ノンフィクション絵本。ナイチンゲールの本は日本でもたくさん出ていますが、この作品は、なによりデミが描いている絵を見ていただきたい。

私は、ナイチンゲールという人はずっと現場で看護の仕事をしていたのかと思っていましたが、じつは違いました。35歳の時に熱病にかかり、その後は主にベッドで研究したり執筆したりしていたのですね。ナイチンゲールが状況を改善するまでは、当時の病院は、排泄物があちこちにあったり、ネズミがかけずり回っていたりして、相当不衛生だったようです。デミも、そういう場面を描いているのですが、彼女の絵は汚くならないのですね。

原書は金色が使ってあるのですが、日本語版は金が使えなかったので、森枝さんが、題字に細工をして、かがやいているようにデザインしてくださいました。森枝さんは、いつもすてきな工夫をしてくださいます。こういう科学・知識の絵本は、文章をただ訳すだけでなく、原書の記述が正しいかどうかも私は調べて確かめます。そうでないと、安心して日本語にすることができないので。
(装丁:森枝雄司さん 編集:鈴木真紀さん)

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『フローレンス・ナイチンゲール』紹介文
「本の花束」2020年11月3回号掲載