『HOOT』
カール・ハイアセン/作 千葉茂樹/訳
理論社
2003
原題:HOOT by Carl Hiaasen, 2002

オビ語録:アメリカからすごい本がやってきた!!/全米書店員が選んだ「いちばんお気に入りの本」

トチ:前から読みたいなと思ってた本で、読んだらおもしろかったです。「週刊朝日」でミステリーって紹介されてたから、その印象が災いして、誰かが殺されるのかなーなんて思いながら読んだんだけど、フクロウがどうなるかというスリルと、女子プロみたいな女の子がどうなるのかなんて、ミステリータッチでおもしろかったです。あと、こういうフクロウがいるんだなってわかっただけでも、得した気分。ただし、これは途中までの感想。謎の少年の正体がわかってからは、もういかにもアメリカ的っていうか、荒っぽい展開で、「こうなるんだろうな」と思ったとおりの結末でした。

アサギ:ストーリーが次々と展開するので、どんどん読めたんだけど、好きじゃないの。アメリカの作品のなかで、好かないタイプのグループに入っているの。風土がわかっていないというのもあるんだろうけれど。なんだかざらりとした感覚があった。理屈じゃなくて生理的に好きじゃないな、こういうの。主人公のロイは150センチでアメリカならとても小さい。小さい者が活躍するっていうステレオタイプみたいで、好感がもてない。まず、「主な登場人物」欄がよくない。ダナ・マザーソンの紹介に「頭がよくない」って書いてある。「勉強がきらい」とか「劣等生」とかって、もっと書きようがあるじゃない。

ペガサス:アメリカ的にすごく大げさにしているんじゃない? おもしろかったのはおもしろかったんだけど、この本、すごい前宣伝だったでしょ。JRの吊広告まであったのよ。『トラベリングパンツ』『セカンドサマー』(アン・ブラッシェアーズ作 大嶌双恵訳 理論社)といっしょにね。子どもの本でここまでするんだなーとびっくりした。だからとても期待して読んだんだけど、「アメリカからすごい本がやってきた」というほどすごいとは思わなかった。おもしろいと思ったのは、とにかく対比の妙を強調するところ。主人公はとにかく目立ちたくないと思ってるのに、まわりの人物がどれも強烈な個性の持主だというところがユニーク。主人公の家庭、ダナの家庭、マレットとベアトリスの家庭と、3つの家庭と親子関係が見えてきて、いろいろ考えさせる。巡査と上司、チャック・マックルの怒ってる場面とか、極端なところがおもしろい。エディ・マーフィーの映画みたいなノリよね。「走る少年」を何だろうと思わせるところもうまい。結局「走る少年」が何だったのかは、今ひとつ腑に落ちないけれどね。

トチ:これぐらいの本だったら『穴』を読める子どもにもすらすら読めるのに、近所の図書館には大人の本の棚に置いてあったわ。

アカシア:中学生になると、子どもの本のコーナーには行かないから、大人の棚でいいんじゃないの。

紙魚:装丁の魅力ほどには、おもしろくなかったです。登場人物はみんなデフォルメされていて、いまひとつ体温がないし、物語ものれなかった。でも、なんだか売れていそう。どういう人たちが、読んでいるんでしょう?

カーコ:構成も筋運びもうまいなあと思ったけれど、心に残りませんでした。ひとりひとり人物に特徴があって興味深いし、主人公の物語と、ドジな巡査の物語など、いくつかの旋律で物語をひっぱっていくのもうまいし、フクロウや環境アセスメントといった話題性もあり、次々読まされるけれど、おもしろいエンターテイメント映画を見ているみたいな感じ。それと、私は主人公と両親の関係がずっとつかみきれなくて、両者の距離に違和感をおぼえてしまいました。268ページの「両親がおやすみをいいにきたとき〜かたい絆で結ばれている」みたいな内向的な家族が、アメリカの家族像なのかなと疑問でした。フィクションとしては、マレットもおもしろいし、うまい。でも、ダナをおとしいれるところは、好きになれませんでしたね。

