『ウイリアムのこねこ』
マージョリー・フラック/文・絵 まさきるりこ/訳
新風舎
2004
原題:WILLIAM AND HIS KITTEN by Marjorie Flack(アメリカ)

版元語録:ウイリアムは、迷子のこねこに出会いました。そこで警察署へ届け出ますが、飼い主という人が3人も!一体、誰のねこになるのでしょう。ウイリアムが小さいなりにこねこに愛情をそそぐ様や、小さいからこそ、一生懸命になる姿が言葉や絵で丁寧に表されており、子どもたちはウイリアムになりきって、こねこの行く末を考えるでしょう。

アサギ:ずいぶんクラシックな雰囲気ね。でもお話自体はとってもよくできていると思いました。3匹の迷いネコは、けっきょく同じネコだったのね。1年たって、ピーターが成長していくさまの絵もいいし、ユーモアもある。そしてお話にきちんと起承転結がある。強烈なインパクトはないけど、心あたたまる、読後感のいい本でした。

アカシア:お話も訳もとてもいいけど、日本でずっと出なかったのは、絵本にしては文章が長すぎるからでしょうね。文章だけがフラックだったら、絵は別の日本人にたのんで幼年童話にするという手があるでしょうけど、文も絵もフラックなので別の形では出せないものね。読み聞かせにはいいでしょうけど、子どもが自分で読むには、この形態はどうなんでしょう?

ハマグリ:同じ作者の『おかあさんだいすき』(光吉夏弥訳・編 岩波書店)は1950年代に翻訳されているけど、これは絵本にしては文章が長いから今まで出なかったのかしら。カラーのページと白黒が交互に出てくるのは、印刷コストを下げるためにやっていることですよね。お話は、単純でわかりやすいけれど、どの年齢の子にすすめたらいいか、迷ってしまう。小さい子に読んであげるには長すぎて飽きてしまいそうだし、大きい子には、赤ちゃんぽいウィリアムがもの足りないのでは?

カーコ:お話はおもしろかったです。本好きのお母さんが自分の子に読んでやる本という感じがしました。

げた:集団読み聞かせにはむずかしいんですけど、お母さんと二人で一緒に読むのなら、いいお話かな。個人的には好きですけど、手にとられにくいかな?

たんぽぽ:子どもはこのお話がすごい好きで、1,2年生に読み聞かせをしてよく聞いてくれたんですけど、そのあと自分では借りないんですね。『赤い鳥の国へ』のような本の形なら借りていくと思うんですけど。

トチ:お芝居でウエルメイドという言葉をよく使うけど、この絵本もそういう感じがしました。いろいろなピースが最後にぴたりとはまって、本を読みはじめた子どもたちが「お話っておもしろいな」と思う要素がたくさんある。繰り返しも「ああ、こうやって書くんだな」というお手本みたいだし。たしかに、絵本でなく絵物語にしたほうがいいとも思いましたが……。ただ、見返しの部分が英語のままになっているけれど、本文とおなじように訳したほうがよかった。絵本って、表紙から、見返しから、背表紙から、小口まで、すべてがごちそうですものね。

ハマグリ:絵のバックが黄色というのはユニークよね。

(「子どもの本で言いたい放題」2006年4月の記録)