斉藤洋『白狐魔記 源平の風』
『白狐魔記 源平の風』
斉藤洋/作
偕成社
1996.02

版元語録:仙人のもとで修業し、さまざまな術を身につけたきつね白狐魔丸が、源義経と会い武士とは何なのかを考える大河ファンタジー。

アカシア:この本は子どもによく読まれているし、シリーズの4作目が最近出て、話題になってますね。

愁童:ぼくの居住地の図書館には入ってなくて、借りられなかったので読んでません。

驟雨:この作家の本は、読書会でも、『サマー・オブ・パールズ』、『ルドルフとイッパイアッテナ』(どちらも講談社)と、これまでにたしか2冊取り上げていて、これが3冊目だけれど、『サマー・オブ・パールズ』が、男の書いた都合のいい女の子だと不評だったのと表裏一体で、こういう男の世界を書かせると、この人はうまいなあと思いました。お話として、とてもおもしろく読みました。最後に、キツネが仙人のところにとことこと戻っていくあたりの書き方も、いいなあと。シリーズの次の巻も読んでみたいなあと思わせられました。おもしろかったです。

ミラボー:私は正直言ってあまり好きじゃなかった。「フォレスト・ガンプ」という映画でいろんな史実に立ち会うという設定があって、そういう感じかと思って読んでいたら、思ったほどは史実に立ち会わなかったんで、拍子抜けしたのかもしれないな。なんだか説教臭くて、人間とはこういうものであるとか、修行はこういうものだとか、キツネがまじめくさっていて……。

アカシア・ウグイス:そこがおもしろいんじゃない! わざとそういうふうにしてるのよ。

ミラボー:私は嘘くさかったり説教臭いように感じたんだけど。この著者の本を初めて読んだんで、他のを読むと違うのかもしれない。

ウグイス:歴史のことは少ししか出てこないけれど、とにかくこのキツネがおもしろい。仙人について修行したりするけれど、その仙人が不真面目なのがおかしいの。かるーく読むべき本だと思う。このキツネ、ばかみたい、とか思いながら読まないと。坊主の話を床下で聞いているところのおかしさとかね。ユーモア小説だと思う。もったいぶって、大上段に構えているところが、またおかしいの。私はこの本はとても気に入って、おもしろいと言ったら、別の人は「こんなのくだらん!」と言ってた。まじめな人だったから、まじめに読んじゃったのね。この本は、まじめに読んじゃだめ。おかしい話として、アハハと笑って読めばいい。

げた:斉藤さんは、説教くさい話が大嫌いなタイプですよ。図書館に来てもらって話してもらったときも、そう言ってました。これはシリーズで4巻目まで出てますけど、1巻目がいちばん新鮮でおもしろかったですね。キツネが修行して、自由に人を化かせるように成長していく様子がおもしろかったですね。4巻目はキツネのことよりも、信長のことなど史実をたどることに力点が置かれているようで、物語のおもしろさが少なかったかな。

驟雨:あの、キツネが街道で人に出会って、化けてみたら、相手そっくりになってしまい、それで相手が逃げだすというエピソードは、おもしろかったですよね。

アカシア:斉藤さんは、ストーリーテラーで、エンターテインメントのおもしろさに徹しているんだと思うな。変身の過程を細かく書いている本って、あんまりないんだけど、この本は、尻尾の処理がうまくいかないのは「空」にしなければならないからだ、という。そのあたりなんかもうまいですよね。リアリティを追求するんじゃなく、笑って読む本。ただし本をよく読む人にとっては、サービス過剰が鼻につくかもしれませんけど。ところで冒頭に出てきた猟師は謎めいてるけど、だれなの?
誰もわからず。

げた:私は斉藤さんの作品の中では、最初の作品「ルドルフとイッパイアッテナ」がいちばん好きですね。あれは傑作だ。

ウグイス:私はこっちのほうが好き。

アサギ:この人、浪花節よね。基本的に。だから日本人に受け入れられやすい。ときどき悪のりしたりするけど。

(「子どもの本で言いたい放題」2006年8月の記録)