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『未来のたね〜これからの科学、これからの人間』
アイリック・ニュート/作 猪苗代英徳/訳
NHK出版
2001
原題:FREMTIDEN by Eirik Newth,1999

ソデ語録:人口爆発、環境汚染、食糧不足によって、人間は近い将来絶滅する。そんな予測もいまや無謀な考えではない。現代人は、地球の未来に責任がある。科学は未来を救うことができるだろうか? 大きな可能性を秘めた科学の力を正しく発展させて、環境を保護し、美しい地球を未来に残すことが、現代人の使命だ。その使い方を誤れば、一挙に地球滅亡へと進むことも考えられる。ミクロの科学技術から宇宙開発まで、現代の最先端科学をわかりやすく解説し、これからの人間の生活がどうなるのか、あらゆる可能性を探ってみる。子どもが読んでも、おとなが読んでも、楽しくためになる科学読みもの。

トチ:『世界のたね』の続編ね。厚い本でたいへんと思ったのだけど、読み出すとおもしろかったわ。考え方のバランスがとれている本でしたね。現在と未来、いいことと悪いことのバランスが取れてる。入門書としては、よい本だと思います。この中でおもしろいと思った事柄については、また別の方面につながっていくだろうし、子どものための知識本としては優れていると思う。大人が読んでも知らない知識もあったりして、1冊私もほしいなと思ったくらい。たとえば、昆虫ロボットが夜中にシーツを集めにくるなんてところは、ユーモアがあったわね。私が子どものころは、お正月の特大号の子ども欄に必ず未来の予想図なるものがあって、ビルの上に縦横に高速道路がはりめぐらされて、ロボットが大活躍している漫画が出ていたの。今の子どもたちはどんな未来予想図を描いているのかしらと、この本を読んで考えさせられました。それから、「農業イコール健全なもの」と漠然と思っていたけれど、農業とは自然との戦い、いってみれば反自然だという個所を読んで、目がさめたような気がしました。

ペガサス:この著者が、子どもに向けて語るという姿勢をきちっと持っているということがいいと思いました。問いかけてくるので、読者の子どもに考えさせていく。論の展開もわかりやすくて、「○○というのは簡単にいえば、〜ことだ」とまず言ってから入っていくので、とらえやすい。関心がもてるテーマを見つけられれば、テレビや新聞を読んで、またひろがっていく機会になると思う。こういうものは、その後同時多発テロが起こったりして、どんどん内容が古くなっていくんだけど、最後に作者からのメッセージがあって、自分で自分の本の価値を言っているのがおもしろかった。この時点に生きた人間がどういう未来を描いたのかというところが、いいのだってね。

紙魚:ふだん、自分の知識を体系づける機会はないのだけど、こういう本を読むと、ぱらぱらとした知識が折りたたまれていいものだなと思った。こういう本って、日本のものはなかなか見当たらないですよね。作家の世界観がそのまま出るし。なかなか自分からは読まない本なんだけど、読んでみるとおもしろい。

アサギ:ただ、本のつくりが読みづらい印象をうけました。

すあま:注を読むリズムがつかめないんですよね。かといって、割注でも難しいだろうし。前半は、警告するような内容で、後半はSFっぽい夢のある話へとつながっていく。私の知識がないこともあり、この人が考えたことなのか、他の科学者が考えたものなのか、区別できないところがありました。

トチ:けっこう子どもの方が、こういう科学ものを読みなれているのかもね。

すあま:いずれ内容が古くなるというのを作者はわかっていて、この本に書かれている作者の予測が実際はどうだったのかを後から読むほうがおもしろいんだよ、と言っているところが、うまいなあと感心しました。また、SFを書くなら、『2001年宇宙の旅』(アーサー・C・クラーク/著 伊藤典夫/訳 ハヤカワ文庫)みたいに年号を入れないほうがいいというのにも、なるほどと思いました。副題の「これからの科学、これからの人間」というのは、ちょっとカタイので、手にとりにくいですよね。

アカシア:『ソフィーの世界』(ヨースタイン・ゴルデル/著 池田香代子/訳 日本放送出版協会)と同じように、これは原著がノルウェーですよね。ノルウェーの人って、こういうふうに世界を読み解くのがうまいのかしらね。日本人には子ども向けのこういうのは、なかなか書けないのかも。私が子どもの頃は、科学はすばらしくて未来は夢のようだと信じていたけれど、今はそういう時代ではない。で、子どもにどういう未来像を渡すことができるのかわからないでいたんだけど、そうか、こういうふうに書けばいいんだなって感心しました。「ウイルスは生命体ではなく、メカニックな生き物」なんていうことは、全然知らなくて、えっそうなのと驚いたり。ただね、「ナノマシン」なんかは、わずかなマイナス面しか書かれていないんだけど、本当はもっと問題があるんだろうな、と思ったりもしました。宇宙ステーションだって、作るといろんなところにいろんな影響が出ていくんだろうな、と。未来のシナリオが、3バーション用意されているのは、おもしろかった。

ねむりねずみ:表紙見て中を開いて、教科書みたいだなと思いました。文章は読みやすいんだけど。科学技術の発達とか暗い面とか未来について萎縮せずに書かれているのはなるほどと思いました。これからの人類のシナリオのどれを選ぶかは一人一人の主体性にかかっているというあたりは、賢者クラブといわれていたローマクラブを引き継いでいろいろな警鐘を鳴らしているブダペストクラブの人と同じ姿勢。ただ、最近その手の物を続けて読んだので、またか、という感じもしちゃった。物語という感じでもないし、どういう場面でどういう人たちに読まれるのかわからない。あんまり魅力を感じなかったです。

すあま:おとなが紹介しながら子どもに渡さないといけない本ですよね。

ねむりねずみ:たしかに、おとなは今までの歴史などについての知識の重みで悲観的になってしまいがちだけれど、子どもはそのマイナスがないぶん元気がある。だから、未来は君たちにまかされているんだよと提示するのは大事ですよね。

すあま:「NHKスペシャル」とかでとりあげて、番組がつくれそうですよね。やっぱり、ノルウェーって冬は夜が長いから、こういうことをじっくりと考えるんでしょうね。

トチ:科学においても、文学をはじめ文化芸術においても、北欧って日本にはまだまだ紹介しつくされていないものがどっさりある宝庫かもしれないわね。