日付 2004年5月21日
参加者 アカシア、愁童、きょん、すあま、流、ハマグリ
テーマ 見習い

読んだ本:

『見習い物語 』
レオン・ガーフィールド/著 斉藤健一/訳   岩波少年文庫(全2巻)   2002 (福武書店 1992)
THE APPRENTICES by Leon Garfield, 1982
版元語録(岩波書店):18世紀ロンドンの裏通り。点灯夫、産婆、質屋、葬儀屋、薬屋、印刷屋など,さまざまな職業の見習いの少年少女が日々切実な思いで生きていた。かれらの喜怒哀楽を、物語性ゆたかに印象的に描く、ユーモラスな12編の短編連作。


『アリスの見習い物語 』
カレン・クシュマン/著 柳井薫/訳   あすなろ書房   1997
THE MIDWIFEユS APPRENTICE by Karen Cushman, 1995
版元語録:14世紀英国でその日暮らしをしていた少女が、自己にめざめ、産婆見習いになるまでを描いた成長物語。 *96年ニューベリー賞受賞作


『龍使いのキアス 』
浜たかや/著   偕成社   1997

版元語録:夢の呪縛に何百年も苦しめられてきたアオギン帝国では、神官の娘キアスが呪いを解くために立ち上がった。


『見習い物語』

レオン・ガーフィールド/著 斉藤健一/訳
岩波少年文庫(全2巻)
2002 (福武書店 1992)

アカシア:文庫の表紙絵、新たに出したにしては何だか古めかしい。内容は、今回の3点の中では一番おもしろかった。それぞれ独立した短編だけど、同じ人物が所々で顔を出す。よく工夫されているし、短い中に人を惹きつけるものがあります。訳もよかった。『ブレーメンバス』(柏葉幸子/著 講談社)を取り上げた時に、短編らしい切れ味がないという欠点が挙がったけど、これはそういった欠点がなく短編集として安心して読めました。ただ、今の子どもたちにどうか、という点はありますね。見習いという立場の子どものことが、日本の子にわかるかどうか。徒弟制度についての説明は一応冒頭でしてあるけれど。点灯夫、煙突掃除など、イギリス文学にはよく出てくるので、イギリスの子どもにとってはなじみがあるんでしょうね。

愁童:今の日本の子たちは、こういう世界にまるで無縁でしょう。どういう仕事に就くかより、まず偏差値。だから、この作品のように、生きていくということの原点がすごくよくわかるものを今の子どもたちに読ませたい。短編としてうまくできているし、1つの章の登場人物が、別の章にさりげなく出てきたりして、見習いの子供達が当時の社会の中に組み込まれて生きていく様子に目配りが効いているように思った。、産婆見習いの章で、難産にならないように窓や箱やびんのふたなど、ありったけのものを開けるというのが出てくる。そんなの、今の子は、一体何言ってんの、と思うかもしれないが、生まれてくる命に対して、周囲がそういった配慮までして一生懸命かかわっていたんだということを知らせたいね。生きるということに対する意味が熱く語られている作品だと思った。

ハマグリ:18世紀のロンドンで、親方の所に修業に出された子どもたちの話、ということで、暗く、辛い話になりがちだけど、苦労しながらも子どもらしい知恵を発揮してたくましく生きていく様子が描かれているところがよいと思った。ユーモアがあり、パワフルな感じを受ける。子どもの力を信じるという観点に立っているところに好感がもてるのね。ディケンズの雰囲気に似てるといわれるけど、子どもの純真さが人の心に灯をともす、っていう描き方が似ているんじゃないかしら。短編集としては、12の月に合わせた物語が構成されている上に、1つ1つがバラバラでなく、関連付けられていていて見事。

きょん:クラシックな、正統派の作品で、安心して読める。たしかに今の子どもたちがわかるかどうか、とは思う。同時代的に存在するのはちょっと難しいのかな。『アリスの見習い物語』にも魔術的なものが出てきたけど、十分に描ききれていなかった。その点、こちらは満足できた。

すあま:だいぶ前に読んだ。今回あらためて読み直したのだが、やっぱりおもしろかった。こういうおもしろい短編を書ける人が日本にもいるといいのに。日本ならさしずめ江戸の町人もの、ってところでしょうか。暮しの中で起きるちょっとした出来事に光をあてる感じが、宮部みゆきの作品に似ていると思った。それぞれ短編として独立してはいるけれど、登場人物が重なっているのも楽しい。でも、この本は長編物語に見えるので、短いおもしろい話だ、ということを子どもに紹介してあげる必要がありますね。文庫化されて読む子が増えるならいいけれど。

:自分から手に取ろうとはしないだろう作品だったので、読めてよかったと思う。汗や臭いといった、普段使ってない五感に訴えるところが印象的。描写力があって、とにかく読み応えがあった。

ハマグリ:昔読んだ本なのに、今でもシーンを思い出せるところがすごい。

アカシア:これぞ読書の楽しみってところがあるよね。

(「子どもの本で言いたい放題」2004年5月の記録)


『アリスの見習い物語』

カレン・クシュマン/著 柳井薫/訳
あすなろ書房
1997

きょん:あまりおもしろくなかった。話の進み方が淡々としていて、何が言いたいのかよくわからないままに進むでしょ。迷信やハーブなどを使った仕事の不思議さも、あまり描ききれていなかったと思う。アリスの成長物語なのだけど、ジェーンが「失敗してあきらめるやつじゃなくて、失敗してももう一度やってみるやつなんだ」と言うところで、ああこれがメッセージなのね、と思った。要約するとそういうことね、って、それで終わってしまう。泣けなかったアリスがはじめて泣くことを体験できたところも、すんなりと入れなかった。

