップ』(デボラ・エリス著 さくま訳)も、カナダの作品でした。日本の作家だと、わざわざ外国に出かけて取材したうえで作品を書いたりはしないと思いますが、カナダは、多文化理解という点では児童文学も一歩先を行っているように思います。
(イラストレーション:沢田としき 装丁:タカハシデザイン室 編集:山浦真一さん)

*プリンツ賞銀賞受賞


ゆきがふったら

レベッカ・ボンド『ゆきがふったら』さくまゆみこ訳 偕成社
『ゆきがふったら』
レベッカ・ボンド作 さくまゆみこ訳
偕成社
2005.11

『あかちゃんのゆりかご』の作者による新しい作品です。雪が降って除雪車が大きな山をつくったのを見て、子どもたちは大喜び。その雪の山にトンネルを掘り、滑り台や地下室もつくり…。作者自身の子ども時代の体験を描いた絵本で、楽しさが伝わってきます。(装丁:渋川育由さん 編集:和田知子さん)

・日本子どもの本研究会選定図書
・全国学校図書館協議会・選定図書
・日本図書館協会選定図書

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<紹介記事>

・「保育ステップアップマガジン ポット」2017年1月号

一晩中降った雪を除雪車が押して、小山に積み上げていきます。起きた子どもたちは大急ぎで雪の小山に登り、知恵を出し合って、すてきな遊び場を作ります。さあ、いったいどのような遊び場なのでしょうか。
読み聞かせのポイント:夜中に雪が降り積もり、朝には一面真っ白な世界! 子どもたちは雪山にかけ登り遊び始めます。画面いっぱいに躍動する雪遊びの楽しさが伝わってきます。臨場感のある絵をゆっくり見せたいですね。

・「edu」2015年5/6月号ふろく「子どもに読みつがせたい絵本最新定番50」

雪の日に子どもがしてみたいこと、すべてが描かれたような絵本。こんなことも、あんなことも! できたらいいね、楽しいね。そんな気持ちでゆっくり絵を見せ、リズミカルに読みます。読後、裏表紙を開いて見せると喜びますよ。


オスカーとフー いつまでも

『オスカーとフー いつまでも』
テオ文 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット絵 さくまゆみこ訳
評論社
2005.10

2004年に出た『オスカーとフー』の続編です。少年オスカーについてきた雲のフーが、ホームシックになります。オスカーは自分の夢の中にフーを連れていき、そこでフーは雲の家族と再会します。誰かの夢の中に入るって、『トムは真夜中の庭で』みたいですね。色がきれいです。
(編集:吉村弘幸さん)


マックスとたんじょうびケーキ

ローズマリー・ウェルズ『マックスとたんじょうびケーキ』さくまゆみこ訳
『マックスとたんじょうびケーキ』
ローズマリー・ウェルズ作 さくまゆみこ訳
光村教育図書
2005.09

アメリカの絵本。うさぎの姉弟ルビーとマックスが活躍します。おばあちゃんのお誕生日にあげるケーキをつくっているルビーは、弟が邪魔ばかりするのでキッチンから閉め出してしまいます。でも弟のマックスは、とってもすてきなケーキを自分でもつくるのです。二つのケーキをもらったおばあちゃんの反応がすばらしい!
(装丁・描き文字:森枝雄司さん 編集:鈴木真紀さん)


リトル・ソルジャー

バーナード・アシュリー『リトル・ソルジャー』さくまゆみこ訳
『リトル・ソルジャー』
バーナード・アシュリー著 さくまゆみこ訳
ポプラ社
2005.08

イギリスのフィクション。家族を皆殺しにされて少年兵になったカニンダは、ある日慈善団体に保護されて、いやいやながらアフリカからロンドンへやってきます。でも、カニンダが考えているのは故郷に帰って敵の氏族を殺すことだけです。一方ロンドンでも同じくらいの年齢の子どもたちが「戦争」と称するギャング同士の喧嘩をしていて、カニンダはそれに巻き込まれたり、同じ学校にやってきた敵の氏族の子どもを殺そうとしたりします。アフリカの少年兵を扱ったリアリスティックな物語。
(表紙絵:影山徹さん 装丁:鳥井和昌さん 編集:浦野由美子さん)


たのしいなつ

ロイス・レンスキー『たのしいなつ』さくまゆみこ訳
『たのしいなつ』 (ロイス・レンスキーの四季の絵本)

ロイス・レンスキー作 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2005.06

アメリカの絵本。レンスキーの四季の絵本は、この巻で4冊(ほかに『はるがきた』『いまはあき』『ふゆがすき』)そろいました。ままごと、探検ごっご、汽車ごっこ、プール遊びなど、夏のあいだの子どもたちの遊びが楽しく紹介されています。歌もついていますよ。
(編集:山浦真一さん、草野浩子さん 装丁:桂川潤さん)


オオカミ族の少年

ミシェル・ペイヴァー『オオカミ族の少年』さくまゆみこ訳
『オオカミ族の少年』 (クロニクル千古の闇1)

ミシェル・ペイヴァー著 さくまゆみこ訳
評論社
2005.06

イギリスのファンタジー。舞台は今から6000年も前の北の国。主人公の少年トラクは悪霊にとりつかれたクマに父親を殺され、孤児になってしまいます。しかも、そのクマを退治するために精霊の山に行くという使命を負わされます。旅の仲間は、オオカミの子ウルフと、ワタリガラス族の少女レン。ハラハラ、ドキドキの連続です。 あの「ハリー・ポッター」より契約金が高かったという噂の本! 6巻続くシリーズの1作目。
(絵:酒井駒子さん 編集:竹下純子さん、岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)

◆◆◆

<著者からのコメント>

私は文字が読めるようになる以前から、先史時代に惹きつけられていました。10歳になる頃には、弓矢を手にし、一匹のオオカミを友に森で一人で生きていくことを夢見るようになりました。ロンドンに住んでいたので、両親が私に飼わせてくれたのは、オオカミではなく、スパニエル犬でしたが、私は先史時代の人々がしていたことを、できる限り真似してみました。
・・・・・・大人になって、子ども時代の夢は忘れなければと思いました。大学在学中に、少年と子オオカミの話を書いたことがありましたが、あまり良い出来ではなく、放ってありました。
その15年後、南カリフォルニアの山間部を単独で徒歩旅行していたとき、突然、子グマをつれた大きな黒クマに遭遇しました。子グマを連れていることでとても気が立っており、私に出ていけと警告しました。幸いにも私は母グマをなだめることができました。(歌を歌うことで!)その間じゅう、私はおびえきっていましたが、あとになって興奮してきました。自分が時代をさかのぼったような不思議な感覚を体験したからです。
それから何年かして、昔書いたオオカミと少年の話を書きなおすことを考え始めました。クマに出会ったときの感覚を思いおこしたとたん、先史時代への熱い思いがあふれるようによみがえってきたのです。こうして生まれたのが『オオカミ族の少年』です。


