浜たかや『龍使いのキアス』
『龍使いのキアス』
浜たかや/著
偕成社
1997

版元語録:夢の呪縛に何百年も苦しめられてきたアオギン帝国では、神官の娘キアスが呪いを解くために立ち上がった。

すあま:本を選ぶ係だったので、「見習い」をキーワードにして探していたら、これが出てきた。ところが、「見習いの立場だが出生はわからない」というよくあるパターンの話で、いわゆる「見習い」を描いた物語ではなかった! 何も努力しないのに、血筋のお蔭で何でもできてしまう。ハリー・ポッターも、何で魔法使いの血を引いてるだけで空を飛べるのかって不満に思ったけど、これも同じ。「ゲド戦記」(アーシュラ・K・ル=グウィン著 清水真砂子訳 岩波書店)のように、失敗を重ねながら目覚めていくというのならよかったのに。一生懸命に読んだんだけど、何だかよくわからないうちにどんどん話が進んじゃう。もっとじっくり読めばわかるのか、それとも単に書ききれていないのか? 謎や、登場人物たちの悩みなど、おもしろそうな設定は出てくるんだけど、どれも花が咲かないうちに終わってしまって残念。物語の世界が構築しきれていない。書き方によってはもっとおもしろくなるのだから、もうちょっと頑張ってほしかったな。

愁童:冗長なんだよね。やたら細かい所にこだわりすぎ。誰が誰やらわからなくなってしまう。キアスの状況説明が長々と続くので、ハラハラドキドキおもしろい、というふうには読めなかった。

きょん:いろいろな人が出てくるから、混乱してしまうのよね。細かいところがよく書けていないせいなのか、どういう意味なのかわからない部分がいくつかあった。『デルトラクエスト』(エミリー・ロッダ著 岩崎書店)や「守人」シリーズ(上橋菜穂子著 偕成社)に似た所がちょっとずつある。でも、龍の登場はあっけなくて、ちょっとショボい! 名前を教えてくれるだけで終わってしまうんだもの。それに、落ちこぼれのキアスが成長していくのかと思って読んでいくのに、ちっとも成長しないのよね。

すあま:最後まで読めばわかるだろうと思って頑張って読んだのに、結局わからなかった! しかもこんなに長いのに、終わってみれば1年しか経ってない。

きょん:竪琴も消えてなくなってしまって、中途半端よねえ。

すあま:イリットにだけ「さん」がついてるのはなぜかな。

きょん:途中で急にカタカナになるのも変ね。

アカシア:キアスに感情移入できないところが不満。キャラクター作りがしっかりしていなくて、表面的に描かれている。フル(道化役)だけは、他の人とは違ってユニークな存在としてとらえられたけど、あとは紙人形がぱっぱっとかわっているだけって感じで。これがいわゆるネオファンタジーなのかしら。つまり、雰囲気だけで、キャラクターがしっかりしてない、プロットとアイディアだけのファンタジーってこと。でも図書館では結構借りられてるみたいだから、読まれているのかな。

:最初の詩の部分がとても入っていけなくて、129ページで自ら読むのをやめました。いくら読んでも世界が見えてこないし、プロローグで解説をして、そこから展開するのもちょっと違うんじゃないかな、と思った。構成もよくわからないし、人物も区別がつかなくて前を読み直したりしなければならなかった。

ハマグリ:表紙の絵(佐竹美保絵)の感じでは、すごく魅力的でおもしろそうなのにね。

アカシア:書名もおもしろそうなのにね。

(「子どもの本で言いたい放題」2004年5月の記録)