『ロラおばちゃんがやってきた』
フーリア・アルバレス/著 神戸万知/訳
講談社
2004
原題:HOW TIA LOLA CAME TO VISIT STAY by Julia Alvarez, 2001

オビ語録:あの日、ぼくは幸せな魔法をかけられた/両親の離婚でかじかんだ少年の心を/おばちゃんの笑顔と料理であたためていく/ユーモアとやさしさいっぱいの物語

むう:ささっと読めて、おもしろかったです。ロラおばちゃんという人に原色を思わせる魅力があって、(主人公の)ミゲルがおばちゃんの存在が「はずかしい」と思いながらも魅かれていくところがいいし、子どもたちとおばちゃんのやりとりが面白かった。パパとママの離婚があまり重たくなく扱われているあたりが、アメリカだなという感じでした。ニューヨークの3日間の最後にパパが(自分の描いた)絵をミゲルにくれようとするのに対して、ママのことを考えたミゲルが、ニューヨークに置いておいた方がいいというあたりに、主人公の優しさが出ていると思った。楽しく読める良い本という感じですね。(最後の)サンタクロースが実はおばちゃんというあたりも、クスッという感じで面白かったです。

アカシア:私はなんかちょっと物足りない話だなと思いました。むうさんは、おばちゃんに魅力があると言ったけど、私はもっとその魅力が浮き上がるように描いてほしかった。タイトルが「おばちゃん」で、会話は「おばちゃん」と地の文の「おばさん」の両方が出てくるのね。でも、地の文もミゲルの視点になっていたりするので、機械的に二種類の使い方をするとかえって趣をそこねるような気がしました。それから47pに「ミゲルが妹を『ニータ』と呼ぶのは、なにかたのみごとがあるときと決まっている」とあるけれど、それ以前の、頼み事をしていない所でも「ニータ」と呼んでいるので、あれ? と思ってしまいます。54pには「内地のやつら」とあるけれど、「内地」という言い方でいいんでしょうか? それと196pで、(ドミニカに行った主人公が)ホームレスの子どもを見て、自分の幸せを感じたと言っている場面がありますが、他人の不幸を見て自分の幸せを感じるという著者の視点に疑問を持ちました。そんなこともあって、作品全体があまり好きになれませんでした。

愁童:物足りなさと、もどかしさを感じた。陽気なロラおばちゃんの性格設定は分かるけれど、子どもたちがトップシークレット扱いにしなければならない理由がいまいち説得力に欠ける。だからロラおばちゃんが街の人々に受け入れられて、母親の誕生パーティに沢山集まってくれる結果になっても、主人公たちが、その変化にどう関わっていったのかが、読者には英語を教えたこと以外にはあまり伝わってこない。天性明るいロラおばちゃんの振る舞いを、子供達はただ眺めていただけみたいな感じで、物足りない。アメリカの子どもたちにとっては意味のある作品かもしれないけれど、日本の読者にとってはどうなのかな?

ハマグリ:私もみなさんと同じような感じで、ニューヨークからヴァーモントにやってきた子どもたちが、いろんな人種が暮らしているNYと違って白人ばかりのヴァーモントは暮らしにくいなと思っているところへ、ラテン系の明るいおばちゃんがやってきて、英語はしゃべれないのにみんなとすぐに仲良くなっていく……という暖かでさわやかなお話という設定だとはわかるんだけど、読んでいてつまずくところがたくさんあった。たとえば6pで、ママがミゲルに「おばさん」でなく、スペイン語で「おばちゃん」と呼んでくれと頼むけど、日本の子どもにとっては分かりにくい。英語とスペイン語と、たどたどしい英語を全部日本語に移し変えるわけだから、無理があるとは思うけど、もう少し工夫できないものか? 22pの空港におばさんを迎えにいくところ、「ふたりはカウンターの向こう側を見た」とあるけれど、ふたりはカウンターのどっち側にいたの? おばさんはどこにいたの? 情景が見えてこない。ほかにも情景が見えないところがたくさんありました。38ページの雪の上に歩いて字を書くところも。41pの「足跡は、文字から離れるのではなく、文字に向かっている」も??でしたね。101pの「ネコとイヌの嵐だよ」は、英語を知っている大人なら分かるけど、もうちょっと子どもにも分かるように訳さないと不親切じゃない? 103pの後ろから4行目「マジだよ……『オ』がついていることばは、なんでもだ」というところも、子どもに分かるように工夫が必要。168pには、「白文字で『ハッピーバースデー』と書いてあるたくさんの風船を飛ばした」とあるけれど、挿絵は黒文字になっている。
とにかく、情景が目に浮かばないので、楽しめるところまでいかなかった。私はぜんぜん面白くなかったわ。原書だったらもっと面白いというわけでもないんじゃない?