ぼくとくまさん

ユリ・シュルヴィッツ『ぼくとくまさん』さくまゆみこ訳
『ぼくとくまさん』
ユリ・シュルヴィッツ作 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2005.05

『ゆき』や『よあけ』で有名なシュルヴィッツのデビュー作です。今の画風とはだいぶん趣が違いますが、デザインや空間に対するとぎすまされた感覚は共通しています。24歳でアメリカにやってきたシュルヴィッツは、自分の絵を持って出版社をまわりました。イラストレーションの仕事がほしかったからです。そして苦労してこの作品をつくりあげました。
(編集:山浦真一さん 装丁:桂川潤さん)

その時のことが『シュルヴィッツの絵本論』(未訳)に書いてあるのでちょっとご紹介しておきますね。

◆◆◆

 最初に出会った編集者は、幸運なことにスーザン・ハーシュマン(当時はハーパー・アンド・ロウ社勤務)だった。出版社を訪れたのは挿絵の仕事をもらえないかと思ってのことだった。彼女は私の作品を見て気に入ってくれたが、絵をつけるべき原稿は持ち合わせないので、自分で文章も書いて絵本をつくったらどうかと提案してくれた。私はふるえあがった。
自分で物語を書く? そんなことできるはずがない。私は画家で、作家ではない。やってみたいことはいろいろあったが、文章を書くなどという大それたことは考えてもいなかった。文章を書くということは、言葉の魔術師にこそふさわしい神秘的な行為だと思っていた。私にとって言葉を用いるということは、野生のトラを調教するようなものだった。
「どう書いていいか、わかりません」と、私は言った。
「やってみれば?」と、彼女は言う。
「でも」と私は言って、乗り越えがたい障害を思った。「私は英語を話すようになってから、まだ4年もたっていないのです」
「心配ないわ。変なところがあったら直せるから」と、彼女は請け合った。
そうまで言われれば、試みるしかない。私は何度も書いてみては、へたな文章をスーザン・ハーシュマンに見せにいく、ということを何ヶ月もつづけた。彼女の批評や提案を得て修行し、何度も失敗したあげく私はついに1冊の絵本をつくりだした。わずかな変更ののち、最初の絵本『ぼくとくまさん』The Moon in My Roomが生まれた。試行錯誤の繰り返しがなかったら、きっとつくれなかった絵本だと思う。

 

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はるがきた

ロイス・レンスキー『はるがきた』さくまゆみこ訳
『はるがきた』 (ロイス・レンスキーの四季の絵本)

ロイス・レンスキー作 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2005.03

アメリカの絵本。「はなの かおりを はこぶ かぜ。あっちも こっちも はるの いろ。」レンスキーの四季の絵本の春の巻。春の風にのって、小鳥や子どもたちの歌が聞こえてくるような、春色の絵本です。もともとのオリジナルは1945年刊。その頃は、花粉症もなかったんですよね。
(装丁:桂川潤さん 編集:山浦真一さん+草野浩子さん)


かわっちゃうの?

アンソニー・ブラウン『かわっちゃうの?』さくまゆみこ訳
『かわっちゃうの?』
アンソニー・ブラウン作 さくまゆみこ訳
評論社
2005.03

イギリスの絵本。「これからは、いろんなことがかわるんだよ」とお父さんがジョーゼフに言い置いて出かけていきます。一体、何が変わるの? どんなふうに変わるの? 自分の下に赤ちゃんが生まれることになった男の子の不安をこれほど見事に描いた絵本はないと、私は思っています。ページを追うごとに何かが変わっていきますが、何が変わっていくのかを発見する楽しみもあります。アンソニー・ブラウンの作品にしては、人間もリアルに描けています。ゴリラの絵はもちろん秀逸です。
私はこの表紙ではなく、もっと魅力的なペーパーバックの表紙を日本語版では使ってほしいとお願いしたのですが、なぜかハードカバーの原書の表紙がそのまま使われてしまっていました。
(編集:吉村弘幸さん)


ヒットラーのむすめ

ジャッキー・フレンチ『ヒットラーのむすめ』さくまゆみこ訳
『ヒットラーのむすめ』
ジャッキー・フレンチ著 さくまゆみこ訳 北見葉胡挿絵
鈴木出版
2004.12

オーストラリアのフィクション。ある雨の日スクールバスを待っているときに、アンナは「ヒットラーには娘がいて……」というお話を始めます。マークは、アンナの作り話だと思いながらも、だんだんその話に引き込まれ、「もし自分のお父さんがヒットラーみたいに悪い人だったら……」「みんなが正しいと思っていることなのに、自分は間違っていると思ったら……」などと、いろいろと考え始めます。物語としてとてもうまくできています。現代の子どもが、戦争について考えるきっかけになるのではないかと思います。
(装丁:鈴木みのりさん 編集:今西大さん)

オーストラリア児童図書賞・最優秀賞
産経児童出版文化賞JR賞(準大賞)

◇◇◇

〈訳者あとがき〉

ヒットラーを知っていますか? 名前は聞いたことあるけど、よく知らないという人も多いかもしれません、。アドルフ・ヒットラーは一八八九年オーストリアに生まれ、最初は芸術家になろうとしますが失敗してドイツに移住し、第一次世界大戦にドイツ兵として参戦します。一九一九年にはドイツの労働党(のちのナチス)に入党して、たくみな演説で人々の心をとらえて党の独裁者となり、三四年には首相と大統領を兼ねて自らを総統と称するようになります。それ以降は、気に入らない「敵」を抹殺し、近くの国をどんどん侵略して、第二次世界大戦を引き起こします。そして大戦中に六〇〇万人のユダヤ人、五〇万人のロマ人、ほかに体の不自由な人たちなどあわせて約一一〇〇万人を、強制労働や毒ガスなどで大量に虐殺したのです。このとき日本は、イタリアとともにヒットラーのドイツと手を結び、オーストラリアをふくむ世界を敵に回して戦って負けたのでした。

