げた:個人的な話なんですが、友達に、この新ちゃんと同じような子がいたんです。40歳くらいで亡くなったから、どちらかというとこのお話に出てくる先輩みたいな子かな。どんどん筋力が落ちて、最後は目だけで反応していて。小学校には同級で入学したんですけど、やっぱり新ちゃんみたいに途中でしばらく施設に行ったんですが、それでもよくならなくて、戻ってきました。そういう記憶がよみがえってきて、あの頃のことをいろいろ思い出しました。障碍がある子も同じように生きているんだよ、ということをわかってもらうには、いい本だと思いました。

みっけ:お話そのものの展開は、一種予定調和的というか、問題もすべてすらすらと解決されてしまうので、そういう意味のインパクトは少ないけれど、新ちゃんの描写の細かいところが、とてもリアルでいいなあと思いました。トイレで苦労する話とか、足を引きずってズボンが破けてしまう話とか、そういったことがぐぐっと迫ってくる気がしました。20年以上前の作品だからというのもあるかもしれませんが、新ちゃんの親友である語り手が、なんというか熱くて元気で明るくて、全体にトーンが明るいのもいいなあと思いました。

ネズ:作者も同じ障碍を持っているということを知って、だからこういう作品が書けたのだと納得しました。具体的に新ちゃんが困っているというトイレの場面など、この作者だからこんなにリアルに書けたんでしょうね。『チューリップ・タッチ』のような作品は難しくてわからないという子どもたちも、こういう作品なら素直に理解できるんじゃないかしら。でも、主人公も新ちゃんも、ちょっとばかりいい子すぎるのでは? あと、タイトルがねえ……。

サンシャイン:乙武さんみたいに、障碍のある子も一緒と、アピールしている本だと思います。すごく楽観的な本で、子どもは結構感激したりするんじゃないかな。ただ毒がなさ過ぎるとも言えます。悪い話じゃないんだけども、登場人物がいい子すぎる。乱暴な感じの子が、夏休みに本を2回も読んじゃったりして。そこがちょっと気になりました。筆者自身がその病をかかえているので、そうありたいという祈りが込められているのでしょう。

アカシア:障碍についてきちんと伝わるように書くというのは、難しいことですよね。この作品は、作者も同じように苦労されているから伝わる力を持っているわけですが、へたすると、障碍があっても必死で頑張れば一人前になれる、という結論になってしまう。でも、頑張りたくても頑張れない人だっているんじゃないですか。最近、病院の職員が迷惑な入院患者を公園に捨てたっていう事件がありましたよね。新ちゃんや乙武さんは、頑張っているし迷惑もかけないからいいけど、そうじゃない人は捨てられてもしょうがないんだ、みたいになってしまうとまずい。
こういう立場から書いた本は少ないから。そういう意味では貴重ですね。頑張るという点も、作者の理想が、新ちゃんやお兄ちゃんに投影されているのかもしれませんね。

(「子どもの本で言いたい放題」2007年11月の記録)