新藤悦子『ピンクのチビチョーク』
『ピンクのチビチョーク』
新藤悦子/作 西巻茅子/絵
童心社
2010.03

版元語録:チーばあばが、すこしずつ、いろんなことをわすれていってしまうびょうきになった。わたしのことも、わすれちゃうのかな…。そうだとしても、わたしはチーばあばがすき。どうしたらまた、わらってくれるかな。

うさこ:読んでいて切なくなりました…。このくらいの年齢の子どもがおばあちゃんに名前を間違えられたりするとどんな思いなんだろう…すごくショックだろうな。最後は、主人公が大好きなおばあちゃんに、また一緒にお絵かきしようねと終わっているけど、この完結のしかたでいいのかなと、ちょっと疑問に思いました。読者対象年齢には、このテーマのこの内容のものをこれだけのボリュームで伝えようとするのは、ちょっと無理があるような気がします。幼年もので取り上げる題材の難しさを感じました。中学生くらいを対象として、設定やドラマをもっと練り上げて書くのもひとつの方法かもしれません。

たんぽぽ:低学年の子にはわかりにくいかなと思いました。

ajian:おばあちゃんが呆けてしまう話と、チョークの話と、2つの題材が走っていて、うまく解け合っていないように感じました。難しいテーマだと思いますが、おばあちゃんの痴呆という現実を、子どもがどう受け止めるのかと思っていたら、ファンタジーっぽい感じでごまかしてしまって、すっきりしない。おばあちゃんがお母さんに怒られる場面などは、なんだかやけに現実感があって、胸が痛くなりました。

優李:なんだか読んでいると悲しくなる。それに中途半端感があって、これを誰にどう手渡せばよいのか難しい気がします。読後元気が出ないのが残念。主人公のおじいちゃんが亡くなったところとか、小さい子の言葉じゃないように思える部分も引っかかって、すっきりしないのかなと思いました。

わらびもち:チョークと呪文があれば誰でも魔法を使えるという設定なのだなと思いました。チビチョークとしているのは使い込んでいるということを表しているのだと思います。ピンクとしたのはチョークさんにつなげる為だと思います。おじいさんや犬が原因でおばあちゃんの元気がなくなっているので、チョークでおじいさんと犬を書いてお話をするなり思い出を作るなりすることもできたのではないかという疑問が浮かびました。それを解決しようとか思い出を作るとかも出来たはずです。あと、空飛ぶ船の話がいきなりでてきたのでちょっと抵抗があります。

トム:子どもに手渡す前に、自分がこの重いテーマをどう受けとめたらいいのかと思いました。何歳くらいの子どもに読めばよいのか…それから、おばあさんとお母さんの気持ちが行き違う場面がでてきますが、これは更に複雑な気持ちが潜んでいるわけで、どうしてここで描かなければならなかったのか? 作者に同じ様な経験があったのでしょうか? この話を書きたいと思われた気持ちをうかがってみたいとも思います。ただ、チビチョークで絵を描くところはメロディをつけて読むと楽しいと思いましたが…。あと、おとまりとか「お」のつく言葉が幾つかでてくるのが気になりました。もっとさっぱりした語り口の方が自然な気がします。

ルパン:私は学校の先生なので、チョークは仕事道具です。おばあさんがいっぱいチョークを持っているので、元は学校の先生をしていたのかなと思いましたが、そういう話ではなかったですね(笑)。おもしろくなりそうだったのですが、老人問題も出てきたり、テーマが分散した感じがありました。

けろけろ:皆さんと同じような感想を持ちました。身内がボケてしまう話はあいかわらずすごく多い。そのなかで、最後まで読んでよくできているな、と思える作品は、残念ながらなかなかない。同じようにおばあちゃんの認知症について書かれている低学年向けのよみもので、『むねとんとん』(さえぐさひろこ作 松成真理子絵 小峰書店)という作品がありますが、あれはとても良くできていたように思います。この作品は、ちょっとばらばらな感じで、一本筋の通ったところが欲しかった。低学年ものであれば、胸に響くヒトコトが、あったらいいのにな、とも思います。低学年でもすっと入っていくやり方がきっとあるのでしょうね。

サンザシ:どこかで読んだ話をつなぎ合わせたような話だと感じました。おばあちゃんとの日常の結びつきがあまり描かれていないので、無理があるのかもしれません。たとえば『おじいさんのハーモニカ』(ヘレン・V・グリフィス作 ジェイムズ・スティーブンソン絵 あすなろ書房)では、前段でおじいさんと孫がいっぱい楽しいことをする様子が描かれています。だから、元気をなくしたおじいさんを何とかして元に戻したいと思う子どもの気持ちがこっちまですっと伝わってくるんですね。この作品にも、そのような部分があればもっとよかったのに。難しいですね。

三酉:残念ながら楽しめませんでした。お母さんの描き方ですが、ボケたおばあちゃんとお母さんとの関係性とか、もっとあたたかい視点が必要だったのではないかと思います。

プルメリア:最近あまりやらなくなったけど、子どもはチョークを使って絵や字を書くことが大好きです。おじいちゃんが亡くなっておばあさんが小さくなるのは、おばあちゃんの心にさびしさがあり絵から分かる部分かなと思いました。子どもがポーズをとる部分は子ども雑誌に出ている小学生モデルのポーズ、登場人物の髪型も最近人気のある流行の髪型を取り入れている。挿絵が少しずつカラーになっていくのはおばあちゃんが同じように元気になっていくのと比例しているような感じがします。船じゃなく空飛ぶ鳥というのがおもしろい。子どもって飛ぶの好きなので。

(「子どもの本で言いたい放題」2011年9月の記録)