『さとるくんの怪物』
たからしげる/著 東逸子/絵
小峰書店
2010.07

版元語録:少年のところへかかってきたケータイ。あやしげなノイズが混じっている。……もしもし……このケータイ、どこにつながっているの?

シア:今日の3冊の中で一番最後に読みました。やっぱり新しい本なので人気があるせいか、図書館で手に入りにくかったですね。公衆電話を使って儀式を行うんですが、昔は普通にあった公衆電話が、すでにこっくりさんレベルのアイテムに使われてしまうところに寂しさを感じてしまいました。設定にいろいろなものを盛り込みすぎな気もします。自分の携帯番号に電話するとどこかにつながるという話もどこかで聞いたし、ちょっと「学校の怪談」の「メリーさん」っぽい展開になったり、お父さんがさとりって妖怪だったり、いろんなものがチャンポンになりすぎてないかなと。ごっちゃになりそう。さとりだけで面白い妖怪なのでもったいないですね。ホラーというテーマなので、これも先入観を持って読んでしまったせいもあるけど、話が平板だなと。主人公がさとるくんに電話をしなきゃいけないラストシーンも、盛り上がりに欠けるし、最後もありがちなところにおさまってしまった。今の時代に出版されたわりには、古いものが継ぎ合わされて出てくるみたいで、古臭さを感じました。いつまでもいつまでも教室にいたり、一つの場面が長いんですよね。肩すかしをくらったような作品でした。私自身が小学生の時くらいに読んだような本ですね。今この本を出版する意味がよくわからないです。

ゆーご:映画「学校の怪談2」に出てくるメリーさんの話がトラウマになってるんです。だから、よく似ているこの出だしはとても怖かったです。でも怖かったのは最初だけで、ホラーっていうより未知の生物と友情を深めていく……ETみたいな印象の話でした。ほっとした反面、少し拍子ぬけ。ホラーを読みたいと思って読まない方がいいかも。でも子どもなのに大人、みたいなさとる君のアンバランスさは好きです。

メリーさん:とりたててっておもしろいという本ではありませんでした。さとるくんというのが、妖怪の「サトリ」からきているというのが途中からわかって、人の心を読む能力を持つ子の物語なんだなと思いながら読んだのですが、新しい点がなかなかなくて。文中の言葉遣いも古い感じがしてしまいました。物語の前半で、主人公と、もうひとりの子が携帯を壊してしまい、妖怪におそわれるのはどちらかとドキドキしたのですが、すぐあとにその仕掛けの説明がきてしまい、拍子抜けでした。目をぱちぱちしていたら嘘などと、細かい設定におもしろくなる要素がけっこうあるとは思うのですが……。

ハマグリ:表紙はおもしろそうで期待したんですけど、最初のところが何度も何度も読んでもわからなくって。ナレーターが語る部分なんですけど、誰かが語っているみたいで混乱してしまいました。留守電の声が聞こえてくるので、だれかが電話を持っているのだと思ったけど、それが誰かわからない。「人間そっくりの顔にあてはまる目となった」って、意味もわからなかった。9ページの最後でさとるくんが歩きはじめ、「儀式をやって、自分のことを呼び出した少年のもとに向かっているのだ」って書いてあるので、さとるくんが儀式をするのかと読めてしまいました。あとからわかるけれど、この冒頭部分は本当に情景がすっと頭に思い描けず、混乱しました。全体的に納得できないところが多々ありましたが、一番説得力がないと思ったのは、航大と七海が、さとるくんが異界の人間だとわかったらすごくびっくりするはずなのに、全然怖がらなくて、その理由が「けど、こわいって気はしないよ、友達だから」っていうところです。今まで友達だった子が急に異界に入ったのなら「友達だから」というのもわかるけど、これでは友達って言葉を安易に使いすぎていると思います。そんなところが嘘っぽくて、中に入れませんでした。言葉づかいが古いという意見ですが、私もそう思います。「びっくり仰天ね」とか、「アホな冗談おとといとばしてきやがれ」とか、「おいしすぎてほっぺたが落ちても知らないよ」なんて、子どもが言うでしょうか。あまりにも新鮮味のない表現です。30ページ、「憎々しさをめいっぱい袋づめにしたような声でどなった」という表現も、どういうことかよくわかりませんでした。とにかく、つっかえてしまうところが多かったです。挿絵はこの本にあっていてよかったです。

ひいらぎ:物語世界の中のリアリティが、ぐずぐずですね。36〜37ページでさとると航大が初めて言葉をかわす場面ですけど、年上の少年が年下の少年にこんな話し方するんでしょうか? それに、さとるはあたりに散らばっている記憶粒子を集めてこれだけうまく人間に変身しているんだけど、それだったら航大がケータイを壊してしまった本人だということくらい、すぐにわかるはずなんじゃないかな。またお父さんのさとりが人間の魂を吸い取りたくなって息子を送ってきたんだけど、途中で姿を現すくらいなら自分で犠牲者をあの世に連れていけばいいのに。あとは、50ページのお母さんの台詞とか、79ページの「お互いに〜」からの台詞など、一息では言えないくらい長い台詞で状況を説明しているのも気になりました。

プルメリア:この作者の作品はほとんど読んでいます。この作品は2回、3回と読んだら、すごく間延びした印象になりました。携帯電話は、メリーさんの電話の雰囲気で迫ってきて怖かったのですが、お父さんの場面は怖いというよりも不思議な出現。携帯電話を図書館のトイレに流しちゃうことも、ありえないですね。さとるくんの出現もすごくあいまい。とってつけたようなものがたくさん入っている感じです。航太くんの嘘がばれて迫ってくる場面はドキドキしますが、実はさとるくんはみな知っていたのも、おもしろさに欠けるかな。読んだ子どもに聞いたところ、さとるくんのことを「幽霊」だっていうんですね、「なぜなの?」と聞き返すと、「遠いところからくるから」。とってつけたように出てくる「猫のすずってなあに?」と聞くと、「いったん死んだのが戻ってきたのかな」って。携帯電話を持っている子どもたちは、携帯電話で遊ぶと怖いと思うかも。表紙のさとるくんと航太くん、似てませんか?

サンシャイン:厳しく言うと、一つ一つの場面場面がご都合主義で書かれているという気がします。結局自分が電話をかけた本人なのに、そしてそれがばれたら向こうの世界に連れていかれるというのは相当な恐怖だと思うんですが、例えば教室にお父さんが出てきてもあまり動揺していないこととか。最後の方で、電話したのはぼくなんだと告白するところが作品のクライマックスなのかと思ったら、それも違ったようで、最後は猫に化けて終わっちゃいました。こういうのを子どもたちは喜んで読むんでしょうか?

メリーさん:この本って、もともと毎日小学生新聞の連載と書いてありますよね。1冊にまとめるときに、物語をつなぐために、けっこう加筆して説明的になったのかも知れないですね。

三酉:携帯の留守電で始まって、おもしろいところでスタートしたんだけれど、あとの展開がどうも。恐縮ながらまったく評価できませんでした。もう少し気を入れて考え、書いてほしい。

(「子どもの本で言いたい放題」2010年10月の記録)