『こっちみんなよ!』
千石正一/文・写真
集英社
2000

著者のはじめの言葉:爬虫類だの両生類は無表情で何を考えているんだかわからない、とよくいわれる。しかし無口だがこれらの動物もしゃべらないわけではない。ずっとじっくりつき合っているとときおり話している現場に出くわすことがある。これはそういう現場を集めてみて、人間のことばに翻訳してみたものである。

:私はこういうの、ページを開けないくらい苦手なんです……。よっぽど好きな人でないと、こういう表情の写真は撮れないのはわかるのだけど、気持ちがしっかりしてる時でないと、気味悪くて……。

アサギ:私も爬虫類が好きじゃないのだけど、おもしろかった。また、写真がセリフと合っているのよねー。特にタイトルの「こっちみんなよ!」というのが秀逸。きっと、子どもは好きよね。犬や猫は哺乳類だから表情があるのはわかるけど、爬虫類もこんなに表情が豊かなのね。それほど写真が優れているってことでしょうね。

アカシア:千石さんて、ほんとに詳しくて、この本は千石さんじゃなければ作れない本だったと思います。爬虫類って好きじゃない人が多いんだろうけど、この本は気持ち悪いと思わせないで、親しみを感じさせる。

トチ:でも、どんなにかわいいカエルでも、体のねばねばしているのは毒なんだって。だから、カエルに触ったら必ず手を洗わなくちゃいけないって、別の研究者が言ってたわよ。

すあま:最初タイトルだけ見たとき、「こっち みんな(皆)よ!」だと思っちゃったんです。こういう本は、下手をすると作者の意図がみえみえでつまらなくなる場合があるけど、これはうまくいっていると思います。解説も特になく、図鑑じゃないとはっきり言っているところがいいのかな。研究者ということですが、写真家としても腕がいい。職場でみんなに見せたら、人によっておもしろがるところが違った。一人で見ていてもおもしろいけど、みんなで一緒に眺めてもおもしろい。素直に楽しめました。

アサギ:爬虫類ってこんなにおもしろいって思わせるきっかけを作ってるっていう点では、かなり意義あるわよね。

ペガサス:これだけたくさん撮っている専門家だからこそ、遊んでみたかったのかもね。言葉は、ちょっと人間が勝手につけたと思えなくもないところもあったんだけど。まあ、おもしろかったことはおもしろかった。写真をつかった本で、たとえば、この『猫の手』(坂東寛司/写真 ネスコ)っていう本は、猫の手だけを写した写真集なんだけど、私はむしろ勝手なセリフがつかないこっちのほうが好き。これだって、猫の好きな人しか見ないけどね。『こっちみんなよ!』は、『ふゆめがっしょうだん』(冨成忠夫・茂木透/写真 長新太/文 福音館書店)なんかと似てるけど、セリフはちょっと大人っぽいわよね。

トチ: 私は小さいときは「虫めずる姫君」というあだながついていたほどの虫好きで(姫君の部分は?でしたけど)、もちろんカエル、イモリ、ヤモリの類も大好き。だからかもしれないけれど、このセリフはもちろん本人(本動物)が言っているわけじゃないし、本人の気持ちとはまるで逆かもしれない・・・そこがちょっとひっかかったし、なんだかかわいそうな気がした。

ペガサス:私もけっこう虫とか好きだったわ。私は中学のころ生物クラブに入っていて、実験材料とかを大学にもらいにいくと、研究室の箱の中にいっぱいヒキガエルが入っていて、それを手づかみで取ったりした。カエルは全然平気。だから私もトチさんと同じように、勝手なことを書いて、という気もした。

アカシア:でも、虫が好きなんていうのは、ペガサスさんの世代で終わりだと思うな。今の人たちは、もう犬とか猫とかペットじゃない動物は駄目な人がほとんどよ。そういう子たちには、この辺から入ってもらうのがいいんじゃない?

紙魚:そうですか。私は、小さい頃も今も、動物とか昆虫ものとかけっこう好きなんですけど、この本はちょっと物足りない感じでした。わーおもしろいなあっていう気分だけじゃなくて、もっと生態とかを深く知りたくなる本のほうが好きです。セリフひとことだけでは、満足できませんでした。

ねむりねずみ:私は買いたい派です。確かにセリフは後付けなんだけど、ほんとうに虫が好きな人は虫を虫とも思っていないだろうから。これをいっしょに読んで笑いたい人の顔がすぐに浮かびました。
(この後、各人の幼少時代の昆虫話が続く、続く、続く……)