サンシャイン:ロダーリは、『猫とともに去りぬ』に続いて2冊目。おもしろく読めました。とんかちを使って、世の中をぶっこわし、うまくおさめちゃうというのは、子どもたちはおもしろく読むんだろうな。笑えるからいいんじゃないかなという感じです。

げた:私はね、小さい子どもが金槌ふりまわしているというのに抵抗があったので、初めからおもしろいという気持ちになれなかったんですよ。7つのお話もとりわけ奇抜なお話というわけでもなかったしね。訳者あとがきに、音のおもしろさについても書かれているけれど、「マル」の響きについても、日本語だとそこまで感じられない。赤ずきんちゃんの話をこわがるというのがオチなのだけれど、今ひとつ、そのおもしろさも感じられない。挿絵も平面的な感じで、好きじゃないな。

mari777:私もです。世界に入れませんでした。『猫とともに〜』も読んで、表題作はおもしろかったんだけど、それ以外は合わなかった。この作品もそうなんですけど、登場人物に葛藤がないんですよね。楽しいのかもしれないけど、悩んだりしない。訳は読みやすくてうまいなと思いました。

ジーナ:私は楽しめました。荒唐無稽で、ありえない展開の話だというのが最初から見えるので、フィクションとして、今回はどんなやつをやっつけるのだろうと、楽しんで読めました。金槌をふりまわすのと、それがブーメランみたいに戻ってくるというのがばかばかしいのだけれど、こういう本もあっていいかなと思います。ユーモアってすごく難しくて、笑うところが国によってだいぶ違いますよね。現地で楽しく読まれていても、日本に持ってくると、ちっともおもしろくないということがよくある。これは、イタリアの子のほうがもっと楽しめるのだろうけれど、日本でも通じると思いました。一つ気づいたのは、人の名前がたくさん出てきますよね。イタリア人の名前は、日本の子には聞きなれず、おぼえにくいものもあるので、ひびきのおもしろさもあるのだろうけれど、チョイ役の登場人物については少し削ったほうが、日本の子どもに読みやすかったかなと思います。

みっけ:そうなんですよね。ブーメラン金槌っていうのは、かなりきついですが、割合さくさく読めました。影とか襞とか、そいういうのではなくて、荒唐無稽な展開を楽しむというお話ですよね。第3話の、双子が赤ちゃんのお守りをしているうちに、赤ちゃんを喜ばそうと食器を割りはじめるんだけれど、その行動も実はお母さんには読まれていた、という展開なんか、かなり気に入りました。荒唐無稽な部分と、親にちゃんと見ていてもらっているという子どもの安心感と、両方があって、子どもは楽しめるんじゃないかな。あと第7話の、謎の潜水艦が実は自分には釣れもしない魚を手に入れるために金持ちが雇ったものだったという荒唐無稽さも、第1話の、強盗が双子の策略にまんまと乗せられてみんなの嫌っていた品々を持たされるあたりも、なんというかほんわりしてて、ばかばかしくていいですね。この人は『チポリーノの冒険』でもそうだけれど、からっとした感じがしますね。

mari777:ロダーリの作品は、短編集『猫とともに去りぬ』が同じ訳者で光文社の古典新訳文庫に入っています。あと、もう絶版かもしれませんが、図書館で『ロダーリのゆかいなお話』という5巻本を見ました。タイトルどおり、荒唐無稽な「ゆかいなお話」満載の短編集です。

ネズ:すらすらおもしろく読みました。落語を読んでいるみたいで。翻訳もなんとか日本語でも言葉遊びの面白さを伝えようと訳者が努力しているのが伝わってきました。おなかをかかえて笑ったかというと、そこまではいかなかったけれど。私もげたさんとおなじで、子どもが金槌を持っているというのが気になって……。イタリアの人が読むと、金槌になにか意味があるのかな? 最後の「かなづち坊やたち」というお母さんの台詞がけっこう好きなので、タイトルも「かなづちぼうや」とかにしたら、「アンパンマン」みたいにキャラクターの設定ができて、金槌も気にならなかったのかも。イラストも、本文にぴったりあっていて好きです。

アカシア:私もイラストはこれでいいと思いました。上のほうはパラパラ漫画になってるのよ。これは、いろんなところから集めてきた短編なのよね。

ネズ:そうか! だから統一がとれてないような気がするのね。

(「子どもの本で言いたい放題」2007年12月の記録)