アカシア:パーっと読めるけど、大きく感動するほどでもない。佳作といったところ。自分を高めていく手段を全くもっていなかった子が、自分を高めていく姿を描いている、と書いてあるけど、日本の今の子どもとはあまりにも生活環境が違うので、それがすごく大変なことと思えなくて、それほど感動するところまでいかないで終わってしまうんじゃないかな。こういう物語では、人間が浮かび上がってくるように描くことが大切な要素だけど、その点ではガーフィールドのほうがずっとうまい。

きょん:名前もなかったアリスが成長する物語、と考えるとああそうか、と思うけど、何かぴんとこなかったのはなぜかしら。やっぱり人間が浮かび上がってこなかったということなのかな。

愁童:時代に対する作者の洞察力の違いじゃないかな。ガーフィールドは、一本立ちするために遮二無二という世界でしょう。アリスのように、名前を取りかえっこしたほうがかっこいい、というようなところには居ないんじゃないかな。作家の力量っていうか、短編で一部分しか切り取っていないのに、それで全部を見せることができるガーフィールドのほうがずっと印象深い。

すあま:同じ作者の『金鉱町のルーシー』(あすなろ書房)のほうを先に読み、おもしろかったのでこれも続けて読みました。最後までおもしろく読めた作品。ただ、7章の「悪魔」で、いじわるをした人を悪魔のふりをして懲らしめるところがあるけど、アリスはそんなことをやるような人物に思えないので、どうもしっくりこなかった。アリスという名前を名乗るようになったので、そういった勇気をもてるようになった、ということを表わすエピソードなのかな? それから、産婆のジェーンの代わりに呼ばれ、うまくやってのけてみんなにほめられる、という、よくありがちな展開にならなかったのはよかった。

ハマグリ:この作者は時代の中で自立していく女の子を描いた作品が多いけど、女の子の職業モノは少ないから、主人公を応援するような気持ちで読める。14世紀の話で、ずいぶんと混沌とした時代だけれど、あまり時代の雰囲気はしなかった。それに挿し絵(中村悦子絵)のせいで、この子がちょっと幼すぎる印象になってしまっている。

すあま:そんなに古い時代の物語という感じはしないね。

アカシア:自分を見出していくところが、現代風なのかしらね。

(「子どもの本で言いたい放題」2004年5月の記録)


『龍使いのキアス』

浜たかや/著
偕成社
1997

すあま:本を選ぶ係だったので、「見習い」をキーワードにして探していたら、これが出てきた。ところが、「見習いの立場だが出生はわからない」というよくあるパターンの話で、いわゆる「見習い」を描いた物語ではなかった! 何も努力しないのに、血筋のお蔭で何でもできてしまう。ハリー・ポッターも、何で魔法使いの血を引いてるだけで空を飛べるのかって不満に思ったけど、これも同じ。「ゲド戦記」(アーシュラ・K・ル=グウィン著 清水真砂子訳 岩波書店)のように、失敗を重ねながら目覚めていくというのならよかったのに。一生懸命に読んだんだけど、何だかよくわからないうちにどんどん話が進んじゃう。もっとじっくり読めばわかるのか、それとも単に書ききれていないのか? 謎や、登場人物たちの悩みなど、おもしろそうな設定は出てくるんだけど、どれも花が咲かないうちに終わってしまって残念。物語の世界が構築しきれていない。書き方によってはもっとおもしろくなるのだから、もうちょっと頑張ってほしかったな。

愁童:冗長なんだよね。やたら細かい所にこだわりすぎ。誰が誰やらわからなくなってしまう。キアスの状況説明が長々と続くので、ハラハラドキドキおもしろい、というふうには読めなかった。

きょん:いろいろな人が出てくるから、混乱してしまうのよね。細かいところがよく書けていないせいなのか、どういう意味なのかわからない部分がいくつかあった。『デルトラクエスト』(エミリー・ロッダ著 岩崎書店)や「守人」シリーズ(上橋菜穂子著 偕成社)に似た所がちょっとずつある。でも、龍の登場はあっけなくて、ちょっとショボい! 名前を教えてくれるだけで終わってしまうんだもの。それに、落ちこぼれのキアスが成長していくのかと思って読んでいくのに、ちっとも成長しないのよね。

すあま:最後まで読めばわかるだろうと思って頑張って読んだのに、結局わからなかった! しかもこんなに長いのに、終わってみれば1年しか経ってない。

きょん:竪琴も消えてなくなってしまって、中途半端よねえ。

すあま:イリットにだけ「さん」がついてるのはなぜかな。

きょん:途中で急にカタカナになるのも変ね。

アカシア:キアスに感情移入できないところが不満。キャラクター作りがしっかりしていなくて、表面的に描かれている。フル(道化役)だけは、他の人とは違ってユニークな存在としてとらえられたけど、あとは紙人形がぱっぱっとかわっているだけって感じで。これがいわゆるネオファンタジーなのかしら。つまり、雰囲気だけで、キャラクターがしっかりしてない、プロットとアイディアだけのファンタジーってこと。でも図書館では結構借りられてるみたいだから、読まれているのかな。

:最初の詩の部分がとても入っていけなくて、129ページで自ら読むのをやめました。いくら読んでも世界が見えてこないし、プロローグで解説をして、そこから展開するのもちょっと違うんじゃないかな、と思った。構成もよくわからないし、人物も区別がつかなくて前を読み直したりしなければならなかった。

ハマグリ:表紙の絵(佐竹美保絵)の感じでは、すごく魅力的でおもしろそうなのにね。

アカシア:書名もおもしろそうなのにね。

(「子どもの本で言いたい放題」2004年5月の記録)