第二次世界大戦とか、ナチスとかヒットラーというと、自分とはあまり関係のない昔の話に思えます。『アンネの日記』や、わたしが訳した『もう一つの「アンネの日記」』など、ナチスが支配した社会の中でのユダヤ人の苦しみを書いた本は、日本でも数多く出版されてよく読まれていますが、きっと昔の歴史をふりかえるような気もちで読む人が多いと思います。そして今はもうそんなひどい時代は終わってみんながより幸せな暮らしをすることができるようになったのだと、わたしたちはつい思ってしまいがちです。

でも、ほんとうにそうなのでしょうか? 身の回りには苦しんでいる人たちが見えなくても、世界を見まわしてみると、あのときのユダヤ人と同じように理不尽な弾圧や攻撃を受けて苦しんでいる人たちは、まだたくさんいるのではないでしょうか? マークの夢の中には、ジーンズをはいて現代風のヘアスタイルをしたヒットラーが出てきますが、今の時代だってヒットラーのような人がまたあらわれるかもしれません。あるいは、もうあらわれているのかもしれません。

この『ヒットラーのむすめ』は、ほんとうにいたかどうかわからない謎の少女ハイジと、ハイジの物語にひきこまれていく現代の少年マークをうまくつなげることによって、第二次世界大戦の時代と、わたしたちが生きている今の時代をうまく結びつけています。マークは「どうやったら善悪の違いがわかるのだろう?」とか、「自分のお父さんが極悪人だったらどうしたらいいだろう?」などと、さまざまな疑問をもちますが、それはマークだけでなく、多くの子どもたちがいだく疑問ではないでしょうか?

作者のジャッキー・フレンチは、子どもの本ばかりでなく園芸や料理の本も書いているオーストラリアの女性作家です。『ヒットラーのむすめ』はオーストラリア児童図書賞を受賞したばかりでなく、イギリスやアメリカでも賞を受けたり推薦図書にえらばれたりして、高い評価を受けています。

さくまゆみこ


ふしぎの国のレイチェル

エミリー・ロッダ『ふしぎの国のレイチェル』さくまゆみこ訳
『ふしぎの国のレイチェル』
エミリー・ロッダ著 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2004.12

オーストラリアのファンタジー。「リンの谷のローワン」シリーズでおなじみのロッダさんが書いた、おかしなおかしな物語。風邪をひいて退屈していたレイチェルは、いつのまにかユニコーンに乗って、空にブタが浮かぶふしぎな次元に入り込んでしまいます。おまけに出会ったおばあさんも、おじいさんも、どこかおかしい! ロッダさんのユーモアのセンスが全開になり、謎解きもあって、たのしく読める一冊です。
(絵:杉田比呂美さん 装丁:高橋雅之さん 編集:山浦真一さん、佐近忠弘さん)

*オーストラリア児童図書賞・最優秀賞
*SLA夏休みの本(緑陰図書)選定


ふゆがすき

ロイス・レンスキー『ふゆがすき』さくまゆみこ訳
『ふゆがすき』 (ロイス・レンスキーの四季の絵本)

ロイス・レンスキー作 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2004.11

アメリカの絵本。そりすべり、雪だるまに雪合戦、アイススケート、クリスマスとサンタクロース、バレンタイン……と、寒いけど冬は楽しい季節。「ふゆが すき。ゆきが すき。つめたい かぜも なんのその。ひらひら ゆきが まいおりて あたり いちめん ぎんせかい」歌の楽譜もついています。
(装丁:桂川潤さん 編集:山浦真一さん、草野浩子さん)


いまはあき

ロイス・レンスキー『いまはあき』さくまゆみこ訳
『いまはあき』 (ロイス・レンスキーの四季の絵本)

ロイス・レンスキー作 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2004.11

風に舞う木の葉、落ち葉のじゅうたん、りんごの収穫、木の実拾い、渡り鳥、ハロウィーン……レンスキーが秋の楽しさを描いたかわいい絵本です。サイズも、持ち歩きにちょうどいい大きさ(148ミリX 126ミリ)。もう何年も前にアメリカに行ったときに見つけた絵本です。
(装丁:桂川潤さん 編集:山浦真一さん、草野浩子さん)


いのり〜聖なる場所

『いのり〜聖なる場所』
フィリモン・スタージス文 ジャイルズ・ラロッシュ絵 さくまゆみこ訳
光村教育図書
2004.09

アメリカのノンフィクション絵本。イスタンブールのブルーモスク、ガンジス川の水あび場、フランスのシャルトル大聖堂・・・世界各地にある28箇所の「聖なる場所」を精巧なペーパークラフトで再現した美しい絵本です。キリスト教、イスラム教、仏教、ユダヤ教、ヒンズー教について、そして祈りについて、宗教にまつわるさまざまなことを考えさせてくれます。
(装丁:桂川潤さん 編集:鈴木真紀さん)


オスカーとフー

『オスカーとフー』
テオ文 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット絵 さくまゆみこ訳
評論社
2004.07

オランダ生まれのアニメーション作家とフランス生まれのテレビ番組制作者がつくった絵本。砂漠で迷子になった男の子オスカーが小さな雲フーと出会って、友情をはぐくむ物語。この夏、来日した二人に会いました。とてもいい人たちでした。(編集:竹下純子さん)


カマキリと月〜南アフリカの八つのお話

マーグリート・ポーランド『カマキリと月:南アフリカの八つのお話』さくまゆみこ訳
『カマキリと月〜南アフリカの八つのお話』
マーグリート・ポーランド著 さくまゆみこ訳
福音館書店(福音館文庫F-11)
2004.04

南アフリカのフィクション。南アフリカに古くから住んでいる人々の世界観や宇宙観をよりどころにして書かれた、八つの動物ものがたり。主人公の動物たちが、自然の中でいとなむ暮らしや冒険の物語には、私たちを深いところから元気にしてくれる優しい力があふれています。以前単行本で出ていた作品の、文庫での再刊です。
(絵:リー・ヴォイトさん 装丁:辻村益朗+大野隆介さん 編集:松本徹さん)

