トチ:のんびりしていて、なんとも幸福感あふれるお話で、大好きです。子どもって、学校の先生やお母さんから、しょっちゅう忘れ物をするなって注意されてるから、こういうものを読むと、ほんとにホッとするんじゃないかしら。「こんなによるはやく」とか、子どもたちが喜びそうな言葉も、いくつも出てくる。『ウィリアムのこねこ』は、作者がしっかりお話を考えた本だけれど、これはごく自然にストーリーが流れている。対照的な書き方だけど、どちらもうまいと思いました。

たんぽぽ:シリーズの3冊の中で、1巻目がいちばんおもしろかった。なんでもかんでもすぐに忘れていいなあと。二人のコンビのは、先月もふくろうの本が出ていましたね(『森の大あくま』毎日新聞社)。

げた:おもしろい。夏休みのおすすめにしようかな。忘れても、まるくおさまっちゃう。ぎゅうぎゅうしめつけられている子どもと、まったく逆転した世界。今の子どもたちを、だいじょうぶなんだよと解放してやる意味が込められているのでは。

カーコ:楽しめました。まじめな子が読んだら、どうなっちゃうんだろう、とドキドキするんじゃないかしら。阿部さんの絵がおおらかで、また楽しい。19ページのハリネズミの手の絵は、阿部さんだからこそだな、と思いました。

ハマグリ:絵本を卒業する年齢の子が移行しやすい本が、もっと出てほしいなと日ごろから思っているので、こういう感じの本はうれしい。でも、あべさんの絵だと『わにのスワニー』シリーズ(中川ひろたか著/講談社)のほうがいいかなと思います。最初に、状況がよくわからない部分がありました。12、13ページの絵が、夕方の早い時間というのがつかみとりにくい。絵を見てもよくわからなかった。フルフルとプルプルも、どちらがどちらだか途中でわからなくなることがあったわね。ローベルのかえるくんとがまくんのように、はっきりと描き分けられていないので。

アカシア:1巻が図書館で貸し出し中だったので、私は3巻目を先に読んだんです。そしたら、ただただハリネズミたちが忘れてしまうだけで、芯がなくて、えっ、これでいいの? と疑問になったんです。でも、1巻を読んだら、おもしろいですね。ちょうどいい具合に「忘れる」部分が出てくるから。3巻は物忘れがエスカレートしているんですね。ただ1巻でも、お話の中の世界の整合性にこだわると、疑問な点が出てきます。フルフルの誕生日にはみんなが集まったけれど何のために集まったか忘れているのに、サクランボつみ大会は、最初から集まらない、というのはどうして? 大人は気にならなくても、気になる子もいるのではないかしら?

(「子どもの本で言いたい放題」2006年4月の記録)