『八月の太陽を』
乙骨淑子/著 滝平二郎/挿絵
理論社
1978

アカザ:昔読んだときには感じなかったのですが、いま読んでみると講談のような語り口で書かれた作品だなあと感じました。そういえば、私が子どものころに読んだ物語は、こういう書き方をしていたものが多かったように記憶しています。語り口の力強さというか、もう一度見直してみてもいいのでは? 今回はテーマにあった本ということで、この作品が選ばれましたが、わたしは『ぴいちゃあしゃん』のほうが好きです。ぜひ、読み継いでいってもらいたい作家だと思っています。

トム:乙骨さんが心に描いた社会というものがどのようなものだったのか他の作品も読みながら考えてみたいです。

おから:すみません、あまり読めていなかったです。色がよく出てくる作品だなと思いました。何人種かというだけではなく物などの描写にも色が多用されているなと思います。人種の違いと利用価値があるかどうかということだけで待遇が違うのはおかしいと思います。あとはキリスト教の何の宗派なのかなど、そういう思想や文化的な面についても知りたいですし、読んでいて気になりました。

ルパン:今回は、この作品があるならぜひ来たいと思って来ました。乙骨淑子さんは私にとって特別なイメージのある作家です。子どものころ通っていた「ムーシカ文庫」では、大きい子向け本に茶色いシールが貼ってあったのですが、その代表格のひとつが乙骨作品でした。子ども心に、あれを読めるようになったら大人になれるんだ、というあこがれをもって見上げていました。今も傾きかけた午後の日ざしがさす文庫の部屋で見上げた、本棚の上の段の光景が目に浮かびます。なんだか『フランダースの犬』でネロが教会の礼拝堂で覆いのかかった絵を見上げているシーンみたいに(笑)。そのわりには、高学年になってついに読んだ『ぴいちゃあしゃん』のディティールは全然覚えていないんですが、今回この作品を読んで、「本当に女性が書いたのか」という骨太な感じを思い出しました。ここでまた乙骨作品と再会できてほんとうに良かったです。

ぼんた:乙骨さんのことは名前しか存じ上げなかったのですが、この小説を読んでもっと知りたくなりました。月報では映画監督のルイス・ブニュエルの手法を子どもの本に取り入れようとしていたと書かれていますが、そのような発想ができることにとても驚きました。

ダンテス:楽しく読ませて頂きました。内容的には明治時代にあったものをベースに調べて書いたそうで、それもすごいと思いました。黒人そして混血、白人の三つ巴ともいえる状況もよく書けているし、フランス革命などもからめてあって、大きな作品だなと思いました。ハイチという国についても新しく知ったことがたくさんありました。

三酉:私もハイチがこういう出自だったのか。還暦を迎えても勉強になりましたが、作品としては講談調というよりは紙芝居みたいだなと感じました。

すあま:タイトルの印象が堅く、手に取りにくかったです。実在の人物だったことにびっくりしました。フランス革命の話をよく子ども向きに書いたな、ということにも改めて驚かされました。今こういうのを書く人は少ないかもしれない。昔は子どもたちが伝記や大人向けの小説を子ども向けに書き直した本、骨太な作品を読んでいたと思いますが、今は子ども向けというと甘い感じの本が多い。今出したら違和感があるかもしれません。今使わなくなっている言葉もたくさん出てきますし。こういった、子どもたちの目が世界に開かれていくような本を誰かに書いてほしいです。

プルメリア:タイトルを見て日本の終戦の話かと思いましたが、目次で外国の話と分かりました。ハイチにおいての黒人と白人と混血の力関係というのが分かりましたし、みんなすごく力強く生きているのだなと思いました。目次がたくさんあるので作品を読ませていくのだなと思いました。ハイチについて情報がない中見てないことを書くのはすごいし、男性の考え方で書いたりするのはまたまたすごいなと思いました。紹介しないと子どもは読まないので歴史と一緒に手渡していきたいなって思いました。

サンザシ:私も乙骨さんの偉さはじゅうぶんわかっているつもりです。でもね、と今回思いました。皆さんは、学ぶことができたとおっしゃってますけど、この作品は、スローガンにとどまっているような気がします。もっと肉付けしてほしかったです。アフリカ語という言葉もおかしいし、登場人物が生きているリアルな人のように感じられないのでもっと生き生きと書いてほしかった。当時は情報もないし、乙骨さんが実際に現地にいらっしゃったわけではないので仕方ないとはいえ、どうしても絵空事。乙骨さんが自分も知りたいと思って書いおいでなのはわかるし、この時代に社会的視野を広くもたれているのはすごいと思いますが、私は、子どもが読むという視点を忘れたくないです。これを子どもの本として称賛してはいけないように思います。人間が人間として書かれていませんもの。

(「子どもの本で言いたい放題」2011年10月の記録)