*パーシー・フィッツパトリック青少年文学賞(南アフリカ)受賞
*産経児童出版文化賞受賞


なんだってしてあげるよ

ジョン・ウォレス文 ハリー・ホース絵『なんだってしてあげるよ』さくまゆみこ訳
『なんだってしてあげるよ』
ジョン・ウォレス文 ハリー・ホース絵 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2004.03

イギリスの絵本。小さなクマのチャーリーと大きなクマのジンジャーが登場する愛の物語。原書では両方ともheですが、この2匹はどういう関係なのでしょう。お父さんと息子? それともおじいちゃんと孫かな? それとも年の離れた友だち? もしかするとチャーリーはみなしご? いろいろに想像できます。おやすみなさいの絵本でもあります。
(装丁:田辺卓さん 編集:山浦真一さん)


せかいいちゆうかんなうさぎラベンダー

ポージー・シモンズ『せかいいちゆうかんなうさぎラベンダー』さくまゆみこ訳
『せかいいちゆうかんなうさぎラベンダー』
ポージー・シモンズ作 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2004.02

イギリスの絵本。ラベンダーは内気でおとなしい慎重派。お兄さんやお姉さんが危なっかしい遊びをするので、いつもハラハラしています。ピザやドーナツが好きな町のキツネが遊びにやってきても、用心して近寄りません。「よわむし!」「おくびょうもの!」と言われたラベンダーが、どうやって世界一勇敢なウサギと言われるようになったのか……まあ、読んでみてください。
(装丁:桂川潤さん 編集:山浦真一さん)


おいしそうなバレエ

ジェイムズ・マーシャル文 モーリス・センダック絵『おいしそうなバレエ』さくまゆみこ訳
『おいしそうなバレエ』
ジェイムズ・マーシャル文 モーリス・センダック絵 さくまゆみこ訳
徳間書店
2003.10

さえないオオカミがブタの街に迷いこみました。見ると劇場があって、看板には、おいしそうなころころ太ったブタが! しめしめ、とオオカミは劇場に入っていきますが、見ているうちにバレエの素晴らしさにすっかり魅せられてしまいます。親友だったマーシャル亡きあと、残された原稿にセンダックが絵を描きました。とにかく笑えるし、二人の友情にもホロリとさせられます。
(装丁&描き文字:森枝雄司さん 編集:米田佳代子さん)

*SLA「よい絵本」選定


ジュリー〜不思議な力をもつ少女

コーラ・テイラー『ジュリー:不思議な力をもつ少女』さくまゆみこ訳
『ジュリー〜不思議な力をもつ少女』
コーラ・テイラー著 さくまゆみこ訳
小学館
2003.10

カナダのフィクション。ジュリーには、ほかの人には見えないものが見えています。幼いころは作り話がじょうずだと言われましたが、物心ついてからは普通と違うことが不安で、どうしていいかわからなくなることもあります。でも、まわりに人には、この気持ちはなかなかわかってもらえません。ある日、ジュリーは空を船団がゆっくり進んでくるのを見ました。これはいったい何を意味しているのでしょう? ジュリーは心配でたまらなくなります。
(絵:佐竹美保さん 装丁:岡孝治さん 編集:喜入今日子さん)

*カナダ図書館協会最優秀児童図書賞受賞
*カナダ総督文学賞受賞


ローワンと白い魔物

エミリー・ロッダ『ローワンと白い魔物』さくまゆみこ訳
『ローワンと白い魔物』 (リンの谷のローワン5)

エミリー・ロッダ著 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2003.07

オーストラリアのファンタジー。ローワン・シリーズの5作目です。リンの谷はいつまでも白い雪にとざされ、おまけに山の上からは白い魔物が這い出てきます。食料がなくなり、村人たちは山をおりて避難する羽目になってしまいました。なんとかして冬を終わらせて春をもたらそうと、またローワンが活躍します。今度はノリス、シャーラン、ジールと一緒の冒険です。
(絵:佐竹美保さん 装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん+佐近忠弘さん)

◇◇◇

〈訳者あとがき〉

お待たせいたしました。ローワン・シリーズの五巻目の日本語版をお届けします。

このシリーズは、熱心に読んでくださる方が多く、「次の巻を早く翻訳して」というお便りもたくさんいただきました。ありがたいことです。この巻にも、そうしたロッダ・ファンの期待を裏切らないおもしろさがいっぱいつまっています。

今回は、まだオーストラリアで原書が出る前の校正刷りを入手して訳し始めました。第一段階の翻訳原稿がちょうど出来上がったころ、オーストラリアで出版された本を見てびっくり。表紙のイメージが前の四巻とはがらっと変わっていたのです。でも、日本語版は相変わらず佐竹美保さんのすばらしい絵がついているので、シリーズのイメージはそのままで楽しんでいただけると思います。先日韓国でもこのシリーズの一巻目『ローワンと魔法の地図』が出版されましたが、この韓国版にも、佐竹さんの表紙絵や挿絵がそっくり使われています。

それにしても、エミリー・ロッダという作家は、本当にじょうずなストーリー・テラーだと思います。どの巻も、読者をぐんぐん引っぱっていき、最後にはまたどんでん返しを用意しているという構成には、わたしも感心させられっぱなしです。

エミリー・ロッダのホームページに、作品を書くためのヒントがのっていました。創作に対する作者の考え方の一端がわかるように思うので、ちょっと紹介しておきましょう。

・書きつづけましょう。
・自分が知っているタイプの人や場所について書いてみるのがいいでしょう。
・自分が物語の世界の中で実際に生きているつもりになりましょう。そして、どう感じるのか、何が見えるのか、何が聞こえるのかを描写しましょう。そうすれば読む人も、物語の世界の中に入りこむことができます。
・読書も役に立ちますが、自分自身のスタイルをみがけばみがくほど、書いたものはよくなります。
・書くことを楽しみましょう!

