トチ:読者の年齢が低くてもわかりやすい本ね。主人公の男の子が出てくるまでは、なかなか話に入っていけないけど、途中からは、作者もなかなかやるなと思わせられる筋立てでした。エミリー・ロッダの本は、主人公が素直よね。

きょん:わかりやすい話ですよね。エピソードがいろいろあるので飽きさせないし、主人公がよい子なので安心して読める。次はどんな怪物が出てくるんだろうと、男の子なんかは興味を持って読むと思う。

カーコ:すごく話題になって、売れていると聞いていただけに、かえって私は期待せずに読んだんですよね。でも、予想がいい方に裏切られて、「えっ、意外とおもしろいじゃない」と思いました。キャラクターが魅力的だし、宝さがしのストーリーにひっぱられながら、1冊1冊達成感を持って読めるでしょう。おもしろいと思ったのは、キャラクターにしてもしかけにしても、お話というもののさまざまな要素があちこちにちりばめているところ。作者が、昔話やお話の世界をよく知っていて、それをうまくとりこんでいるんだなあと感心しました。エンターテイメントとして、気持ちよく子どもたちに手渡したくなります。それと、言葉がらみの謎解きやパズルって、翻訳の場合むずかしいですよね。それが、ここでは自然に仕上がって、よく生かされているところに、編集の人のがんばりを感じました。

きょん:読者を裏切るおもしろさがあるのが『エルフギフト』。予測がつくおもしろさが『デルトラクエスト』。

ペガサス:中学年くらいの子が楽しく読める本よね。最初から、主人公にぴったりついていけるし、悪人が出てきたとたん、悪人だとすぐわかる。それを倒すためには何をすればいいかもはっきりしている。昔話の構造をそなえていて、とてもわかりやすい。なぞなぞも、ちょうど子どもが解きやすいように作られている。7巻一気に読むのはたいへんだけど、1巻分がちょうどいい分量で、アイテムを一つ一つゲットして次へ進んでいくうちに、全部読んでしまうというわけ。子どもは、キラキラのカードを集めたりするのが本当に好きなので、これはそういう気持ちを満足させるものがあると思う。7つの宝石は、絶対に全部ゲットしたいもの。大人としては全部読むのはちょっと苦労だけど、子どもはこれを全部読んだら、長い物語を読破した気分も味わえるし、とても満足できると思う。

すあま:小2の男の子も読んでいるんですよ。低学年でも本が好きな子なら、1冊1冊が短くて読みやすいと思う。何よりあの光る表紙が気に入っているみたいです。

ねむりねずみ:今回は途中までしか読めなかったんです。対象年齢が低いからだと思うんですが、今ひとつぴんとこなくて。でも、女性の書き方が、ロッダさんらしいなあと思ったのと、逆に対象年齢に合わせた本を書ける人なんだなあ、すごいなあと思いました。

紙魚:おもしろかったです。本当に飽きさせない。ところどころで暗号やらクイズが出てきたりするのも、小学生の時分だったら夢中になって読んだと思います。読者をぐんぐんひっぱっていく力があって、なにしろ子どもに読ませたいという作者の意志が伝わってくるようでした。それから、この装丁にするのは勇気がいるでしょうけど、やはり意志を感じました。これって、男の子にストライクなデザインだと思います。男の子が夢中になる幼児誌とか学年誌って、まさしくこれなんですよね。男の子に読ませたいという作り手のなせる技だと思います。
もぷしー(じつは担当編集者):読書経験がゼロの子でもおもしろさが味わえる本になればいいなと思って。私は、ずっと「本が好きでない子の、本を読むきっかけをつくりたい」と思っていたんですけど、このテキストに会ったとき、これなら! と思ったんですね。1巻ずつ少しずつ読んでいくうちに、結果として全8巻の長編を読めるようになっています。この装丁にしたのは、もともと男の子には、キラカードが人気があるということもあって、まず男の子に「面白そうだな」と感じてもらいたいと思って。書店に8巻並ぶと、男の子が見に来てくれているようです。どんな装丁がいいか、対象読者層にいろいろ聞き取りをしたりもしました。この本は、女の子より男の子の読者が多いのが特徴的。編集的には、作者のロッダさんとこまめに連絡をとりながら、日本の読者にもわかりやすく読んでもらえるよう、クイズやパズルの部分など、できるだけ工夫をしました。愛読者カードから、「クラスで競って読んでいる」とか「本を読むようになった。他におもしろい本があったら教えて」など、本を中心に遊ぶようになってくれた子どもたちの様子を知って、うれしく思っています。

(2003年03月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)