『パンダのポンポン クリスマスあったかスープ』
野中柊/作 長崎訓子/絵
理論社
2005.12

版元語録:クリスマス。今年こそサンタがきてくれるかな。ポンポンのレストランではパーティーがひらかれました。そして、そのあとステキなできごとが……。スーッと気持ちがよくなって、パーッと気分が明るくなるスーパーマーケットの店長、キリンのリンも活躍する、あったかい気持ちになるおいしい童話。

プルメリア:幼年童話っぽい作品で、ほのぼのしていておもしろいと思いました。コアラの元気な雰囲気が出ているし、キリンの特徴も出ているし、動物1匹1匹の役目があるのかな。p148で、「真っ白な雪」「がちらり、ちらり。」というのは改行が間違っていると思います。子どもは、「がちらり」と読んでしまうので、配慮してほしいな。トナカイのサンタはあまりかわいくなかったです。

ハリネズミ:私はおもしろいと思えませんでした。C・S・ルイスが児童文学論で、子どもの本だからといって食べ物を出せばいいということではない、と言ってますけど、これはその例じゃないのかな。かわいい動物と食べ物が出てくればいいってもんじゃないでしょう。内容も、消費マインドにのっとって書かれているような気がして、新鮮味もないし、私は入っていけませんでした。

カワセミ:私もシリーズの1冊目が出たとき、低学年向きのとてもおもしろそうな本が出たと思って期待して読んだんですけど、裏切られたんです。この3冊目も同じでした。絵は楽しいんですけどね。p107の「あれあれ? どこへ行くのかな?」のような文を入れるのって、幼年童話だからと思って入れるのかもしれないけれど、小さい子は主人公になりきって読むので、誰が言っているのかわからないような言葉はかえって混乱を招くと思います。それにこの本は、1冊に3つのエピソードが入っていますが、幼年童話にしては文章が多いし総ルビとはいえ漢字も多い。それに「笑みがひろがりました」とか「念じていました」とか、子どもの言葉ではないですよね。だからといって3、4年生向きだと話が幼稚すぎる。本のつくり方がどっちつかずだと思います。それから、肝心のポンポンのキャラクターがはっきりしてないし、おもしろくなかったですね。キツネのツネ吉なんてネーミングもどこにでもあるし。

げた:この本は、子どもたちには人気があるようです。ですからこの本の良さは何なんだろうな、と考えたんです。そんなに筋に起伏があるものではないので、筋を楽しむということじゃないんですよね。それよりもとにかく、順番にいろいろな動物が集まってきて、パーティーが始まって、楽しく過ごすんですよね。たくさんの友だちが集まってあたたかい場所がつくられ、友達っていいなあというやさしい気持ちになれる、そんなところがいいのかな。出てくる動物の名前はちょっとだじゃれっぽいけれど、すごくぴったりだと思いました。

ハリネズミ:名前の付け方は、カワセミさんがおもしろくないと言ってたけど?

カワセミ:ほかはおもしろいけど、ツネ吉だけが陳腐だと思ったの。

げた:コブラのラブコとか、おもしろいですね。

プルメリア:それって、言葉の並べ替えでしょ?

ハリネズミ:スーパーでいっぱい物があるといって大喜びしてますけど、ずいぶんとモノ志向ですよね。作者は子どものころそういう感動をもったのかもしれないけれど、今の子は感動しないんじゃないかな。

バリケン:なぜ子どもがこういう本をこんなにも喜ぶのか、それから、喜ぶからという理由だけで書いていいのか……うーん、さっき私が言ったことと矛盾するかもしれないけれど、幼年ものの永遠の課題よね。p88で、「ララコがたいせつにしている花たちが、このパーティーをいっそうはなやかなものにするのだと思うと、うれしくてなりません。」というのは、小さい子にはわかりにくい文章ですね

ハリネズミ:ポンポンのキャラクターづけがはっきりしていないという意見があったけど?

バリケン:だいたいパンダ自体、他の動物ほどキャラクターがはっきりしていないんじゃない?

げた:みんなを楽しませる役というところでしょうね。

バリケン:MCみたいな役割ね。

げた:でも幼年童話とはいえないですね。中学年向きですね。

プルメリア:最初の2ページは絵があって字が少なくて読みやすいと思いましたが、そのあとは急に字が多くて低学年には無理。最近の子は、本が厚いと手に取らない傾向があります。読まないんです。字を大きくして、字と字との間隔があいていれば読めると思いますが。

ハリネズミ:中学年が読むには内容が幼稚すぎるという意見も出たわね。1話ずつ1冊にして、1、2年生が読みやすいつくりにしたほうがよかったのかもね。

(「子どもの本で言いたい放題」2009年11月の記録)