ご自分もきっと楽しんで書いていらっしゃるのでしょう。わたしも楽しんで翻訳をしました。

さて、ローワン・シリーズはこのあとまだ続くのでしょうか? もっと続けて読みたいとわたしも思いますが、今のところはまだ未定のようです。とりあえず次は犬たちを主人公にしたエミリー・ロッダ作品をご紹介したいと思っています。これも、愉快な作品なので、楽しみにしていてくださいね。

二〇〇三年七月一〇日

さくまゆみこ


北の魔女ロウヒ

バーバラ・クーニー絵『北の魔女ロウヒ』さくまゆみこ訳
『北の魔女ロウヒ』
バーバラ・クーニー絵 トニ・デ・ゲレツ原文 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2003.01

フィンランドに伝わる民族叙事詩カレワラを下敷きにした絵本です。東京の洋書屋さんで見かけて、クーニーの絵にほれこみました。文章は、クーニーの絵を見ながら、カレワラを参考にして書き直しました。ロウヒが太陽を山の奥深くに閉じ込めたため、あたりは真っ暗に。また太陽が空に上がるまでの、天照大神の話にも似た物語です。とにかく絵がすてき。
(装丁:桂川潤さん 編集:山浦真一さん)


ローワンとゼバックの黒い影

エミリー・ロッダ『ローワンとゼバックの黒い影』さくまゆみこ訳
『ローワンとゼバックの黒い影』 (リンの谷のローワン4)

エミリー・ロッダ著 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2002.12

オーストラリアのファンタジー。ローワン・シリーズの第4作目。妹のアナドが怪物に誘拐されたため、ローワンはゼバックの地に乗り込んでいきます。そこで出会ったのが、絹に絵を描いてきた家族。そして、300年ものあいだ隠されていたリンの歴史の秘密が明らかになります。異世界ファンタジーですが、著者のロッダさんは、やっぱりこの異世界の成り立ちまでしっかり考えてシリーズを作られていたのですね。
(絵:佐竹美保さん 装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん、佐近忠弘さん)

◇◇◇

〈訳者あとがき〉

オーストラリアで生まれて、日本でも大人気の〈リンの谷のローワン〉シリーズの四巻目をおおくりします。

このシリーズは、それぞれの巻が独立した物語になっているので、どの巻から読んでいただいてもいいのですが、本書から読みはじめる方のために、かんたんな説明をしておきます。

一巻目の『ローワンと魔法の地図』では、リンの村でバクシャーという家畜の世話係をしているローワンが、ほかの村人六人といっしょに、〈禁じられた山〉に登る羽目になります。ローワン以外はみんな勇敢でたくましい大人たちです。ところが、〈禁じられた山〉は一行七人を次々に試練にかけてゆき、一人また一人と脱落してしまいます。最後には、村に水が流れてこなくなった原因が突き止められ、リンはまた豊かな水に恵まれた村としてよみがえります。「勇気」をテーマにしたこの作品には、リンの村の成り立ちや、ローワンの家庭環境についても、くわしく書かれています。

二巻目の『ローワンと黄金の谷の謎』には、リンの村人と、〈旅の人〉たちの反目が描かれています。奇妙な眠り病に襲われたリンの村人たちは、〈旅の人〉が呪文をかけたのではないかと疑うのです。ところが、病の原因は思いがけないところにあり、それを発見したローワンは、村人を助けるために空を飛んで大活躍します。エコロジーの観点も取り入れた作品です。

三巻目の『ローワンと伝説の水晶』の舞台は、海ぞいのマリスの地です。マリスの民のリーダー〈水晶の司〉は、三氏族の代表の中から選ばれるのですが、選ぶ役目はリンの〈選びの司〉。リーダー選びの際には各氏族の思惑が入り乱れ、マリスの地は混乱に陥ります。その混乱に乗じて、海の向こうからゼバックが攻めてきます。〈水晶の司〉にふさわしいのは誰なのか? 果たしてゼバックは撃退できるのか? 最後にはあっと驚くどんでん返しが待っています。

作者のエミリー・ロッダは、すでに六〇点以上の児童書を書いている人気作家です。『デルトラ・クエスト』(邦訳は岩崎書店)などゲーム的なおもしろさを前面に押し出した作品もありますが、文学としての味わいの深い作品もあり、オーストラリア児童図書賞を何度も受賞しています。このローワンのシリーズは、ロッダの作品の中では子どもの人気がいちばん高く、またご自分でもいちばん楽しく執筆できたシリーズとのことで、一巻目が児童図書賞の最優秀賞を、三巻目が優秀賞を獲得し、四巻目以降も候補作に挙がりました。図書館でも高い評価を受けています。

この秋には五巻目が出版されると聞いているので、今度はどんな展開になるか、私も楽しみにしています。

二〇〇二年五月

さくまゆみこ


クリスマスのちいさな木

e.e.カミングズ文 クリス・ラシュカ絵『クリスマスのちいさな木』さくまゆみこ訳
『クリスマスのちいさな木』
クリス・ラシュカ作 さくまゆみこ訳
光村教育図書
2002.11

クリスマスの絵本。e.e.カミングズのクリスマスの詩をもとにしています。森の中の小さな木が、都会に出てクリスマス・ツリーになる夢を見ていると、ある日、その夢がかなって、小さな家の小さな家族にクリスマス・ツリーとして迎えられます。ラシュカの独特な絵が、あたたかい雰囲気をかもしだしています。
(装丁:桂川潤さん 編集:鈴木真紀さん)


ミラクルズ ボーイズ

ジャクリーン・ウッドソン『ミラクルズボーイズ』さくまゆみこ訳
『ミラクルズ ボーイズ』
ジャクリーン・ウッドソン著 さくまゆみこ訳
理論社
2002.11

アメリカのフィクション。ニューヨークのハーレムで、三人の兄弟が生き抜いていく物語です。兄弟の父はアフリカ系アメリカ人で、池で溺れそうになった白人女性を助けて低体温症になり、命を落としてしまいます。兄弟の母はプエルトリコ人で、病気で亡くなります。残された息子たちは、それぞれがトラウマを抱えながら、なんとか三人で生きていこうとします。
(絵:沢田としきさん 装丁:高橋雅之さん 編集:小宮山民人さん、奥田知子さん)

*コレッタ・スコット・キング賞受賞


サバンナのともだち

『サバンナのともだち』
キャロライン・ピッチャー文 ジャッキー・モリス絵 さくまゆみこ訳
光村教育図書
2002.09

アフリカのサバンナでジョゼフ少年と金色のたてがみのライオンが友だちになります。けれどジョゼフはライオンをお父さんが商人に売り渡すのではないかと心配に。 広いサバンナと星空と、村の風景が美しく表現されています。
(装丁:渋川育由さん 編集:鈴木真紀さん)


