『ひらがなだいぼうけん』
宮下すずか作 みやざきひろかず絵
偕成社
2008

版元語録:本のなかの文字たちが、夜の間どうしているかしってる? 本から飛び出た文字たちの冒険を、笑いながら楽しめる一冊です。
*第19回椋鳩十文学賞受賞作

げた:第一話「い、ち、も、く、さ、ん」がとてもよかった。絵がいいですよね。文の内容を理解するのに、とてもいい効果になってます。言葉と楽しく遊べる本はたくさんあったほうがいいので、私はお薦めできる本だなと思とました。

うさこ:ひらがな文字のもじならべ、もじで顔の七変化など3話ともそれぞれうまい構成でできているなと思いました。49ページの「へっくしょん」のところがちょっと説明的すぎるかな。69〜70ページももう少しおもしろくできたのかな、とちょっと残念。印象的だったのは、絵の見せ方。絵と文がうまく構成されている。文字がしゃべっているところなど、デザイン的にうまく処理されていて、絵にしづらいところなど描きすぎず、説明的にならずに、とてもよく考えられて絵を配置している。ただ、26〜27ページなど、異国の感じがします。日本語や、日本のことばをあつかった作品なので、もっと和風な感じのほうがよかったかな、とも思います。

カワセミ:この本は、小学校でちょうどひらがなを全部習ったばかりの子にとっては、とてもおもしろく読めるのではないかと思います。幼年童話というのは、まじめすぎておもしろみがなかったり、逆にあまりにもくだらなかったりして、薦めたい本がなかなかない分野なんですけど、この本は、このおしゃれな感じがなかなかいいと思いました。字を覚えはじめた子どもって、文字を形としてとらえるところがあるので、そういう興味によく沿っている。「へ」と「く」が似ているとか、「わ」と「れ」を間違えやすいということは実感があると思うのでおもしろく読めると思います。ただ、「さ」を反対にすると「ち」になるというところは、わかりにくいのではないかしら。「さ」は続けて書く形では習わないので、おかしいと思うのでは? また、「ピーターパン」が「ピーターペン」になってしまうところ、ひらがなの話なのに、ここだけカタカナだからおかしい。ひらがなの文字を文中でも描き文字にしてあるのはわかりやすくてよかった。

クモッチ:NHKのニュースでこの本がとりあげられ、「メールなどで人を傷つけることが多くなっている中で、ことばの楽しさを伝えたい」という内容の作者の言葉が紹介されてました。そういう意図があったんですね。小学生向けの学年雑誌では、ひらがなを子どもに楽しんでもらうための企画として、こういうことはよくやるので、それほどアイデアを新しいとは感じなかったんですが、これが読み物の単行本の企画として成り立つんだというところが新鮮でした。「さ」と「ち」のところは混乱するのではないでしょうか。ひらがなの習い始めでは、鏡文字を書きやすい時期なので、その時期に読む本を作る人は、もっと気をつかわなければならないのでは? 本の背に文字がかくれてしまうというアイデアは、いまいち。たとえば、「はだかの王さま」の「の」だけが黒い文字なので隠れていることがわかる、とありますが、他のところの挿絵では、隠れている文字が黒くないので、なんでかな?と思います。また、「く」の上に「へ」がくっついているが、疲れてきて「へ」に戻ってしまったとありますが、そしたら「へ」と「く」が重なって見えるのではないかな。重箱の隅をつつくようですが、こういうところがきちんとしていないと、子どもだって疑問に思うのではないかしら。

ササキ:文字が視覚的に動いているという効果があって、おもしろかったです。

サンシャイン:さっと読んでしまいました。小学校1、2年の子向きに書かれた作品ですね。教育的効果も考えて作られているのでしょうか。

ショコラ:「へのへのもへじ」タイプの変形がいろいろあっておもしろいです。発想がすばらしい。挿絵の色が落ち着いたトーンでまとまり、絵と文のハーモニーがとってもよく、楽しみながら読めました。文字だけのページがありますが、他のページに比べると、ちょっと1年生には無理かも。話題になっている「さ」の形は、学校で習う教科書の文字とはちがいます。「さ」を教えるときは、左の部分を離して教えるので、「さ」と「ち」は鏡文字にはなりません。そういうところは、とても残念です。

メリーさん:文字そのものが動き出すというアイデアがおもしろいなと思いました。幼稚園のとき、鏡文字をすごくうまく書く友人がいたのですが、小さな子どもはひらがなを文字としてよりも絵として見るのだな、とつくづく思いました。内容では、「へっくしょん」「へのへのもへじ」がおもしろかったです。欲をいえば、最初の物語で、文字があわてていて、最初の文章と変わってしまうところ、意味の違う別の詩になっていれば、なおよかったなあと思いました(むずかしいとは思いますが)。

カワセミ:1年生では少し無理で、ひらがな全部をマスターしたあとの子が読むとおもしろいのかも。2年生くらい? 自分はわかっているから、「これ違うよ〜」って優位に立てる。

げた:幼年童話はキャクターが強烈すぎるものが多いので、こういったものがあるのはいいですね。

ショコラ:この女の子のポニーテールがいつもぴんと上にあがっているのは、子どもに受けるのかもね。

メリーさん:らっちゃんって、本名は何なんでしょう? らで始まる名前、あんまりないですよね?

カワセミ:らっちゃんって、字づらも音のひびきもかわいくていいね。

(「子どもの本で言いたい放題」2009年6月の記録)