『まよわずいらっしゃい〜七つの怪談』
斉藤洋/著 奥江幸子/絵
偕成社
2010.07

版元語録:〈怪談クラブ〉へようこそ。ゾクッとする話、クスッとわらえる話、キュッとせつない話…7種のこわさがあじわえます。日常のすきまにあらわれる、もう一つの世界へごあんないーー

ハマグリ:これは怪談シリーズ3冊目で、前の2冊と同じく、主人公が西戸先生の研究室に招かれ、順番に披露される怪談を聞くという形になっています。ただの短編集じゃなくて、こういう枠にしたのは読みやすいんじゃないかと思いました。たかしくんっていうのが進行役になっているのも、子どもにとっては読みやすいと思います。怪談自体はそんなに怖いわけではなく、まあまあの話が多いです。各巻で怪談のテーマが変わり、今回は乗り物で統一されているのがおもしろいですね。一つ怪談を聞いたあとで、いろいろ疑問点があると思うんですが、聞き終わった大学生たちが、みんなでああだこうだ言う場面があるので、読者もそこで納得がいったりいかなかったりする。そういうシチュエーションをつくっているのも、子どもにとって読みやすい工夫だと思います。文章が読みやすく、すらすらと読めました。

メリーさん:すらすら読めました。この著者は本当にページをめくらせるのがうまい。ただ、話の内容に関しては、とりたてて目新しいものはなく、どこかで聞いたようなものが多い気がしました。斉藤洋さんに書いてもらうなら、もうちょっと別の切り口の話が読みたいなと思いました。それでも、子どもたちは怖い話が大好きなので、この本は手にとられるのではないでしょうか。

レン:さらさらと読めました。ハマグリさんと同じように、構成が上手だなと思いました。小学生は怖い話がとても好きですよね。「怪談レストラン」シリーズ(松谷みよ子/責任編集 たかいよしかず/絵 童心社)や「学校の怪談」(常光徹/著 楢喜八/絵 講談社)など、怪談は読書の入口として間口が広い。ただ、それよりももうちょっと書き方が練られているというところで、この本は図書館の先生が手渡しやすいものだと思いました。うちの市の図書館でも、よく借りられていて、人気があるようでした。やはり斉藤さんは文章がうまいですね。すぐに読者がこの世界に入っていける。短い言葉でさっと、それぞれの場面がたちあがってくるのがすごいと思いました。

ゆーご:このくらいの怖さなら、怖がりだった子どもの頃の自分でも読めたかな。怪談クラブのような秘密結社的なものも子どもの頃って好きですよね。単に肝試しという形をとるのではないところがおもしろいと思いました。最後にクラブ自体が最大の怖い話、というふうに終わるのもうまい。ただ、“ポマード”のような、子どもの知らない単語は入れなくてもよかった気がします。大学生の描写もけっこうあるけどイメージできるのかな。語る人によって話のテイストが工夫されているのが面白いけれど、彼女との遊園地の話がほとんどホラーでなくなっちゃったのは、少し残念。ひとつの話に対するやりとりをもう少し広げて書いてみてほしい。シリーズの他の作品も気になります。

ひいらぎ:この作品は、入れ子になっているっていうのか、構造がまずおもしろかったですね。外側に西戸先生の研究室のできごとがあって、それ自体が不思議で、先生からの手紙も回数券も、いつのまにか消えてしまったりする。そしてその枠の中にまた参加者が語る一つ一つの怪談があるんですね。やっぱり斉藤さんはうまい。怖さから言っても、私はいろいろ想像するとこの作品がいちばん怖かった。この手の作品をたくさん読んでれば新味はないかもしれないけれど、知っているものやなじみのシチュエーションが出てくるので、子どもには読みやすいんじゃないかな。“ポマード”ですけど、今の子は存在そのものを知らないでしょうから、何だろうと逆に興味を持つかもしれませんね。

レン:わざと時々、難しい言葉を使っているのかなと思いました。「肥後の守」なんて、今の子はぜったいに知らなさそうなものを出してきているから。

ひいらぎ:わざとかもしれませんね。全体が読みやすいから、あっても気にならないし、ほかの二作と比べると文章もプロの作家の文章ですよね。

サンシャイン:『さとるくんの怪物』を読んでからこちらに行ったので、読んでいてぞーっとする所もあって、古典的な話ではありますが、読ませる力がある作品だと思いました。遊園地で写真を撮ったら、1人だけ写っていたっていうのも、話としてはおもしろいです。それからトンネルの中での幽霊話は、私の子どもの時によく聞かされた話です。鎌倉と逗子の間にトンネルがあって山の上には焼き場があるので、トンネルの中に幽霊が出るという話です。久しぶりに聞く話だと、変に懐かしく思いましたが、文章はうまく表現されていると思います。主人公の男の子は年下なのに、大学生からいろいろと期待されちゃっていて、ちょっと出来すぎという感じもしましたが、語り手役・話の進行役としては子どもの方がいいのかもしれません。