おかあさんともりへ

『おかあさんともりへ』
ゲオルク・ハレンスレーベン絵 ケイト・バンクス文 さくまゆみこ訳
講談社
2002.03

舞台はアフリカ。ヒヒの赤ちゃんが、お母さんと一緒に森に出かけ、いろいろな動物と出会います。そしてヒヒの赤ちゃんは、この世界がさまざまな特徴をもっていることを知るのです。『おつきさまはきっと』で好評のハレンスレーベンの絵本。
(装丁:田中久子さん 編集:塩見亮さん)


あかちゃんのゆりかご

レベッカ・ボンド『あかちゃんのゆりかご』さくまゆみこ訳
『あかちゃんのゆりかご』
レベッカ・ボンド作 さくまゆみこ訳
偕成社
2002.01

赤ちゃんが生まれてくるのを知って大喜びの家族。お父さんは、海で静かに揺れる船や、巣の中で静かに揺れる小鳥たちのことを考えながら、ゆりかごをつくります。おじいちゃんは、同じ地球に暮らすほかの動物たちのことを考えながら、ゆりかごに魚や動物の絵を描きます。おばあちゃんは、家族や親戚のことを一人一人思い出しながら、端切れを縫ってベッドカバーを作ります。お兄ちゃんは、早くいっしょに遊びたいなと思いながら、ベッドにつけるモビールをつくります。そして、お母さんはそのゆりかごを、窓辺に持って行って「そとを みながら、やわらかな つきのひかりや すがすがしい あさひのことを かんがえました。よぞらのほしや ひんやりした よるのくうきのことも かんがえました」。
やがて生まれてきた赤ちゃんが大泣きしても、だいじょうぶ。家族のそれぞれが思いをこめながら完成させたゆりかごに寝かせると、赤ちゃんは安心して、すやすや眠るのです。どの見開きにも、黒い犬が登場しています。犬も見守っているのですね。
(装丁:渋川育由さん 編集:和田知子さん)

・全国学校図書館協議会・選定図書
・社会保障審議会推薦文化財
・日本子どもの本研究会選定図書
・日本図書館協会選定図書

◆◆◆

<紹介記事>

・「おさなご」(長野県市立幼稚園協会編)2012.03

文字がわからない子どもたちにも温かい絵柄と色彩で楽しめる1冊。赤ちゃんが生まれてくるとわかった時の家族の喜びは誰も同じ気持ち。お父さんはゆりかご作りに取り掛かり、おじいちゃんはそのゆりかごにペンキを塗ります。おばあちゃんはベッドカバーを作り、お兄ちゃんはおもちゃを作りました。赤ちゃんに注がれるやさしい家族の眼差しに、心が温かくなります。

・「紀伊民報」2017年4月7日

もうすぐ赤ちゃんが生まれます。家族は手を取りあって、大喜び。
お父さんは、すべすべにかんなをかけた板でゆりかごを組み立てました。おじいちゃんは、そのゆりかごにペンキを塗って、青い海や空を飛ぶ大きな鳥を描きました。おばあちゃんは、小さな布を縫い合わせてベッドカバーを作りました。お兄ちゃんは、赤ちゃんが楽しめるように、モビールをゆりかごに付けました。
家族の一人一人が、赤ちゃんが生まれてきてからの新しい世界をうっとりと思い浮かべながら、リレーのようにゆりかごを作り上げていきます。その様子を、そっと見守るお母さん。赤ちゃんがお母さんのおなかで育っていく間に、足りないところはひとつもないすてきなゆりかごが、出来上がりました!
絵本全体に、新しい命を迎える喜びがあふれています。この絵本を読みながら、お子さんがおなかにいたときのことや、赤ちゃんのときのことを一緒にお話ししてみるのもいいですね。自分が生まれてきたときのことを家族から聞くことで、自分がどれだけ大事にされているのかを、実感できるのではないでしょうか。この4月から、新しい環境に飛び込んだ子どもたちも多いと思います。自分が大事にされているという実感は、きっと、子どもたちの背中を後押ししてくれるでしょう。(県立紀南図書館)

・「月刊リトル・ママ」〜妊婦さんにおすすめの本〜 2018年10月15日号

お父さんが作ったゆりかごにおじいちゃんが色を塗り、おばあちゃんがベッドカバーを縫い、お兄ちゃんがモビールを作って・・・と、赤ちゃんが待ちきれない一家のお話。赤ちゃんが少し大きくなってから、「こんなふうに待っていたんだよ」と読んであげてもいいですよ。

・「RADIANT」(立命館大学研究部)2018年3月号〜年代を超えて、心に働きかける絵本〜

お母さんは妊娠中。お父さんがゆりかごを作ると、おじいちゃんとおばあちゃん、そしてお兄ちゃんは赤ちゃんのためにゆりかごを飾り、赤ちゃんがやってくるのを待っている。家族の温かさと赤ちゃんを待つ喜びを感じさせる絵本。


ローワンと伝説の水晶

エミリー・ロッダ『ローワンと伝説の水晶』さくまゆみこ訳
『ローワンと伝説の水晶』 (リンの谷のローワン3)

エミリー・ロッダ著 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2002.01

オーストラリアのファンタジー。『ローワンと魔法の地図』『ローワンと黄金の谷の謎』に続く<リンの谷のローワン>シリーズの第3作目です。不思議な呼び出しを受けたジラーとローワンは、海辺にあるマリスの町まで出かけていきます。ところが、マリスでは〈水晶の司〉の地位をめぐって3種族が争っており、ローワンは思わぬ冒険にひきずりこまれてしまいます。最後のどんでん返しには、うなってしまいました。
(絵:佐竹美保さん 装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん、佐近忠弘さん)

◇◇◇

〈訳者あとがき〉

ローワンシリーズも本書で三作目となり、弱虫だったローワンも少しずつたくましくなってきました。それぞれ独立した物語になっているので、どの巻から読んでいただいてもいいのですが、本書から読み始める方のために少し説明をしておきましょう。もっとも、いちばんおもしろい部分は実際に作品を読んで楽しんでいただいたほうがいいので、ここでは簡単な紹介にとどめます。

一作目の『ローワンと魔法の地図』では、リンの村でバクシャーという家畜の世話係をしているローワンが、ほかの村人六人と一緒に、魔の山に登る羽目になります。ローワン以外はみんな勇敢でたくましい大人たちです。ところが魔の山は一行七人を次々に試練にかけてゆき、一人また一人と脱落してしまいます。最後には、村に水が流れてこなくなった原因がつきとめられ、リンはまた豊かな水に恵まれた村としてよみがえります。この巻には、リンの村の成り立ちや、ローワンの家庭環境についても、くわしく書かれています。

