シフト

『シフト』
原題:SHIFT by Jennifer Bradbury, 2008
ジェニファー・ブラッドベリ/著 小梨直/訳
福音館書店
2012.09

版元語録:高校を卒業して、大学が始まるまでの夏休み、親友のクリスとウィンは2カ月かけてアメリカ大陸を横断する自転車旅行に出かける。だが、ゴールの西海岸に到着する寸前、ウィンは突然姿をくらます。大学が始まっても戻らないウィン。行方不明となったウィンを捜して、クリスはふたたび二人で通った道を辿る。

レジーナ: p54の「歯ブラシの柄に穴を空けて、荷物を軽くする」や、p147の「コウモリ少年」など、意味の分からないところが、いくつかありました。p137の「ヒルクライマー」に、「山登りサイクリスト」という読み仮名がついていますが、何か特別な意味があるのではないかと読者に思わせてしまうので、ない方がよいと思いました。はく製が苦手だったり、強がっているけど、弱いところのあるウィンの性格が、よく描かれています。いなくなってはじめて、ウィルとの関係を心のどこかで窮屈に感じていたのだと、それまで気づかなかった感情を自覚する場面や、自分たちで友情に区切りをつける最後の場面も、心に残りました。ヤコブと天使の相撲や、旅路を見守る聖クリストファーなど、聖書を題材にしていますね。

ルパン:おもしろかった。時系列が行ったり来たりするので、慣れるまでちょっと時間がかかりましたが。p156にクリス・マッカンドレス事件のことが書いてあるんですが、この作者はそれに触発されてこの作品を書いたのかも、と思いました。何年か前に、その事件を題材にした『イントゥ・ザ・ワイルド』っていう映画を見たことがあるんです。事実に基づいて作られた映画なのですが、わかりにくい事件で、クリス・マッカンドレスはせっかく救われて幸せになれるチャンスがあっても、結局それをふりきってアラスカの荒野に入って命を落としてしまうんです。見てるとイライラするっていうか・・・人の愛に気づかないで、何やってるんだろうって、思うんですが、この作者はその事件に対する世間の消化不良感を、新しい作品にして解決したのかもしれません。もう一つのマッカンドレスの人生を用意した、というか。

レジーナ:若さゆえの傲慢さでしょうか。他者性が欠落しているので、自分がどれほどまわりの人に心配をかけているのか、気づかないんでしょうね。

ルパン:ウィンのこのあとの人生はどうなるんでしょうね。

アカシア:そのうち帰ると書いてありますよ。

レジーナ:展開が速いから、映画向きの作品かもしれませんね。

アカシア:私もおもしろく読みました。さわやかな青春小説ですね。読んでいるとき、本の開きが悪くてすぐ閉じてしまうのが残念。翻訳はp24の「あの子のことはね、自分の息子だったらと思うくらい、お母さんも大好きだけど」の「お母さん」に引っかかりました。母親が自分のことを指して「お母さん」って言うのは日本では一般的ですけど、それを良しとするのかどうかってところに、翻訳者のジェンダー観が出るのかもしれません。日本の女性も、もっと自分を持ったほうがいいと考えている翻訳者は、たぶんこうは訳さない。p25のマーシャルプランは、ただマーシャル大学にかかってるだけじゃないから、注があったほうがよかったかも。

(「子どもの本で言いたい放題」2013年5月の記録)

シフト

『シフト』
原題:SHIFT by Jennifer Bradbury, 2008
ジェニファー・ブラッドベリ/著 小梨直/訳
福音館書店
2012.09

レジーナ: p54の「歯ブラシの柄に穴を空けて、荷物を軽くする」や、p147の「コウモリ少年」など、意味の分からないところが、いくつかありました。p137の「ヒルクライマー」に、「山登りサイクリスト」という読み仮名がついていますが、何か特別な意味があるのではないかと読者に思わせてしまうので、ない方がよいと思いました。はく製が苦手だったり、強がっているけど、弱いところのあるウィンの性格が、よく描かれています。いなくなってはじめて、ウィルとの関係を心のどこかで窮屈に感じていたのだと、それまで気づかなかった感情を自覚する場面や、自分たちで友情に区切りをつける最後の場面も、心に残りました。ヤコブと天使の相撲や、旅路を見守る聖クリストファーなど、聖書を題材にしていますね。

ルパン:おもしろかった。時系列が行ったり来たりするので、慣れるまでちょっと時間がかかりましたが。p156にクリス・マッカンドレス事件のことが書いてあるんですが、この作者はそれに触発されてこの作品を書いたのかも、と思いました。何年か前に、その事件を題材にした『イントゥ・ザ・ワイルド』っていう映画を見たことがあるんです。事実に基づいて作られた映画なのですが、わかりにくい事件で、クリス・マッカンドレスはせっかく救われて幸せになれるチャンスがあっても、結局それをふりきってアラスカの荒野に入って命を落としてしまうんです。見てるとイライラするっていうか・・・人の愛に気づかないで、何やってるんだろうって、思うんですが、この作者はその事件に対する世間の消化不良感を、新しい作品にして解決したのかもしれません。もう一つのマッカンドレスの人生を用意した、というか。

レジーナ:若さゆえの傲慢さでしょうか。他者性が欠落しているので、自分がどれほどまわりの人に心配をかけているのか、気づかないんでしょうね。

ルパン:ウィンのこのあとの人生はどうなるんでしょうね。

アカシア:そのうち帰ると書いてありますよ。

レジーナ:展開が速いから、映画向きの作品かもしれませんね。

アカシア:私もおもしろく読みました。さわやかな青春小説ですね。読んでいるとき、本の開きが悪くてすぐ閉じてしまうのが残念。翻訳はp24の「あの子のことはね、自分の息子だったらと思うくらい、お母さんも大好きだけど」の「お母さん」に引っかかりました。母親が自分のことを指して「お母さん」って言うのは日本では一般的ですけど、それを良しとするのかどうかってところに、翻訳者のジェンダー観が出るのかもしれません。日本の女性も、もっと自分を持ったほうがいいと考えている翻訳者は、たぶんこうは訳さない。p25のマーシャルプランは、ただマーシャル大学にかかってるだけじゃないから、注があったほうがよかったかも。

(「子どもの本で言いたい放題」2013年5月の記録)