ネズミ:こういうの私、苦手で。すみません。エンタメが悪いというわけじゃないけれど、人形の謎を追う不思議な物語ありきで、登場人物も出てくるものもすべて面白いストーリーのための小道具のようで楽しめませんでした。それと、最後に3人が図書館から電話をするところで、どの親も怒らないのに納得がいきませんでした。

げた:選書当番だったんですけど、表紙とタイトルで選びました。1回読んで、軽いけどミステリアスな部分もあるし、子どもから大人への成長物語でもあるし、おもしろいと思って、みんなで読もうと思いました。人形遊びに夢中だった、幼馴染3人が大人になることで、それを止めさせられる状況になった。不思議な夢を見たポピーがきっかけで、「最後のゲーム」となるイースト・リバプールのクイーン=エレノアの墓を探し、骨を埋めるという冒険をすることになり、結局、やり遂げたってことになるわけですね。その冒険の過程でアリスの秘密やなぜ、ザックがゲームを止めざるを得なかったのかが、3人の中で明らかになって、新たな3人の関係が始まる。また、ザックと父親との関係も新たな段階が始まる予感がします。でも、クイーン=エレノアのお墓探しが最初感じたほどは、再読後はおもしろくなかったかな。バスステーションで、必ずしも逃げる必要がなかったのに、逃げたりして、歯がゆい感じがしました。まだ子どもってことなのかな、とも思います。

レジーナ:昨年から気になっていた作品だったので期待して読みましたが、一連の不可解な出来事は人形のせいだったのか、はっきりと明かされない終わり方で納得できませんでした。

アカシア:千葉さん訳の本は、いつもすぐに引き込まれるのですが、この本は入り込めませんでした。生まれるべくして生まれてきた物語というより、苦労して作り上げた物語だからなのかな。ザックのお父さんがフィギュアを捨ててしまったことを、ザックはポピーとアリスに言えない。その言えないという点がずっと最後の方まで引っ張っていくキーなんだけど、なぜそこまで言えないのか、よくわからない。その理由が納得できるようなかたちで出ていないので、不自然に思ってしまう。ほかにも、自然に入り込める流れじゃないなと思ったところがありました。私はホラーでも、もっとひそかに怖いようなのが好きなので、この本みたいに、表紙から「どうだ、不気味だろう」みたいに迫って来るのは苦手です。

くまざさ:千葉さん、こういうのもお訳しになるんだと。『スタンド・バイ・ミー』(スティーヴン・キング著、山田順子訳、新潮文庫)みたいな子どもたちの家出とその顛末。自分の好きなこと(この本の場合は人形遊び)と、世間一般の価値観が対立した場合に、迷わず自分の好きなほうを選べっていうのは、千葉さんが選ぶ作品らしいなと思いましたが、いっぽうでホラーはあまり千葉さんっぽくないですよね。じつはとくに前半なんですが、日本語の文章をもうちょっとすっきりテンポよくできないか……ということにばかり引っかかってしまって、なかなか入り込むことができませんでした。12歳の男の子と女の子2人が主人公で、男の子は、自分もいい加減大きいのに、女の子たちと人形遊びをしていていいのか、と悩むわけですが、こういう感じの悩みって個人的にはもっと早く来たようにも思います。お父さんと電話するシーンはよかったと思いますね。最近、年のせいか、児童文学を読んでいても、子どもたちのことより、登場人物の大人のふるまいに心惹かれることが多いんです。自分が悪いと思ったことは受け入れてきちんと謝罪する、そういう大人になりたいものだと思います。

アンヌ:ダーク・ファンタジーは大好きなのですが、この作品にはそういうおもしろさが感じられませんでした。最初の人形遊びの場面にもあまり引き込まれなかったし、実際の冒険が始まってからもリアリティがなくて楽しめませんでした。ヨットを盗んで川を渡るところなど、かなりいい加減な感じです。図書館からの電話で、家出によって大人の状況が変わるという所も、ポピーについては書いていない。3人の主人公も、アリス以外はあまり描き切れていない気がします。現実との対比で際立つはずのファンタジー要素も妙に曖昧で、謎が深まったり謎が解けたりする醍醐味がありませんでした。この旅のきっかけとか、エレノアがなぜ図書館の地下にいたのかとか、すっきりしないことが多かったと思います。

すあま:表紙の絵が怖いので読まずにいた本でした。全体的に中途半端な印象です。ファンタジーならファンタジーで、人形がしゃべるとか、もう少し工夫がほしかったと思いました。最初のところで登場人物の子どもたちの関係とその空想世界がどうなっているのかを理解するのに苦労しました。最後も尻切れとんぼでよくわからないまま終わってしまいました。

マリンゴ:とてもおもしろかったです。もっとも、読み始めの冒頭の部分では、人間と人形が同時に多数出てきたので、把握できるか不安になりました。整理して覚えるのに何度も読み返したりして。で、人間が人形の世界に連れて行かれるハイファンタジーかと思ったら、そのまま人間の現実のなかで話が進むローファンタジーだったので、その意外性もあってストーリーに引き込まれ、楽しめました。ラスト、結局どうだったのか曖昧なまま終わることへの批判が先ほどありましたが、私は敢えて曖昧にしている部分も好きでした。お父さんの気持ちがジャックに伝わるシーンもいいなと思いました。

西山:今、聞きながら、私だけじゃなかったんだと安心しました。私は、この表紙とタイトルでおもしろそうだから、通勤の往復で読めると思ってたんですが、出だしでつまずいた。誰がなにやら、となっちゃっていきなり失速して結局読み終わりませんでした。家出したところあたりで、雰囲気として『スタンド・バイ・ミー』を連想したりしました。

ルパン:ひとことでいえば、「気持ち悪かった」です。表紙の不気味さもさることながら、人形に子どもの遺骨を入れるとか、死んだ子供の個人的な思いだけが生きている子どもを動かしているとか…読む前に、この作品に期待した一番の理由は、「翻訳者が千葉茂樹であること」だったのですが…。今までは、「千葉さんが訳すものにまちがいはない」という信念があったのですが、やっぱり間違えることもあるんですね。

アカザ(メール参加):ホラーは大好きなので、期待して読みました。今まで千葉さんが訳したものとは雰囲気が違うという興味も。ハラハラしながら読みすすんでいきましたが、おもしろかったです。冒険の道すじが怖いですね。難をいえば、エレノアの真実が、ポピーやザックの夢にあらわれるというのは、ちょっとどうでしょう? 夢は夢でもいいのですが、真実は3人が調べていって分かってくるというほうが、すっきりすると思うのですが。ホラー、あるいはミステリーと成長物語をからませるという狙いはいいと思うのですが、ホラーなのかミステリーなのか、はっきりしてほしい。それから、アリスとポピーの生活環境のちがいは分かるのですが、性格のちがいが、いまひとつはっきりしませんでした。

(2016年11月の言いたい放題)