二作目の『ローワンと黄金の谷の謎』には、リンの村人と〈旅の人〉たちの反目が描かれています。奇妙な眠り病に襲われたリンの村人たちは、〈旅の人〉が呪文をかけたのではないかと疑うのです。ところが病の原因は思いがけないところにあり、それを発見したローワンは、村人を助けるために空を飛んで大活躍します。

『ローワンと魔法の地図』も『ローワンと黄金の谷の謎』も、おかげさまで大変評判がよく、弱虫で怖がりやのローワンも、多くの人に気に入ってもらえているようです。謎解き、冒険、ファンタジーと、おもしろい要素をそろえたこのシリーズは、一作目がオーストラリアで最も優れた児童文学にあたえられる児童図書賞の最優秀賞を、三作目の本書が優秀賞を受けています。

オーストラリアでは現在四作目まで出版されていますが、二〇〇二年の秋には、五作目も出版されるというので、今度はどんな物語になるのか、私も今から楽しみにしているところです。

本書を訳すにあたって、原著の設定が少しわかりにくかった箇所は、日本語版ではわかりやすく改めました。それも、手紙で著者のエミリー・ロッダさんに質問をし、話し合った結果であることをお断りしておきます。

最近本屋さんには新しい冒険ファンタジー作品がたくさん並んでいるので、私もいろいろ読んでみました。ひいき目かもしれませんが、やっぱりローワンのシリーズがいちばんおもしろい、と私はひそかに思っています。とくに、スピーディーな展開でありながら、それぞれの人物がうかびあがるように描かれているところが、私は好きです。それに私は、文章の端々に垣間見える作者の世界観も、なかなか気に入っているのです。

二〇〇二年一月

さくまゆみこ


AはアフリカのA〜アルファベットでたどるアフリカのくらし

イフェオマ・オニェフル『AはアフリカのA:アルファベットでたどるアフリカのくらし』さくまゆみこ訳
『AはアフリカのA〜アルファベットでたどるアフリカのくらし』
イフェオマ・オニェフル作・写真 さくまゆみこ訳
偕成社
2001.09

「AはアフリカのA アフリカ大陸には、たくさんの国があって、おおぜいの人がくらしています。着ているものや、話すことばはちがっても、アフリカ大陸は、みんなのふるさとです」「BはビーズのB 女の子は、頭や耳や首をビーズでかざります。・・・」「CはカヌーのC カヌーは、魚をとったり、売るものを市場にはこんだりするのに、つかわれます・・・」AからZまでの文字の一つ一つと共に、アフリカの文化のさまざまな側面が紹介されていきます。作者は、西アフリカのナイジェリア生まれの女性フォトグラファーです。
(編集:西野谷敬子さん)

*産経児童出版文化賞推薦


ふれ、ふれ、あめ

カレン・ヘス文 ジョン・J・ミュース絵『ふれ、ふれ、あめ!』さくまゆみこ訳
『ふれ、ふれ、あめ』
カレン・ヘス作 ジョン・J・ミュース絵 さくまゆみこ訳
岩崎書店
2001.07

アメリカの絵本。ニューベリー賞を受賞したヘスの詩的な文章と、緑と光と熱気と雨の表現がすばらしいミュースの絵。暑い暑い夏にぴったりの絵本です。恵みと豊かさをもたらす雨が降ってみんなの気持ちがほどけ、さまざまな肌の色の家族がみんな笑顔になっていく様子がよく表現されています。
(装丁:鈴木康彦さん 編集:河本祐里さん)


奇跡の子

ディック・キング=スミス『奇跡の子』さくまゆみこ訳
『奇跡の子』
ディック・キング=スミス著 さくまゆみこ訳
講談社
2001.07

イギリスのフィクション。著者のキング=スミスが、自分でいちばん気に入っているという作品です。イングランドの田舎の牧場にある日捨てられていた男の子は、障碍を背負っていたものの、馬や鳥やキツネやカワウソたちと心を通わせることができました。この少年が、まわりの人々や動物と交流をしながら生きた軌跡をたどります。宮澤賢治の『虔十公園林』を思わせるような、愉快な作品が多いキング=スミスとしては異色のしみじみとした作品です。
(絵:華鼓さん 装丁:野崎麻理さん 編集:中田雄一さん)


ローワンと黄金の谷の謎

エミリー・ロッダ『ローワンと黄金の谷の謎』さくまゆみこ訳
『ローワンと黄金の谷の謎』 (リンの谷のローワン2)

エミリー・ロッダ著 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2001.07

オーストラリアのファンタジー。『ローワンと魔法の地図』に続くローワン・シリーズの第2巻。リンの村が闇に潜む敵の魔手におびやかされ(といってもこの辺が普通の物語とはひと味ちがいます)、弱虫のローワンが、こんどは〈旅の人〉の少女ジールと一緒に空を飛び、またまた思いがけない冒険をすることになります。どきどきワクワクのエンタテイメントですが、ある意味では自然の力の恐ろしさと素晴らしさを描いた作品ともいえると思います。
(絵:佐竹美保さん 装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん、佐近忠弘さん)

◇◇◇

〈訳者あとがき〉

本書は、オーストラリアの作家エミリー・ロッダが書いたローワンの冒険シリーズの二作目です。シリーズといっても、それぞれの巻で物語は完結するので、一作目の『ローワンと魔法の地図』を読んでから本書を読んでもおもしろいし、この二作目から読み始めてもおもしろい、と思います。わたしは、オーストラリアのバイロン・ベイという町で初めて出会った三作目から読み始めて、このシリーズにすっかりはまってしまいました。

オーストラリアで今いちばん人気のある女性作家エミリー・ロッダは、一九四八年にシドニーに生まれ、子どものころから本を読んだり物語を書いたりするのが大好きでした。結婚して子どもができてからは、その子たちに物語をつくってきかせていましたが、そのうちそうした物語を気に入ってくれる人が家族以外にもふえていきました。最初は出版社で編集の仕事をしながら、自分の趣味として少しずつ作品を書いていましたが、どんどん人気が高くなり、一九九四年からは作家業に専念しています。