ケロ:この厚さでソフトカバーというのが、本の内容そのまま。ひとつの事件が解決するんだけど、それによって主人公が変わったかな。そういうのを期待しちゃいけない本なのかな。大人向けのミステリー作家だからなのか、あんまりいい子ども像がなくて、むしろ大人の描き方がおもしろい。最後の方で出てくるキンバリー・ルー・ディクソンも売名行為をしたり、端役がおもしろかった。あと、この出版社のヤングアダルト作品への力の入れようはすごいですね。ヤングアダルトというのは、子どもも大人も読んでくれるという意味で、市場があるのでしょうか? それとも中途半端になってしまうのでしょうか?

アサギ:大人の読書力が落ちてるってことかしら?

:最近、大人の小説書いてる人が子どもを書いた作品も多いですよね。

ケロ:子どもがおもしろいからなのかな? 子どもが生きにくいからなのかな?

むう:海外の本屋さんで山積みになっていて、装丁がすごく目立っていたので、一度は素通りしたんだけど、やっぱり気になって思わず原書を買ってしまったんです。作者のHPを見ても、すごい人気だと書かれていました。ハリウッドの映画にありますよね、すごくおもしろくてすごくドキドキさせるんだけど、見終わってしまったらそれでおしまいという映画。そういう感じですね。この人は職人的にとてもうまい人だから、綿密に構成されているし、いろいろとゆきとどいている。だからすらすらと読めちゃうんだけど、別に後に何かが残るわけではない。それと、この話には、ネイティブとか黒人とかが出てこなくて、話が白人の中で終始している。一昔前のぴかぴか冷蔵庫にカラーテレビ、お母さんは朝ご飯のときから小さな真珠の首飾りをして……という型にはまった憧れのアメリカを連想させる雰囲気がある。環境の話も特に深まっているわけでなく、トレンドなので使ってみましたというレベルを出ていない。全体として軽いエンターテイメントだと思います。職人芸としてのうまさがある人だから、たとえばアン・ファインみたいにこれに中身がしっかり入ったらすごいものになるんじゃないかと思います。残念。

アサギ:原書と翻訳の感じは違うの?

むう:わりと同じ感じでしたよ。軽くて。受けた印象はきちっと重なってます。カーコさんが言ってた「家族」像も同じイメージです。これで、作者にちゃんと言いたいことがあれば、おもしろかったと思うんだけど。やっぱり大人向けのミステリー作家の作品ということなんでしょうね。この本に出会って、子どもの何かが変わるという本ではない。

アカシア:私も期待して読んだんだけど、あんまりおもしろくなかった。ロイが親に心配かけないでいたいというような人物造形はおもしろかったけど。最後のところなんかも、イメージとしてはいいんだけど、環境問題でこんなに簡単に村の人たちが勝利するわけないじゃないですか。その辺は、こんなの読んで感動してちゃいけないよな、と思ったわね。でも「走る男の子」ってリアルじゃないわけだし、作者は環境問題にしてもわざとリアリティから距離をおいているのかしら? それと、ダナは最初から最後までデブの悪役として書かれてて、しかも無実の罪で少年院に入ってるわけでしょ。児童文学の作家だったら、この子を見捨てたままでは終わらないでしょうね。後味悪い。やっぱり、この人は大人の本の作家なんですね。本好きな人は読まないだろうなと思ってたら、ある図書館司書が推薦していたので、認識をあらたにしました。

きょん:私も、アメリカンな感じは苦手です。全体的には、文章がテンポよくてスムーズに読み進めましたが、この「テンポよくスムーズ」な文章が、軽すぎて苦手です。ワニが出てきたり蛇が出てきたり、仕掛けがあって、おもしろいのかもしれませんが、主人公がなかなか生き生きと動き出さなかったのが、物足りなかった。ベアトリスが出てきてやっと動き出したところで、タイムリミットとなってしまい、まだ読むのが途中です。