ハマグリ:そんなに怖くはないけど、ちょっとぞっとする話っていうのは、子どもたちが楽しめるんじゃないかしら。

ひいらぎ:『さとるくんの怪物』は、説明しすぎていて怖くないんだけど、こっちは、そういう現象があったという記述にとどめているので、いくらでもその先を想像できる。だから逆に怖い。

シア:斎藤洋さんの大ファンなので、今回とても楽しみにしていたんですけど、この著者は、作品によって作風がガラリと変わってきますね。この作品は、私としてはあんまりピンとこなかった。話の一つ一つは興味深いんですけど、それぞれに明確なオチがないっていうのがすっきりしなくって。都市伝説的なものはこんなのが多かったと思うんですけど。エピローグがいちばんおもしろかったんですが、他は頑張って読むような感じで。今回テーマがホラーとなっていたので、かまえて読んでしまったのもいけなかったのかもしれません。というのも、ホラーというと最近どぎつくなってきてしまっているので。「ニック・シャドウの真夜中の図書館」シリーズ(ニック・シャドウ/著 野村有美子/訳 ゴマブックス)とか、「怪談レストラン」シリーズなどですね。でも、今回のようなホラー本も、味があっていいし、センセーショナルすぎる内容というのはよくないんだなというのがわかりました。「真夜中の図書館」は教訓的な部分も多いんですけど、これはさらっと事実のみを描いていますね。斉藤洋ファンとして言えば、いい意味でまわりくどい言い回しなんかもないし、章ごとの題名も短いし、いかにも斉藤洋節、炸裂じゃなかったのが残念です。

レン:中高校生の女子もホラーは読みますか?

シア:好きですね。山田悠介とか、ダレン・シャン。少し上になると、小泉八雲、「雨月物語」も。血が出たり、ビジュアル的にきついほうが人気がありますね。困りものですが。

メリーさん:『トワイライト』(ステファニー・メイヤー/作 小原亜美/訳 ヴィレッジブックス)はどうですか?

シア:好きな人は好きだけど、あんまり騒がれていないですね。外国のものはそんなに好まれないかな。名前が覚えられないと言っているのをよく聞きます。文化の違いにも違和感を感じるようです。それよりも、日本の都市伝説系の方が断然好きですね。それから、映画からだと入っていきやすいのか、『リング』(鈴木光司/著 角川書店)とか、『着信アリ』(秋元康/著 角川書店)なんかも好きですね。

メリーさん:女の子のほうがホラー好きなのかな。男の子は大きくなると読まなくなる気がします。

プルメリア:私は斉藤洋さんの作品は大好きで、最初から全部読んでいるんですけど、この作品は都市伝説っぽい感じがします。表紙に、ここに書かれている7つの話の挿絵が全部出ていますね。クラス(小学生4年生)の子どもに紹介したところ、子どもたちは、「エレベータが怖い」っていうんです。「どうして怖いの」と聞くと「幽霊が出てくるから」。みんなが知っている「口裂け女」の話は、クラスで読み聞かせをしました。ここに出てくる人物6人(教授と学生)はどこか謎めいており、また不思議なことに、大学でみんなと話をし、話が終わり、家に帰っても時間がたっていない。「怪談レストラン」より1つ上の段階の読書として紹介しています。冷やし中華が毎回出てくるんですよね(笑)。私がこの作品でいちばん怖かったのは、位牌を売りにくる話でした。このシリーズの最初に出てくる紫ばばあは「怪談レストラン」にもあります。

優李:これは、シリーズ3作目ですが、どれも、「怪談レストラン」よりはもう少し上の年齢の子どもたちによく読まれてます。斉藤洋さんは本当に上手で、どの話もレベルが変わらず怖いし、読ませますが、話の「オチ」がなくて並んでいるのが、どうしても物足りない。そのせいで、突き抜けて良いという感じにならないのではないかなあ。「ホラー」というと、この頃「血みどろ」「どぎつさ」度が高いのが人気ですが、私はそれが苦手なので、このシリーズは好きです。

(「子どもの本で言いたい放題」2010年10月の記録)