マリンゴ:非常にかわいらしくて、洗練された、構成の練られた作品だと思いました。ミヌースのしぐさの描写から、ネコらしさが伝わってきて、魅力的でした。ウッディ・アレンの映画のようなイメージで読んでいたので、「エレメートさん」という大きな悪が出てきた後半の展開に少しびっくり。でも、甘いだけではなくスパイシーな仕上がりになり、児童書としてもわかりやすい作品だったと思います。

パピルス:ストーリー、挿絵、装丁、どれをとっても可愛らしく、とても好きな本です。悪役も出てきますが、最終的に可愛らしくまとまってハッピーエンドのおはなし。安心して読めます。

ヴィルト:ネコから人間になったミヌースですが、ネコらしいしぐさが自然に描かれていると思いました。子どもが読みやすいストーリーかつ児童書らしい結末という、みなさんと同じような感想を持ちました。2000年刊行だったのに、どうして今まで読まなかったのか不思議なくらいです。気になったのは33ページ。ティベさんがミヌースに対し「あわれなネコを〜」と言った場面。この時点で、ティベさんはミヌースのことをネコとは思っていなくて、人間と思っていたのではないでしょうか?

ルパン:特に突っ込みどころなし。文句なく楽しめました。小さいときに本を読んでいたときの感覚を思い出しました。何も考えないで、全面的におはなしの世界にのめり込んでいたあの感じを、久しぶりに味わいました。児童文学の王道っていう感じですね。スカーっと一気に読めました。

アンヌ:リンドグレーンのカッレ君シリーズ(『名探偵カッレくん』他、アストリッド・リンドグレーン著 岩波少年文庫)を思い出しました。小さい町の中で物語が始まり、すべて終わってしまう。原作が1970年刊ということなので、「悪」というのが公害や環境問題。そういったところに時代を感じました。

ルパン:こういう本って懐かしいよね。

アカシア:ネコが人間になったけど、ネコっぽさが残っているという描写がおもしろかったですね。箱で寝たり、屋根づたいに移動したり、ほかの人の身体に頭をすりつけたり…。だんだん自分でも人間がいいのか、ネコのほうがいいのか、わからなくなっていくんですね。ストーリーがシンプルなので小学校中学年くらいで読むといいのかなと思うのですが、分量が多いのでその年齢だとなかなか読めない。たかどのほうこさんあたりだと同じ素材をもっと短くおもしろく料理できそうな気がしました。

ルパン:高学年が読んでもおもしろいと思いますが。

アカシア:たとえばミヌースは犬に追いかけられると、ハイヒールをはいて一気に木に登ったりしますよね。そういう部分、高学年になるといろんな現実がわかるから、しらけたりしないですか? 

ルパン:おなじ内容で中学年向けがあれば、長編を読み始める良い導入になるでしょうね。

アカシア:けっこうむずかしい漢字もルビ付きで使ってあるし、この文字の大きさだと中学年はしんどいかも。

アカザ:前からタイトルは知っていて、読みたいと思っていた本です。とてもおもしろく読みました。まさに児童文学の王道をゆく作品で、こういう作品で子どもたちは読む力を育てていくのだと思いました。

(「子どもの本で言いたい放題」2015年12月の記録)