今でも「趣味は何ですか?」ときかれて「本を読んだり書いたりすること」と答えるくらいですから作家専業になったのが遅いわりには作品数も多く、これまでに子どもの本を四八点、大人向けのミステリーを八点出版し、オーストラリア最高の子どもの本にあたえられる児童文学賞を五回も受賞しています。

つぶぞろいの作品を次々にうみだす秘密は、エミリー・ロッダがいつも持ち歩いているノートにあるようです。このノートに、何かのときにふっと頭にうかんだアイディアやプロットや、おもしろい人物などのことを、なんでも書き留めておくのだそうです。そして執筆中にゆきづまったときは、このノートを開くと、書き進めていくヒントが見つかるのだといいます。

数多くの作品の中で、子どもにいちばん人気が高いのが、このローワンのシリーズです。現在四作目までがオーストラリアで出ていますが、今年中には五作目が出ると聞いています。日本語版は三作目以降もあすなろ書房で出ることになっていますので、どうぞ楽しみにしていてくださいね。

なお、最近エミリー・ロッダのホームページができました。興味がおありの方は、http://emilyrodda.com/ をご覧ください。作者の写真も載っていますよ。

二〇〇一年六月二〇日

さくまゆみこ


メイゾンともう一度

ジャクリーン・ウッドソン『メイゾンともう一度』さくまゆみこ訳
『メイゾンともう一度』 (マディソン通りの少女たち3)

ジャクリーン・ウッドソン著 さくまゆみこ訳
ポプラ社
2001.04

アメリカのフィクション。「マディソン通りの少女たち」の第3巻。新しい学校に通い始めたメイゾンとマーガレットですが、メイゾンの前には蒸発した父親が現れます。マーガレットは、不自然なダイエットに苦しんだり、メイゾンとの仲がぎくしゃくするのに悩んだりします。キャロラインという白人の少女や、ボーという黒人の少年とも友だちになって、二人は成長していきます。
(絵:沢田としきさん 装丁:鳥井和昌さん 編集:米村知子さん)


かえるだんなの けっこんしき

ジョン・ラングスタッフ文 ロジャンコフスキー絵『かえるだんなのけっこんしき』さくまゆみこ訳
『かえるだんなの けっこんしき』
ラングスタッフ再話 ロジャンコフスキー絵 さくまゆみこ訳
光村教育図書
2001.03

アメリカの絵本。1956年にコルデコット賞を受賞した作品です。もとになっているのは有名な物語唄(もともとは400年前のスコットランドの唄のようです)で、ボブ・ディランやピート・シーガーも録音しています。コルデコット賞の絵本は、日本でもたいてい翻訳されているのですが、これは、韻を踏んでいる唄なので翻訳が難しいため、これまで出ていなかったのだと思います。ロジャンコフスキーはいいですよ。
(装丁:桂川潤さん 編集:鈴木真紀さん)

*コルデコット賞受賞、産経児童出版文化賞受賞


シャーロットのおくりもの

E.B.ホワイト『シャーロットのおくりもの』さくまゆみこ訳
『シャーロットのおくりもの』
E.B.ホワイト著 ガース・ウィリアムズ絵 さくまゆみこ訳
あすなろ書房
2001.02

アメリカのフィクション。1952年にアメリカで出版されて以来、ずっと読み継がれてきた動物ファンタジーの古典です。以前別の出版社から出ていた翻訳(鈴木哲子さん訳で、法政大学出版局刊)は、今の子どもには少し読みにくくて残念だと思っていました。今回まったく新たに訳し直す機会をあたえられ、今の子どもにも充分読んでもらえるようになったのではないかと思います。
(装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん、草野浩子さん)

*ニューベリー賞オナー(この年の本賞はアン・ノーラン・クラークの『アンデスの秘密』が受賞)
*ホーンブック・ファンファーレ


青い丘のメイゾン

ジャクリーン・ウッドソン『青い丘のメイゾン』さくまゆみこ訳
『青い丘のメイゾン』 (マディソン通りの少女たち2)

ジャクリーン・ウッドソン著 さくまゆみこ訳
ポプラ社
2001.01

アメリカのフィクション。「マディソン通りの少女たち」の第2巻。私立の寄宿学校に転校したメイゾンは、白人の少女たちの仲間にも、かといって数少ない黒人の少女たちの仲間にも入れず、孤独な日々を過ごします。作者のウッドソンは、今年コレッタ・スコット・キング賞を受賞しました。感受性の強い少女が生きていくのは、昔も今もそう簡単なことではないようです。
(絵:沢田としきさん 装丁:鳥井和昌さん 編集:米村知子さん)


マーガレットとメイゾン

ジャクリーン・ウッドソン『マーガレットとメイゾン』さくまゆみこ訳
『マーガレットとメイゾン』 (マディソン通りの少女たち1)

ジャクリーン・ウッドソン著 さくまゆみこ訳 沢田としき挿絵
ポプラ社
2000.11

アメリカのフィクション。ニューヨークに住むアフリカン・アメリカンの少女の友情物語。『レーナ』の作者ジャクリーン・ウッドソンが自分の子ども時代を思い出して書いたシリーズ〈マディソン通りの少女たち〉の1巻目です。祖母に育てられたメイゾンと、父を亡くしたマーガレットが主役ですが、超能力をもつデルさん、北米先住民のおばあちゃんなど、脇役も魅力的です。
(装丁:鳥井和昌さん 編集:米村知子さん)

SLA夏休みの本(緑陰図書)選定
*JBBY賞・翻訳者賞(シリーズ対象)


おばあちゃんにおみやげを〜アフリカの数のお話

イフェオマ・オニェフル『おばあちゃんにおみやげを:アフリカの数のお話』さくまゆみこ訳
『おばあちゃんにおみやげを〜アフリカの数のお話』
オニェフル作・写真 さくまゆみこ訳
偕成社
2000.10

ナイジェリアの文化を伝える写真絵本。数の絵本にもなっています。著者はナイジェリアで生まれ育った女性フォトグラファー。アフリカというと「動物がたくさんいる」とか「貧しい」とか「内戦でたいへん」というイメージばかりが伝わっていますが、広いアフリカ大陸には元気な子どももたくさんいます。これは、そんな元気な男の子がおばあちゃんの家に遊びにいきます。西アフリカ・ナイジェリアの人々の日常生活を生き生きと伝える数の絵本です。
(編集:西野谷敬子さん)