『戦場』をおすすめします。

「戦場カメラマン」と呼ばれる人たちも、いろいろです。生と死の間をかいくぐる体験を積んでいるうちに刹那的になる人もいれば、逆に哲学的になる人もいます。その体験をくぐり抜けて自分のやりたいことを見つける人もいるし、その体験を売り物にしてバラエティ番組で稼ぐ人もいます。

本書は、そんな戦場カメラマンの一人であり、戦場で片目を失った著者が、「若い頭と心」で見聞きした戦場と、戦争にさらされた人たちを写真と文章で描いています。取り上げられているのは最初がパレスチナで、あとは主にアフリカの国々。恐怖やとまどい、迷いや悩みも書かれているので、若い読者たちも、身近なものとして読めるかもしれません。

多くの戦場カメラマンたちは、日本ののんびりした日常と、戦場の緊迫感の間でとまどい、どちらが本当の現実か考えたりいらだったりし始めます。そのあたりも、あえて整理せず迷うままに書かれているのがリアルです。それと同時にこの著者は、戦争は憎しみや差別が引き起こすものというより、経済・政治のシステムが引き起こすものではないかということに気づいています。たとえばこんな文章。「爆撃で人が死ねば死ぬほど莫大な利益を得てほくそ笑む人間たちが存在する。巨大な経済システムがうごめいて、知らないあいだに人々は殺す側と殺される側に隔てられていく」。

そう、戦争をとめようと思ったら、「戦争をさせている力」について考えてみることが必要なんですね。この国の政治家が言っていることを鵜呑みにしていたのでは、ますます戦争に近づいていきます。総理大臣が唱える「積極的平和主義」にちょっとでも疑問を持った人には、特におすすめです。

(「トーハン週報」Monthly YA 2015年4月13日号掲載)