『そいつの名前はエメラルド』
竹下文子/作 鈴木まもる/画
金の星社
2008.01

版元語録:そいつがぼくの家にやってきたのは、ふうちゃんの誕生日。ぼくはハムスターを買いに行ったのに、思わずトカゲを買ってしまう。母さんはかんかん。でも、かわいいので、家族みんなで大事に育てることになるのだけど……。

カワセミ:中学年向きで読みやすい本なんですけど、設定はめずらしくないですね。子どもがペットを飼ったら、それがとんでもないペットだったという話は、外国のものでも日本でもよくありますから。描写はていねいで、主人公が不思議なペットショップにたどりつくまではドキドキ感があり、このいかにも怪しい店でいったいどんなペットを買うことになるんだろうと期待が高まるけれど、この本の致命傷はこの表紙。ハムスターじゃないペットを飼うことになるんだな、という予測がつくので、いったいどんなものを飼うのか、どうなっちゃうんだろうって思うところが楽しいのに、表紙で最初から種明かしをしてしまっている。本当にがっかりです。ペットを飼うというのは、子どもにとても身近な題材なので、興味をもって読めると思います。それだけに、もっとおもしろくできるんじゃないかな。最後におとうさんのペットだったカメまで花火になっちゃって、すべて花火で終わりっていうのも、なんだか無理がありましたね。

セシ:読みやすくてすらすらとは読めたけれど、いまいち全体に納得がいかない感じでした。おかしなペットショップに入って妙なものを買ってきちゃうというところまではついていけるけれど、お父さんが飼ってたカメを逃がしちゃったと言うところで、「えっそんなことでいいの?」と思って、そのあとがだんだんついていけなくなりました。中南米には人間ほどもあるトカゲがいると聞くので、このトカゲも大きくなるのかなと思っていたら、脱皮した後、羽がはえて飛んでいってしまうところで追い打ちをかけられ、さらに花火になってしまうというので、納得しきれない感じで終わりました。

たんぽぽ:子どもは、「ハムスターのかわりにトカゲを飼うんだって」と、とびついて読みますが、最後花火で終わって、これで終わりかって。もう少し、何かあったらよかったなと思いました。

メリーさん:さっと読めて、おもしろいんですが、全体の流れはどこかで見たような感じがしてしまいました。感想文を書くなら、自分のペットのことを書くんでしょうか。個人的には、ごちゃごちゃしたペットショップのところが、不思議でおもしろいところだと思うので、そこにもっと仕掛けがあったらいいのになと感じました。ただ、本文の記述で、トカゲが「笑っている」ではなくて、いつもぼくにとっては「笑っているように見えた」、というところ、気を使っているなと思いました。子どものすぐとなりに、ファンタジーはいつでもころがっていると思わせるには効果的だなと。

ハリネズミ:私はおもしろく読みました。話の持っていきかたに独創性はないけれど、おもしろい。ペットの愛らしさも意外性も、うまく出てるんじゃないかな。最後のところは、エメラルドが死んじゃうのを、こんなふうに比喩的にあらわしているんでしょうか? 鈴木さんの絵は、鳥の巣の本だととってもていねいなのに、こういうのはサッサと描くんですね。ペットショップのおばあさんは、『千と千尋の神かくし』のゆばーばみたい。感想文を子どもに書かせると、「元気なときもそうでないときも、ちゃんと世話しろ」っていうメッセージにばっかり偏るんじゃないかな。

カワセミ:子どもたちは、題材には興味を持ちますよね。ペットっていうはとても身近だし。

ショコラ:昨年、学級の子どもたち(5年生)紹介したところ、「だんだん大きくなるのがおもしろい」って言ってました。私も、絵も好みだしおもしろい話だと思い、一気に読みました。不思議なお店で買い物をする話も、飼っているものがだんだん大きくなっていく話も、ほかにもあります。おもしろかったけれど、ずっと心に残るところまではいかないかな。

(「子どもの本で言いたい放題」2009年7月の記録)