アカシア:翻訳や編集ももう少し工夫が必要だったと思うけど、原作自体のストーリーにもそれほどの魅力がないのかも。

カーコ:私がいいなあと思ったのは、おばちゃんが子どもたちに与えてくれるおおらかさです。白と黒だけのヴァーモントの風景のなかで、派手な服を着て、ひたすら明るいおばちゃんの姿とか、英語は不自由なくしゃべれるのに臆している子どもたちに対して、英語ができないのにどんどん友だちができるおばちゃんの好対照。「ああ、こんなこともあるのか!」と、子どもたちが思っていくところがよかったです。いろいろ指摘されていますが、もしかしたら、訳者がスペイン語もできる方なので、英語とスペイン語がまじりあった違和感を読みとばしてしまっている部分があるのかもしれまんせん。ドミニカとか中南米とか、遠い世界のことを知るという面白さはあるのでは?

アカシア:確かに子どもにとっては、知らない世界が見えてくる、というのは面白いことなんだけど、今ひとつその世界が生き生きと見えてこないんですね。おばちゃんのツケぼくろなんて、本当は面白いところなんだろうけど、その辺のユーモアがイマイチ伝わってこないのが残念です。

トチ:おばちゃんの服装と、お料理のところは面白かったけど。ドミニカ料理って、食べたことないから。ユニークなおばちゃんだ、面白い……と言葉では言っているけれど、やっていることは別に面白くないのよね。『シカゴよりこわい町』(リチャード・ベック著 東京創元社)のおばあちゃんみたいに、強烈なことをやるわけではない。アメリカに住んでいる子どもたちにとって、おばちゃんの派手な服装や身振りや、英語のできないことが面白いだけで、ドミニカにはそういう人たちはいっぱいいるでしょうし……言葉で言うだけじゃなくて、ストーリーでおばちゃんのキャラクターを語っていかなきゃ、読者には物足りない。それから、おばちゃんが子どもたちと話すときは「 」の中が平仮名で、すらすらしゃべっているでしょう? これは、スペイン語でしゃべっているのかしら? 子どもたちに習った英語で訳の分からないところを言う箇所は面白かったけど、ここはカタカナでしょう?原文はどうなっているのかしら?アメリカの読者はスペイン語もある程度分かるから面白い部分もあるかもしれないけど、日本の子はそれをさらに日本語に訳したものを読むわけだから、分かりにくいうえに面白さも半減しちゃうわね。

すあま:ロラおばちゃんのイメージが浮かべられないまま、終わってしまった。いろいろなできごとが、すべてさらっと解決してしまい、不満が残った。150pで、(がんごじじいの)シャルルボア大佐が「チャーリーズボーイ」と(野球チームの少年たちのユニフォームに)書かれているのを見ただけで、なぜ和解してしまうのかもわからなかった。原題が“How Tia Lola came to visit stay”で、visitを消してstayになっているのは、最初は主人公の子どもたちに拒絶反応があったけど、最後には大事な家族の一員になったということを意味しているということなのかと思ったが、ミゲルにもそんなに葛藤がないので、どうなのか。ミゲルの気持ちについていくと、肩透かしを食らうことが多かった。物足りなかったし、作者がなにを意図していたのかも分からなかった。

ハマグリ:良い人のでてくる、良いお話なので、感動しながら読まなければと思ったんだけどね……

トチ:ハマグリさんって、いい人なんだねえ!

(「子どもの本で言いたい放題」2005年2月の記録)